こだっちとくうすけの冒険

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 こだっちとくうすけ より

「魅力」と「桜言葉」

2011年03月25日 21時11分19秒 | 言葉の面白さ・楽しさを知ろう

『魅力』(みりょく)

 ☆----------------人の心をひきつけて、夢中にさせる力----------------

 実は、この『魅力』という言葉、日本でできた「和製漢語」だそうです。

 「魅」という漢字は、「鬼」と「未」からできていますね。

 「未」は、木の枝先をかたどった象形文字で、

 この場合は、はっきりわからないという意味になります。

 「鬼」と組み合わせて、なんと、

 物の怪(け)とか妖怪をあらわしているとか。

 『魅力』という言葉ができた背景は、

 「見入る」を「魅入る」と書くようになったことだといいます。

 「見入る」は、我を忘れて見とれるという意味。

 それを「魅入る」と書くと、魂を奪われた感じが強くなりますね。

 まるで、魔性のものに取り付かれたような雰囲気が、ぴったりきたのでしょう。

 そこで、「魅」を使った漢語が次々と作られたのだそうです。

 「魅了」「魅惑」、そして『魅力』……。

 たしかに、人をひきつける力というものは、不思議なもの。

 得体(えたい)の知れない物の怪の力と考えたくなるのもわかります。

 「魅力的だよ」と言われて、妖怪呼ばわりされても……。

 それがかえって、嬉しいのです。





         『桜言葉』(さくらことば)

 ☆--------------------口先だけで言うほめことば--------------------

 江戸時代、芝居小屋では、役者に声をかけて、盛り上げる人を、

 入れていたそうです。

 その席を、「太郎桟敷(たろうさじき)」、

 あるいは、「桜」と呼んだといいます。
 
 派手な掛け声で、ぱっと、にぎわせてくれるという意味を、

 「桜」になぞらえたというわけです。
 
 『桜言葉』も、ここからきたのでしょう。
 
 ちょっとしたお世辞を、「お上手」といいますが、

 『桜言葉』と呼ぶと、さらに、聞こえがよくなるような気がします。

 さて、現代でも、客のようなふりをして、購買意欲をそそることを、

 「さくら」といいますね。

 「偽客」という当て字を使って、

 「さくら」と読ませたりもするようです。
 
 こちらの語源は、諸説ありますが、

 この、芝居小屋の「桜」からきているという説が、有力になっています。

 ~うつせみの 世にも似たるか 花桜 咲くと見しまに
         かつ散りにけり~ (よみ人知らず『古今和歌集』)

 昔の人にとって、「桜」は、はかなさの象徴。

 たわいないものならともかく、実質の伴わない「偽客」は、

 結局、空しいものだということなのでしょうか。