
「あっ!」
出すつもりのない声が
無意識に出た。
周囲の人たちが私に注目した。
私は、その視線に気が付かないふりで
何事もなかったようにキーボードを叩いた。
資料作成で半日近くを費やし
そのファイルの保存に失敗した。
つまり白紙状態。
空白。
無。
私の頭の中は真っ白
お先真っ暗。
そういえば
お先真っ暗の中
遠い昔、船乗りたちは
北の夜空に輝く
星を頼りに海を渡っていた。
輝く星を見るのなら
空気の澄んだ
寒い冬の夜が一番よく見えるという。
人の心も
凍えるような寒さの中
闇でおおわれた時だからこそ
大切な何かが見えるのかなと思う。
暗い悲しみは
いま、私がどこに立っているのか
何を大切にしていくべきなのか
何を優先すべきか
そんな手がかりを
示しているのかもしれない。