1/31のリブインピース@カフェで議論された、来年度の軍事費について、もう少し詳しく書きます。
(by ウナイ)
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来年度予算案における軍事費は5兆541億円。今年度比1・5%増で、史上初めて5兆円を突破します。国の財政健全化計画では、社会保障費を除く政策予算の伸びを今後3年で計1千億円に抑えるとしていますが、その大半を16年度の軍事費の伸びだけで占めるという、突出した優遇ぶりです。
来年度予算案は、「戦争法」成立後初の予算編成で、そこにおける軍事費には、当然そのことが反映されています。しかし、調達する兵器と数は、2013年12月に閣議決定された「中期防衛力整備計画」によって、2014~18年度の5年間の計画が既に策定されています。各年度の軍事費による兵器の調達は、中期防による調達計画を振り分けたものです。来年度はその3年目です。したがって、大枠は戦争法成立前に決定されていたことになります。
では、来年度の軍事費は戦争法以前の古い計画に基づいたものなのでしょうか? もちろんそんなことはありません。むしろ中期防の方が、戦争法を先取りした調達計画であったと言えます。
例えば、来年度予算で、1機分の機体構成品など87 億円が計上されている新型輸送機C2と、259億円かけて36両を調達する機動戦闘車があります。自衛隊は戦車を空輸する能力は持ちませんが、C2は機動戦闘車を積み込んで海外へ輸送することができるように設計された機体です。これらについて、中期防では「島嶼部に対する攻撃への対応」と位置づけられています。しかし、「尖閣諸島」のような狭く、ほとんど平地がない場所に、こんな重装備の兵器は全く適しません。本来の目的は本格的な海外派兵に他ならないのです。戦争法が施行されると、本来の目的が大手を振って語られることになるでしょう。
その他、来年度の軍事費で目立つのは、やはり中国を包囲し、場合によっては戦争も辞さない態勢を作るために、必要な兵器をそろえることです。「周辺海空域における安全確保」、「島嶼部に対する攻撃への対応」と称して、表のような兵器の調達、部隊の整備を行います。これらの兵器によって、制空権・制海権を確保し、米空母機動部隊を中心とする米軍の盾となって中国と対峙するのが自衛隊の役割です。戦争法成立によりKC46Aは米軍機への給油も担うことになります。F15戦闘機は、那覇(沖縄県)や新田原(宮崎県)など南方に重点を置き、配備を見直します。
地上部隊では、15年度末までに与那国島(沖縄県)に約150人の沿岸監視部隊を配備することが決まっており、来年度予算でも施設整備に55億円がつけられています。さらに18年度までに、宮古島(同)に7~800人、奄美大島(鹿児島県)に約550人の警備部隊や地対艦・地対空ミサイルの部隊を配備する計画で、来年度予算では、両島への部隊配備費(195億円)が計上されています。これらは、中国の艦艇・潜水艦が通る海峡を封鎖するための戦力です。
兵器調達代金の大半は、再来年度以降の予算で支払われる後年度負担に回されます。来年度の新規の後年度負担は2兆2875億円です。来年度の軍事費5兆円から人件費や燃料代などを除き、兵器調達に実質的に投入される額は1兆7000億円程度ですが、新たに派生する後年度負担がこの額を5000億円も上回っているということは、今後兵器調達に費やす額をそこまで増やすことを決めているようなものです。今後、現在のペースを上回って軍事費を増やしていくことを前提としているのです。
沖縄県名護市の辺野古新基地建設関連経費には、15年度と同規模の1707億円(契約ベース)をつけ、新基地建設を強行する姿勢を鮮明にしています。また、地域を分断するための、辺野古周辺地区(久辺3区)への直接補助金7800万円を計上し、金額も倍増させています。
米軍へも至れり尽くせりです。在日米軍駐留経費の日本側負担(「思いやり予算」)は21億円増の1920億円。年末の日米交渉で、16~20年度の5年間の「思いやり予算」を9465億円に増額することで合意しました。1年あたり1893億円となりますが、来年度はそれをも上回ります。
安倍政権による軍事最優先の政策は、人々の生活を圧迫します。安倍政権の下で、激しい「生活保護バッシング」が吹き荒れ、各種扶助の切り下げが強行されたのは、記憶に新しいところです。しかし「不正受給」とされたのは、最多の12年度でも年間190億円程度(しかもその多くは「不正」とは言いがたい)です。それに比べ軍事費5兆円の何と巨額なことでしょうか。オスプレイ2機で「不正受給」分を上回ってしまいます。戦争の危険を著しく高め、その上生活を脅かす軍事費の大幅削減を要求しましょう。