217『自然と人間の歴史・世界篇』メンデルスゾーンとサンサーンス
フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847)は、ドイツのロマン派の作曲家して演奏家、それに指揮者でも活躍した。祖父は神の存在を強調するユダヤ系哲学者、ベルリンの裕福な銀行家の家庭に生まれた。10歳にして、ピアノの名手、作曲も手がける。最近のことだが、14歳の時に作曲したといわれる交響曲が見つかったという。
その短い人生のあいだに、5つの交響曲、演奏会序曲、2つのバイオリン協奏曲、2つのピアノ協奏曲などを書いた。その死後に明らかになった作品も多い。殊にバイオリン協奏曲ホ短調」は、陰に日向に繰り返し透き通るような調べが際立っている。
美しい旋律には、心を打たれる。人格は温厚であり、気むずかしくなかったという。社会的な音楽普及者としても知られ、ライプチヒのゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者として、世に忘れられようとしていたバッハの「マタイ受難曲」の再演に力を尽くした。
サンサーンス(1839~1921)は、フランスの作曲家にして演奏家。変幻自在な曲調が特徴だ。詩や絵画、天文学そして数学などにも精通していたという。
1873年の37歳の時、「チェロ協奏曲第1番」を書いた。情感溢れる中にも、演奏者(ソリスト)の微細な技術が映えるようになっている。5曲の交響曲、交響詩、2曲の管弦楽曲を書いた。その中の組曲「動物の謝肉祭」より「白鳥」は、いかにも華麗、優美だ。この中では、独創的なチェロの調べには優美さが感じられる。同じフランスのビゼーが作曲した管弦楽曲「アルルの女組曲」とともに現代に人気を博する。
宗教曲「アヴェ・マリア」は、教会のオルガニストとして生計を立てていたサンサーンスが、演奏者や歌手の編成に合わせて5つをつくったという。歌い手(男性のテナー)に「めでたしマリアよ、主はあなたとともに。あなたのお腹の子イエス」云々といわせる。また、「旧約聖書」にちなみ、オペラ「サムソンとデリラ」より「バッカナール」では、古代イスラエルの英雄を讃え、オリエントの雰囲気も醸し出す。1908年、「ギーズ公の暗殺」という映画音楽も書いた。「魚が水の中で生きているように、私は音楽の中で生きている」というのは、いかにも頷ける。
(続く)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆