
いったい何日雨が降っていたのかと
ズイブン降っていたような気になるのは
一日の間に降ったり止んだり、それもけっこう強い雨足の日照雨。そうかと思うと背後から襲いかかるように黒雲が地響きする雷鳴とともない一気にやってきて。視界を塞ぐ豪雨。そしてパッと止み、魅惑の秋の澄んだ青空に白い雲。
今日は久しぶりに上空雲ひとつない青空。アテにならないけれど、天気予報を見るとこの先またまた曇り空がつづくとか。今日しかないと、決心して冬服の注文に。
「雨雲洋服屋」の昔ながらの重い頑丈な木枠のフランス風なガラス戸の真鍮のバーをしっかり掴んで押し開けると、カウンターに仕立て職人でもある主人が今日届けられたらしい雨雲を、裁ちバサミでてぎわよく裁断していた。
「おや、いらっしゃいませ。さすがですね。秋の長雨で塵などがきれいに落ち、そして今日の陽射しで多少乾燥した雨雲生地が入ったタイミングで。湿りすぎず、熱すぎない、そして軽すぎず重すぎずの最高の冬コートの品質です。わたしも、今年はあまり天候が不順で安定せず、あきらめていたのですが。西日本の晴天を聞いて採集してもらいました。それに台風のテーストもはいっているから、得難い生地に」話しつつ、手は一時も休んでいない。私とどうようにこの日を狙ってきた次のお客が扉を押す音が。羽ばたきが聞こえ、大天使と