茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

春らしいモチーフでも注意が必要 ”蝶々” ”花筏” ”夢”

2022-04-04 20:50:31 | 茶の湯エッセイ
 ここのところ、雨続き、寒い日が続いていますが、三寒四温で季節は徐々に移っているようです。
 近所の満開の桜もここ数日の雨で大分散ってしまいました。

   


 茶席においても、春らしいモチーフのものがよく登場する季節。
例えば、”桜””蝶々”

 以前、桜の打ち菓子と蝶々の琥珀の盛り方について書いたことがありました。
干菓子の並べ方
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/a7e46d2a75eaf97be1fd30b6e99ad481

 ”蝶々”も”桜”もとても美しくかわいらしくもあるので、つい春らしい!と
ワクワクしてしまいますが、実は使う時には注意が必要です。
 茶道の世界では、どちらも儚さを表わすものでもあるからです。


 特に、”蝶々”は、追善茶会によく使われます。
 これは、中国の荘子が詠んだ詩に由来します。
 荘子がある日見た夢の中で蝶々がひらひらと飛び、いつの間にか自分自身も蝶になって、
渾然として区別がつかなくなってしまったというもの。
実体の無さ=人生の儚さ=死に繋がっています。

 この荘子の逸話からくる「荘子香合」という染付の形物香合があり、追善の代表的な道具となっています。
 蝶々に足がはえているのは、荘子が蝶々と一体になってしまったのを表現しているのでしょう。
最初に見たときはびっくりし、逸話を聞いてなるほどな~と思ったものです。


 ”夢”という言葉の掛軸も追善の茶会ではよく見られます。
 ”夢”といえば、一般には希望や目標を表わす明るいイメージの言葉、
春にも使われそうな言葉ですが、お茶の世界ではそうとばかりは言えません。

 茶席のテーマ次第ですが、”夢”や”蝶々”という言葉がついた茶道具を使う時には気を付ける必要があります。


 もうひとつ、 ”桜”はそれこそ沢山のお道具におとしこまれています。
そのほとんどは春を表わす風景として問題ありませんが、”花筏”だけは注意が必要です。

花筏
https://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/a0c1a9674713d810bd366260d2ee84cd

 
 一見美しい言葉もその奥には色々な意味や逸話があって、日本語の奥深さを感じます。
季節の茶道具に触れていると、そういった様々な由来を知ることができて、感動します。

 未だに茶道具売り場を見ていて、この時期に、このモチーフの道具があるのは何故だろう?と
思うことがあります。
 一年に一度しかお目にかかれない道具もあって、毎年、色々な道具と出会うことが新たな学びにつながっています。


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