新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃん姉妹とお父さんの日々。

九井諒子の世界(1)

2011年06月23日 | コミック/アニメ/ゲーム

『竜の学校は山の上』九井諒子(イースト・プレス)


 「奥様はケンタウロスで、
 同級生は天使だったら?」

 書店で表紙の若奥様にひとめぼれ。

 超期待の新人。
 この初作品集には、全9作の短編が収録されている。

 『帰郷』
 魔王三部作(と、作者がいっているわけではないけれど)の第一話。
 魔王を倒した勇者が、生まれ故郷の村に帰郷する。
 「魔王」が死ぬと、人間同士の争いが始まる。

 『魔王』
 雪の夜、一夜の宿を求めてきた吟遊詩人が、家の人々に夜伽話を聞かせる。
 魔女の呪いにより、魔王に変えられた傲慢な王と、敵国の王女の、美女と野獣物語。

 『魔王城問題』
 魔王が死んだ後の魔王城は、どうなったか。
 侵入者を拒絶するこの城を、人の住める場所にするために、王は魔王を倒した勇者を呼びもどす。
 しかし勇者は、失意のうちにアルコールに沈んでおり、王女も病に犯されていってしまう……。

 『支配』
 はるかに昔、その日暮らしの人類を見かねて、異星人が「生き物製造器」をプレゼントしていった。
 魔王ものの別バージョン。

 『代紺山の嫁探し』 
 洋物からうってかわって、日本むかしばなし風。
 働けど働けど豊かにならない貧しい山村が、神様を迎えようとする。
 おんな神を迎え入れる生贄として、身寄りのない権平に白羽の矢が立つのだが……。

 『現代神話』
 前半のファンタジー作品からうってかわり、舞台は現代日本に、……しかしIFの世界である。
 もし現代日本に、猿人(ホモサピエンス)と、馬人(ケンタウロス)が共存していたら?
 両人種間の対立から国会に「馬人労働規制法案」が提出される。
 「奥様はケンタウロス」編と、「彼女はホモサピエンス」編(いずれも私の勝手なネーミング)の二本立て。
 地味なグレイのスーツ、髪を無造作に後ろに結び、くたびれきって、目の下に隈をつくったミキさんに萌える。

 『進学天使』
 天使の翼が生えた中学生の女の子。
 みんなと同じ高校に進みたかったのに、アメリカの翼人養成施設から留学の話が出ている。切ない初恋物語。
 鬼コーチ、ライバル美少女、軟派なラテン系、病弱な貴公子が出てくるらしい続編も希望。

 『竜の学校は山の上』 
 表題作。日本唯一の「竜学部」のある、地方国立大学のお話。
 竜学部のキャンパス風景が、『動物のお医者さん』を彷彿とさせる。
 トカゲ型、鳥型、ドラゴン型、さまざまな竜が出てくるのが楽しい。
 「世の中にはな--ふたつのものしかないっ
 役に立つものと これから役に立つかもしれないもの
 だっ」
 という、最後のカノハシ部長のことばがすがすがしい。この作品は連載したら愉しそう。

 『くず』 
 友人たちが就活で必死だというのに、だらだら全くやる気がない主人公。
 そんな彼に、1か月、民家で何をして過ごしてもいいというアルバイトが舞い込む。

 あとがきマンガの『金食い虫くん』が、おかしくて何だかかわいい。
 この作品について、次回触れてみたい。

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