暦の上では啓蟄と言うのに
朝から変なお天気
雨が降ったりやんだり
曇ったり晴れたり
これじゃ春を待ち焦がれている虫たちも
出たくないだろうな。
そう言えば先日、道を歩いていると
脇道の物陰から視線を感じた。
歩調を緩めその方向を見ると
白い猫が私をじっと見ている。
その場にしゃがみこみ
手を差し出してみたが
野良猫なのか警戒した様子だった。
そんな猫を見ながら思い出したのは
遠い昔、
一度だけ猫を飼っていたこと。
綺麗な青い眼をした白い雄猫で
甘えん坊さんで頭のいい子。
家に帰ればいつも足元から離れず
じゃれついてくる。
抱っこしてとせがんでくる。
撫でてあげると気持ちよさそうに
喉を鳴らす。
立ったまま胸を叩きながら
「ここにおいでー」と声をかけると
床からジャンプして
私の胸に飛び込んでくる可愛い子だった。
いつの日か、
私の母が小さな子犬を連れて帰り
その日から犬と猫の共存生活となった。
家族みんなが、まだ手のかかる子犬に
かまってばかりいると
「そうか、僕への愛情は消えちゃったんだね」
と思ったのか、ある日突然姿を消した。
事故にあってはいないだろうか?
お腹がすいていないだろうか?と、
来る日も来る日も近所を探したが
どこにも彼の姿はなかった。
しかし、数か月後
ゴミをあさるボロ雑巾のようになった彼を
見つけ、抱き上げて家に連れて帰った。
暖かいお風呂に入れてあげた。
大好きなキャット缶をあげた。
もう何処にも行かないでと、
彼を抱きしめてあげた。
それでも
「僕のいる場所はここには無い」と
思ったのか、家を去って行きました。
あの時、届かなかった私の思いを
伝えることができるのならば
あなたへの愛は今も消えてないよ
と彼に伝えたい。
人は心にある、この思いを
言葉にして、文字にして
伝達することが出来る。
なのに言葉にしないのは、
声にしないのは、
その余計なひとことで
相手に嫌われるのではないかと思い
呑みこむのです。
と、言いながら
いつも余計な一言で
後悔をする私。
ばかだね