日本政府が放射線の安全基準のよりどころとしているのはICRP(国際放射線防護委員会)の基準です。しかし、この基準は原子力政策を推進するために科学的根拠もなく決められたこと、ICRPは影響が少ないとしてきたが低線量の被ばくでもリスクが高いことをこの番組は明らかにしています。
※追跡!真相ファイル <低線量被ばく―揺らぐ国際基準>
http://www.dailymotion.com/video/xnb9h8_yyyyyy-yyyyyyy-yy-yyyyyy_news
<低線量の被ばくでもリスクは高い>
スウェーデンにおけるチェルノブイリ事故で降り注いだ放射能は、年間0.2mSvで、ICRPの安全基準年間1mSvの5分の1でした。しかし、ガンが事故前に比べ34%増えていたのです。そして、トンデル博士が行った110万人の住民の調査では、ガン発生者の10年間の積算被ばく量は10mSv以下でした。つまり、ICRPがほとんど影響がないとしている低線量の被ばくでもガンのリスクは増加していたのです。外部被ばくだけでなく食品による内部被ばくの影響があるとトンデル博士は言っています。
※(参考)チェルノブイリ原発事故後のセシウム汚染地帯でがんの過剰発生が確認されている(美浜の会)
<引き下げられた基準>
ICRP基準の根拠となったのは広島長崎の原爆のデータです。1000mSvで5%ガンのリスクが増えるとされていました。このデータが1980年代後半、日米の合同調査で実際は半分の500mSvの被ばく量だったことが分かったのです。リスクは2倍になるにもかかわらず、ICRPは低線量の被ばくの影響はきわめて少ないと半分のままにしていました。
なぜ半分のままにしたのでしょうか。基準作りに携わった委員17人中13人が、核開発や原子力政策を担う官庁とその研究所出身者の委員で、原子力政策を推進する委員が大半を占めていました。また米エネルギー省は、低線量のリスクが引き上げられれば原子力施設の安全対策に莫大な費用がかかるとして、ICRPに低線量にリスクを引き上げないよう要望していました。原発や核関連施設への配慮からだったのです。
ICRPは、原発で働く労働者の被ばく基準を半分から更に20%引き下げた基準にしました。労働者がより多く被ばくを許容できるようにするためなのです。人の命よりも経済を優先して基準がきめられていました。そしてこの基準は驚くべきことに「科学的根拠はなかったがICRPの判断で決めた」というのです。
ICRPの予算は原子力を推進する国々の政府から出されています。日本も原子力を推進する日本原子力開発機構が出しています。ICRPは科学的な情報を提示するのではなく、どこまでを許容するかしないかを政治的に判断する機関だといえるのではないでしょうか。
米シカゴでは原発から放出された放射性トリチウムの影響で子どもたちが難病やガンで亡くなっています。脳腫瘍を患ったセーラーさんの親は、ガンが原発と関係があることを証明するため、過去20年間全住民1200万人のデータを州から取り寄せ解析しました。その結果、原発周辺の地域だけが、脳腫瘍や白血病が30%以上も増加、小児ガンは2倍に増えていたことを突き止めました。しかし政府は、被曝は微量で健康に影響はないとし、どれだけ被ばくした測ることさえもしないでいるのです。
セーラーさんは「科学者には、私たちが単なる統計の数値でないこと知ってほしい。たくさんの苦しみを味わいました。誰にも同じ思いをしれほしくはありません。」と訴えています。
3.11を経験した私たちは、セーラーさんの言葉にどのように答えていくことができるのでしょうか。まずは原発の運転再開を止めること。そして原発の無い社会にすることがその答えになると思います。(TOM)