このような状況を前にして、韓国において日本軍「慰安婦」問題解決のために尽力してこられた韓国挺身隊問題対策協議会を始め、多くの団体、個人が、日本軍「慰安婦」問題が事実上棚上げにされるのではないか、という危機感を強められており、それは、挺対協のホーム・ページに掲載された「日韓首脳会談は日本軍『慰安婦』問題が解決される平和の歩みでなければならない」と題する要求書に示されています。また、我が国において、日本軍「慰安婦」問題解決のために活動してきた団体と個人を代表する形で、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動が、「『慰安婦』被害当事者が受け入れられる解決策を」という声明を発表しました。これら2つの文書を、転載させてもらいます。
日韓首脳会談は日本軍「慰安婦」問題が解決される平和の歩みでなければならない
日韓両首脳は、11月2日に開催される約3年6ヶ月ぶりの首脳会談を目前に控えている。李明博前大統領と野田佳彦前総理の会談後、朴槿惠大統領と安倍首相は長く正式に顔を合わせることはなかった。これは、過去を反省するどころか歴史歪曲と軍国主義復活に向かって暴走する安倍政権と、また日本軍「慰安婦」問題にたいする進展を首脳会談の前提条件にした朴槿惠大統領の立場のためであった。
ところが、である。両国国民の知らない間に日本軍「慰安婦」問題解決においてどのような進展があったというのだろうか。突然日韓首脳会談が成されるというニュースが飛び込んできた。それも韓国政府がまず日程を提示し、日本政府が受け入れたという過程にいぶかしさを感じる。日本軍「慰安婦」問題に関する日韓局長級協議は何ら成果もなく足踏み状態であり、日本は首脳会談調節過程で韓国側が求めた日本軍「慰安婦」問題に対する立場表明に難色を示しているという。こうまでして韓国政府が原則をおさえて安倍首相に手足を縛られた屈辱外交を見せていることに疑問を感じるほかない。
特に、安倍首相が最近安保法制を強行処理したことに続いて、自衛隊の朝鮮半島進出発言まで飛び出している状況で、むしろ長い間会えずにいた日韓首脳のソウルでの出会いに、歓迎と期待というよりは憂慮が深まるばかりだ。これに韓国側は、戦後の平和憲法さえ蹂躙し自衛隊武装と朝鮮半島進出をねらう日本の挑発にたいして、「やむを得ない場合、日本自衛隊の朝鮮半島進出を認める」という正気を失った国務総理の発言で応じた。この重要な時期に原則さえ下ろし日韓首脳会談を開催するということは、結局日本の軍国主義を容認し支持するという立場を公式化することに他ならない。植民地支配というむごたらしい歴史を忘れ、主権守護さえ投げ出し、アメリカの監督のもと一糸乱れず行動する日韓間の軍事協力は、日本軍国主義の最大犠牲者である日本軍「慰安婦」被害者を欺瞞し平和を願う両国国民を愚弄するものだ。
光復(解放)70年である今年、日本軍「慰安婦」問題をはじめとした植民地犯罪に対する反省と謝罪の気持ちさえない安倍政権が、日本軍「慰安婦」問題解決をいつにもまして強く願う被害者たちの期待を再び安倍談話のような言葉遊びでうやむやにしてしまう事態を決して許してはならない。反民主的で没歴史的な国定教科書を押し付けることで腹の内を見せた朴槿惠政府が、結局安倍首相の軍国主義に足並みを合わせるならば、その親から続く親日体質も当然許されるべきではない。
日韓首脳は出会うべきである。日本軍「慰安婦」被害者も国民も日韓間の反目ではなく平和を望んでいる。しかしそれは、日本軍「慰安婦」問題解決と正しい過去清算を通じて平和の一歩を踏み出す信頼と対話での首脳会談でなければならない。今回の日韓首脳会談で安倍首相は、然るべき日本軍「慰安婦」問題に対する謝罪と問題解決を約束しなければならない。
私たちは、日本軍「慰安婦」被害者の名誉と人権回復、正しい過去清算をなすまで活動することを決意し、日韓首脳会談を前に日韓首脳へ要求する。
- 安倍首相は、日本軍「慰安婦」問題に対する国際的・法的責任を認め履行せよ。特に、日本軍「慰安婦」被害者の思いを込めた、2014年6月の第12回アジア連帯会議で採択され2015年5月の第13回アジア連帯会議で再確認し日本政府に提出した日本軍「慰安婦」問題解決のための『日本政府への提言』を即刻受け入れ履行せよ。
- 安倍首相は、戦争推進法にほかならない安保法制を即刻廃棄せよ。
- 朴槿惠大統領は、日本軍「慰安婦」問題に対する日本政府の公式謝罪と法的賠償を求めよ。
- 朴槿惠大統領は、日本の軍国主義策動に反対し自衛隊の朝鮮半島進出不可原則を明らかにせよ。
2015年10月30日
正しい日本軍「慰安婦」問題解決を求める韓国市民社会
日本軍「慰安婦」被害者47名、団体連名総167団体、個人連盟1477名
声 明
「慰安婦」被害当事者が受け入れられる解決策を
11月2日、韓国ソウルにおいて4年ぶりとなる日韓首脳会談が予定されています。最も近い隣国でありながらこれまで首脳会談すら開催できなかったのは、歴史認識の隔たりによるところが大きく、とりわけ「慰安婦」問題に対する安倍首相の認識は日韓関係改善の大きな妨げとなってきました。就任直後から「河野談話」の見直しに言及し、今年8月に発表された戦後70年「安倍談話」においても注目されていた「慰安婦」の言葉はどこにも明示されていません。すでに9回を数える日韓局長級会談でも日本政府は「慰安婦」問題は「日韓請求権協定で解決済み」の姿勢を崩さず、双方の対立を埋めることはできないでいます。1965年当時、その存在すら認めていなかった「慰安婦」問題を日韓請求権協定で解決したと言えるはずもなく、国際法、国内法にも違反する重大な戦争犯罪を今日に至るまで認めようとしない日本政府の責任は重大です。首脳会談を前に1995年に政府主導でつくられ、2007年に終了した「女性のためのアジア平和国民基金」のフォローアップ事業に政府の予算を追加して新たな基金をつくるという提案が浮上していると報じられています。しかし、国民基金が政府の責任を明確に認めたものではなかったため多くの被害者がこれを受け入れず、「失敗」に終わったことを忘れてはならないでしょう。
「慰安婦」制度は当時の日本軍が立案、設置、募集、管理した制度であることは、多くの研究や資料によってすでに立証されており、その点において戦時性奴隷制の象徴的な事例として国際的に知られています。さらに、被害者が名乗り出て加害国である日本政府に事実の認知と被害回復措置を求め続けているにもかかわらず、被害者を侮辱する発言を容認している日本政府の態度は、国内外で深い憂慮と関心を集めています。1990年代に名のり出ることができた被害者の多くはすでに亡くなられ、高齢の被害者に残された時間は限られています。今、決断し、解決へと一歩踏み出すことが、日韓関係だけでなくアジアと世界における平和構築に向けての日本政府のメッセージになります。
私たち日本軍「慰安婦」問題解決全国行動は、2014年6月に8カ国の被害者とその支援者がともに「日本政府への提言―日本軍「慰安婦」問題解決のために」をまとめ、政府に提出しました。そこでは、なぜ日本政府のこれまでの談話が「謝罪」として受けとめられてこなかったかについて、はっきりと理由が述べられています。それは、日本政府および軍が、軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したという事実とその責任を日本政府が曖昧さのない明確な表現で認めるという、当たり前の行為が伴ってこなかったからでした。そして、賠償、真相究明、教育や否定発言への反駁といった再発防止のための後続措置が伴って初めて、謝罪が真摯なものであるとして被害者に受け入れられることができる―「慰安婦」問題解決にいたる道を提言は明確に示しているのです。
「和解」とは、被害当事者が受け入れられる解決策が示された時にはじめて、その第一歩を踏み出すことができる長い道のりです。日韓両政府はこれ以上解決を遅らせることなく、真摯に被害者の声に向き合って解決への道を切り拓くことを強く要求します。
2015年10月30日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
共同代表 梁澄子 渡辺美奈
※ この文書は、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークのブログ http://ianfukansai.blog.fc2.com/ にも転載されています。
★★ 「挺対協週刊ニュース」について ★★
当ブログで、「挺対協週刊ニュース」の一部を日本語訳で紹介した来ましたが、10月10日付でUPした第36号でストップしていますが、これは「週刊ニュース」自体が36号でストップしているからです。新しいニュースが発刊されたら、またお届けします。
★★ 挺対協ホームページ日本語版ご案内 ★★
うかつなことですが、挺対協のホームページに、「日本語版」と「英語版」が開設されていることに気付きませんでした。
挺対協のホームページは、https://www.womenandwar.net/contents/home/home.nxで閲覧できます。このURLで開くと、
このような画面が表示されます。そして、右上の「日本語」とあるところをクリックすると、
のような「日本語版」が表示されます。韓国語の記事のすべてが日本語版に載っている訳ではありませんが、主要なものはほとんど掲載されています。挺対協の活動の詳細を知りたい方は、是非、この「日本語版」にアクセスして下さい。