『ルポ 良心と義務--「日の丸・君が代」に抗う人びと』(田中伸尚著 岩波新書 2012年4月20日発行)
表題どおり、大阪をはじめ全国の「日の丸・君が代」と闘う人々を取材し、その中で「日の丸・君が代」攻撃の歴史から、現局面の特徴を明らかにしている。
それは一言で言うと、教職員に強制する段階から、子どもへ強制する段階へと入っているということだ。「序章 歌わせられる子どもたち」で始まる。
大阪市内の小学校教員の言葉「大阪市内の現場に限っていえば、もう不起立というのは終わっているんです。僕らを含めても無視できる数で、式場から不起立者を外してしまえば済むんです。むしろ子どもたちにどう歌わせるかを考えているんです。」
名作『歌わせたい男たち』を書いた永井愛も“「日の丸・君が代」の問題を、「職務命令違反」というルールの問題、処分する側とされる側の争いの問題にすり替え、当事者以外は関係ないかのようされてしまっている。”と異常さを語る。
この問題を教育の問題として、子どもたちの問題としてとらえること、“「日の丸・君が代」不起立闘争が一部の特異な活動家によるもの”といった誤解を解き、市民・保護者が自分たち自身の問題、社会のあり方の問題という認識を広げ、関心を高めていく必要を改めて感じる。
[目次]
序章 歌わせられる子どもたち
第一章 いま、大阪で
1 「君が代」強制条例
2 抵抗する教師たち
第二章 法制化13年の攻防
1 たった一人の被処分者
2 国家の嘘と強制化
3 沈黙と抵抗の間で
4 沖縄での受容と抵抗
第三章 良心を核に法廷へ
1 「ココロ裁判」の終わりなき旅
2 苦悩の中での訴訟
3 広島から北海道へ
4 最高裁は何を見たのか
第四章 不服従の多様なスタイル
1 迷いの中で
2 うしろめたさと逃げ
3 事前説明の取り組み
第五章 市民と生徒たちの抵抗
1 住民訴訟で抗った市民
2 「日の丸」掲揚への市民の異議
3 卒業生が発した言葉
4 子どもの権利条約で闘った生徒たち
終章 「日の丸・君が代」問題とは何なのか
―永井愛さんに聞く、『歌わせたい男たち』の世界と現実
あとがき
(ハンマー)