『魅力』(みりょく)
☆----------------人の心をひきつけて、夢中にさせる力----------------
実は、この『魅力』という言葉、日本でできた「和製漢語」だそうです。
「魅」という漢字は、「鬼」と「未」からできていますね。
「未」は、木の枝先をかたどった象形文字で、
この場合は、はっきりわからないという意味になります。
「鬼」と組み合わせて、なんと、
物の怪(け)とか妖怪をあらわしているとか。
『魅力』という言葉ができた背景は、
「見入る」を「魅入る」と書くようになったことだといいます。
「見入る」は、我を忘れて見とれるという意味。
それを「魅入る」と書くと、魂を奪われた感じが強くなりますね。
まるで、魔性のものに取り付かれたような雰囲気が、ぴったりきたのでしょう。
そこで、「魅」を使った漢語が次々と作られたのだそうです。
「魅了」「魅惑」、そして『魅力』……。
たしかに、人をひきつける力というものは、不思議なもの。
得体(えたい)の知れない物の怪の力と考えたくなるのもわかります。
「魅力的だよ」と言われて、妖怪呼ばわりされても……。
それがかえって、嬉しいのです。
『桜言葉』(さくらことば)
☆--------------------口先だけで言うほめことば--------------------
江戸時代、芝居小屋では、役者に声をかけて、盛り上げる人を、
入れていたそうです。
その席を、「太郎桟敷(たろうさじき)」、
あるいは、「桜」と呼んだといいます。
派手な掛け声で、ぱっと、にぎわせてくれるという意味を、
「桜」になぞらえたというわけです。
『桜言葉』も、ここからきたのでしょう。
ちょっとしたお世辞を、「お上手」といいますが、
『桜言葉』と呼ぶと、さらに、聞こえがよくなるような気がします。
さて、現代でも、客のようなふりをして、購買意欲をそそることを、
「さくら」といいますね。
「偽客」という当て字を使って、
「さくら」と読ませたりもするようです。
こちらの語源は、諸説ありますが、
この、芝居小屋の「桜」からきているという説が、有力になっています。
~うつせみの 世にも似たるか 花桜 咲くと見しまに
かつ散りにけり~ (よみ人知らず『古今和歌集』)
昔の人にとって、「桜」は、はかなさの象徴。
たわいないものならともかく、実質の伴わない「偽客」は、
結局、空しいものだということなのでしょうか。