日程:2015年3月21日(土) 前夜発日帰り
天候:
行程:ロープウェイ駐車場4:50-一ノ倉沢出合6:00~18-シンセンのコル8:00-第二岩峰上8:30-第一岩峰基部9:55-オキの耳10:20~50-トマの耳11:10-(オジカ沢の頭との鞍部まで偵察)-西黒尾根-駐車場14:20
行動:単独
今週末は谷川岳へ。
当初の予定では我が社山岳部の春合宿に向けた雪稜トレの一環だったが、当日までに都合により一人減り二人減り・・・そして前日の昼になって頼りにしていたリーダーが体調不良で、まさかのリタイア!
どうする?やめようか。でもこういう時に限って天気予報はいいし、登山届も用意できている。
結局、中止にする理由が見つからないまま、金曜深夜に現地入り。
東尾根はアルパインの入門コースで11年前の同時期にも単独で登っているが、条件さえ良ければけっして難しくはない。
だが、絶対に落ちれないスノー・リッジや途中まで登ってしまうと退却困難になるなど、単独だとやはり不安要素が大きい。
明朝起きてあまりにも気持ちが乗らなかったら、西黒尾根か白毛門への登山に切り替えようと仮眠する。
翌朝4時起き。
ロープウェイ駐車場では他パーティーも動き出した。
昨夜、コンビニで買った焼きそばをポカリで流し込み、出発。
とりあえず一ノ倉沢の出合までは行ってみようと煮え切らないまま、歩き出す。
登山指導センターから先は残雪がテンコ盛り。
しかし最初は多いと思った雪も進むにつれ、林道の表面が出てきたりする。
雪も程良く締まっており、アイゼンが良く効く。しかも天気は快晴。これはもしかしてイケるんじゃないかと気持ちも晴れてきた。
マチガ沢を過ぎ、一ノ倉沢まで1時間ちょっと。
出合に立つと朝陽が当たり、岩壁群がオレンジ色に輝く。
威圧感はまったく無く、むしろ久々に帰ってきた感じだ。
残雪の一ノ倉沢
先行するパーティーを見送り、ゆっくりとトイレタイム。身支度を整えて最後尾から入る。
少し進むと左側に一ノ沢。
この時期、一ノ沢は陽が当たる前に登るべきという人もいるが、この時間ならまだ大丈夫。
あまり暗いうちだと雪崩や落石があっても避けられないし、デブリの上も歩きにくい。
だいぶ先を進んでいた先行パーティーとの間も徐々に縮まり、中間地点で追いつき、そのまま一人抜き、二人抜き・・・でシンセンのコルへは五人中、二番目に到着。
振り返るとけっこう急な斜面で、よほどのことが無い限りもはや降りる気もしない。行くしかない。
(左)デブリの一ノ沢を詰めていく (右)一・二ノ沢中間稜
一組目の方と話をすると、何と共通の知人がいて、やはりこのろくでもない世界は狭い。
彼らはトイレタイムに入り「お先にどうぞ。」と言われたので、僭越ながら単独トップに立たせていただく。
コルから尾根の左側を進むと、すぐにちょっと急な草付の壁。
前回来た時は雪に埋まっていたのだろうか。あまり覚えていない。
細い枝をあまり力を加えないようデリケートに掴みながら這い上がる。
その先、スノーリッジを進むと第二岩峰。
前回は登路が全て雪で繋がっていて特に問題無かったが、今回は雪解けが若干早いのか岩峰の手前に小ギャップあり。
そこを跨いでからの数mが雪の付き方が不安定でちょっと悪く感じたが、先週の秩父・赤岩尾根に行ったばかりなので微妙な草付にはすっかり慣れてしまった。
第二岩峰をクリア
最初のステージをクリア、お次は観倉台と呼ばれる雪のドームへ200mほどの一気登り。
先週のトレースを頼りにグングン高度を上げて行く。右手を見ると一・二ノ沢中間稜を二人組(男女のガイドパーティー)が登ってきている。
このまま進めばナイフリッジの所で合流しそうだ。
時折立ち止まり、写真を撮りながら行く。周りは全て青と白の世界。
前回は緊張のせいかあまり写真を撮る余裕が無かった。
後ろを振り返ると後続パーティーの姿が見えない。
「一ノ沢の登りでバテたのでシンセンのコルまでにしとくかも」と一人の方が冗談ぽく言ってたが、まさか本当にやめちゃったのか?
途中、雪が切れて段差ができていたが、一気に登って観倉台に着。
一ノ倉沢、マチガ沢、登ってきた東尾根下部、そしてどこまでも広がる上越の山々を一望にする。
合流すると思っていた中間稜パーティーは先にナイフリッジへ進んでいた。早い!
さて東尾根のハイライト、スリルと恐怖のナイフリッジだが、今回は雪も程良く締まっていてトレースもバッチリ。まったく快適に通過できた。
前回はトレースを崩さないよう一歩一歩慎重にアイゼンで蹴り込んでも雪が不安定で、何とも怖ろしかったものだが・・・。
もっとも一歩バランスを崩せば、一の倉沢の底まで一気に滑っていくことは間違いない。
この冬、先にトレース付けてくれた全ての方に感謝!
魅惑のスノー・リッジ
ナイフリッジの下りも難なくこなし、いよいよ最後の核心、第一岩峰である。
ルートは三通り。
右側の急な雪壁、残置スリングのある岩峰右側、そして被り気味だが、ガバ豊富に見える岩峰正面。
先行のガイドPは右側の雪壁から抜けて行ったので、安心面から言うと自分もそうするべき。
しかし、右側の雪壁は前回一人で越えていたので、今回は試しに正面突破にチャレンジしたい。
岩の部分はせいぜい4mほど。グレードもアルパインの3級程度というから何とか行けるだろう。
(左)正面、黒い岩が第一岩峰 (右)第一岩峰の基部は東尾根唯一の休憩できる平坦地
行動食をとり一呼吸入れてから取付く。
見た目ガバと思っていたが、正面から取付くと意外と外傾していて指の掛かりが良くない。
パワーで押し切ってもいいが、アルパインではいつどこで岩がグラッと来るかわからない。
ザックを背負ってアイゼンだと、思ったより登りにくい感じだ。
一回仕切り直すため、慎重にクライムダウン。よくオブザベしてから再度取付く。
まず左側一段高い岩にハイステップで乗り上げ、そのまま右足ステミングで体勢を整える。
両足の位置を整え、もう一段上がったら今度は右側水平ガバ、右足を少し離れた平らな岩に伸ばし、左足切る感じで乗り込む。
後は雪面に乗り上がってトップアウト。決まった!これで核心をクリア。
(左)第一岩峰 (右)最後の雪壁から東尾根を振り返る
最後、フィナーレの雪壁はシーズン終わりとあってトレースがしっかり刻まれ、威圧感はまったく無い。時間的にも雪が腐り始める前に何とか間に合った。
あっけなく登ってしまうとオキの耳の頂上すぐ横に乗り上げた。
一般ギャラリーから注目を浴びるのは北鎌と同じ。いや、それ以上か。
居合わせた山ガールからは「すご~いっ!」と賞賛の言葉をいただき、単純に嬉しい。
本日は絶好の天気で、ここオキの耳も少し離れたトマの耳も多くの人で賑わっている。
一ノ倉沢の出合から東尾根を伝って4時間半。途中、散々写真を撮ったのでまぁこんなもんか。
行く前はけっこうビビっていたくせに、取り付いてみたら案外サクッと登ることができた。
後続パーティーはずっと下の方に見える。これからだと雪が緩んでちょっと苦労するかもしれない。
(左)東尾根を俯瞰する (右)トマの耳にて
大休止後、トマの耳へ移動。
時間はまだ十分早いので、オジカ沢の頭方面へ足を伸ばす。
しかし、やはりこちらは歩く人が少ないせいか、ちょっと油断するといきなり股までズボーッとハマってしまう。
今後、春の上越大縦走はやってみたいテーマなので、これは行動時間や装備の面でとても勉強になった。
オジカ沢の頭へ向かう最低コルまでで諦め、トマの耳に引き返す。
(左)オジカ沢ノ頭方面 (右)肩ノ小屋
下りは西黒尾根。
前回の東尾根の時はあっという間に下りた気がしたが、今回はそこそこ長く急な下りに思えた。
追い付いてきた東尾根の後続1組の方と途中で合流。
四方山話をし「またどこかで会いましょう。」と言って別れる。
西黒尾根
夕方になり「湯テルメ」へ行くが、駐車場は満杯。
しかたなく本日は「水上ふれあい交流館」へ転進するが、小さな内風呂のみでちょっと物足りなかった。
その夜は土合駅前で車内泊。
翌日、天気と体調が良ければ白毛門でも行ってみようと眠りにつく。
バリエーションルート単独ですか?
厳冬期富士単独といい今回といい素晴らしすぎます。すごいです。
しかし、いつも思うのですが、現場監督さんの登山には甘えや妥協が一切ないですよね。
私事で恐縮ながら、
去年は自分なりに攻めた登山をしましたが、今年はなあなあになって守備的登山になってきている自分がいたので、現場監督さんの甘えなしの登山に、身が引き締まる思いになり、モチベーションアップいたしました。
ありがとうございます
いやいや、そんなことないです。
昨年秋に負傷して以来、ヘタレとビビリがすっかり板についてしまいました。
山にしても岩にしても、年々気持ち弱くなってますね~。
富士山にしても谷川にしても行く直前はけっこうビビリ入って、何かやめる理由を探したりしてますよ(笑)。
今回は天気が良かったのでラッキーでした。