8月19日、「いま戦争体験の重みを考える」というテーマで、戦争体験者の樽美政恵さんをお招きして、お話を伺いました。
大阪生まれの樽美さんの語る戦前の庶民の生活ぶりはとても具体的で興味深く、とりわけ、50代以上の人は自分の幼い頃の生活を想起していました。
学校では軍国主義的な教育がごく普通に行われていましたが、その中でもさらに「国粋主義的」な教師によって歴史の授業が行われていました。ある時の歴史のテストでは、「歴代の天皇の名前を書け」という問題だけで、それに対して樽美さんは反発を覚え、50代ぐらいまでは覚えていたのですが、反発を感じて白紙で出したということでした。
そんなエピソードもあったのですが、「軍国少女」として育ち、女学校を卒業して後は、短い間ですが幼稚園や小学校の教員を務めたこともありました。しかし、現在は、その当時の教え子とはとても顔をあわせられないという痛切な気持ちを抱いていることを語ってくれました。
敗戦は樽美さんにとっては衝撃的なものでした。さらに衝撃的だったのは、戦地から帰ってきた人たちが、戦争中には知り得なかった日本軍の残虐行為を語るのを聞いた時でした。
樽美さんは戦前・船中と引き比べて、「今は知ろうと思えばなんでも知ることができる。今は“知らなかった”では済まされない」と強く思い、それで、六十年代の安保闘争など様々な運動に参加していきました。毎日デモに行かない日はなかったという日々を過ごしていました。羽田の「ハガチー事件」でも現場に居合わせ、実際の自分達の行動と報道で「暴徒」と言われたことのギャップを生々しく語ってくれました。
以上は、樽美さんのお話のごく一部です。興味深いお話はまだまだ尽きることなく続きそうだったのですが、時間の制約があって割愛していただかなければならなかったのが残念でした。(鈴)