米と「有志連合」軍はイラク・シリアへの空爆をやめよ
安倍政権は空爆「支持」「理解」表明を撤回せよ
オバマ大統領はは8月8日から開始した無法なイラク攻撃=イラク内部のイスラム国支配地域への攻撃を拡大し、9月23日からシリアに対しても空爆に踏み切った。すでにイラクへの空爆は200回近くに上り、180万人もの避難民が生み出されている。シリアからも難民がトルコ国境に殺到している。戦争の惨禍をこれ以上拡大してはならない。
米はイスラム国攻撃について当初の「人道支援」「米国人保護」などという大義名分をかなぐり捨て、イスラム国壊滅を表明した。米国の主導する「帝国主義的秩序」を乱すイスラム国を武力によって排除することを明確にしたのである。イラク北西部からシリア南東部は住民が居住する他国領土であり、ここへの空爆は明らかな侵略である。米軍はF22ステルス戦闘機、F15、F16戦闘機、B1爆撃機、無人爆撃機、紅海のイージス駆逐艦とペルシャ湾のミサイル巡洋艦からの巡航ミサイル・トマホーク発射等あたかも兵器の実験場のようにやりたい放題の攻撃を加えている。空爆は一般住民を巻き込む無差別爆撃・無差別殺戮をひき起こす。そもそも米軍がイラク、シリアを攻撃するいかなる法的根拠もない。絶対に許すことはできない。
イラク空爆にはフランス軍が参加し、シリア空爆にはサウジアラビア・UAEなど湾岸反動国家が加わったと報じられている。キャメロン英首相は議会を緊急招集し、イラク空爆の承認を得ようとしている。空爆拡大によってさらに被害が広がる危険がある。
オバマ大統領は直接的空爆、偵察飛行、軍事装備提供、後方支援、さらには「人道支援」などに加わる国々を含めて「有志連合」と称し、あたかもイスラム国空爆が「国際世論」であるかのようにあおっている。だがこのあいまいで何が連合なのか、何が基準なのかさえはっきりしない「有志連合」なるものこそ、国連憲章にも国連安保理決議にも基づかない、基づくことができない、何の根拠も示すことができない侵略戦争を正当化するための隠れ蓑に他ならない。
米国は「イラク政府からの要請があった」とし集団的自衛権の行使と強弁しているが、自国内の政治勢力を壊滅させるために米軍の空爆を要請することが国際法で認められるならば、あらゆる侵略戦争が正当化されることになるだろう。集団的自衛権が暴走する危険性を物語っている。一方シリア政府からの要請はない。報じられるところでは、空爆の数時間前に米軍はシリア政府に一方的に通達を行ったというが、これこそ全くの主権国家への侵略行為である。
武力が平和や安定をもたらさないことは、当のイラク戦争で、そしてアフガニスタン戦争で米国は思い知ったはずだ。米国は10年以上に及ぶ戦争によって両国に甚大な被害を与え、政治的社会的混乱を引き起こし、国土を破壊し、最低でも数十万人の住民を殺害し、7000人近い自国兵の犠牲者を出した。にもかかわらずオバマ大統領は戦略的目標も出口戦略も一切もたないまま、イラクに対して、シリアに対して終わりのない空爆に突き進んでいるのである。米国内では軍部などから特殊部隊を含む地上軍の投入の声さえ上がっている。そもそもイスラム国なるものは、リビアやシリアの政府を転覆させるために米をはじめとする帝国主義諸国が武器を流し込んだ結果、肥大化し制御できなくなったイスラム武装勢力に他ならない。要するに自らが作り出した「怪物」なのである。ここに失業や貧困などで社会に不満を募らせる欧米諸国の若者らが合流するというかつてない事態が生じている。オバマ大統領がなすべきことは、直ちに空爆をやめること、一切軍事介入をしないこと、一切の武器供与をやめること、イラク・シリアからそして中東から全面的に手を引くことである。
安倍政権は、イラクへの空爆にはやばやと「支持」を表明し、シリアへの攻撃に対しても「理解」を示した。全く許し難い。米英仏のジャーナリストがイスラム国による「報復」として殺害されている。このままでは日本のジャーナリスト・市民が標的にされる危険もある。日本は侵略国家であってはならない、戦争に加担してはならない。過去の侵略戦争の反省から生まれた憲法9条を厳守することを高らかに宣言すべきだ。そのために、イラク攻撃への「支持」表明とシリア攻撃への「理解」表明を撤回し、侵略戦争へは参加も支持もしないことを明確にすべきだ。米軍の空爆を側面支援することになる、難民・避難民への「人道援助」もやめるべきだ。安部政権は、集団侵略である「有志連合」には加わらないことをはっきりと表明し、一切の加担・協力をやめるべきだ。
(ハンマー)