新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

船戸与一を読む

2012年05月06日 | 読書
 船戸与一の作品を続けて読む。

 『午後の行商人』(1997)はサパティスタ運動が背景。船戸がサパティスタに注目するのは当然といえば当然なのだが、この作品の存在さえ知らなかった。解説は太田昌国。老行商人タランチュラと日本人青年の旅がおもしろい。しかしサパティスタについては、当人たちの本を読むのがいちばんだ。

 『蝶舞う館』(2005)は、解放30周年のベトナムが舞台。元戦場カメラマンの台詞より。

 「わたしたち戦場カメラマンは米軍の残酷さを報道することが正義と信じて疑わなかった。しかしね、それはベトナム労働党やベトコンの理不尽さを意識的に見逃すことが善意だというふうに捩じ曲げられる……」
 「つまりね、正義感や善意が歴史そのものを歪めてしまうんだよ」

 『山猫の夏』よりは『猛き箱舟』を繰り返し読んだのも、この点に共鳴していたからかな。しかし、船戸式叛アメリカ=辺境革命理論から導きだされるのは、無頼な個人による革命浪人物語でしかなかった。

 『群狼の島』(1981)は、初期作品だけあって船戸節炸裂。国外に逃れた新左翼武闘派が海賊になるという物語。そんなやついねえよ、とツッコミ入れながらも、マダガスカルはよつばの故郷候補地のひとつ。

 (最近は全然らしくない『龍神町龍神十三番地』が気に入っている。理恵先生がいい)


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