京賀塾道場日記(京都市山科区のキックボクシングジム)

日々の練習や試合での出来事等について普段は熱く、時にはまたーり語ります。“時々ぼやきも入りますよー”

第5章:傘がない

2008-01-26 16:39:42 | 一般部
私は先ず20年来の友人で私の知り合いの中では数少ない常識人であるTに
昨夜の出来事をわざと少し茶化した文面にしてメールを送りました。
そして同じ内容のものを今度は道場の指導員であるT本にも送りました。
後は、メールが帰ってくるのを待つだけです。
私はもう一度布団に潜り込み、静かに目を閉じこれからの展開について予想するのでした。
しかし本当に迷惑な女だ、こんなバカお・・・、
あっ、そうだバカと言えばY岡に返事をするのを忘れていました。
この冬一番の冷え込む朝、布団から出るのにも一代決心が要る強烈に寒い朝です。
“ホントに世話の焼ける、ブツブツブツ”
と私はぼやきながらもう一度携帯電話の元に行き、
適当な気のないメールを送っといてやりました。
その後、いつものように10時前に店に着くと、
昨日から浮かんでいたある‘考え’を実行する為にPCの前に座りました。
先ずメールを受信し、
続いて道場のBBSとブログのコメント欄の書き込みを確認すると言う
毎朝行なう単純な作業を慣れた流れるような手つきで完了すると、
私は深く深呼吸をし、
目の前の画面に向いまるで獲物を狙う時の猛禽類のような鋭い目つきで、
一気にある‘考え’の実行にかかりました。
その日は、割りとお客さんの数も多く、
手の空いた僅かな時間を利用しながらも着実にある‘考え’を実行していきました。
しかし、今までそのような経験がない私は、
思うように運ばない作業に多少苛立ちながら、
気が付くと昼休みの時間になっていました。
私は妻が愛情を込めて作ってくれた弁当に感謝し、
一口一口味わいながら食べていると、
“リリリリリン”
メールの着信音が鳴り響きました。
私は今朝送ったメールの返事がやっと来たな、
これで私の漠然としたある‘考え’をより強い決意で実行に移せるなと、
手元に置いてある携帯電話に目を向け、送信者の名前を確認するのでした。
まさか、もう送られて来ないだろうと予想だにしていなかった名前が
そこに浮かび上がるとは思いもせずに・・・。

【Y岡】

“お前かい”

私は、どこかで私の様子を覗いているのではないかと思うほど、
ここまでくればタイミングが悪いと言うのではなく、
逆に‘ジャストタイミング’と叫びたくなるようなY岡のメールにあきれる事を通り越して
‘もしかして間の悪い天才?’
と尊敬の意を込めながら内容を確認するのでした。
その内容と言うのは、
「近鉄MOMOの××メーカー(格闘技ショップの名前です)昨年の11月に閉めていますね」
“いきなり何のこっちゃい?”
と思い、その事を告げるメールを返信すると
「キックミットMOMOで買えと言いましたやん」
と怒りながらメールを返して来るのでした。
私は全く怒られる理由が理解できず、
‘何か言ったか?’
とここ数日の出来事を思い返してみました。
ああ、そうだ、何かキックミットを買いたいと言っていたので、
数社メーカーを教えた事があったなと。
その時、値段で考えるなら××メーカーも良いのではないかと教えたな、
と言うやり取りを思い出しました。
しかし、私はその時××メーカーとは確かに言いましたが、
MOMOに行って買えとは一言も言っていません。
昨年の11月にMOMO店が閉店したことを知っていたからです。
その事は道場の練習中に何度も練習生に伝えていたはずです。
なのに、私の言った事などすっかり忘れ、
××メーカー=MOMOと勝手に脳内変換したY岡は、
とっくに閉店しているMOMO店に買いに行ったが閉まっていた事に対して文句を言ってやろうと、
私にメールしてきたのでした。
私は冷静に、Y岡の勝手な思い違いだと言う事を
Y岡にも理解できるようなるべく漢字を用いずひらがなを中心にわかりやすい文面で返信してやると
「そ~でしたっけ」
と今だ私に非があるような納得していないような返事を返してくるのでした。
“これ以上は時間の無駄だな”
と思い、再びPCに向かおうとした時
“リリリリリン”
またしても着信音が・・・、
まだ何か文句を言い足りないのかと、
置いたばかりの携帯に目をやるとそこに浮かび上がった文字は

【由美】

あの女の名前です。
私は、これからどのような展開になるのか、
それは今私が実行している事がどのような方向に進んでいくのかを左右する事でもありますので、
“ふふん、面白い、何が送られてきたかな?”
と昨夜のように心を乱される事もなく冷静に又楽しみながらメールを開いてみるのでした。
そこには
「お兄さんの身体の写メも見せてもらえますか?」
と、‘まだ戦いは終わっていないぞ’と言う強い意志を伝える文章と共に、
この世のものとは思えない美とはあまりにもかけ離れたグロテスクな写真を添付してきたのです。
この時間は昨日の電話では仕事中だと言っていたはず、
それが本当なら仕事中にこんな写真は撮れるはずがありません。
“やはり昨夜私に話した事はすべて嘘だったのか”
と思いながらも、写真のある不自然さを決して見逃さないのでした。
私は取りあえず時間稼ぎをしなければと思い
“今仕事中なんで、後で送るね”
と返信しました。これで夜まで時間が稼げるはずです。
その間にある‘考え’を何とか実行せねばと思い、
急いで作業に取り掛かるのでした。
15時を少し過ぎた頃には、ある‘考え’を何とか形にする事ができ、
後は細かい部分を手直しするだけという所までやっとの思いでたどり着きました。
このような作業は初めてです。本当に疲れました。
その間に朝メールを送った友人のTと指導員のT本からメールが届いていました。
最初に届いたのは友人のT。
アホな事に関わるなと言う本当に私の事を心配してくれている内容のメールでした。
この友人とはこれからも付き合っていけそうです。
本当にありがたいと思いました。
しかし、私の期待していたものは、それとは違います。
次にT本からメールが届きました。
とにかく今日道場に行きますと最後に書かれていました。
本来は指導に来る日では無いにもかかわらず、
道場に顔を出すと返事してきたT本に、
“こいつは私の意図する事を気付いているな”と感じました。
16時過ぎに細かい手直しも完了させた私は、
ある‘考え’をいよいよ実行する事にしました。
緊張から震える手で実行ボタンを押した私は、
“反応が楽しみだ”
とつぶやきながら慣れない作業で疲れきった体を癒すため、
春日井の黒アメを口に運ぶのでした。
T本がやって来たのは19:30過ぎ、
やはり事の重大性を知っての事でしょうか、
普段よりも早く道場に来たT本は、早速本題についてたずねてきたのです。
私は昨夜から今日の出来事を詳細に伝えました。
それを聞いていたT本は私の予想通りの返答をその都度するのでした。
私は、余りにも予想通りに事が進むあまり心が踊り、
T本が言葉を発する度に
“そうだ”“いいぞ”“そうそう”
と心の中で叫び続けるのでした。
そして、最後に私が一番聞きたかった言葉、
「こうなったらとことん付き合ってやって、ブログのネタにでもして晒してやらなあきませんね」

“きた”

私が待っていた言葉です。
しかも添付されていた写真の不自然さにも瞬時に気付いていたのです。
「写真に両手が写っていると言うことは、誰かに写真を撮ってもらってるんですね。
バックに男がいてやらせてるんちゃいますか?」
私も同じことを考えていたのです。
私はT本に実はすでにブログで晒してやった事を話しました。
そして何故このような形で晒してやる事になったのかと言う理由も。
私はこの戦いの3日前、元道場生で小説家志望のS川君とメールでこんなやり取りをしていたのです。

私「いつになったら小説を発表するんや?
今はネット小説やケータイ小説など簡単に発表出きる環境があるのだから、
先ずはどんな形でも良いから作品を発表したらどうや?」
S川「まだ私には時期が早すぎです。もう少し力をつけてからと考えています」
私「そうか、その時期が来るのを楽しみにしているよ」
S川「わかりました。ところで先生(私)も小説を書いてみたらどうです?」
私「俺が?無理無理」
S川「そんな事言わず、以外と面白いモンですよ」
私「そうか?じゃあ。書いてみようかな?」

その後も真剣にアドバイスしてくれるS川君に対して、いい加減な態度は取れないと思い、
出きるところまでやってみようとしたのですが、
全くの素人の私には何から初めて良いのかさえわからす、
「小説新潮」と言う今まで買った事が無いような本まで買ってきて参考にしようとしたのですが、
やはり無理なものは無理で、一向にペンが進まず悩んでいたのです。

その時です。この女から電話があったのは。
私は、
【真夜中にチラシをまいている中年空手家と変態女との電話とメールのやりとり】
と言う通常では考え付かない状況を題材に出来ないかと考えていたのです。
もちろん私が書く物など小説とは言えません。
‘小説モドキ’
‘小説風’
でも構わないのです。
取りあえず書く事によりS川君との約束は果たせると考えたのです。
私はこの事を実行しようと思いました。
しかし、元来恥ずかしがり屋の私は誰かの後押しが無いと中々実行に移せません。
そこで、私の後押しをしてくれるだろうと思われるT本と、
もう一人、第3者の目から見て常識的な意見をもらう事により決して深入りする事が無いようにと、
常識的な意見を言ってくれるだろう友人のTにメールしたのです。
私はどちらからも期待していた通りの満足する意見をもらうことに成功しました。
特にT本に関しては、私の予想を上回る行動力で、
“こいつは使えるヤツだな”
と改めて感心させられるのでした。
T本はよくわかっています。
人が何かを尋ねるとき、それは本当にわからずに困っているのか、
それとも本当は出ている答えに対して後押しをしてもらいたいだけなのか、
と言う事を・・・。
それを見極める為、直接私に会いに来て後者だと確信した彼は、
やや大げさな反応をしながら私の予想通りの答えを言ってみせたのです。
“こいつは将来間違い無く出世するな”
私のような一度に多くの人間を使いこなす事が出来ない、
せいぜい中小企業の管理職が限界なタイプの人間は、
自分より優れた意見を出す部下は自分の身を守る為に蹴落とし、
自分の予想の範囲内で意見を出す部下は可愛がります。
何か提案する時、組織にとってベストな事を発表するのは、
少し頭の良い人なら出来ます。
でも、本当に頭の良い人は、自分の上司が今何を欲し、
それに少し上司の手を借りれば完成するような、
決して上司を失望させず、だからと言って上司に妬まれる事もなく、
それどころか最終的には上司の手を借りる事により、
上司に華を持たせる事が出来るギリギリのラインを見極めることができる人間です。
T本はそれが出来る男のようです。
早速私はT本に先程ブログにアップしたばかりの
“第1章:着信アリ”
を読んでもらうことにしました。
T本はここでも私の意図する事を理解し、
わざと声を出しながら読み出したのです。
「ククッ」
笑っています。
「フッフッ、クッ」
私が笑いを期待した箇所には必ず反応して行きます。
そして、私の一番力を入れた箇所、
ホントここで笑わないともう他に笑うとこが無いですよという箇所が近づいてきました。
私はドキドキしながらその瞬間を待ちます。
後もう少し
後もうちょい
次の行や
「ププッ」
予想通りのT本の反応に
私はT本に見えない様に小さなガッツポーズを作りながら、
読み終えたT本に
“まあまあ、急いて書いたモンやし、
誤字脱字も多いやろうし、文章も滅茶苦茶で全然オモロない文章やけど、
女の事を晒したる事が目的やし、そんなんどうでも良いんやが・・・”
私が最後の言葉を言い終わる前に
「早よ続き読みたいですね」
と私の自尊心をくすぐるような言葉をさりげなく言うのです。
私は10年以上このT本を洗脳し続けてきた成果がやっと現れたなと満足すると共に
女の行動をこれからもブログで晒してやる事に対して理由も無く自信に満ちてきたのです。
私はこの戦いの続きを書くためにも女とのやりとりを継続する必要がありました。
練習が終わる22時からが勝負だと色々策を練っていましたが、
間が悪いもので22時から24時まで深夜の予約が入ってしまったのです。
昨日の事を考えるとお客さんがいる23時頃に女から電話があったら大変な事になります。
私は先手を打って
“今日は仕事で遅くなるので24時過ぎにこちらから電話するね”
とメールしてやりました。
これで余程の悪意がある人間でない限り、仕事中に電話をかけて来る事は無いでしょう。
私の思惑通り24時まで電話がかかってくる事は無く、
お客さんが帰り24時を少し過ぎた頃
“良し、ここまでは計算通り”
と、昨夜とは違い戦う準備をすべて整えてから女の番号へ電話してやるのでした。
呼び出し音が鳴ります。
2回、3回・・・もう少しだ、もう少しで今度は昨夜私が受けた屈辱感を女にも味わわせてやる事が出来る、
・・・5回、6回、プツ、プープープー・・・・・

“切りやがった”

私は何とも言えない虚しから、先ほどアップした「第1章:着信アリ」を
“ここ、ここよ、ここオモロイよな”
と、一人で声を出してツッコミながら笑うしかありませんでした。
外を見ると雨です。
先程までは降っていなかったのに・・・。
どれほど一人ツッコミをしながら笑っていたことでしょうか。
時計を見ると午前2時です。
“この辺が潮時だな”
そう思った私は、この冷たい雨の中、傘がない事に気付きました。
その時

♪だけども問題は今日の雨 傘がない♪

小学生の時に聴いた井上陽水さんが歌う“傘がない”が突然私の頭の中で流れました。

♪行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ♪
♪君の町に行かなくちゃ 雨にぬれ♪

君とは誰なのだろうか?あの女?まさかな・・・。

♪つめたい雨が 今日は心にしみる♪
♪君の事以外は考えられなくなる♪
♪それはいい事だろう?♪

私は大声でこの歌を歌い、降りかかる雨で涙を隠しながらマイチャリンコを全力でこぎ帰るのでした。

つづく


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2008.1.25 今日の練習

2008-01-25 22:53:02 | 一般部
今日の練習メニューは、
シャドー、ミットで体を温め、
その後はスパーリングを通してバランスの練習を重点的に行ないました。
最後は補強運動で終了です。


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第4章:再戦

2008-01-25 18:57:18 | 一般部
私は、ただがむしゃらに、
まだ半分以上残っているチラシをまく事によって、
さっきまでの出来事を忘れ去ろうとしていました。
そうする事によって、怒りに我を忘れて安易におこなってしまった
(顔がしっかり判別できる写メを送ってしまったという)
私の愚かな行ないを記憶の中から抹消してしまおうとしていたのです。
私はもう全く感覚が無くなってしまった指先で、
何とか1つのポストには1枚のチラシという大原則を守りながらチラシを配っていたのですが、
どうしても感覚が無い指先ではそれにも限界があるようで
“あっ、2枚入れちゃったよ”
という事を何度か繰り返しながらも、
ようやく残りが50枚というところまで到達する事ができました。
しかし、残り僅かになり、少しホッとなりかけた瞬間、またもや悪夢が私を襲ったのです。
突然
♪たくましく生きるため 僕はひとりになる♪
私が〝着うた〟にしている
高杉さと美さんが歌う「旅人」のメロディーが流れてきたのでした。
‘ギクッ’
私は一瞬本当に心臓が止まるかと思いました。
夜中の12時、辺りは閑静な住宅街。
私はこの場違いとも言えるメロディーを近所の迷惑の事も考えて少しでも早く止めてしまおうと、
画面に表示される名前も確かめずに出てしまいました。
きっとY岡が、さきほど適当に返しておいたメールを見て
時間も考えずに非常識な電話をかけてきたのだろうと思ったからです。
だが予想に反して電話の声はY岡ではなく、先程の変態女のものでした。
「お兄さんの写メを見たら又したくなっちゃった」
確かに若い頃は自慢ではないですが結構もてた方です。
一度に3人の女性から同時に告白されたこともあります。
しかし、それも過去の話。今では当時の面影もありません。
それでも、やはりこの男日照りの変態女には、
どことなく男臭さと哀愁が漂う私のフェイスは刺激が強すぎたのでしょう。
“仕方ないな”
と少し照れながらも私は、
今度こそ
‘ぎゃふんと言わせてやる’
と静かな闘志を燃やし、
けっして相手に気付かれることが無いよう、
反撃の準備を整えていきました。
しかし、よくよく考えてみれば、先程の勝負はこの女の完全勝利のはずです。
次は負けるかもしれないと言うリスクを背負ってまで、
勝者から敗者に再戦を挑む必要がありません。
余程自信があるのでしょう。
ここで弱りきっている私を完膚なきまでに叩きのめし、
二度と立ちあがることができないようにしておこうと考えているのでしょう。
このもはや人間的良心の欠片もない非情な行ないを、
相変わらず舌足らずな声で淡々と進めていくこの女には、
まるで血の通わない冷酷な機械とでも戦っているような恐怖と戦慄を覚えさせられるのでした。
“この女のペースにはまってはダメだ”
そう考え、なるべく女の言葉を右から左へ受け流しながら、
取りあえず先にこの女をいかせてしまおうという作戦に出ました。
私は適当に女の要求に答えてやりながら、反撃の機会を伺っていましたが、
いくら無視しようとしても耳元で
「ああ~、あっあっあっ、あ~~~」
等と言う言葉を永遠と続けられたら、私だって健康な男子です、
どうしても先に根負けをしてしまいそうになります。
私は最後の力を振り絞り、
残りのチラシを全力で配ることにより何とか意識を女の声から逸らそうとしました。
しかしながら、今回は女の方も1度目の戦いで余力が残っていなかったようです。
思ったよりも早く
「はあ~、いっちゃった~」
と昇天してくれたのです。
“ここだ”
この女の意識が朦朧として正確な判断が出来ないこの瞬間こそ
勝機を確実にとらえられる絶好のタイミングだと感じた私は、
女の素性を洗いざらい吐かせ、
意識が回復した後に深い絶望感を与えてやる為に矢継ぎ早に質問して…やるつもりでしたが、
実際に出てきた言葉は
“どこに住んでいるの?”
“年齢は?”
“仕事は?”
等と本当に凡庸な自分自身を失望させてしまう質問ばかりでした。
私は口下手な自分を恨みつつ、
やはり自分には肉体を駆使した一番原始的な戦い方しか向いていないのだと
実感するよりしかたありませんでした。
そして、満足な成果を得られないまま、
またしても女のペースで電話を切られてしまった私は、
激しい虚脱感に襲われるのでした。
だが神は私を見捨てませんでした。
女が電話を切った直後に何とチラシをすべて配りきると言う奇跡が起きたのでした。
この奇跡のお陰で力を取り戻した私は、
“家へ帰ろう、帰れば何とかなる”
と考え、全力でマイチャリンコをこぐのでした。
家の明かりが見えてきた途端、安堵感からか急に気が大きくなった私は、
先程の戦いの中で女が挑発する様に言って来た言葉を思い出し、
“売られた喧嘩は買わねば男がすたる”
の言葉通り、
“上等だ、買ってやろうじゃないか”
との思いが強くなりました。
それは家の中に入り暖かい空間に包まれ愛する妻の顔を見ることにより、
より一層強く大きい思いになるのでした。
‘思い立ったが吉日’
私は何よりも先に女にメールを送ることにしました。
妻が用意してくれた遅い晩御飯よりも
冷え切った体を芯から温めてくれるお風呂よりも先にです。
“送れるモンなら送ってみんかい”
女は写メで撮った自分の裸の写真を送ろうか?と先程の戦いの最中、
‘受け取る勇気なんかないでしょ’
と言わんばかりに挑発してきたのです。
確かにその場では女の思惑通り、何も言い返せない私でしたが、
チラシを配り終えた達成感と家に帰ってきたと言う幸福感に包まれた今の私には、
怖いものなどありません。
女の予想だにしなかった言葉を送りつけてやる事が出来たのです。
“さあ、これでどう動くか楽しみだな”
送ってくるか、それとも泣きを入れてくるか・・・、
私は先ず100%後者に間違いないと確信していました。
すぐにでも訪れる勝利の瞬間を少し後に延ばす余裕が出来た私は、
先ず冷え切った体を温める為にゆっくりとお湯につかり、
お風呂から上がった後も当然届いていようメールの着信など確かめることもなく、
夜食とも言えるあまりにも遅い時間の晩御飯を空腹に耐えていた胃にかきこむ事により、
戦いに敗れて無くしていたすべての活力を取り戻した後、
‘さあ勝利を確認して、心地よい眠りに落ちようか’
と携帯電話の元に向っていきました。
メールを送ってから1時間経過した午前2時の事です。
メールを確認する為に二つ折りの携帯電話をワイン片手に開いてみました。
そこには、
・・・何も届いていませんでした。
“勝ったのか?負けたのか?”
このどちらとも判断し難い状況に、
しかし、あまりにも過酷な戦いであったが為に、
すぐに睡魔が襲ってきた私は、
ゆっくりとコタツのテーブルの上にワインを置き布団へと向うのでした。
“朝になってからが勝負だ”
私は、そうつぶやきながら深い眠りに落ちていきました。


そして、翌朝・・・・
目覚めた私は、真っ先にメールの確認をしました。
“来ている”
そうです。私の予想通りメールが届いていたのです。
“さあ、どっちだ”
私は焦る気持ちを何とか押さえ、
受信ボックスの横に記されている数字に注目しました
“2”
2件届いていると言う事です。
このような早朝から2件も届くなどメル友の少ない私には今までにない事です。
少なくとも1件は女からだろうと思い、受信ボックスを開けました。
そこには・・・、


0001 Y岡

0002 Y岡


“お前かい”


私は今日の夜の練習でこのタイミングが悪いY岡を徹底的にしごいてやろうと決意しました。
読んでみると2件ともどうでも良いような短い文章です。
内容を見ても2件別々に送る意味がわかりません。
1つの文章として十分成り立つ事をわざわざ2つの文章にわけて送って来たのでした。
しかし、その時の私にはある‘考え’がありましたので、
このY岡の愚行など、どうでも良かったのです。
もちろん女からメールが来なかったと言う事もです。
実の事を言うと昨日の1回目の女とのやり取りの最中に浮かんだ‘考え’なのですが、
その時はまだはっきりとした事が見えてきませんでした。
それが時間の経過と共に段々と膨らみ、
昨日家に着いた時には、ほぼその‘考え’は固まっていました。
ですから女からメールが送られて来ようが来まいが関係無かったのです。
私はこの‘考え’を実行する為に、ある二人にメールを送りました。

つづく


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2008.1.24 今日の練習

2008-01-24 23:40:46 | 一般部
朝から何度も雪がちらつく今日は、
夜になると更に冷え込んできました。
おまけに3日前に少し厄介な事に巻き込まれ、
それが原因で風邪気味と言う最悪なコンディションです。
その3日前に起きた厄介な事と言うのは、
このブログでも書いているのですが、
私の携帯にイタズラ電話がかかっきて、
多分道場のサイトに連絡先として私の携帯を載せていたので
それを見てイタズラ電話をかけてきたのではと考えています。
そして、今度は同じ人間の仕業だと思われるのですが、
道場のBBSにも変な書きこみをしてきました。
先ほど削除したのですが、
携帯にイタズラ電話をしてくるだけなら
私個人へのイタズラとして笑い話ですみますが、
道場のサイトにまでとなると
私個人ではなく道場へのイタズラととらえて行く必要がありますので
笑い話で済ますわけには行きません。
まあ、今後も続くかどうかはわかりませんが、
そんな事をして何が面白いのでしょうかね?
同一人物かどうかは私の推測ですが、
携帯には由美という名で、
BBSにはミユと言う名で卑猥な書きこみや電話をしてきます。
たぶん“ゆみ”と“みゆ”と逆さにしただけですので
同一人物でしょう。

話しは変わりますが、
昼間元道場生の助川君が店に遊びに来てくれ、
彼が今書こうとしている小説の話などで盛り上がり、
楽しい一時を過ごす事が出来ました。

それと3月2日に神戸市立王子スポーツセンターで
大会が開かれると言う連絡が来ていますので、
出場したいと言う人は申し出て下さい。
初級・中級者対象の大会だそうです。

今日はシャドー、ミット、コンビネーション、
補強運動、マススパーリングと言う内容でした。


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第3章:写メ

2008-01-24 17:00:57 | 一般部
私は、身も心も本当に冷えきってしまい、
もうポスティングなど切り上げて帰ってしまおうかと、
少し弱気になりかけていました。
しかし、よくよく考えてみるとこの勝負、
女の方から一方的にしかけてきたものです。
何故、何もしていない私が、
真面目だけが取柄で人様に恨まれる様な事などした事のないこの私が、
この様な理不尽な屈辱感を味わわなければならないのかと、
考えれば考えるほど腹が立ってきました。
私は根っからの格闘技者です。
その様に思い出すと、
格闘技者のプライドにかけても
勝負に負けたまま引き下がるような無様な真似だけは絶対に出来ないという思いが強くなり、
やがてその思いは私の全身を包み込み、
心の中には憎悪にも似た怒りが燃え滾ってくるのを感じるのでした。
“やられたらやり返せ”
私の頭の中ではその言葉が幾度となく繰り返し、
格闘技者としての私の血をたぎらすのでした。
こうなったら寒さなどこれっぽっちも感じられません。
“さあ、戦いの始まりだ”
私はそうつぶやくと、
これからどのようにして反撃すれば、
最終的に勝利を得る事が出来るのかと考えました。
しかし今私は崖っぷちに立たされた子羊です。
この首皮一枚残されたような状態から勝利を掴み取るには、
余程の戦略と行動力がないと難しいでしょう。
“これしかない”
私は、ここで本当に危険な賭けに出ることにしました。
一歩間違えればそれこそもう、これからの私の人生そのものが崩壊してしまいかねない大きな賭けです。
その賭けとは
‘私も写メを送り返してやる’
という、諸刃の剣とも言える大胆な行動です。
‘善は急げ’
早速私は行動に移りました。
“カシャ”
私は生まれて初めて自分の姿を携帯で撮ってみました。
しかし・・・、失敗です。
夜空の下、携帯で撮っても暗すぎて何が写っているのかさっぱりわかりません。
今度は近くにあるマンションの入口の明かりをバックに撮ってみました。
“カシャ”
・・・ダメです。
やはり明るさが足りません。
(後で知ったのですがメニュー画面で色々設定すれば少々の暗がりでも撮れるみたいなのです。
まだ試した事がありませんので、確かな情報かどうかはわかりませんが)
私はこの近くでどこか十分な明かりのあるところがないか考えました。
‘そうだコンビニがある’
と最初に思い浮かびましたが、コンビニでは人が多過ぎます。
そんなところで45才のおっさんが自分の姿を携帯で撮っていたら怪し過ぎます。
万が一知り合いにでも見られたら、
それこそもう戦う前に私の人生は終わってしまいます。
“待てよ、そう言えばこの近くに24時間営業しているセルフのガソリンスタンドがあったな”
私は、これは良い所を思いついたと、
嬉しさのあまりいつもより高速でマイチャリンコをこぎながらその場所に向いました。
そのガソリンスタンドが面した通りはそれほど大きくありません。
思ったとおり給油している車は一台だけです。
私はどこか写真を撮るのに適した場所がないかと探しました。
しかし適度な明るさがある場所は敷地の中だけです。
私はなるべく給油している車に気付かれない様、スタンドの入口に移動しました。
何とか明かりが届く場所で給油している車から死角になる場所に体を移動させながら、
まず一枚撮ることにしました。
しかし、ここでとんでもない異変が私の体を襲ったのです。
それは、この寒空の下に長時間体をさらしていたせいで、
指先の感覚が全くなくなっていたのです。
思うように指が動きません。
ここだと思いシャッターを押したつもりでも押せていないのです。
私は両手で携帯電話を持ち、震える手をもう一方の手で押さえながら何とか写真を撮ることに成功しました。
だが、やっとの事で撮り終えた写真があまりにも綺麗にはっきりと撮れている事に愕然としてしまいました。
私の撮りたかった写真はこんなものではありません。
私は外にいると言う事を、先ほどの戦いの最中、女に伝えています。
別に勝負に負けた時に、寒空の下いるという不利な状況だったからだ、
と言い訳する為に伝えたわけではありません。
対等な戦いをする為に私にも服を脱げと女が要求してきたからなのです。
根っからの京都人である私は物事をはっきり断ることが苦手です。
どうしても遠回しな言い方になってしまいます。
その時も私は外にいるからと、核心には触れずにただそれだけを伝えたのですが、
この女もそれ程どうしようもない悪たれ女というわけでは無かったみたいで、
その言葉だけで真の意味を理解し、それ以上無理な要求はしてきませんでした。
話しが逸れましたので元に戻しますが、私は外にいるというこの悪状況を上手く利用して、
少し暗いはっきりと顔が確認できない写真を送りつけてやろうとしていたのです。
いくら賭けに出たといっても負けを前提にした賭けではありません。
少しでも勝利する確率を上げる為にもここは緻密な計算の下に行動しなければならないと思い、
一応要求には応じるが、今の私の状況ではこれが(はっきり写っていない写真が)
限界だと少し弱気な態度を見せて相手の油断を誘いながら、
一気に攻勢に出るタイミングを計ろうとしていたのです。
私は気を取り直して、もう一枚写真をとる事にしました。
思い通りの写真を撮る為、私は少し暗い所に移動し、
なるべく顔が認識しにくい角度を探しながらシャッターを押しました。
しかし感覚が無くなった指先では上手く押せません。
押したつもりでいても押す事が出来なかったり、
押すつもりで無い所で押してしまったり、
何度も何度もチャレンジしますが一向に上手く撮れません。
それだけではなく、
携帯で自分を撮ると言う事は画面を反転させてその画面を確認しながら撮らないといけないのですが、
それが中々上手く扱えないのです。
合わせ鏡で思うように写したいところが写らないのと同じです。
寒さと思うように操作できない焦りで何度撮り直しをした事でしょう。
気が付けば丁度良い明るさを求めて私は道路から丸見えの場所で撮り続けると言う、
とても怪しげな行動を取っていたのです。
私の横をわざとスピードを緩めて通る車に気付いた時、
私はこの何とも言えない滑稽な動作が道行く車から丸見えだったと言う事に初めて気付いたのでした。
時計を見ると約10分もの間その場所で格闘していた事になります。
折角人目のつくコンビニを避けてこの場所を選んだのにと後悔しながら
知り合いに見られていない事を祈るしかありませんでした。
私は次が失敗しても成功しても最後の一枚だと決意し、
もう全く感覚の無い指先でシャッターを押しました。
出来上がりは、はっきり言って失敗です。
あまりにも私の顔がしっかりと写り過ぎているのです。
“もう良い”
思うようにいかない怒りから、私はやけっぱちになってしまいました。
その失敗作と言える写真をもう全く冷静さをなくした私は、
強引に女に送ってしまいました。

“これで良かったのだろうか?”
時間の経過と共に少し冷静さが戻ってきた私は
湧きあがってくる不安から少しでも逃れようと
目の前に現れるポストへ片っ端からチラシをまいて行くのでした。

つづく


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2008.1.23 今日の練習

2008-01-23 23:56:58 | 一般部
今日は、ミュージシャン刑部君と新人石田君の二人だけでした。
シャドー、ミットで体で温め、
パンチのカウンター、蹴りの防御、
マススパーリングという内容でした。


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第2章 MAIL

2008-01-23 19:07:45 | 一般部
私は、初めて心理戦で勝利したのだと少し浮かれ気分になりかけていたのが、
実は完璧な負け勝負だったと言うのに気付くまで、
そう長い時間はかかりませんでした。
“敗北”
それを実感してしまうと急に頭の中では
‘恐怖’
‘後悔’
‘悔しさ’
等様々な思いが交差しだし、
今どこに立っているのかさえわからなくなってしまいました。
いや、実際はそうではなく、今の現実を直視する事が出来ず、
ただ逃げたいと言う思いが先行し、
意識だけをこの空間から
‘逃避行’
させていたにすぎないのですが・・・。
しかし、そんな一時の現実からの逃避行も不意に私の手元で鳴る携帯電話の音で、
嫌が負うでも敗北と言うこの現実世界に引き戻されることになるのでした。
“ボ~ン”
Eメールとは違う、
Cメール独特のこの音。
私は何となくこの陰気臭い響きが好きになれません。
設定を変えれば良いのでしょうが、
携帯オンチな上、元来面倒くさがり屋の私は初期設定のままにしています。
この何とも言えない今の私の心を映し出したようなよどんだ音を発する携帯電話をゆっくりと開き、
私は恐る恐るCメールの受信ボックスの画面を開けてみました。
受信ボックスには先ほどの電話と同じ番号が記されています。
私はこのまま削除しようかと迷いながら、
もしかして犯人を知る手がかりが記されているのではという思いから、
意を決してメールを開いてみました。
「さっき電話した由美といいます。×××××@ezweb.ne.jpまでメール下さい」
と書かれていました。
この携帯電話という‘怪物’そう、今の私にはまさしく携帯電話は‘怪物’と呼べるものなのです。
若い道場生など頻繁にアドレスを変えては私のところに
「アドレスの変更をお願いします」
とメールしてきます。
友人の中には電話番号も2、3ヶ月毎に変え、
その都度電話番号とアドレスの変更をメールで知らせてくると言う強者がいるのですが、
その友人は携帯電話そのものを3台持っていますので、
どの携帯の番号が変更になったのか、さっぱりわからなくなってしまい、
今、3台登録されているのですが、いつもどの番号やアドレスに連絡すればいいのか悩んでしまいます。
要するに固定電話とは違いこの携帯電話という‘怪物’は、
簡単に番号もアドレスも変える事が出きるという、
私のような古い人間など一撃で仕留めてしまう爆弾を持っているのです。
“このアドレスは多分本物だろう”
私を弄ぶだけ弄んで、
もし私が危険な人物とわかれば、すぐにアドレスなど変えてしまえば良い、
そんな安易な気持ちからこんなにも簡単にアドレスを教えてきたのでしょう。
“お前の思うようにはさせない”
そうは思いましたが、
普段携帯電話の事など全く興味がない私には、
この‘怪物’から何か情報を引き出せるような知識も経験もありません。
固定電話なら番号から地域を特定する事も可能ですが、
携帯電話ではそれも出来ません。
“何か良い方法があるはず”
この現代の‘怪物’には、
以前息子が携帯電話にヘッドホンを繋ぎ音楽を聞いている姿を見て、
“気でも狂ったか?”
と、それまで携帯電話には通話とメールしか機能がないと思いこみ、
これまで私の教えた事しか出来ない、
いつまでたっても私には子供のままであり小さい時と同じように接してきた息子を
急に私の手の届かない遠い存在に感じさせられたという苦い経験があるのです。
まだまだ私はこの‘怪物’の事をほとんど知りません。
こんなにも毎日一つ屋根の下で一緒に暮らしているにもかかわらず。
“聞くは一時の恥じ、知らぬは一生の恥じ”
以前勤めていた会社の上司が良く使っていた言葉です。
“何を言うてるんじゃい、何でも聞きやがって、
2ちゃんねるなら皆から「ググレ」と祭り上げられるぞ、
チョットは自分で調べんかい”
と当時はこの言葉を良く使う上司をバカにしていたのですが、
何故か急にこの言葉を思いだし、
“誰かに聞かねばならない”
という衝動が湧き上がって来るのでした。
しかし、時計を見ると夜中の11時を過ぎています。
10分近く戦っていたようです。
私は少し後悔しました。
もう少し早くに勝負を切り上げていれば、この事を誰かに相談する事が出来たのに、と。
今の若者など夜中の11時など、まだまだこれからという感覚なのでしょうが、
いかんせん古い考えの持ち主です。
私より年配の方々から見れば40代など
‘何を若造が’
と言われるかも知れませんが、
昔‘新人類’と呼ばれた年代は私より少し下の年代です。
私は紛れもなく‘旧人類’なのです。
夜中の11時などに電話やメールをする事など私にとっては非常識極まりない‘愚行’なのです。
“どうしたものか”
と悩んでいる私の頭の中にふと一人の男の名前が浮かび上がりました。
“そうや、Y岡や”
あいつなら非常識と思われようが、迷惑と思われようが知ったことではありません。
しかし、ここで一つ大きな問題が・・・。
それは、私がY岡に直接この件に関して教えを請うなどと言う事を、
どうしても私のプライドが許してくれないのです。
多分、彼以外の人間であればたとえ年下であっても素直に聞くことができたでしょう。
しかし、彼だけにはどうしてもどうしてもそれが出来ない、いや、したくないのです。
私は暫く考えたあげく、大きな賭けに出たのです。
それは“今、こんな変な電話があったんや~、どうしよっかな?”
と軽い気持ちで、決して今の私の心境を悟られることがないようにメールを送ろうと。
そうすれば、おせっかいなY岡の事、
きっとY岡の方から勝手に色々アドバイスを送ってくれる事だろう。
そうしたら私は“そんなん相手にするわけないやろ~、”とおどけながら、
情報を引き出す手段をさりげなく手に入れることができるはずだと・・・。
“よし実行だ”
私は、決して今の弱気になった心を見透かされる事がないよう慎重に一言一言選びながら、
決して堅苦しくならない様に文章を作成し、
出来あがってからも文章がさりげない文章に仕上がっているか何度も何度も読み返し
“よし”
とつぶやきながら送信ボタンを押すのでした。
Y岡からの返信メールはいつもすぐ返ってきます。
しかもこちらから送るのを止めるまでメールのやり取りが永遠に続きます。
そんな彼の事、今回もすぐに返信されてくるだろうと待っていましたが、
風呂にでも入っているのか一向に返って来ません。
こんな時に限って本当に役に立たん男だ…、
こうなったら私一人の力で何とか打開していくしかありません。
“正々堂々と真正面から戦いを挑んでやる”
そう決意した私は
“さっき連絡もらった者です。本当に私の知らない人?”
と女にメールを送りつけてやりました。
するとすぐに
「メールありがとうございます。知らない人ですよ」
と返って来ました。
“ん?以外と普通だぞ”
私は、電話の様子からきっとメールも卑猥な言葉が並んでいるのかと想像していたのですが、
以外と常識のある文面に少々気が抜けたのと同時に
“よし、これならいける”
と思い、先ほどから考えていたある大胆な行動に移る事にしました。
“何してる人?写真は送れる?でも知らない人にいきなり写真は無理やろね?”
と少し挑発的な文章を送ってみたのでした。
いたずらならこれで終わるはずです。
そんな見ず知らずな人に顔写真と自分の事が特定される情報を簡単には送れるわけなどないはずです。
きっと女は、チョットした悪戯心でからかってやったら、
とんでもない変態男に当ってしまったと後悔しているに違いありません。
危険だと感じた女の方からこの勝負は降りるはずです。
そうすれば労せずして勝利が私の方に転がってくることになります。
5分も待って返信されて来なかったら私の勝ちだなと、
半ば勝利を確信していると、
“リリリリリン”
メール受信音が鳴り響きました。
“まさか”
私は心臓の高鳴りを抑えながら恐る恐る携帯電話を手に持ちました。
私の機種はメールが送られてくると一瞬相手の名前が表面の小さな画面に浮かび上がるというやつです。
そこに浮かび上がった文字は
【Y岡】
紛らわしい・・・。
本当にタイミングが悪い男です。
沸き起こる怒りを何とか押さえる事が出来たのは、もうそこまで来ている
“勝利”
のお陰です。
しかしその時又“リリリリリン”と携帯が鳴り響きました。
またY岡か、いい加減にしてくれと思いながら画面を確認した私は一瞬にして全身の血が引いていくのを感じました。
“あの女からだ”
震える手で、内容を確認してみると
「ピアノ教室のお手伝いしてます。あたしあんまり可愛くないけど写メ送るね。お兄さんの写メも見せてもらえますか?」
と言う文章と共に顔写真が送られて来ました。
その写真に写っている、可愛くもない、だからと言って全く見れないでもない、
本当に平凡な女の顔を見て、
私は、ますますこれからの戦い方がわからなくなってしまいました。
せめて、可愛いかそうでないかどちらかだったら、
どれだけこれからの戦いがやりやすかった事でしょうか。
左手に携帯を持ちながらまたもやその場を動けなくなった私は、
ふと右手にも何か持っている事に気付きました。
チラシです。
凍てつく寒さにほとんど感覚がなくなっていた私の手は、
右手にチラシを持っている事も今の今まで感じる事が出来ませんでした。
時計を見ると夜中の11時30分を過ぎています。
私はポスティングの途中だという事を思いだし、
まだ3分の1も配れていないチラシを先ず配り終える事が先決で女との勝負はその後だと、
下唇をぐっとかみ締め、マイチャリンコにまたがるのでした。

つづく


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2008.1.22 今日の練習

2008-01-22 21:46:52 | 一般部
今日来たのは、指導員の塚本と堀君の二名だけです。
塚本に堀君の指導を任せて、私は深夜営業の準備です。
今も、二人で熱のこもった練習中です。
と、書いていたら石井君がやって来ました。
火曜日に3人しか集まらないとは珍しい。


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第1章:着信アリ

2008-01-22 16:22:52 | 一般部
これからお話するのは昨夜私を襲った恐怖体験(実話)です。
昨日は本業の深夜予約も珍しく無く、
道場の後片付けが終わった後、
いつも通り少し家への道をそれ、
ポスティングをしながら帰宅していた夜中の11時前の事です。

冷え込む夜空の下、
マイ・チャリンコに乗りながら
一軒一軒チラシをまいていた私のズボンのポケットに入れている携帯電話が急に鳴り響きました。
知らない番号です。
店の電話を転送で携帯へ繋がる様に設定していますので
“この時間から予約か”
と少し早めに店を後にした事を少々後悔しながら私は
“はい、×××です”
と店の名前を告げながら電話に出ました。
私の本業は深夜に関しては完全予約制として24時まで対応しています。
一応最終予約受付は22時30分となっていますが、
この時間から予約が入る事は珍しい事ではありません。
しかし、どうも電話の向こうの様子が変です。
少し舌足らずのくぐもった女性の声で
「あの~もしもし×××、もしもし×××」
と“もしもし”の後の言葉が聞き取れません。
いや、実際は聞き取れないのではなく、
店の予約の電話だと思いこんでいた、
寒さに凍え麻痺しきった私の脳では、その予想だにしなかった、
“もしもし”
の後に続く言葉を理解できなかったと言うほうが正しいでしょう。
私は、意を決してもう一度
“もしもし、×××ですが、どのような御用件でしょうか?”
と高鳴る鼓動を抑えながら聞きなおしました。
すると、相変わらず舌足らずな声で
「あの~掲示板を見たのですが・・・」
と言う返事が返ってきます。
“ん?掲示板??”
道場のHPには掲示板を設けています。
道場の電話受付も店の番号と同じですので、
“もしかして道場の問い合わせ?”
“しかし、こんな時間から?”
“しかも女性が?”
等と様々な疑問が頭の中をめぐります。
疑問を整理する事もできず戸惑う私に追い討ちをかけるように
電話の向こうから信じられない言葉が発せられました。
「あの~掲示板にあなたの番号が書きこまれていたのですが、
ここに電話すると私のオ×ニーの声を聞いて頂けると・・・」
“何ですと?”
私はもう何が何やらさっぱり訳が分かりません。
寒空の冷え込む中でポスティングをしている最中、
見も心も凍えきり私の脳は停止寸全状態です。
今まで経験した事がない恐怖から逃れ様と必死に脳の活性化を試みましたが、
それも虚しくあまりの出来事に私の脳は完全停止してしまいました。
ここからもう頼りになるのは私の自己防衛本能だけです。
無意識の自己防衛本能、それとも所謂“無の境地”と言うやつでしょうか。
その時、“はは~ん、これは誰かのいたずらやな。”
“こっちが本気で怒ったりしたら、
「アホや~、何を真剣に怒ってんねん」
とか言いながら誰か知ってるヤツが出てくるという例のアレやな”
と、このかってない窮地にしかも思考能力0の状態にも関わらず、
的確な答えが導き出せる、
この
“無の境地”
に達する事が出きるとは、つくづく武道をやっていて良かったと、
この時ほど感じた事はありませんでした。
“よし。ここは辛抱や、切れたらアカン”
先にじれて切れてしまった方が負けだと思い、
私は適当に相手に合わせながら
“良いよ。聞いててあげるよ”
と先ずは先手を打ってしかけてみました。
この間にも私の手はポスティングを休みなく続け、
頭の中では
“こんな事をするヤツは、最近ブログでいじっているあいつかな?
いや、あいつか。
もしかしたら道場とは全然関係ない、いつもふざけた事をしかけてくるアイツか?”
と、私はこの極限状態にも関わらずポスティングをしながら電話で応対し、
更には犯人の予想をする、
この全く合い入れない三つの動作をこなすという離れ業をやってのけていたのでした。
すると、敵も中々戦い慣れをしているらしく、少しも動じることなく
「じゃ、聞いてて。はあ、はあ、あああ・・・」
とあえぎ始めたのでした。
“いたずらにしてはやりすぎ”
と思いつつも、
“まだや、まだ辛抱や”
と言い聞かせ、ポスティングを続けるのでした。
しかし、ここで私はある重要な事に気が付きました。
元来私は心理戦というのが、とても苦手なのです。
肉体的攻撃には少々の事では動じませんが、
一旦心理戦になると、今まで勝った記憶がありません。
相手の裏をかいたつもりがその裏をかかれ、
もう一つ裏をかいたつもりでも更に裏をかかれると言うのがいつものパターンなのです。
おまけに短気な性格。
こう言う心理戦で膠着状態になった時、どうしても我慢しきれなくなってしまうのです。
わかりやすく言えば、
よくドラマや映画の人質に取られるシーンで、
極度の緊張状態に我慢しきれず、
逃げ出すか犯人に向って行き真っ先に殺される、
というのがありますが、
まさしく私にはそういうところがあるのです。
‘焦りすぎ’
以前勤めていた会社の先輩方からも、
根回しをせず急いで行動に走る私に対して、
良く言われた言葉です。
しかし、敵はこの女だけではありません。
1月の深夜のすべてを凍らせてしまう冷たい風。
私は意識が朦朧としながらも粘り続けました。
だが、終焉の時は音もなく突然やってきました。
「あん、いっちゃった。」

“(この勝負)勝ったのか・・・?”

私は何も解決されていない事には気付かず、
ただこの緊張感から開放されるというだけで何か勝負に勝ったような錯覚に陥っていました。
その女は続いて
「ねえ、おに-さんのアドレスを教えて」
と言ってきました。
“そんなもん教えられるかい”
とすぐさま反撃に転じましたが、
「じゃあ、おに-さんの携帯はどこの会社?」
と逆にカウンター攻撃を食らってしまいました。
“???”
私はこの質問の意味するところが全くわかりませんでした。
私は昔から結構PCオタクとしてならしてきただけに、
PCのことは少々詳しいと自負しています。
しかし携帯となると去年までツーカーを使っていたぐらいで、
ましてやメールはスカイメールのみ。
携帯でメールに画像を添付するという事が出きるようになったのは、
つい最近の事なのです。
今だかって携帯でネットにつないだ事もない携帯オンチな私には、
とうてい何を意味するのかなど理解できるわけがありません。
私はようやく開放される安堵感から少し気がゆるんでいたのでしょう、
つい
“au”
と答えてしまいました。
まさかこれが致命傷になるとは思いもよらずに。
「じゃあ、私と同じだからCメールで私のアドレス送るね」
と言い一方的に電話を切る女に、
私は何が起こったのか訳がわからず、
ただ呆然と寒空の中、立ち尽くすのでした。

つづく


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2008.1.21 今日の練習

2008-01-21 22:12:41 | 一般部
今日は何となくついてない。
朝、道場のトイレの棚にトイレットペーパーを並べていると、
置き損ねた1個が便器の中に落ちてしまった。
慌てて拾い上げたが3分の1が濡れてしまっている。
少し変形したトイレットペーパーを眺めていると
“乾かしたら何とかなるかな?”
と一瞬頭を過ったが、
冷静に考えたら
いくら乾いても
一度便器の中にはまったトイレットペーパーなど使えるわけが無い。

“う~ん、朝からついてない”

寒さのせいか客も無いまま昼を迎え、
この寒さでいつもより冷えた家から持参の弁当を食べていると
“おしゃべり番長”山岡からメールが・・・。
山岡からのメールとわかり
弁当が不味くなるから消去しようかと一瞬悩みながらもメールを開けてみると、
やはりどうでも良いような内容のメールだ。
適当に返事するついでに、
“今日は練習に来るの?”
とメールを送ってみると、即
“行きます”
とメールが帰ってきた。

“う~ん、やっぱり今日はついてない”

しかも、しかも、一番に道場に来やがった。
今日は本当に厄日だ。

という事で気の乗らないまま今日の練習を迎えたわけだが、
他のメンバーの顔を見ていると段々とやる気と元気が出てきた。

“よし、今日もしごいたろ”

練習内容は
シャドー、ミット、コンビネーション、補強運動、
首相撲、スパーリングといつも通りだが、
取りあえず体力の無い練習生達の為に補強運動の時間を多めに割いた。


にほんブログ村 空手
人気ブログランキングへ
ブログランキング
チャンプでGoGo!ランキング

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする