徒然映画日記。

食わず嫌いは卒業し何でも観よう。思い切りネタバレありの「観た帳」です。

隠された記憶

2010年04月28日 | ★★★★
隠された記憶
おすすめ度 
原題:Cache/Hidden
製作:2005年フランス・オーストリア・イタリア・ドイツ
製作総指揮:マルガレート・メネゴス ミヒャエル・カッツ
製作:ファイト・ハイドゥシュカ
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
出演:ジュリエット・ビノシュ ダニエル・オートゥイユ
キャッチコピー:このラストカットに全世界が驚愕

人間の深層心理を鋭く切り込んだサスペンス『隠された記憶』です。

人気キャスターのジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)は、編集者の妻アン(ジュリエット・ビノシュ)と一人息子ピエロ(ダニエル・デュヴァル)の3人で幸せに暮らしています。ある日、一本のビデオテープが不気味な絵と共に送りつけられます。その後も次々と届くテープ。中にはプライベートな風景が映し出されるものもあり、夫婦は不安と恐怖を感じます。そんな中、ジョルジュは子供時代のある事件を思い出します。



閑静な住宅街に住む中流階級の家。
はじまってほぼ無音でこの映像が延々と続きます・・・・

この映像の正体は送られてきたビデオテープ。
そしてテープには不気味なイラストも添えられていました。


ビデオテープはその後も送られてきます。
内容は・・・ジョルジュの実家の外観を撮影した映像と鶏の首のイラスト。
謎のイラストはジョルジュの職場やピエロの学校に送られてきました。
たまらず夫婦は警察に相談に行きますが、まだ事件に発展しているわけではないので警察は動けないとのこと。

確信はありませんが、実はジョルジュにはひとつだけ心当たりがありました。


それはまだ彼が子供の頃の話。
1961年にフランスで起こったアルジェリア人虐殺事件。



裕福なジョルジュの家にはアルジェリア人夫婦の使用人が住んでいました。
内紛で使用人夫婦が亡くなり、息子のマジッドという少年が孤児となってしまいます。
両親は彼を養子として迎え面倒をみようとしますが、
ジョルジュはマジッドが気に入りません。
そして子供に出来る精一杯の嘘をつき、彼は家からマジッドを追い出すことに「成功」します。
彼のちょっとした悪意は、ひとりの子供を孤児院送りにし、教育の機会を奪ってしまいます。


「心当たりがあるが、言えない」

妻に話したくない彼はひたすら隠そうとします。
精神的に追い詰められて苦しいのはジョルジュだけではありません。
妻はそんな夫に苛立ちが隠せず、ふたりは次第に険悪な雰囲気に・・・。

ある日ジョルジュは疎遠になっていた母親の元をたずねます。
久し振りに会った母は寝たきりの生活になっていました。
ここでもジョルジュはマイペース。
母を思って会いに来たのではなく、
ジョルジュが聞きたいのは、あくまでもマジットの事。

そしてまた例のビデオテープが・・・。
今度は見知らぬ通りの交差点を曲がり、とあるアパートのドアが・・・。
とにかくケリをつけたいジョルジュは一人でここに行く事を決意。

実家の外観、にわとりの首のイラスト・・・。
ジョルジュの思い出したくない子供時代のエピソードを象徴する人物は

マジッドです。

ドアを開けてそこに居た初老の男は成人したマジッド。

穏やかに友好的に話すマジッドに対し、敵意丸出しで激昂するジョルジュ。
半分脅しのような言葉を吐き捨て部屋を後にします。
身に覚えのないマジッドは打ちひしがれてしまいます。

「部屋には何もなかった」と妻に嘘の報告をするジョルジュ。
しかし、部屋の様子を盗撮したビデオが送られてきて妻に嘘がバレます。
ますます深まる夫婦の絆。


そして追い討ちをかけるようにまた事件が。


息子のピエロが夜になっても帰らないのです。
友達の家に電話をかけますがどこにもいません。
誘拐されたのでは・・・と大騒ぎ。
ジョルジュが向かったのは警察、そしてマジッドにその容疑の目を向けさせます。
同じ場所に居あわせたマジッドと息子は警察に連行されます。


翌朝ピエロは友人の母親に連れてこられて事件でないことが判明。
このあたりから、ピエロにも心の変化が表れます。
男友達に夫の相談を持ちかけている母の姿に嫌悪感をあらわにし、母に反抗。
夫婦の絆どころか、家族の絆さえ危うくなってきました。

とりあえずピエロが無事で一安心のジョルジュにマジッドから連絡が。
聞けば「話がある」とのこと。
ジョルジュは再度あのアパートに。

「ビデオテープは自分じゃない」と言ったあと「これを見せるためだ」と、にわかにポケットから取り出したナイフで喉元を掻っ切ったマジッド。
その不測の事態にただただ呆然と立ち尽くすジョルジュ。
あてもなく彷徨い、辺りがすっかり暗くなったころ、妻に助けを求め、
自宅に客を招いていた妻に、ジョルジュは皆を帰すように言いつけます。
妻のアドバイスもあり警察へ行き、事情を説明。
警察も彼の主張を信じます。

その後、マジッドの息子がジョルジュの職場に押しかけます。
父親の死についての真相を確かめるために。
しかしジョルジュは開き直ったような態度で「ビデオテープ」の件を訴えます。
そんなジョルジュを見てマジッドの息子は哀れむかのように

「やましい、という事がどういうことか、あなたを見てよくわかった」

といいます。

やましい・・・・・。
そうですね。
おっしゃるとおり。
だってジョルジュは
やましいんだもの。

でもね、やましさって誰にでもあるし。
ジョルジュ最低じゃん・・・。
と思いつつも
なんだか身につまされるような気分になりました。




そしてキャッチコピーにあった問題の「衝撃のラスト」です。

ピエロの学校前。
そこにマジッドの息子がピエロに向かって何か話しかけています。
ふたりは知り合い同士だったということですね。

ビデオテープの送り主は、ジョルジュとマジッドの息子たち・・・・ということなんでしょうか。


いやいや。
エンドロール3回続けて観ちゃいました。
だって最初わからなかったんですもん(笑)。


この作品。
1.ジョルジュの家族を崩壊寸前にまで追い込んだビデオテープの送り主は誰か?というサスペンス要素
2.その昔起こったフランスとアルジェリアの関係ないしは現代にまで残るその社会問題
との二重構造になっているんですね。

サービストラックのハネケ監督のインタビューに「犯人は誰であっても、それが問題ではない」的なことをおっしゃってました。
じゃあ、あの煽る気まんまんなキャッチコピーはなんなんだい?(笑)

まぁいいか。

とにかく、この作品・・・。一筋縄ではいきません。
一人で観るとモヤモヤするので、是非このモヤモヤを共有できる人と観る事をオススメします。

前田有一の超映画批評



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