琉球新報<沖縄基地の虚実7> は、米軍の訓練に対する制限や米軍事故に対する捜査などが一切できないという「米軍の特権」を特集している。
そこには、1994年の嘉手納基地騒音訴訟で、司法は「支配の及ばない第三者の行為」として、米軍機の深夜・早朝の飛行差し止めをもとめる住民の訴えを棄却したことを紹介している。
さら驚くのは厚木基地騒音訴訟の判決(2014年5月と15年7月)だ。基地を共用している自衛隊機の夜間・早朝の飛行を禁止した一方、同時間帯の騒音の大部分を占める米軍機の飛行差し止め請求は退けたという。米軍の運用をめぐって、日本の法規制が適用除外される形で米軍に「特権」が認められ、住民や環境が犠牲になっているのだ。2004年の沖国大へのヘリ墜落事故では、現場が突如“基地外基地”と化す事態も起きている。等と記している。
日常的な騒音被害から、事故による危険、米軍犯罪の被害などが常に住民におしつけられている沖縄の現状は許されるものではないし、あってはならないものだ。
※琉球新報<沖縄基地の虚実7> 専用施設、米軍に「特権」 地元の事故調査も制限http://ryukyushimpo.jp/news/entry-244950.html
このことを改めて見せつけたのが、9/22沖縄本島東沖での戦闘機墜落事故だ。事故機と同型のAV8Bハリアー戦闘攻撃機が10月7日嘉手納飛行場で飛行を再開した。事故原因が明らかにされないまま、事故から15日後の飛行再開に県や住民の反発が広がっている。と琉球新報が報じている。
墜落事故後、翁長知事は抗議し事故原因が特定されるまでの飛行停止を求めていた。県議会、周辺市町村、市民もそれぞれ抗議と飛行停止を求め決議をあげ、行動を起こしていた。
にもかかわらず、在沖米軍トップのローレンスニコルソン四軍調整官は、事故が「システムか、人為的ミスか、整備不良によるものか原因は特定してない」としながら、点検作業などで「安全性が確認された」と説明し、10/5に飛行を再開すると発表していた。
沖縄県民を全く無視する行為である。日本政府にも、防衛省にも、沖縄県にも、もちろん嘉手納町にも飛行訓練を中止させる権限はない。日本政府は、高江の米軍基地ヘリパッド工事には、メチャメチャな法解釈で自衛隊機を動員して機材を搬入しても、深刻な米軍事故機の飛行訓練を中止させようとはしないのである。
10/7飛行再開に対し、稲田防衛相は7日の会見で、「防衛省、自衛隊の専門的な知見も活用して評価を行った結果・・・米側の判断は理解できる」と述べ追認する考えを示したと報道されている。事故原因もわからず、いかなる専門的知見を活用したのか。日本政府・防衛省も沖縄県民無視、米軍追随の姿勢である。
琉球新報記事によると、1972年の日本復帰後、県内の米軍機墜落事故は、9/22のAV8Bハリアー戦闘攻撃機墜落事故で47件目となった。1年に1回以上墜落事故が起きている計算になる。最近では昨年8月12日、米陸軍のMH60ヘリがうるま市沖で米艦船への着艦に失敗し墜落した。2013年は5月にF15戦闘機が本島東沖に、8月にHH60ヘリがキャンプハンセン内に墜落した。04年8月の沖国大ヘリ墜落事故のように、一つ間違えば甚大な被害を及ぼす事故もあった。AV8Bハリアーの墜落は今回で復帰後6件目であり、墜落以外の事故も入れると19件めである。
沖縄県民は「限界を超えた」と米軍基地に対し声を上げている。沖縄に米軍基地を押し付け、地位協定を押し付けている日本政府に対し、“第2の加害者”にならないためにも共に声をあげよう。
ハリアー戦闘攻撃機の飛行再開に抗議し中止を要求する
(アーさん)