著者は宮部みゆき。
最近、宮部さんの本を読んでいないなぁ…と思っていたところ、書店の店頭で見つけて購入。
主人公の笙之助を取り巻く家族・師匠・上役・藩・長屋の住人・差配人・貸本屋などの人々の
事件と暮らしの物語。
宮部さんの作品は、どこか薄暗い「ざらり」とした感情が渦巻いています。
私が読み物の面白さを感じるのはこの「ざらり」の部分がどれだけ自分の琴線に触れるか、
ということなのかもしれません。
人間は、表面上の感情の他に心根というか、心の奥底に感じている部分があるのです。
その心の奥底にある感情を表に出しやすい人が「直情的」と言われる人なのでしょう。
ところが、その奥底にあるものはそうそう多くの人が表に出すわけではありません。
でも、読み物の中ではその奥底にある感情の変遷を書き表さないと読者を置いてきぼりにします。
宮部さんの作品を読むと、この心の奥底の感情が本当に丁寧に書かれていて、
いつも夢中で読んでしまうのです。
ことに今回は季節の移ろいの描写が本当に見事です。
そして一つ一つの伏線を丁寧に拾い上げて、一気にラストスパートをかけるこの表現は、
本当に見事と感服です。
たしか数年前に「おそろし」を読んだのですが、
この作品も伏線を拾って、一気にラストスパートの表現だったのですが、
おもしろみにかける部分がありました。伏線の拾い方が少々雑に感じたのです。
なぜそんな風に感じたのかは忘れましたが「桜ほうさら」を読んで、
宮部さんの作品はやっぱりこの丁寧な伏線拾いが面白いのだと感じます。
さて、この作品、桜の時期に読みたかったと思う一方で、秋に読んでも良かったかと。
(ラストシーンは紅葉のシーズンだから)
この初夏のさわやかな5月末に読むには少しばかり時期を逸していた感があります。
こればかりは、仕方がありませんね。
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