奈良紀行の途中ですが、昨日訪ねた「襲名記念 十六代 楽吉左衛門展」
2021年11月3日~6日 日本橋高島屋 美術画廊 開催
について書き留めておきます。
庭のように闊歩していた日本橋ですが、あれから20年近く経ち、
街は益々賑やかになったように思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/4e/dc22d09497cbe66c5c9ad843f1d2ea90.jpg)
美術画廊の前は、お祝いのお花で埋め尽くされていました。
茶道関係はもとより、茶道を習っている、関わっていると思われる芸能人の方のお名前もちらほら。
お花の写真撮影はご遠慮下さいとの張り紙もあるほどでした。
遠慮して少し離れた場所から写真を撮りました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/cc/6e4efb401a6ff1f160b15fc030e7621d.jpg)
広い会場の中に、二列の段がぐるりとできており、交互に赤楽茶碗、黒楽茶碗が飾られていました。
その数40点あまり。
ほとんどがお茶碗でしたが、獅子瓦と、花入、水指も。
図録は既に完売でした。
父である直入さんが語っていた通り。
「僕の茶碗は大ぶりだけど、息子のは慎ましい。
僕のように表立った激しさではなく、静けさの中にも力強くあるものを知りたいと思っているようです。」
楽 十五代 直入 新聞記事から
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/53eae8f1fb83b12b61394631443d1f59
手にすっぽりと収まりそうな、優しい温かみのある形、姿のお茶碗がたくさん。
好きだなあ、これでお茶を飲んでみたいなあと思うお茶碗がいくつかありました。
釉薬がかからず下の土の色が見えているお茶碗も結構あり、
土の色が結構違うことが驚きでした。
この土は、代々当主が子孫のために探し、残している大切なもの。
直入さんが使っているのは曾祖父12代弘入が見つけ、100年近く寝かせていたもので、あとわずかでなくなると語っていました。
とすると、当代16代が使っているのは13代の見つけた土なのかな?などと想像しながら拝見。
以前、黒田正玄さんが、子孫のためにいい竹を探すのも大切な仕事と話していたことを思い出しました。
先祖が心を込めて時間をかけて見つけてくれた材料を使って、命を吹き込み、新しいお道具が生まれていくんですね。
会場には、三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)当代家元からのお祝いの掛軸が飾られていました。
表千家は「慶雲 生五彩」
裏千家は「清風 生八極」
武者小路千家は「雪月花」
お祝いの言葉であろう、禅語であろうことは想像できましたが、五彩を生ず、八極を生ずというのがよくわからなかったので、美術画廊の方に伺いました。
京都三千家を担当されている方で、柔らかな京ことばで、説明をして下さった後、
言葉そのものより、お軸の一文字や中廻し、軸先などもご覧になるといいですよ、
とのアドバイス。
表千家の表装は当代のお好みの裂地で、軸先は永楽→となれば、表装したのは奥村家ですね?
裏千家の軸先は、ツボツボの蒔絵
などなど、楽茶碗以外にも勉強させて頂きました。
茶碗の裏には、作者の刻印があり、
ある時期から楽茶碗には「楽」の印が押されているのが通例です。
飾られているお茶碗は触ることができないので、
厚かましく、当代の印を拝見したいのですがとお願いしたところ、裏返して見せて下さいました。
展覧会の入り口には大徳寺の高田明甫老師の書かれた「楽」の字の掛軸が飾られており、
その字が、十六代の印になっているのだそう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/eb/17149e5211d584f08d3dbaa4042f40b4.jpg)
沢山のお茶碗が並んでいましたが、どれも、黒茶碗、赤茶碗とだけ。
立派なお茶碗には銘がつきものですが、
新しい楽茶碗は、購入した方がつけたり、
購入した方が家元に依頼して付けて頂いたり、
あるいは、後世の人がつけたりするもので、
現時点では、ただただ黒茶碗、赤茶碗なのでした。
購入できない私も拝見しながら、この茶碗の銘はこうしようと想像する自由が
与えられているということですね。
最後に、色々知識を聞くのもいいけれど、見て感じることも大切にとのお言葉を頂き、
会場をあとにしました。
すばらしい時間を過ごさせて頂きました。
会場にはちょうど武者小路千家の若宗匠がお夫婦でいらしていました。
インスタフォローしています!と話しかけたいところでしたが(ミーハー)、
さすがに周囲に大勢いらしたので、お姿を見るだけに留めました。
美術画廊の方と茶碗の拝見の仕方についてお話されていて、
端からこっそり聞いてお勉強させて頂きました。
なるほどなるほど。
これもまた一期一会でしょうか。
美しいお茶碗を沢山見た後、おなかが空いたので、
日本橋にあると聞いていた知り合いの喫茶店
「分身ロボットカフェ DAWN」に向かうことにしました。
これが、本当に刺激的だったので、また後日ご紹介します。
お楽しみに!
<ご参考>
襲名記念!新たな一歩を踏み出した16代樂吉左衞門が語る、初個展への想い