現行憲法
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
↓
自民党改憲草案
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
この変更の第三の問題点は、「目的罪」になっていること。
禁止させられるのは「公益及び公の秩序を害する活動」「結社」ではなく、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」「結社」。つまり意図を持つこと、考えることが禁じられる。
一部の例外を除いて、現行刑法体系は、「すでに犯した犯罪のみを処罰する」という既遂処罰の原則をとっている。ところがこの条項は行為そのものではなく、「害する目的」「意図」が禁止の対象となるのである。
たとえばある人がフランス革命の歴史の本を出版したとする。その人がどのような目的・意図で出版したかはわからない。フランスが好きなので、フランス旅行する人を増やしたいと思い歴史を紹介したかも知れない。しかし、「革命思想を普及して日本の秩序を害することを意図した」とされれば、表現、出版の自由は剥奪される。「目的」「意図」が禁止の対象となるというのはそういうことだ。
共産主義思想は、資本主義社会という秩序の転覆に関する思想ということができる。本屋や図書館にはマルクスやレーニンの本が置いてある。社会主義国家キューバを紹介する本や革命家フィデル・カストロ、チェ・ゲバラの本もある。毛沢東やホーチミンの本もある。チェ・ゲバラは資本主義の打倒、革命を呼び掛けている。フィデル・カストロは世界の貧困の撲滅=南の貧困によって北の富裕がもたらされるという現代世界の秩序の転換を呼び掛けている。このような本は、共産主義思想の普及を目的としているということができる。これらの本の出版や貸出は、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」となるのか。
であれば、共産主義思想を厳しくとり締まり、共産主義者を拷問し虐殺さえした戦前の治安維持法や特高警察と全く同じではないか。
(ハンマー)