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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

日中韓首脳会談と日韓首脳会談の意義と今後

2015-11-02 | 日々のニュース

(1)日中韓首脳会談と共同宣言

 1日に開かれた日中韓首脳会談は、「北東アジアの平和と協力のための共同宣言」と題する、56項目から成る共同宣言を採択しました。この共同宣言の名称自体が、安倍内閣の緊張と対立を煽る外交姿勢に馴染まないものと言えるでしょう。「安倍首相は、『他国に行って戦争すること』を『積極的平和主義』と言い換える人だから、口では何とでも言える」と思われる人も多いでしょうが、それでも中国と韓国の首脳との間で「平和と協力」を確認することは、安倍首相の言動を幾分は制約することになるでしょう。

 共同宣言は、「3か国協力が完全に回復されたとの認識を共有した」と述べ、3カ国首脳会談を毎年定期的に行うことを再確認しました。このこと自体が、積極的な意味を持っています。中国側は、中国側の利害と関心に基づいて、日本との関係回復を急いだと思われます。そこには、米国の対中姿勢の変化=中国封じ込め政策への傾斜が関係しているのは間違いありません。極右の安倍政権が日米同盟の一層の一体化にのめり込み、中国包囲にまい進することをけん制する狙いがあったと思われます。

 共同宣言は、「経済的な相互依存関係と政治/安全保障上の緊張が共存する状況は克服されなければならないとの共通認識に達した。」と述べています。この文言は、多義的で含みのある文章ですが、安倍内閣が、嫌中・嫌韓を煽ることは、この文章に合致しないことは明らかです。

 また共同宣言は、「歴史を直視し未来へ前進するとの精神の下,我々は,3か国が関連する諸課題に適切に対処し,二国間関係の改善及び3か国協力の強化に共に取り組むことに合意した。」と述べています。李克強首相は、会談後の記者会見で、正しい歴史認識を持つことの重要性を数度に渡り言及し、朴槿恵大統領も記者会見で、歴史認識問題に言及しました。しかし安倍首相だけは、記者会見でこの問題に言及しませんでした。とは言え、安倍首相も同意した共同宣言ですから、歴史認識問題から完全に逃れることは出来ません。

 共同宣言の具体的な56項目の合意内容と実効性については、もう少し進展を見て判断するのが良いようです。いずれにしても、この共同宣言が、3カ国の勤労大衆にとって少しでも意義あるものになるかどうかは、それぞれの国の勤労大衆自身の対政府闘争に掛かっていると言えます。

(2)日韓首脳会談

 こちらの方は、一層内容のないものに終わったようです。会談の詳細は明らかにされていません。極簡単な報道が、外務省のホームページに掲載されています。 「少人数での会談」と「全体会合」に分けて行われたこと、「少人数での会談」では、「両首脳は,日韓間の諸懸案について率直に議論し,安倍総理からは諸懸案について日本の立場を述べ,韓国側の対応を求めた。」と報じられています。安倍総理が述べた諸懸案の中には、産経新聞のソウル支局長の朴大統領名誉棄損事件が含まれているとの情報が流されています。

 慰安婦問題については,「日韓関係の発展に影響を与えているとの認識を踏まえ,両国が未来志向の関係を築いていくため,将来の世代の障害にならないようにすることが重要であるとの認識を共有した。本件への対応について,局長協議等の場で既に粘り強く協議を行ってきているが,両首脳は,今後も協議を継続し,本年が日韓国交正常化50周年という節目の年であることを念頭に,できるだけ早期に妥結するため,協議を加速化するように指示することになった。」ことを確認したそうです。しかし、この文面だけからは、「早く処理して、終わりにしよう」という感じだけが伝わって来るだけで、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、直ちに論評を発表し、「うやむや解決」にならないように韓国政府に注意を促しました。

 「全体会合」では、3点に渡って議論をしたと報道されています。①「日韓間の協力を推進する」ことで一致したこと、「安倍首相が南シナ海問題を提起した」ことが報道されています。これについて韓国側が何と言ったかは報道されていませんが、日本側として報道するに相応しくない内容であったものと推察されます。②朝鮮の非核化を引き出すために、「日韓及び日米韓の安全保障分野での緊密な連携を確認した。さらに,拉致問題を始めとする人道上の問題について,日韓間で協力していくことでも一致した。」ことが報道されています。しかし、朝鮮の非核化についても、拉致問題についても、抽象的な協力の確認に止まっています。③経済分野では,「両国の経済関係の進化や日中韓FTARCEPの重要性,TPPの意義などについても議論された。」と報道されており、何らかの合意が得られたのではなく、「議論された」だけでした。結局、日韓首脳会談は、実に内容の無いものに終わったことになります。

 結局、韓国主催の昼食会はもちろん、共同記者会見すら開かれなかった程度に、冷え冷えとした首脳会談であったようです。この冷え切った関係を解すためには、安倍首相が、正しい歴史認識に半歩でも近寄り、日本軍「慰安婦」問題の具体的で真摯な解決に向けて、一歩を踏み出す以外にないでしょう。

(3)日韓首脳会談に対する挺対協の論評

 日韓首脳会談が終わるや否や、挺対協は直ちに論評を発表し、韓国政府の無原則で軟弱な外交姿勢を厳しく糾弾し、日本軍「慰安婦」問題を、被害者ハルモニの皆さんが受け入れることの出来る解決無しに、早期な幕引きを図ることは絶対にあってはならないとの警告を発しました。その論評を以下に転載します(原文は挺対協のホームページhttps://www.womenandwar.net/contents/home/home.nxの右上に表示されている「日本語」をクリックすれば閲覧できます)。

日韓首脳会談に対する挺対協論評 
 
 2015年11月2日、ソウルで日韓首脳会談が行われた。これまで朴槿惠大統領は日本軍「慰安婦」問題が解決されなければ日韓首脳会談もないとの立場で、日本軍「慰安婦」問題が日韓関係正常化の前提条件であることを強調してきた。しかし、日韓協定50年である今年中に日韓関係で何か成果を出さなければならないという圧迫感のためなのか、その立場を弱めたかと思うと突然日韓首脳会談の日程を決めた。

 日韓首脳会談を目前に、韓国国民と被害者は期待よりも憂慮が上回った。日韓局長級会談を9回も行ったにもかかわらず特に進展はなく、8月15日の安倍談話は日本軍「慰安婦」問題に対する直接の言及さえなく被害者の期待を裏切った。また、先月30日には岸田文雄外務大臣が、日本軍「慰安婦」問題に対し、「わが国の基本的立場は変わらない」と言及していたためである。日本政府の基本的な立場はほかでもなく日本軍「慰安婦」問題に対する法的責任は解決済みだというものであり、これまで安倍政権が見せてきた行脚は「慰安婦」問題に対する国家的・法的責任を回避し、むしろ安保法制強行などで葛藤を触発してきた。
 
 そして、1時間45分で終わった日韓首脳会談は、予想を大きく外れなかった。「できるだけ早期の妥結を目指して、交渉を加速させていこうということで一致した」というニュースのみが流れるだけで、解決内容と原則を見出すことはできなかった。ざっと見ればこの問題を解決しようとする意志があるかのように聞こえるが、二人の首脳が語る妥結がどのようなものなのかわからない。日本軍「慰安婦」問題に対する解決方向と原則を確認し明らかにしなければならないにもかかわらず、その中身が抜けてしまった会談となってしまった。 
 
 安倍政権のふてぶてしい歴史歪曲と責任回避についてこれという対応さえできなかった朴槿惠政府が、首脳会談直前まで既存の立場は変わらないという日本政府を相手にいったん日韓首脳会談を成立させようとの態度で行われた会談であっただけに、光復(解放)後70年を待ち続けた日本軍「慰安婦」被害者と国民の前に差し出されたこの結果は、恥ずかしく貧相である。
 
 日本軍「慰安婦」問題は、日韓間の別の懸案を進展させるため時間に追われ早期に迅速に解決してしまい忘れてしまう事案では決してない。日米韓関係の中で求められるまま屈辱外交で妥結するものでももない。朴槿惠政府が、日本軍「慰安婦」問題を二国関係の障害だと表現したように、すぐにでも解決し消し去ってしまわなければならない問題として取り扱い対応するならば、結局日本軍「慰安婦」問題は足踏み状態から逃れることができないだろう。 
 
 3年6ヶ月ぶりに開催されたにもかかわらず、日本軍「慰安婦」問題に対する進展を成すことができなかった韓国政府の無能ぶりと日本政府の厚顔無恥さが嘆かわしい。しかし、早期妥結のため交渉を継続するという約束だけでも成されるよう切に望む。問題解決の原則は、日本軍「慰安婦」被害者の気持ちを込めアジア連帯会議で共同採択された提言の内容、すなわち日本政府の国家的・法的責任認定と履行でなければならないことは言うまでもない。
 
 今後韓国政府は日韓局長級協議をはじめ日本軍「慰安婦」問題解決のための日韓間論議と外交活動で、このような問題解決の原則を明らかにし、日本政府はこれを受け入れなければならない。早期妥結だけでなく正しい解決を成すことを、両国政府に強く求める。 
 
2015年11月2日 韓国挺身隊問題対策協議会

 

 



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