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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

NHK特集「シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円」から見えてくるもの

2012-09-24 | 本・番組・映画など

 NHKで9月9日放送された「シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円」。 

※シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円http://www.dailymotion.com/video/xtgdwr_yyyyyyyy-yyyyyy-yy-yyyyyyyy_news

 

 沖縄国頭村の国道建設予算が、東日本大震災「復興予算」から出ているという信じがたい場面から番組は始まる。

 被災地の復旧・復興のためと称して計上された「復興予算」(現在総計19兆円)が、全く被災地とは関係のない事業--北海道の刑務所での職業訓練、反捕鯨団体対策費、国立競技場の改修費などに流用されている。いや、流用ではない。堂々と「復興予算」として計上されているのだ。NHKが500を超える事業を検証した結果、「被災地と関係なし」とされた事業は205にも登り、2兆円を超える。有識者が慎重に、少しでも被災地と関係のありそうな事業はカウントしなかった結果でそうなのである。

 中には、これまでの継続的にやられていた事業が、「地震対策」、「被災地視察」などの名目が入っただけで、今年から「復興予算」で支出されるという悪質なものまである。「もらわにゃ損」とばかりに、官僚たちが従来の事業をむりやり被災地と結びつけて予算ぶんどり競争に血道をあげているのである。 

 他方で、被災地が立ち直るのに喫緊に必要な予算が切り捨てられている。経産省の地域経済復興のための「グループ補助金」。たとえば岩手県向けの150億円の予算に、255億円分の申し込みが殺到し、半分が切り捨てられた。

 厚生労働省の復興予算(医療分野)の地域医療再構築事業は720億円の予算が計上されているが、これは中長期的な医療体制の再構築をめざすもので、今まさに必要な医師の確保や医療施設の復旧には使われない。目の前の被災者に必要な地域の診療所の修理などに使われる「医療施設等災害復旧費補助金」はわずか160億円に過ぎない。

  野田首相は、19日の報道ステーションで「横流し」を認めた上で、「阪神大震災の時もそうだった」「すべて横流ししているわけではない」などと開き直っている。

※復興予算の横流し 野田認める 2012 9 19(報道ステーション)http://www.youtube.com/watch?v=JEoqHbgz1uM&feature=plcp 

 被災者を切り捨て置き去りにし、震災と無関係の企業や団体が「復興予算」を奪っていく日本とはどのような社会なのか。国民をだまして増税しそれを平気で無関係の事業に配分し開き直る政権とは、だれのための何のための政府なのか。われわれの社会はどういう社会であるべきなのか。番組は問うている。(トン) 

[以下番組紹介] 

〈被災地に以外に使われる復興予算〉

  東日本大震災の復興予算は2011年5月の1次補正予算から始まり、2次補正1.9兆円、3次補正9.2兆円、2012年度予算で3.8兆円の総額19兆円と災害予算としてはかつてない大規模予算となっている。財源の半分以上にあたる10.5兆円は所得税や住民税などの増税でまかなわれることになる。所得税は納税額に2.1%が来年から25年間上乗せされることになっている。「被災地の復興のためならならば」と増税にも納得した人も少なくなかった。しかしその予算の使い道は知られていない。

  この番組はその復興予算を徹底追跡したものだ。特に一番多い予算である3次補正予算9.2兆円を検証している。

  緊急的な1次・2次補正と違い、3次補正予算は被災地の生活再建のための本格的な復興予算と位置づけられている。しかし、直接被害を受けた地域での事業でなくても予算が使われている実態が明らかになっていく。なぜ直接被害を受けた地域でなくても復興予算が使われているのか。その根拠となったのが、2011年7月に政府が決定した「東日本大震災からの復興の基本方針」だ。そこには「活力ある日本全体の再生」とある。ことによって被災地以外の事業にも予算が使われることが可能になったのだ。

 3次補正予算9兆2千億円のうち全国や被災地以外を対象にした事業に約2兆4,500億円、全体の4/1も使われている。そこでは、復興予算という飴にアリが群がるように各省庁による予算の分捕り合戦がおこなわれていた。 

●経済産業省 

・国内立地補助金 約3,000億円。

  経産省の予算の中で一番多いものだ。国内立地補助金が使えるのは、成長分野の産業で被災地への波及効果があることが条件となっている。

  この補助金で岐阜県関市にあるコンタクトレンズメーカーが工場の増設工事をおこなっている。このメーカーは被災地の仙台などに販売店がある。岐阜の工場増設で生産が増えることにより売上が伸びれば将来、被災地の販売店の従業員を増員する可能性がある。これが「被災地への波及効果」としている。

  立地補助金の認可件数は全国で510件にもなる。しかし、震災の被害が大きかった宮城・岩手・福島の3県は30件と1割もなく、9割以上が他の地域へ投入されていた。

  経産省経済産業政策課 広瀬直課長は「数年かけて被災地との取引もでてくる」「被災地への経済効果そのもの自身を定量的に把握するのは難しい」「効果が上がっていくことによって、日本経済全体の再生と被災地復興に効果が出てくる」

 ・低酸素社会を実現する革新的融合 15億9800万円

 電気自動車の燃料電池の素材を開発する補助金が、震災後、省エネや資源対策が課題になったためとして経産省所管の独立行政法人に交付された。

●法務省

・被災地域における再販防止施策の充実強化 2800万円

 北海道と川越にある刑務所で受刑者に行う職業訓練を拡大する。将来がれき撤去などの復興作業を担える人材の育成するため

●公安調査庁

・被災地の等における治安確保のための基盤強化 2800万円

  テロ対策・分析用車両・無線機の整備。震災後、社会不安に乗じて過激派の勢力が拡大しているとして車14台などにあてられた。

●文部科学省

・国立競技場の補修費 3億3000万円

 利用者の安全確保が目的で、震災後の「減災」の考えにかなうとされている。

●農林水産省

・反捕鯨団体対策など 22億8400万円

  南極近くで行われる調査捕鯨が安全に行われることがひいては被災地の水産業の復旧に役立つとされている

また、これまで別の予算で行われていた事業が復興予算で行われていたケースもあった。

●国土交通省

  沖縄県国頭村で行われている1.4kmの道路の防波堤や斜面を補強する工事に7億円の予算の内5億円が復興予算から出ていた。8年前から大雨や台風対策として通常の予算で行われてきた工事に今年は地震対策という名目が付け加えられたことにより復興予算が使われていた。国交省は「全国の防災対策としてまだ手当てされていないところで実施している」としている。

●外務省

・アジア大洋州地域及び北米地域青年交流(通称 絆強化プロジェクト) 72億4700万円

 よく似たプロジェクトが2012年3月に終了しているが、対象をアメリカなども加え被災地の現状を見てもらい日本への理解を深めてもらうためとしている。しかし、被災地での活動を2日間入れているだけで、ほとんどが京都や大阪などの観光に当てられている。旅費や食費は全額日本政府の負担でまかなわれている。年間1万人招待する予定だという。「手法、アプローチは似ているが目的が違う」というこことで復興予算が使われている。

  復興や地震対策、減災との名目さえ付ければ復興にはなんの関係もない事業にさえも復興予算として認められてしまっている実態が明らかになった。国の担当者は「ごく一部に復興との関係に疑問が生じる事業があるのは否めない」といっているがこれがごく一部とは決していえないのではないかと思う。

〈被災地に届かない復興予算〉

  国の担当者は「被災者には十分過ぎるほど予算を配分しているつもりだ」と言っているが本当に被災地に復興予算が十分過ぎるほど届いていると言えるのだろうか。その実態はこうだ。

●経産省 グループ補助金 約2000億円

  被災の規模に応じて各県に配分されている。グループで再建計画を立て地域全体の再建に役立つとされると事業費の4/3まで補助金が出る仕組みになっている。これが約2000億円、全国の事業に配分される「立地補助金」3000億円の2/3しかない。しかも、岩手・宮城・福島の3県で4,525件の申請数に対し2,704件が認可されなかった。申請件数の約6割りが認められなかったことになる。経産省はこれほどのニーズがあると考えられていなかったとしている。

  岩手県では150億円の予算に255億円(申請数929件)と予算額を超える申請のため優先順位をつけざるを得ない状況で、水産加工グループや建設業が優先された。水産加工工場が建設されれば雇用が確保され、また関連企業への波及効果の期待が大きいからという。そのため商店などの雇用が拡大することが少ない事業には予算を回すことができない状況で、申請しても見送られるケースが出ている。県の職員は「とても現在の予算では間に合いませんということで国に要望しています」といっている。

●厚生労働省

・地域医療再構事業 720億円

 厚生労働省の医療分野では一番多い予算額だが、中長期的な医療復興目的に使われるため民間の医療機関には使われることはない。

・医療施設等災害復旧費補助金 約160億円

  被災した医療機関の復旧を支援するものだが、その対象は公立病院が中心で民間の医療機関は一部にとどまり補助率も低くなっている。

  気仙沼市では大規模半壊や全壊した医療機関は21施設にものぼるが、震災前のように復旧した医療機関は7施設だけだ。ある民間医療者は「補助金があると期待したが、それをあてにしていてはやってられない」と約2億円もの借金をして医院を再開した。

  その人の「こういう田舎は捨てられているかもしれないと思うときがある」との言葉が胸に突き刺ささる。

  復興予算は被災地の復興の担い手となるべき一人一人に最優先に使われるべきものだ。それが被災地以外では数々の事業が認められている一方で、商店のグループ補助金が予算の制約で認められなかったり、民間の医療機関に十分な再建費用が届いていない現実がこの番組を通して良く分かった。


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