かもがわブックレット
司法が認定した日本軍「慰安婦」―被害・加害事実は消せない!
坪川 宏子 大森 典子【編著】かもがわ出版 (2011/12/20 出版)
これまで争われた全10件の「慰安婦」裁判のうち8件で認定された「背景事実と被害事実」を網羅している。賠償請求は棄却されているが、「慰安婦」被害の事実そのものは認められている。
以下の認定がある。
「日本人の軍人に、手足をつかまれてとらえられ、トラックと汽車を乗り継がされ、オオテサンの部隊の慰安所に連れて行かれた。慰安所では性行為を強制され続けたが、一晩に30~40人から時には50人もの軍人の相手をさせられた。」(韓国遺族会裁判 東京高裁判決 2003年7月22日)
「「・・・腹一杯食べられるところにつれていってやる」と声をかけられた。・・・同旅館の部屋は、外から鍵がかけられ、同女と同じような年齢の娘たちが14、5人おり、いずれもどこに何のために連れて行かれるのか分からず泣いていた。」(関釜裁判 山口地裁下関支部判決 1998年4月27日)
本書では、「事実認定のまとめ」として、拉致及び拉致に近い強制連行は31人(韓国6、中国24、オランダ1)、甘言による詐欺4人(韓国4)としている。
“朝鮮においても、「手足を捕まえられて捕らえられ」とか「断ったものの、強制的に」など正に強制連行が認定されています。また、一見、甘言タイプでも、判決の中にも、旅館に集められた途端、「部屋には外から鍵」とか、「下宿屋に監禁」と記されていますが、私(筆者)も、韓国の被害者から、騙されて応じ、列車に乗せられた途端に見張りが付き、泣こうが喚こうが正真正銘の強制連行だったという話を複数聞いています。植民地では、大騒ぎになる拉致よりは、良い仕事があると騙す方が簡単で、連れ出したら即強制という手口が容易に推定できます。”
拉致ではなく甘言・詐欺をつかったのは、そちらの方が連行が圧倒的にやりやすかっただけだ。それでもいきなり拉致するという形態はあった。
問題は「拉致」か「甘言」かではない。植民地支配下で人々がどのような過酷な状況におかれていたのか、そして強制連行された先の「慰安所」がいかなるものだったのか、司法が認定した事実を直視すべきである。
(ハンマー)