これからお話するのは昨夜私を襲った恐怖体験(実話)です。
昨日は本業の深夜予約も珍しく無く、
道場の後片付けが終わった後、
いつも通り少し家への道をそれ、
ポスティングをしながら帰宅していた夜中の11時前の事です。
冷え込む夜空の下、
マイ・チャリンコに乗りながら
一軒一軒チラシをまいていた私のズボンのポケットに入れている携帯電話が急に鳴り響きました。
知らない番号です。
店の電話を転送で携帯へ繋がる様に設定していますので
“この時間から予約か”
と少し早めに店を後にした事を少々後悔しながら私は
“はい、×××です”
と店の名前を告げながら電話に出ました。
私の本業は深夜に関しては完全予約制として24時まで対応しています。
一応最終予約受付は22時30分となっていますが、
この時間から予約が入る事は珍しい事ではありません。
しかし、どうも電話の向こうの様子が変です。
少し舌足らずのくぐもった女性の声で
「あの~もしもし×××、もしもし×××」
と“もしもし”の後の言葉が聞き取れません。
いや、実際は聞き取れないのではなく、
店の予約の電話だと思いこんでいた、
寒さに凍え麻痺しきった私の脳では、その予想だにしなかった、
“もしもし”
の後に続く言葉を理解できなかったと言うほうが正しいでしょう。
私は、意を決してもう一度
“もしもし、×××ですが、どのような御用件でしょうか?”
と高鳴る鼓動を抑えながら聞きなおしました。
すると、相変わらず舌足らずな声で
「あの~掲示板を見たのですが・・・」
と言う返事が返ってきます。
“ん?掲示板??”
道場のHPには掲示板を設けています。
道場の電話受付も店の番号と同じですので、
“もしかして道場の問い合わせ?”
“しかし、こんな時間から?”
“しかも女性が?”
等と様々な疑問が頭の中をめぐります。
疑問を整理する事もできず戸惑う私に追い討ちをかけるように
電話の向こうから信じられない言葉が発せられました。
「あの~掲示板にあなたの番号が書きこまれていたのですが、
ここに電話すると私のオ×ニーの声を聞いて頂けると・・・」
“何ですと?”
私はもう何が何やらさっぱり訳が分かりません。
寒空の冷え込む中でポスティングをしている最中、
見も心も凍えきり私の脳は停止寸全状態です。
今まで経験した事がない恐怖から逃れ様と必死に脳の活性化を試みましたが、
それも虚しくあまりの出来事に私の脳は完全停止してしまいました。
ここからもう頼りになるのは私の自己防衛本能だけです。
無意識の自己防衛本能、それとも所謂“無の境地”と言うやつでしょうか。
その時、“はは~ん、これは誰かのいたずらやな。”
“こっちが本気で怒ったりしたら、
「アホや~、何を真剣に怒ってんねん」
とか言いながら誰か知ってるヤツが出てくるという例のアレやな”
と、このかってない窮地にしかも思考能力0の状態にも関わらず、
的確な答えが導き出せる、
この
“無の境地”
に達する事が出きるとは、つくづく武道をやっていて良かったと、
この時ほど感じた事はありませんでした。
“よし。ここは辛抱や、切れたらアカン”
先にじれて切れてしまった方が負けだと思い、
私は適当に相手に合わせながら
“良いよ。聞いててあげるよ”
と先ずは先手を打ってしかけてみました。
この間にも私の手はポスティングを休みなく続け、
頭の中では
“こんな事をするヤツは、最近ブログでいじっているあいつかな?
いや、あいつか。
もしかしたら道場とは全然関係ない、いつもふざけた事をしかけてくるアイツか?”
と、私はこの極限状態にも関わらずポスティングをしながら電話で応対し、
更には犯人の予想をする、
この全く合い入れない三つの動作をこなすという離れ業をやってのけていたのでした。
すると、敵も中々戦い慣れをしているらしく、少しも動じることなく
「じゃ、聞いてて。はあ、はあ、あああ・・・」
とあえぎ始めたのでした。
“いたずらにしてはやりすぎ”
と思いつつも、
“まだや、まだ辛抱や”
と言い聞かせ、ポスティングを続けるのでした。
しかし、ここで私はある重要な事に気が付きました。
元来私は心理戦というのが、とても苦手なのです。
肉体的攻撃には少々の事では動じませんが、
一旦心理戦になると、今まで勝った記憶がありません。
相手の裏をかいたつもりがその裏をかかれ、
もう一つ裏をかいたつもりでも更に裏をかかれると言うのがいつものパターンなのです。
おまけに短気な性格。
こう言う心理戦で膠着状態になった時、どうしても我慢しきれなくなってしまうのです。
わかりやすく言えば、
よくドラマや映画の人質に取られるシーンで、
極度の緊張状態に我慢しきれず、
逃げ出すか犯人に向って行き真っ先に殺される、
というのがありますが、
まさしく私にはそういうところがあるのです。
‘焦りすぎ’
以前勤めていた会社の先輩方からも、
根回しをせず急いで行動に走る私に対して、
良く言われた言葉です。
しかし、敵はこの女だけではありません。
1月の深夜のすべてを凍らせてしまう冷たい風。
私は意識が朦朧としながらも粘り続けました。
だが、終焉の時は音もなく突然やってきました。
「あん、いっちゃった。」
“(この勝負)勝ったのか・・・?”
私は何も解決されていない事には気付かず、
ただこの緊張感から開放されるというだけで何か勝負に勝ったような錯覚に陥っていました。
その女は続いて
「ねえ、おに-さんのアドレスを教えて」
と言ってきました。
“そんなもん教えられるかい”
とすぐさま反撃に転じましたが、
「じゃあ、おに-さんの携帯はどこの会社?」
と逆にカウンター攻撃を食らってしまいました。
“???”
私はこの質問の意味するところが全くわかりませんでした。
私は昔から結構PCオタクとしてならしてきただけに、
PCのことは少々詳しいと自負しています。
しかし携帯となると去年までツーカーを使っていたぐらいで、
ましてやメールはスカイメールのみ。
携帯でメールに画像を添付するという事が出きるようになったのは、
つい最近の事なのです。
今だかって携帯でネットにつないだ事もない携帯オンチな私には、
とうてい何を意味するのかなど理解できるわけがありません。
私はようやく開放される安堵感から少し気がゆるんでいたのでしょう、
つい
“au”
と答えてしまいました。
まさかこれが致命傷になるとは思いもよらずに。
「じゃあ、私と同じだからCメールで私のアドレス送るね」
と言い一方的に電話を切る女に、
私は何が起こったのか訳がわからず、
ただ呆然と寒空の中、立ち尽くすのでした。
つづく
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