139頁
(つづき)ちょっとの間だけ、仮定してください、私がジェロームに、私はすべてを知りぬいている、と言うとする、と。万が一にでも、彼がこの状況を受け入れ、そして、あなたたちの関係が続く、としましょう。それで、あなたの強く感じている混乱が雲散霧消するでしょうか?
(ヴィオレット) そうは思いませんわ。
(アリアーヌ) そうでしょうとも! あなたは罪悪感からご自分を解放するには至っていないのですからね。あなたに重くのしかかるその嘘は、私があなたに課す懲罰だということにしておきましょう — この過ちにたいする。もっとも、そんな過ちを認めることは、私は拒否しますけれども。
(ヴィオレット) 負けましたわ。(長い沈黙。)
第十二場
同上の人物、ジェローム
(アリアーヌ) あなたの記事は書き終えたの? (少しわざとらしい快活さで。) ねえ、きょうは私たち、仕事しなかったわ。何が私たちを捉えたのか分からないの。ずっとおしゃべりしていたのよ。
140頁
(ジェローム、無理につくった様子で。) わかってるよ。
(アリアーヌ、ヴィオレットに。) もし本当にあなたがご自分のプレイエルを売らねばならないのでしたら、私があなたから、それを、ロニーのために買っていけない理由はないでしょう? (ジェロームの動揺。) 私のガヴォーはどうしちゃったのかしら。ほんとに音程が狂ってるわ。
(ジェローム) それが名案だという気はしないな。
(ヴィオレット) わたしも同感です。できません、ほんとうに…
(アリアーヌ、笑って。) あなたたちは二人とも、これが名案ではない理由をどう私に言ったものか、とても苦労しているようね。反対に、私が熟慮するほど、この考えは素晴らしいように私には思えるわ。
(ジェローム) あらためて言うけど、ぼくたちは賛成しないよ。
(アリアーヌ) なんということでしょう、どうして好き好んで生を自分たちにとって複雑なものにする必要があるのでしょう! すべてはとても単純にすることが出来るのに、とても単純に…
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第三幕
第一幕と同じ舞台装置。
(142頁空白)
143頁
第一場
ヴィオレット、フェルナンド
(フェルナンド) 私に言わせれば、あなたは気管支炎の問題を深刻に考え過ぎなのよ。あの女医さんは警報屋だわ。最初の日から、私はそれをあなたに言っているでしょ。女たちというのはね、冷静さが全然ないのよ。
(ヴィオレット) わたしの決心はついているわ。あの子が落ち着いたらすぐに、わたし、あの子をサナトリウムへ入れるわ。
(フェルナンド) あなたがバシニーとあんな馬鹿馬鹿しい仲たがいをしていなければ、彼はもうパウルス医師を私たちのところへ寄越しているわ。
(ヴィオレット) 藪医者のひとりでしかありえないわ、彼の友だちのなかに入っているんだから。それから、おねがいだから、もうあの人物のことはわたしに話さないで。
(フェルナンド) 解る種類のものなの?(つづく)
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