Turedure Lilax Diary

「徒然」―何もする事が無くて、どう時間を過ごしたらよいのかと思うこと、様子。(三省堂 新明解国語辞典)

あらためて父に感謝

2013-01-18 22:16:00 | 本棚
「オリンピックの身代金(上・下)」奥田英朗(角川文庫)

昭和39年 東京オリンピック。
日本の歴史に残る華やかな祭典を”人質”にした事件の物語。
東大大学院生の島崎国夫は、急死した兄に代わって土木工事の孫請け会社でアルバイトを始める。想像を絶する過酷な労働環境の下、労働者たちは博打、女、薬に逃げ場を求める。恐ろしいほどの勢いで肉体と思想が逞しくなってゆく国夫。ついには国家を相手に一大事件を企てる。
大学の同級生、国夫に想いを寄せる古本屋の娘、国夫を追う刑事。それぞれの視点からの各自の正義が絶妙に絡み合う。


奥田英朗といえばやはり「空中ブランコ」なのですが、エッセイといい小説といい書くものによって作風がまったく違うのがこの人の魅力だと思います。
よくぞここまで綿密にねちっこく調べ上げたな。巻末に載っている参考文献の量にビックリする。しかも”主要”と言うことはこれが全てではないと言うことで。
ところどころ東北弁が残念なところはこの際大目に見よう。頭の中で台詞を正調東北弁に変換して読み進める。圧倒的なリアリティ。東北の貧しい農村独特の陰影が浮かび上がる。
祝福された街・東京と、置いてきぼりにされた田舎。

平成32年のオリンピック招致に向けて関係者が気勢を上げている今、50年近く経っているにもかかわらず、その格差、関係はいまだに根深く残っているのです。




舞台のひとつである工事現場と、出稼ぎ労働者が寝泊りする飯場。

実家の父のことを思う。
父は十数年前までは、農閑期である冬は出稼ぎに出ていました。国夫とは同年代。オリンピック開催に向けての何某かの工事に関わっていたかもしれません。
約半年家族と離れて働き、春の農繁期に帰ってくる。兄妹でよく飯場宛てに手紙を書いて送ったのを懐かしく思い出します。
子供なりに父のことを尊敬し、感謝もしていましたが、この作品中での労働環境の過酷さはあまりにもあまりでした。

今日実家から宅配便で野菜が届きました。
母ではなく、父が支度をして送ってくれたらしい。
いつも気にかけてくれてありがとう。
辛い労働に耐えて育ててくれてありがとう。

本当に 本当にありがとう。



さて、長い上下巻をやっと読み終えたぞ。
「とんび」再読しよう!
コメント (2)
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