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ザ・ウォーカー(映画)

2010年07月17日 | 映画
© 2009 ALCON FILM FUND, LLC

映画「ザ・ウォーカー

デンゼル・ワシントン主演で、久々にゲイリー・オールドマンがエキセントリックな悪役で出ているとなれば見逃せない!と思いつつ、本業の雑誌の締め切りに追われてなかなか映画館に立ち寄れず、やっと昨日観ることができました。

設定は大きな戦争で地上にいた者はすべて閃光の中に消え、その爆発で空との間に穴が開き、紫外線が直接降り注ぎ作物もできないため、殺人を犯して持ち物を奪うことが日常茶飯事で、人肉を喰らう者も少なくない荒廃した近未来の地球という設定。
そこにただひたすら「西へ」と歩き続ける1人の男。

冒頭からチャコールグレーの画面と重低音の音楽にこの監督独自の世界観が伺えます。だって近未来エンタメにしようと思えばできる内容を、あえて乾いたストイックなものにしています。
そして、終末の際、たまたま地下にいたりして生き残った人々を暴力で縛り付けている町長がオールドマン扮するカーネギー。今はもう、字が読める人も少なくなった世界で、ある本を捜し求めている男なのです。

そしてこの街に、デンゼル・ワシントン扮するザ・ウォーカーがやってきます。カーネギーの義理の娘とのやりとりで、この本を西へ運ぶのが彼の使命なのだということが徐々に分かってきます。

もちろんこれを狙うカーネギーとのバトルになるのですが、ゴロツキ相手にウォーカーの強いこと強いこと。居合い抜きですな。しかも彼を撃ってもなかなか当たらないのがスゴイ。敵のサブメンバーも、一瞬「彼は人間か・・・?あるいは・・・」と思う場面があるのです。

キーワードはこの「本」。この本が原因で戦争が起き、すべて焼かれたとされ、人々を支配したいカーネギーはこの「本」には人々が服従する言葉が書かれているから手に入れたいと、執拗に追い求める。つまりこの本は「聖書」だったのです。

最後まで観ると、小説で言う「伝奇ロマン」ものに近いなーという感想です。キリスト教圏の人にはいろいろな伏線や示唆が映画の中で小ネタになって印象に残るんだろうなと思いました。
西にはなにがあったのか、もともと罪深い人たちが押し込められていた場所が、あらたな文明の1歩を刻む場所となるとか。
ザ・ウォーカーがただの人間だとカーネギーに言われるところとか。

<ここからネタバレにつき注意>

しかし、あの聖書のどんでん返しを知ると、ウォーカーの立ち回りは、そうだったのかと思います。
ルトガー・ハウアー主演の作品とかいろいろな作品がありますが、勝新太郎さんの座頭市のハリウッドに与えた影響は大きいんだなと思います。

そしてラスト。ウォーカーについていったカーネギーの娘の凛々しいこと。
映画館で観るのがいい映画だなと思いました。
コメント
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