KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

八ヶ岳・旭岳東稜

2020年02月24日 | アルパイン(積雪期)

日程:2020年2月23日(日)~24日(祝)一泊二日
天候:両日とも
形態:無人小屋泊冬季アルパイン
同行:弟子(我が社の山岳部)

 さて今回は八ヶ岳東面の旭岳東稜。
 昨年同時期にトライし、一日目に核心「五段の宮」直下にテン泊したものの、翌朝からの小雪混じりの陰鬱な天気にモチも急速に低下し敢無く撤退。
 自分は過去に二回登っているので、どうしてもというこだわりは無いが、やはりここは相方の「弟子」にはぜひ押えておいてほしいルートの一つだ。
 というわけで、一年越しに宿題を片づけに出発。
 
一日目 美しの森11:30-出合小屋13:30-取付き偵察

 二月後半の三連休だが、初日は関東甲信地方に「春一番」が吹き荒れ、出発を見送る。
 残り二日間だが、この冬は昨年にも増して暖冬で雪不足のため、速攻でも行けるだろうと判断。出合小屋をベースとした計画にする。

 朝7:40に小田原に集合。中央高速を長坂ICで降りスーパー「オギノ」(ここは本当に安い!)で買い出し後、昼前に「美しの森」駐車場に到着。
 で、まず驚いたのが雪が無いこと。

 

 これまで何回となく来ているが、二月にここまで雪が無いのは初めてである。
 林道出だしも完全に地面が露出!多い時はワカンまで着けて歩いていたというのに。
 地球温暖化もいよいよ深刻になってきた。

 最初の林道分岐では季節外れの子供連れの遠足集団と出会う。
 ポカポカと暖かい陽射しの下、お弁当を広げている親子連れの間を、大きなザックを担いで完全冬山装備で歩く自分たちの姿に若干の気恥ずかしさを感じるほどの違和感だ。
 その後、多少は雪が出てくるも、堰堤の現れる辺りは流れが出ていて飛び石伝いに渡ったり、例年になく様子が違う。
 雪の時期だと出合小屋まで大抵3~4時間ほどかかっていたが、今回は2時間ほどで着いてしまった。

 早速、出合小屋の扉を開ける。すると、いきなり中から女性が「あら~っ!!」
 何と顔見知りのYokkoさんだった。当然、奥には旦那のサトシ氏。

 これまで小川山などで何度かクライミングを御一緒したが、冬山で偶然顔を合わせるのは初めて。
 今では神奈川と名古屋に離れ、一緒に登る機会はなかなか無いのだが、改めて山の世界は狭いと思う。

 彼らも少し前に到着したばかりで、明日は天狗尾根の予定だと言う。
 小屋内にはまだスペースが残っていたので、板の間の隅に二人用テントを張らせてもらう。しばらく四方山話などしながら荷物を整理。
 まだ十分明るい時間帯なので、自分はこの後、取付きまで偵察。弟子は夕飯の準備とする。

 

 小屋から少し歩いて地獄谷と赤岳沢の分岐(標識有り)。ここを左の地獄谷に入って進むが、しばらく行くとトレースがプッツリ途絶えてしまう。
 (ん、もしかしてここではなかったか?) 
 歳のせいか年々記憶力が怪しくなっているので、ここは一旦引き返し、もう一つのトレースに沿って進む。が、こちらだとやはり天狗尾根の方へ行ってしまう。

 一度、小屋まで引き返すが、どうもスッキリしない。
 「もう一度見てくる。」と言って、最初の途切れた方のトレースを適当に進んでいくと、なんてことはない。昨日からの吹き下ろしで途中からトレースが消されていたのだ。

 軽くラッセルしながら進んでいくと、見覚えのある「ツルネ東稜」への標識。そして旭岳東稜の末端が確認できた。
 明日は暗い内から早出となるので、やはり事前の偵察はしておいて良かった。
 ヘッデンを点けながらだと、トレースを見失った時点で右往左往していただろう。

 小屋に戻り早めの夕食。本日のメニューは弟子特製・ニンニクの芽たっぷりのビーフシチュー。美味しゅうございました。
 19時過ぎに就寝。


二日目 出発3:50-東稜・五段の宮下6:55~7:30-旭岳頂上10:10~30-ツルネ11:25-出合小屋13:10~14:05(撤収)-美しの森15:55

 午前2時起床。それなりに寒かったが、やはり小屋の中。日頃の疲れもあってグッスリ眠れた。
 朝のウドンをかき込んで準備を始める。天狗尾根へ行く二人はまだ起き出す気配が無い。向こうもここからスタートだと長いし、大丈夫かな。

 ギア類を身に着け、必要な装備と行動食だけ持って出発する。
 旭岳東稜は自分はこれで三回目だが、先の二回はフル装備を担いでルート途中でテン泊するパターン。小屋をベースに軽荷速攻で行くのは初めてだ。
 途中ビバークは考えていないので、何らかの計算違いやトラブルがあったら即敗退となってしまうが、まぁ何とかなるだろう。

 昨日、トレースを付けておいたため、迷うことなく東稜の取付きへ。末端のすぐ右から登り始める。
 吹き溜まりでない所は、昨日のパーティーのトレースあり。
 樹林帯のリッジは登るにつれ角度を増してくる。

 それでも所々トレースが消え、雪が軽く吹き溜まりとなっており、軽荷といえけっこうシンドイ。
 途中にある細いリッジのギャップの手前で後続の男性二人組に追い付かれ、先を譲る。
 不安定なリッジも彼らはスタスタと進み、かなり場慣れした感じだ。
 申し訳ないが、この先は彼らの付けてくれたトレースをありがたく使わせていただく。

 途中もう一か所ちょっと悪い小雪壁があり、そこを越えてしばらく行くと長い雪の斜面となる。
 草付きが凍っていたり、新雪で塵雪崩があったりすると、ここも悪く感じるが今日はそうでもなかった。

 既に陽も上がり、回りの山々がほんのりオレンジ色に染まり始める。
 昨年のテン場を越し、いよいよ核心の「五段の宮」に到着。

 まずは先行の二人組が取付き、最初のピッチを二人が抜けるのを待つこと約40分。見ているとけっこう悪そうで、ドライツーリングで登っている。
 最初のピッチを弟子に振ってみるがやや自信が無さそうなので、自分からリード。

 

 1ピッチ目 自分がリード
 前回登った時は最初の出だしさえこなせば後はそれほど難しく感じなかったが、歳のせいか今回はちょいと苦戦。
 最初のランナー、残置ハーケンにぶら下がっている古いスリングに頼りながら何とか上に抜けようとするが、ホールドが信用できず、なかなか踏ん切りがつかない。
 結局、自分もドラツー混じりで一段目を抜ける。
 右側の灌木にランナーを取るとロープの流れが悪くなるので、ここは飛ばして二段目は雪面にピックを差してチャチャと越える。
 三段目の岩の部分も悪く感じ、前回、テン泊フル装備で登ったのが我ながら信じられない。
 とりあえず三段目を上がった所でピッチを切る。
 フォローながら弟子も少しは苦労するかなと思ったが、スイスイとはいかないまでもそれほど時間をかけずに登ってきてくれた。

 2ピッチ目 弟子リード
 右側がスッパリ切れた箇所をトラバース、そこからミックスのリッジを上がっていく。
 途中からコールが届かなくなり、手元のロープが残り少なくなっても慌てず騒がず。
 これまで組んできた山行の数々でお互いの動きが理解できるようになっているのは頼もしい。
 これで「五段の宮」は終了。

 3ピッチ目 自分がリード
 時期によってはキノコ雪になる細い雪稜だが、さすがに今年はそれは無い。それでも雪は意外と繋がっていて快適な登高となる。
 上部に出るにつれ、多少風が強くなるが、それでも空はすっきりと晴れ、背後には富士山も望め、最高のロケーションだ。

 4ピッチ目 コンテ
 引き続き、細い雪稜。「五段の宮」を越えてしまえば、もう技術的に不安は無い。気持ちも楽だ。

 

 5ピッチ目 弟子リード
 ラストピッチは弟子にお任せ。無理に直登はせず、左へバンド伝いに斜上し、さらに右に折り返す形で旭岳頂上へ。


 
 先行の二人組は1ピッチ目を終えた時点ではまだ目の前にいたが、その後、自分たちがのんびり写真など撮りながら登っているうちにサッサと消えてしまった。
 そんなわけで、頂上は二人きり。しばし周りの景色を満喫する。
 もう数え切れないほど来て見飽きたはずの八ヶ岳だが、やはり青い空と白い山のコントラストは最高だ。

 

 

 途中、岩陰で行動食をとり小休止。
 下りのツルネ東稜は間違いやすいが、本日は先行パーティーのトレースがあり安心だった。
 とにかく左へ左へ進路を取ればいいのだが、頭ではわかっているもののトラップの赤テープなどに騙され、二度ほどルートミス。
 幸い、近くに別パーティーがいたりして軌道修正、ベースの出合小屋へ無事に下りることができた。

 自分たちより遅く出発し、天狗尾根へ向かったツジタ夫妻はさすがにまだ戻っていなかった。
 稜線は風が強く、ツルネの下りも暗くなるとわかりづらく、ちょっと心配だったが、まぁ大丈夫でしょう。

 いつも残業になりがちな我々だが、今回はいつになくスマートな行動。
 最後の林道はそれなりにダルく疲れたが、本日の行動は出合小屋から頂上経由、美しの森までほぼ12時間。まずまずの良い山行だった。



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