茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

日本人の身体 茶道の座り方

2008-11-26 14:26:46 | 茶道マメ知識
 朝日新聞に、毎週”心体観測 日本人の身体”と題して、武蔵野身体研究所主宰の矢田部英正氏が記事を載せている。先日の記事は茶道の世界での座り方についてであった。以前、私自身も考えた内容であり、興味深かったのでご紹介しておきます。
 見出しには「伝統文化=正坐じゃない」

<ご参考>
正座その1
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/58f57d70c636d64c09a599ff3b824534
正座その2
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/faf639f3236e75cf3479b43441e8ef8a

***以下、新聞記事よりそのまま引用***

 お茶の世界から「坐り方」を眺めると、古い書物の中にはとりわけ「崩し」を許容する懐の広さを感じる。
 徳川四代将軍家綱の時代に、幕府の茶道指南役を勤めた名茶人に片桐石州という人がいる。1665年石州は茶道師範に登用された折「石州三百箇条」と題する指南書を献上する。それは参勤交代で江戸に集まる諸大名に茶の湯を教えるいわば茶道の参考書である。
 その冒頭の第二条には「身のかね」とあって「坐り方」のことが書いてあり、当時の武家茶道の正式な坐り方が「立て膝」であったことにまず驚く。
 石州の茶は千利休の長男道安から桑山宗仙を経て伝わったものだが、三百箇条の第三条には「道安の申し分」を引いて、「坐の崩し方」についても丁寧に言及されている。
 「点前の姿勢は、本来の形はあっても、形にとらわれて窮屈な姿勢で点前をするよりも、自分の体に合った姿勢、つまり自然体で点前をすることの方がむしろよいのである」(水戸何陋発行「石州三百箇条」による現代語訳)
 千道安という人は、たいへん栄養の行き届いた人であったらしく、「立て膝」でお点前をすると大きくせり出したお腹が膝につっかえてしまうので、片膝を横に倒した「安坐」でお点前をしていたという。
 「正しい型」に容易に従うことのできない、人それぞれの事情があるのは今も昔も同じことのようで、とくに大名相手のお稽古では無理をさせてはいけない、という配慮も当然あったことだろう。
 茶道に限らず「伝統文化=正坐」という図式が自分の頭のなかにもべったりと刷り込まれていたが、格式の高い席で正坐を崩せずに、膝に傷害をかかえてしまうご婦人方を何人も見てきて、伝統文化は本来の形に戻った方がいいのではないか、という素朴な疑問が浮かんだ。

*********

 茶席でも、膝や足を悪くされた方には、椅子が準備されることも多くなってきた。足が悪いから出来ない、遠慮しなければならないのでは確かにつまらない。年を重ねたり、思わぬことで体の自由が利かず出来ないことが出てくるのはありえることで、助け合い、工夫をしながら、お稽古や茶事を続けていければいいと思う。
 日本の”道”と名のつく習いごとには正座がつきもののように思われているが、よくよく歴史を振り返ってみれば日本人の座り方も、その生活スタイルや文化の変化に伴い様々な形があったことが見えて興味深い。
 これまでの経験からして、正座すれば、背筋も伸び、気分も引き締まる、いい意味での緊張感という効果を感ぜずにはいられない。膝も柔軟な子供たちには、楽に椅子に座るスタイルだけでなく、畳の上で正座をする、胡坐をかくという日本ならではの姿勢を是非多く体験してもらいたい。






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4 コメント

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お香 (m-tamago)
2008-12-09 14:11:02
メダカの目さん、こんにちは。
昨年の流派は、志野流だったように思いますが、、、、細かいところまでは覚えておらず。
今は堅苦しく考えがちな日本文化ですが、そもそもは楽しむことから始まったものばかりですから、お楽に、という精神はわかる気がしますね。お茶の究極も”おもてなし”なわけですし~。
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Unknown (メダカの目)
2008-12-01 17:54:28
 去年体験なさったお香の流派は、どちらでしたか?志野流の事しか分かりませんが、
お香の「ご安坐」は、茶の湯(表)の、蓋置き→柄杓で「どうぞお楽に」と同じような
意味合いがあると思われます。常で、決まった時に言うようですよ。
もしお時間があれば、その時の様子を日記に書いていますので覗いて見て下さい。
返信する
Unknown (m-tamago)
2008-12-01 10:34:17
メダカの目さん、こんにちは。
お香の世界にも入られたのですね。お茶のお点前の中にもお香が取り入れられていますが、また違った静かな世界が楽しめそうですね。私も昨年初めて香会にお招きいただき、貴重な体験をし、感動しました。

>「ご安坐」と香元から声かけがあり、
これはいつもあることなのでしょうか。途中から?
茶事でも薄茶になるとゆったりとした雰囲気に変わりますが。

>古人はもっとおおらかだったのではないだろうか?
そうですね。基本や本来の形を知りつつも、それぞれの状況を受け入れる鷹揚さはどんな場面でも大切なことかもしれません。

>おばあちゃんになっても、続けていきたいですね♪
はい。わが先生のように、足が悪くなってもそれを感じさせない意欲と知識、精神力をもてるように、日々精進したいと思います。
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Unknown (メダカの目)
2008-11-28 09:14:49
 半年程前、ひょんな事からご縁を頂き、お香の世界に魅了されています。
香人口は、茶人口に比べればほんの一握り・・それ程マイナーな世界だけに
御家元や関係者は、各地を飛び回り、普及に力を尽くしていらっしゃいます。
 先日、志野流蜂谷宗苾宗匠が出香なさり、俄仕込みでしたが、一席目の正客を
させて頂きました。その席で感じたことですが、「ご安坐」と香元から声かけがあり、連客の中には男性が2名、膝の悪い方が2名居ましたが、椅子など用意され、
とても和やかな内に楽しい香席となりました。道と名のつく伝統文化は、
精神性こそ高めなければならない、奥深い世界と思いますが、お点前や所作に
関しては、古人はもっとおおらかだったのではないだろうか?と感じています。
四角四面では文化の継承は難しく、もう少し柔軟な態勢(体勢?^^;)の中で、
おばあちゃんになっても、続けていきたいですね♪

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