茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

おせち料理 その2

2006-01-06 00:29:33 | 季節マメ知識
 江戸時代~明治時代には正月重詰料理と正月節料理の2つがあったそうで、「東京風俗史」(明治31年刊行)には以下の通り記されている。
正月重詰料理:数の子、黒豆、昆布巻き、田作、たたきごぼうなどを煮て重箱に詰めたもの。
正月節料理:大根、人参、八つ頭、牛蒡、蒟蒻、焼豆腐、青昆布、ごまめを煮たもの。
 つまり、正月重詰料理が現在の「おせち」、正月節料理は現在のお煮〆になっていったと考えられるだろう。正月重詰料理が「おせち」と呼ばれて正月料理として日本各地に広まったのは元禄~文化年間と言われている。

 お重は五段重が基本で、詰め方は、一の重が口取りと祝儀肴、二の重が焼き物、三の重が酢の物、四(与)の重が煮物、五の重が控えの重。地方によって多少の違いはあるが料理の数と種類はおめでたい奇数とする。中国や日本では奇数が陽の数字とされ茶道でも奇数にこだわることを“奇数と偶数”の章でご紹介しているので別途お読み下さい。

 おせち同様正月料理に欠かせない、お雑煮。こちらも江戸時代頃から食べられるようになったが地方によって様々な種類がある。大きな違いは汁とお餅の形。大まかに言うと名古屋より西(関西)は白味噌か赤味噌仕立ての汁で、1つずつ手で丸められた丸餅。東(関東)は醤油ベースのすまし汁でのした餅をきりわけた角餅。地方や家庭によってお汁に入る具材も違ってくるのでこれこそ家庭の味、千差万別と言えるでしょう。皆さんのご家庭のお雑煮はどんなですか。

 さて、何故お正月におせちやお雑煮といった料理を準備するのか。
 お正月の竈の火は、年神様を迎え入れ、一緒に雑煮を頂く為のもので、他のものを煮たり焼いたりして火を汚さないように保存できる正月重詰料理を作ったのだそうです。決して主婦が正月に家事をしなくてすむようにではないそう。
 中国や台湾でも二十四節気の1つ、三月の清明節には作り置きした冷たい料理を食する「寒食」という風習があり、これは竈の神様を驚かさず、竈の火を新しくする為の食事。そういえば、京都の八坂神社でも、大晦日におけら参りといって神社で新しい火を縄につけてもらい、消えないように振り回しながら家に持ち帰り、竈に火を迎える行事がありますね。昔の人は生活の基本となる食事を作る竈や火を神聖な場所として大切にしてきたのでしょう。

 最近はおせち料理も家庭で作る家が減って、デパートや料亭でお重の予約もできるようになりましたが、日本人がその料理の奥に大切にしてきた気持ちは子供達にも伝えていきたいですね。ご馳走のない昔はおせち料理が特別な豪華な料理だったのでしょうが、今は普段もおいしいものがたくさん頂ける時代になりました。感謝しなくてはいけませんね。
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4 コメント

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火の神様 (スジャータ)
2006-01-06 12:27:35
 おせちは主婦が食事の事をしなくて良いための物と

いままで思っていました。そうですか。納得です!

 

 京都八坂神社の火種と同じようなことを

焼き物の窯を焼く時もいたします。

 お塩、お酒、海の物、山の物を窯の前に供え

数日間の窯焚きの無事を御参りしたそのロウソクの

種火を窯の中に積んだ細切りの薪に付け、

窯焚きを始めます。

 火には物質を変化させてしまうパワーが

あります。火を付ける時は 

神を感じる瞬間です。



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Unknown (albireo)
2006-01-07 13:36:56
前の記事から、続けて読ませて頂きました。



お節料理も、今日七日の七草粥も、元々は巡ってくる季節を喜んだり、自然の中にいる神様に感謝したりする、大切な行事だった筈ですね。

今は、段々と伝統的なものが失われて、変な形でグローバル化されて行っているような気もします。

どうしても、現代の暮らしの中では、昔のままというわけにも行かない部分はありますが、せめてその片鱗だけでも、自分自身の暮らしの中に、残して行きたいと思っています。
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火の神様 (m-tamago)
2006-01-08 19:12:53
スジャータさん、こんにちは。

焼き物の窯に火を入れる時の興味深いお話ありがとうございます。

火をつける時は神を感じる時、そうですね。

私たちの普段の生活ではなかなか感じられませんが、茶筅供養や自宅で古くなったお札や門松などを庭で燃やす時、私もそういう気持ちになります。

日本人はそうやっていつでも自然や神を崇めてきたのでしょうね。



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おせち (m-tamago)
2006-01-08 19:17:05
albireoさん、こんにちは。

そうですね、日本には自然や神様に感謝する行事が多いですね。今はそれがただイベント化、商売化してしまっている気がして寂しいです。

その行事の奥にある思いを忘れないように、大人は子供達に伝承していく必要があると思います。私も両親や親戚から教えてもらった行事を大事にしたいと思っています。

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