11/7東京高裁での君が代不起立訴訟の原告勝訴判決の全文が掲載されていますので紹介します。
※2012年11月7日「君が代不起立停職処分取消等・差戻審」東京高裁判決 http://www.kcat.zaq.ne.jp/iranet-hirakata/newpage48-siryou2.htm
停職処分を受けた東京都立養護学校の元教員河原井純子さんが訴えていた「日の丸・君が代」不起立訴訟で、東京高裁は、「停職処分は不当」として東京都に対して30万円の賠償を命じました。教職員の「君が代不起立」を理由とした都の懲戒処分を巡り、賠償が認められたのは初めてのことで、画期的判決です。
※君が代不起立訴訟、都に初の賠償命令 東京高裁(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO48185900Y2A101C1CR8000/
※君が代訴訟で賠償を初認定 東京高裁差し戻し審(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121107/trl12110719270007-n1.htm
※君が代不起立:元教員勝訴、都に賠償命令 東京高裁(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20121108k0000m040055000c.html
判決文は残念ながら、いわゆる10.23通達や職務命令の違法性・違憲性は認めていませんが、「君が代」強制が教員に対して「自らの信条を捨てるかの選択を迫られる状況」に追い込むことを認めています。「教諭と児童生徒との人格的触れ合いが教育活動に欠かすことのできない」にもかかわらず児童生徒から教員を一定期間引き離すことになる停職処分の不当性を認め、「君が代」強制による処分が教育現場に対して取り返しのつかない影響を与えることを示唆しています。
判決文は「単に従わなかった、あるいは単に起立しなかった、あるいは歌わなかったといったようなことのみをもって、何らかの不利益をこうむるようなことが学校内で行われたり、あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導等が行われるようなこっがあってはならない」等の国旗・国歌法に関する政府答弁の引用にかなりの分量を割いています。
そして、卒・入学式で「身体等の障がいのために起立することができなかった児童や生徒も相当数存在したものと推認される」とし、「起立・強制」がいかに子どもたちの立場からみても逸脱しているかを伺わせています。
大阪でも「君が代」強制は熾烈であり、不起立を貫く教員はごく少数となっていますが、判決文の言うように、「自らの信条を捨てるかどうか」の選択を迫った結果としてそうなっているのです。市民や保護者が「教員の良心や信条を捨てることを強要することが教育にとっていいことなのか」と問い、決して教員を孤立化させないことが重要です。
以下、判決文からの抜粋です。
□不起立の動機
「控訴人が起立斉唱行為を命ずる職務命令に従わなかったのは、「君が代」や「日の丸」が戦争、侵略のシンボルと思うとの、控訴人の歴史観ま又は世界観等において、これらが過去の我が国において果たした役割が否定的評価の対象となることなどから、起立斉唱行為をすることは自らの歴史観又は世界観等に反するもので、これをすることはできないと考えたことによる。」
□ 卒業式の状況
「少なくとも、本件の創立30周年記念式典では、甲404の4によれば、控訴人ら学級担任は児童や生徒と同一の場所で席についていたことが認められ、また、身体等の障がいのために起立することができなかった児童や生徒も相当数存在したものと推認されるのであって、控訴人が起立しなかったことにより、具体的な式典の進行に支障が生じたわけではない。」
□都教委の過失
「特に学校における入学、卒業といった行為は恒常的に行われており、不起立に対して戒告、減給から停職処分へと機械的、一律的に加重していくことは、教員が2、3年間不起立をすることにより、それだけで停職処分を受けることになるのであり、その結果、自己の歴史観ないし世界観に忠実な教員にとっては、不利益の増大を受任するか、自らの信条を捨てるかの選択を迫られる状況に追いやられることも考慮すべきである。」
□控訴人の損害
「教師の場合は,停職期間中教壇に立てないという不利益を被るが,教育公務員の性質上,この不利益による精神的苦痛は,処分が取り消されたり,その結果,支払われなかった給与が支払われることをもって回復するものとはいうことができない。」
「特に,養護学校では、教諭と児童生徒との人格的触れ合いが教育活動に欠かすことのできないものであると考えられるところ、証拠によれば、控訴人は、児童生徒との触れ合いを特に重視していたと認められることを考慮すると、財産的損害の回復のみによっては,控訴人の精神的損害が慰謝されるものでないことは明らかである。」
(ハンマー)