をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

映画「SHE SAID その名を暴け」 

2023年02月03日 | 映画
SHE SAID その名を暴け (映画)

アカデミー賞でもゴールデングローブ賞でも女性たちが「#Me Too!」と立ち上がった年がありました。
「ロード・オブ・ザ・リング」「恋に落ちたシェイクスピア」など数々の名作を手掛けた映画プロデューサーが、数々のセクハラを行っていたとして、告発されたのです。
この話題は、アメリカだけでなく、全世界で報道されました。

この映画を観ると、プロデューサーが行ったことはセクハラの中でも重く醜悪な犯罪。その上、権力をかさに何度も被害者からの告発を握りつぶしてきたことで、多数の被害者を出してきたため、さらに罪が深い。
そんな中でも、ニューヨーク・タイムズ紙の2人の女性記者が調査を重ね、明るみに出した…。この経緯を映画化した実録ものだ。
実在の女優も自身の役で出ていたり、姿こそ出ないが著名女優の名前も出てくる。
あの女優が急に出なくなったのは、拒否して干されていたのか…など、そうだったのかという内容が出てくる。

ちょうど、TV界のセクハラを告発した「スキャンダル」も見たが、同じような構図だった。
女性たちの一部が連帯して、やっと明るみに出るが、それまではキャリア・クビをたてに泣き寝入りを余儀なくされてきたというもの。

でも、男性はどこへ行ったのかと思うほど、明らかにして声を上げていくのは女性たち。
普段、正義を追及している男性陣が見えてこない、ここが問題点の一つなのではないだろうか。



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エンパイア・オブ・ライト(映画)      ~そろそろアカデミー賞 第2夜

2023年01月25日 | 映画
映画「エンパイア・オブ・ライト

アカデミー賞の前哨戦ゴールデン・グローブ賞が発表され、この間紹介した「イニシェリン島の精霊」が、最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀脚本賞を獲得しましたね。作品賞がミュージカル・コメディ部門だったので、あ、そうなんだと思いましたが。

さて、今回紹介する「エンパイア・オブ・ライト」では、主演のオリビア・コールマンが主演女優賞にノミネーションされましたが、最優秀女優賞は「ター」のケイト・ブランシェットの手に輝きました。残念。

とはいえ、座長として本作をぐいぐい引っ張っていくのはオリビア。
本作の出演者で有名な俳優はコリン・ファースくらい。ですが、なんだか残念な人の役。でもそのおかげで変に突出せず、あとはあまり知らない人ばかりなので、生き生きとした群像劇としてストーリーが立つのかもしれませんね。
監督はサム・メンデス。

舞台は昔懐かしい感じの映画館。たまには名士の集まる場所にも使われる。その劇場のもぎりをしているのが主人公の中年女性。
そこへ黒人の若い男性が働くことになり…という話。
この主人公が若い男性とすぐ恋愛関係になるのがちょっと違和感を感じるが、その他の老若男女の人も含めて、それぞれが負い目を持ちながら必死で毎日を生きているんだというのが描かれているように思った。
途中、あれ、ギレルモ・デル・トロのあの作品にシチュエーションが似てるんじゃない?と思ったところも…。
あの日、あのとき、的な内容です。

2月23日から全国公開

(ストーリー)
 現代映画界&演劇界が誇る名匠サム・メンデス監督が満を持して、5度アカデミー賞作品賞を世に送り出したサーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ最新作。舞台は1980年のイギリス南岸の静かなリゾート地。本作はそこに生きる人々の絆と“映画と映画館という魔法”を力強く、感動的に描く、珠玉のヒューマン・ラブストーリー。
キャスト
オリヴィア・コールマン, マイケル・ウォード, コリン・ファース, トビー・ジョーンズ, ターニャ・ムーディ, トム・ブルック, クリスタル・クラーク
監督・脚本
サム・メンデス


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イニシェリン島の精霊(映画)~そろそろアカデミー賞・第一夜

2023年01月09日 | 映画
映画「イニシェリン島の精霊」

そろそろ近づいてきましたアカデミー賞。
ノミネーションが予想される作品を紹介してみよう。

初日は「イニシェリン島の精霊」。
題名だけ聞くとファンタジーかと思ってしまうが、「スリー・ビルボード」の監督作品と聞けば、かなり厳しい内容の話だろうと推測される。
映画って、ストレートに訴えたいことを伝えるものと、終わった後に観客に考えさせるものがあるが、これは後者だろう。

ますはストーリー。
場所はアイルランド、時は内戦が続いていた頃の設定。砲弾の音がやまない本土と違い、海を隔てたイニシェリン島はのどかでいつもと変わらない時間が流れていた。しかし、いつもパブで酒を飲みながら馬鹿話をしている友人が何だか態度が違う。
自分に話しかけてくれるなというのだ。
音楽創作の世界に没頭したい、お前の馬鹿話に付き合う暇はないという。
理解に苦しむ男は、何とか元通りの関係に修復しようと模索するが、相手はあろうことか、これ以上話しかけたら自分の指を切るというのだから穏やかではない。
でも、それは実行され、物語はエスカレートしていく。

そんなばかなという場面が後半次々と重なる。客観的に見たら、そんなことしなくても平穏に暮らせるのに、エゴとエゴのぶつかり合いが続いていく。
そして主人公の妹も、最初は何とかしようと間に立ったりするのだが、最後は見限って本土へ行ってしまった。

現在、世界で起きている争いを描いているのだと思うが、本人たちだけでなく、周囲の人間などもなぞらえているのではないか。
特に、ロバというのは象徴的な意味合いを持つから、主人公が豹変するきっかけとなったのだろうか。
最後に、本土からは砲弾の音が聞こえなくなった、というのは希望か願望か。
いろいろ見終わってから考える余地のある作品だ。

そしてなんだか、彼らが精霊なんじゃないかと思えてきた。

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映画 花束みたいな恋をした

2022年11月29日 | 映画
花束みたいな恋をした(映画)

今日は、バリアフリー体験の上映会に行ってきました。
スマホがあれば、日本語字幕、外国語字幕のほか、手話字幕まで見られる体験後、実際の上映会がありました。
寒く雨交じりの中、8割の参加者。

映画は、当代若手人気俳優である菅田将暉と有村架純主演による恋愛もの。
そんな期待しないで見ていました。
特に、有村架純の設定がどうかなー。自宅生であんな終電や友人の家に泊まって、同棲して、親が全然心配しないのはどうなの。
両親が広告代理店勤務だからって、子供への心配は一緒じゃないのかな?
リアルなのは、男親が「今、オリンピックに関わってて」っていうシーン。お縄になっている図が目に浮かびました。
公開時は、現実がこんなことになっているとは思わなかったんでしょうが。

それから、菅田君の父役がいきなり小林薫。名優だからこそ、この部分が浮く。ディレクションがうまくない感じがした

まあ、細部には目をつぶり、端々に出てくる時代を表すワードを拾いながら、編年体で主人公たちと歩んでいくのですが、まあたわいのないのが大半です。ただ、本人たちがもうだめになって思い出の場所で話すシーンは、誰もが経験したことがあるような場面で、身につまされます。
昔の自分たちのような2人が出てきて、振り返るけれど、もう、元に戻れない。

そうなると、最後のシーンは冗長に感じました。冒頭に戻るためなんでしょうが。
ただ、見て損したとは思わなかったのは、菅田・有村の演技が良かったからでしょう。


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映画「Coda コーダ あいのうた」 ~東京国際映画祭今宵の1作

2022年10月28日 | 映画

Coda©2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

Coda コーダ あいのうた(映画)

今日も東京国際映画祭
本日の映画は日比谷ミッドタウンの屋外広場で無料上映された「コーダ」。
青空上映とてもいいですね! 屋外だとコロナ禍も気にしなくていいし、歌や音楽がモチーフの映画は外で聞くとホントいいです。

「Coda コーダ あいのうた」は、ろう者の家族(両親と主人公の兄と主人公)の中、1人だけ音が聴こえるティーンエイジャーの女性ルビー(エミリア・ジョーンズ)が主人公。
2022年のアカデミー賞では、なんと作品賞のほか、お父さん役のトロイ・コッツァーが助演男優賞、脚色賞を受賞しています。

家族と社会とのつながりを、彼女が担っているという設定です。だから彼女がいなくなると大変だ、という設定です。
でも、彼女には歌声という才能があることが分かり、それを見出した少々偏屈な教師の推薦で、名門の音楽大学バークリーを受験したいが、漁師を営む家族との板挟みとなって…、
というストーリー。
ちなみに「コーダ」は「Children of Deaf Adults」の頭文字をとったもの、「聴こえない親のいる、聴こえる子ども」のことをいいます。

劇中には、周りの偏見の目、それを受けている主人公の引け目や同級生からの疎外感や辱めなども描かれています。それだけだと暗い映画になりますが、それを吹き飛ばすような両親たちのバイタリティーや明るさ、そして主人公や級友たちの素晴らしい歌声とシニカルで厳しい先生の教えと級友との淡い恋が、明るく楽しい映画にしています。
ただ、ちょっと両親との会話やシーンでは、日本人には顔が赤らむようなやりとりや場面があるので、思春期の子供と一緒に見てドギマギしたという人もいるでしょう。おおらかというか、あけっぴろげというか…。
そのせいで、主人公が同級生たちにいじめられるシーンがあり、それが彼女を孤立させます。そんなとき、救ってくれたのが音楽。
実際、この俳優さんの歌声は素晴らしいですね。

それを見出す教師の先生も個性的。シニカルで独善的だが、才能を見る目は確かで、なんとか世に出してあげようとする。
そういえば、NHK朝ドラ「ちむどんどん」で、3女の才能を見出した片桐はいりが演じる先生を思い出しました。

音楽への道と家族との間で悩む主人公。漁協を抜けて自分たちの販売組合を作った両親たちには、手話通訳者が必要。
でも、バークリー受験の時は近付いてくる。
そんなとき、検査で両親の船に乗った検査員が、杓子定規に湾岸警備隊を呼んでしまって操業停止になるなどアクシデントが重なったシーンでは、都会人で何にも知らない人がルールだけで紋切型に行って、人が苦しむという例を投影しています。
皆がそれぞれ悩む中で、兄さんが主人公の背中を押したのが大きいなと思います。
家族の犠牲にならずに自分の夢を叶えろ、と。

学校での合唱発表会のシーンもとても良かった。
皆の歌声のラストに、主人公の歌声が会場の皆の心を揺らすシーンです。
一緒に口ずさむ人、リズムを取る人、そして涙を流して感動している人々。
歌や歓声は聞こえないけれど、両親にはそのみんなの感動が伝わることに、感動。
その夜の、主人公と父親との手話会話のシーンにまた感動です。

いろいろなことが起こって、両親や兄も、幸せは何かということを見つめ直します。
実はそういう中で、家族たちも主人公への依存から自立へと変化していることに映画を見ていて気づくでしょう。

ちょっと寒い日でしたが、心は温かく、日比谷を後にした夜でした。

コーダ あいのうた 公式サイト https://gaga.ne.jp/coda/
東京国際映画祭 公式サイト https://2022.tiff-jp.net/ja/
















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