集団的自衛権行使をめぐる議論として、安倍政権が、(1)主として米軍との共同行動において米軍への攻撃を自国への攻撃と見なして反撃するという従来からの解釈論に加えて、(2)「国益」を基準に置き、「日本にとって死活的に重要」な地域に武力行使するという、新しい解釈を提示していることを明らかにした。
※「国益」最優先を掲げた、集団的自衛権行使についての驚愕の新解釈(リブインピース)
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/e8f32b99a「86f06b81b5c592135d50df4
すでに安保法制懇も、海上交通路(シーレーン)の機雷除去など、集団的自衛権行使に関する新しい解釈を打ち出してきている。
※憲法解釈、5事例を議論…安保法制懇(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131016-OYT1T01042.htm
ところが、ここに来て(1)はひとまず置き、(2)の解釈をもって集団的自衛権の行使に踏み切ろうという動きが急浮上している。あたかも「限定的解禁」であるかのように印象づけているが、実際にはかつての「大日本帝国」を想起させる帝国主義的利害をむき出しにした武力行使・軍事介入政策にほかならない。
※集団的自衛権:「自国存立損なわれる事態」限定容認を検討(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20131028k0000m010123000c.html
その解釈では「自国と密接な関係にある国」において「自国の死活の利害」「自国の存立が損なわれる事態」が生じた場合に、自衛隊を派遣して武力行使ができるという。その国として具体的にはフィリピン・マレーシアなどが挙げられている。
例えばフィリピンで革命が起こり、日本から進出している企業が接収されるような事態になった場合に、「自国の存立が損なわれる事態」として自衛隊を派遣して革命政権への攻撃を行う、あるいは革命にはいたらなくても、日系企業でストやデモがおこり日本経済に影響を与えた場合に、その鎮圧のために自衛隊を派遣するというような事例を想起させる。
「自国と密接な関係にある国」における「自国存立損なわれる事態」は極めてあいまいで、拡大解釈が可能だ。
安倍首相は10月28日~30日、国会開会中にもかかわらず今年5月に訪れたばかりのトルコを再訪する。安倍政権は、トルコを戦略的に重要なパートナーと位置付け、原発建設受注を働き掛けているのだ。訪問地が、福島や東日本の被災地ではなく、原発輸出のためのトルコであること自体が許し難いが、安倍首相は「これからも積極果敢に国益を追求する」として11月中旬にはカンボジア、ラオスを訪れ、来年1月にはアフリカやインド訪問も検討している。
このような動きを見ていると、これら「親日政権」の不安定化を阻止するために自衛隊を派遣・駐留させるというのも、全くの絵空事ではない。「果敢に国益を追求する」安倍首相の外交、そして「自国の存立が損なわれる事態」での武力行使の想定。それは、集団的自衛権行使という名の軍事侵略である。
(ハンマー)