をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

映画「1976」~東京国際映画祭今宵の1本

2022年10月27日 | 映画

©1976 cinestraction

1976 (映画)

今日は、独裁政権下だった頃のチリの状況を背景に、一人の女性が体験する緊張と恐怖を描いたストーリー。
主人公は医師の妻で裕福な生活を送る中年の女性。
海辺の別荘を訪れた彼女に、その土地の司祭が一人の青年をかくまってほしいと言われたことから、彼女の人生が緊張に包まれたものとなる。
青年をかくまうがために、主人公が経験する恐怖がひしひしと伝わってくるストーリー展開。

監督はマヌエラ・マルテッリという女性で、時代背景とともにジェンダーと家庭という視点としても捉えて検証していると言っています。
主人公のカルメン役のアリン・クーベンハイムの演技が、観客にも心理的な圧迫感を追体験させます。
(最終日に発表された東京国際映画祭各賞のうち、彼女は主演女優賞に選ばれました。)

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映画「KEIKO~目をすまして」~東京国際映画祭今宵の一作

2022年10月25日 | 映画

©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

KEIKO~目をすまして(映画)

良い映画でした。
耳に障がいを持つ女性がプロのボクサーとして歩む中で、家族や職場、ボクシングジムなど周囲の人との交流や毎日の暮らしの中で、葛藤や思いが綴られていきます。
ジムの会長が三浦友和。若いころはお芋な感じがしていましたが、年をとってからはいい味の演技者となられましたね。
主人公を温かく静かに見守る、そんな役です。
そんなボクシングジムが経営危機に陥るあたりから、主人公の心が波打ちます。
周囲の気持ちを素直に受け入れない主人公に、観客はイライラさせられるかもしれませんね。
この場面のトレーナーのような気持になるかもしれません。
でも、主人公のこの気持ちも、何か分かるのではないでしょうか。

弟との手話でのやりとりや、ライトの使い方など、ろうや耳に障がいのある人がどのように日常を送っているかもきちんと描かれているのも、見てほしいところです。弟と彼女と主人公とのやり取りなども、少しホッとさせられます。

国際映画祭の一般上映を知人に勧めましたが、もう満席でチケットが取れなかったそうです。

改めて、12月16日からロードショーが始まるとのことです。
試しに見てみてください。
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映画「あちらにいる鬼」~東京国際映画祭今宵の1本

2022年10月25日 | 映画

©2022「あちらにいる鬼」製作委員会

あちらにいる鬼 (映画)

東京国際映画祭が開幕して、最初の1本がこの作品。
「あちらにいる鬼」の主人公は、先ごろ没した瀬戸内寂聴さん。
文壇の先輩、井上光晴との不倫関係にあったころの愛憎、出家に至る過程、井上の死などが描かれる。
でも映画では、井上の奥さんの存在感が大きく感じられ、彼女が主人公とも言えるようだ。
英語の題名は2Womenと知り、納得。
すごく図太い女性だなと思わせる。この娘が原作者だからそういう描写が書けたのか。

配役は、瀬戸内晴美、のちの寂聴(役名は寂光)に寺島しのぶ。
晴美時代の顔の感じが似ているようだ。特に鼻の下から口の盛り上がり方や、歯茎など。

井上に豊川悦司。昔のきれいさが無くなり、ちょっとおっさんの汚れが出るようになって、それはそれで味が出てきていい芝居だなと思う。「半分青い」くらいから、そんな雰囲気が出てきたカンジ。
ま、「愛していると言ってくれ」は別物として大事にしまっておきますが。

井上の奥さんは広末涼子。普通というか、図太いというか。なんか合っていた感じがする。

全体的に欲を言えば、少し文壇のシーンがほしかったな、と思う。
有名だから分かるだろというのはちと乱暴。
そうすると、2人の関係のシーンがまた違ってくると思うのだが。

東京国際映画祭公式ホームページ https://2022.tiff-jp.net/ja/
「あちらにいる鬼」公式ホームページ https://happinet-phantom.com/achira-oni/
2022年11月11日より シネスイッチ銀座などでロードショー

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ベイビーブローカー(映画)

2022年06月25日 | 映画
映画「ベイビーブローカー」

海外でも著名な日本人監督の一人、是枝監督の待望の新作。
「誰も知らない」「そして父になる」「万引き家族」などの作品名は知られたところです。
本作は舞台を韓国にしており、春先にアカデミー賞受賞で騒がれた「ドライブ・マイ・カー」のように日本人キャストと混合の作品ではありません。
ちょうどカンヌ映画祭受賞でで話題な頃、一足お先に鑑賞しました。

話は、生まれたばかりの赤ちゃんをやむにやまれず育てられない人が赤ちゃんを置いていく、「赤ちゃんポスト」から始まります。
日本にも、たしか九州にあって物議をかもしたと思います。
それに目を付けて、赤ちゃんを欲しい夫婦に売ろうとする男性2人組がいて、それに赤ちゃんを捨てた母親、2人組を検挙しようと狙う女刑事2人組、小学生ぐらいの孤児の男の子が絡んで物語が進んでいきます。
それぞれの背景が映像で語られ、だんだん赤ちゃんに情が移っていくのが、なんかお人好しなのほほんとした感じを醸し出します。
でも、…で。。。。に。これは、映画館で確認ください。

グッとくるのは、赤ちゃんを巡る話だけれど、実は大人一人一人へのメッセージとして語られるシーンです。
つまり、誰もが「生まれてきて良かったんだよ」「生まれてきてくれて、ありがとう」ということ。
狂言回し的な小学生の孤児の子が、ここでいい味を出します。
(もう小学生なので、引き取られる声さえ掛からないということも描かれています)

それから、コメディっぽく描かれているけれど、実は闇が深い。
2人組の若い人の方は、どういう生い立ちかは画面にでも出てくるけど、ソ・ガンホが演じた年上の男は、いつもニコニコしていて弱そうでヘラヘラしていながら、いろいろなエピソードでちらりと語られる話や行動から、かなり闇が深い人物ではと推測されるのです。
多分、その落差をあからさまではなく、でも感じさせられる演技が、カンヌ映画祭主演男優賞の受賞理由の一つではないでしょうか。

今回も是枝監督は、他人が寄り集まってできた「家族」を見せながら、家族とは、生まれてきた命とはと、投げかけてきます。
最後も、少しモヤっとした少し明るさが見えるような、ほのかな温かさを感じるようなイメージで終わるというイメージも健在だったように思いました。(令和4年5月31日鑑賞)


令和4年6月24日から公開中。







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ナイトメア・アリー(映画)

2022年02月23日 | 映画


「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞受賞のギレルモ・デル・トロ監督が、受賞後初の作品。

 移動遊園地やサーカスなどを行う一角の見世物小屋を舞台に、暗い過去を背負った主人公の男性が拾われ、その中で本来マジックである読唇術を修得したことでそこを抜け出し華やかな上流社会のショービズへ抜け出すのだが、さらに上を目指すため、やってはいけないと言われた禁断の「幽霊ショー」(ホントなら霊視もしくは降霊術と字幕に書いてくれた方が違和感なかったのだが・・・)を行ったため、奈落へ落ちる話。

 移動遊園地や移送サーカスなどが米映画の主題や背景に描かれることが多いが、その一角にある見世物小屋がストーリーの舞台。日本人にとってはこの手のおどろおどろしさやいかがわしさは、理解できるところだろう。
最下層に置かれた獣人(ギーク)が出てきて、ストーリーのバックボーンとなる。
そして、主人公の前に3人の女性が現れ、運命が変転していく。

後半は一転して、上流階級を相手にした高級ホテルでのショーに舞台が変わる。ケイト・ブランシェットの演じる謎の女性が登場。相当な凄みがあってかつスタイリッシュな美しさに目を奪われる。
主人公も見た目や衣服は一流に変化しているが、心は…?

欲を言えば、ケイト・ブランシェットの演じる心理学者にもう一つ因縁話があれば、もっと面白いものになっただろうにとも思う。
とはいえ、ブラッドリー・クーパー、ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォーの演技や凄みは見てよかったと思わせるもの。そして舞台美術も小物も清濁とも素晴らしく雰囲気を盛り上げる。
最後、主人公は自分の運命を悟っていたんだろうなと思わせる顔。最後まで悪人になりきれない男の悲哀は、「ワンスアポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のラストシーンが思い起こされた。シチュエーションは全然違うのだが。



「ナイトメア・アリー」
2022年3月25日公開
ショービジネス界の華やかな光と甘美な闇が誘う、華麗なる迷宮
ギレルモ・デル・トロ × オールスターキャストが贈る、サスペンス・スリラー超大作
第94回アカデミー賞で、作品賞・撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞の4部門にノミネート
https://searchlightpictures.jp/movie/nightmare_alley.html
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