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(セルジュ) このところ、もう眠れないんだ。不幸、事故… 元気になれなくちゃならない。だけどきみたちのせいである場合、すべてを自分たちで台無しにした場合、それも愚かさによって… あるいは…
(ヴィオレット、悲しそうに。) 台無しにするようなものは何も残っていなかったと思うわよ。
(セルジュ) ただ愚かさによってだけじゃなく…、卑劣さによって…
(ヴィオレット) 何をまだ探そうというの?
(セルジュ) 思い出せよ、きみがスコラでコンサートを開いた晩、彼ら全員、きみを讃えに来た時のことを、きみがひとつの… 真の… 成功の路を歩み始めたと、皆が信じることができた時のことを。
(ヴィオレット) 何ですって?
(セルジュ) ぼくがどんなにきみを恨んだか、きみに言えない… きみはもう、ぼくに注意を向けなかった。そして翌日、きみは放心していて、雲の中にいるみたいだった… ぼくは独りごちた、人生は我慢のできるものじゃないのだろう、と。その日だよ、ぼくがシュザンヌに初めて、ぼくと結婚する気があるかどうか、訊ねたのは… これは伝染… すまん。
(ヴィオレット) かわいそうなセルジュ!
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(セルジュ) きみは理解してくれるよね、昔、ぼくが最初の賞を取った時、ぼくは自分が理想の、真の…名手になるだろうと、ひじょうに期待していた。もっとも、はっきりしていることは、もしぼくたちがこの不潔な時代に生きているのでなければ、ということだ… きみはぼくのことを法外に恨むということはないよね?… ぼくはきみのことをもっと嫌にはならないよね?
(ヴィオレット) まず、わたし、あなたが言ったばかりのあなたの気持は、分かっていたわ… そして、わたしにそれを告白したあなたは勇気があるわ…
(セルジュ) 勇気じゃないんだよ… 手紙の通りさ。
(ヴィオレット) その手紙のことはもう話さないようにしないこと?
(セルジュ) きみは、ぼくを許さないと言ったよ。
(ヴィオレット) わたし、矜持に過ぎたのよ。言い張り過ぎたわ。
(セルジュ) どういうことなのかい?
(ヴィオレット) もうずっと以前に、無礼を許すことは徳ではなくなっているの。ふつうの人々のことを言っているのよ… わたし、時々思うのだけれど、ただひとつの罪しかないのね、それは、安易さという罪よ。
(セルジュ) 芸術家にとっては…
(ヴィオレット) 芸術家のことを言っているのではないわ。(つづく)
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(つづき)人生のことを言っているのよ。わたしがぞっとする言葉があるとしたら、それは、「仕方のないものとして受け入れる」、という言葉よ。何てこと! わたしに、他の人々と同じことをすべて押しつけることが出来るだろうなんて。
(セルジュ) きみはぼくに何か隠してるのかい?
(ヴィオレット) いけないセルジュね。どうしてわたしが、自分にのしかかっていることのすべてを、あなたに言わなければならないの? それは心の広さでも、有益なことでもないわ。
(セルジュ) モニクのことについては?
(ヴィオレット) いいえ。現在わたしに気懸かりなのは、モニクのことではないと、あなたに確約します…
(セルジュ) 他の、ぼくにとって恥ずかしいことがあるんだ… このところずっと、ぼくが来ていたのは、ほんとうはあの子のためじゃないんだ。それはむしろひとつの口実だったんだ。ただ、きみは分かっている、どんなにぼくが… とうとう自問するようになったのは、あの子の病気を自分のために利用することで、ぼくはあの子を不幸にしたのではないか、ということなんだ。
(ヴィオレット) 哀れなひとだこと!
(セルジュ) 時々ぼくは自分のことを、成長しなかった男のようだと思うことがある。まるで、ぼくの成長が、誰もそれに気づくことなく、止まっていたみたいに… そうだよ、多分、ぼくが賞を得た時だよ。
(ヴィオレット) あなたは、あの頃、すごく疲れていたわね…
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