ある町では、もう桜も咲いて今頃は花見の客もどっと外へ繰り出すころでしょうか。
お彼岸の日に、ぼくのブログも春のような表紙に衣替えを決行いたしました。
北国では、これから1か月以上もたって桜の花のことが話題になるのでしょうか。
あれは今から、そうね10年近くも前のことになりますか、弘前の桜を見に出かけたことがあります。時は5月のゴールデンウィークの少し前だったかと。とにかく宿もとれ、岩木山を眺めながらの初めての町に入る、これも旅の楽しみ、と喜びながらいい感じで始まった旅でした。
ホテルの駐車場に車を乗り入れ、フロントの係りのいうままにとにかくチェックイン。
係りの人が言うのには、車に鍵をかけないで置いておいてくれということでした。部屋に入ってから用事を思い出し、パーキングのわが車に戻ると、すべての荷物を車から部屋に移し出したわけでもなし、急に心配になり、鍵をかけぬまま長い時間放っておかれることが心配になって、とにかくホテルにちょいとそのことを言ったのです。さあ、大変、怒り出しまして、別にぼくが、ではないですよ。そんなら、泊まらなくていいからとなぜか変なことになりました。半月前に予約も取って旅の最初の夜を過ごすはずになっていた宿が急きょダメになったのです。カメラマンですから、多くの機材を積んでいて、やはり心配なわけです。
ううむ、これが津軽人の 「じょっぱり」というものなのかという体験は、何年も後になって出てきたぼくなりの感想であり、実に困った事態になった、そんなことがありました。
一般的に言って、東北人(とうほくびと)は嫌いじゃないけれど、どこか、サービスにおいて違うんだよねえ、とは思っていてもなかなか言えることではありません。頑固すぎるというのか、商売下手というのか、もしこれが関西のホテルなら考えにくいことではないでしょうか。せっかく泊まってくれる客を、自分のミスでカチンと来て?出て行ってくれとばかりに手のひらを返すように言うでしょうか?
言っておきますが、弘前の桜は、最高に美しいものでした。見事なものでした。
城下町の街の様子もすっかり好きになりました。コーヒー店がたくさんあって、魅力的な喫茶店も、たちまち数点見つけたほどなのです。ふらりと入ったお店でいただいた食事も安くて美味しかった。それに何より人々が親切でいい感じでした。
いきなり、泊まる宿に困ったぼくは、その夜あちこち電話して苦労して見つけた宿で眠ったことです。どこだと思います?なんと、パチンコ屋さんの2階だったか、普通の和室の大きな部屋に休んだことでした。あそこは、旅館だったのだろうか?電話帳で見つけたのですから、普通の旅館だったのでしょうが、不思議な思い出をしたことがあります。
それでも、弘前の桜の見事なことと、なぜか弘前城の屋台のおでんが美味しかったことを昨日のことのように思い出すのです。
エッセイ 石郷岡まさを