2015年以来一曲づつ続けてきたベートーヴェン交響曲全曲演奏を完結する記念すべき演奏会だ。本来2020年4月完結の予定だったが、それがコロナ禍で今回に延期されたものである。ただし、今回はリゲティ等の斬新な現代曲との組み合わせはなく、シューマンの比較的演奏会で聴かれることが珍しい「マンフレッド」序曲、それとバイオリン協奏曲ニ短調との組み合わせとなった。その意図は私などにはどうも判らず仕舞いだ。ともあれまずは序曲だが、同じ音型の繰り返しと、どこか不自然なオーケストレーション。もちろん細部に注力した表現をしまくるノットには敬意を表するが、さすがのノットでも如何ともし難いという感じ。続いてのアンティエ・ヴァイトハースを迎えたバイオリン協奏曲も、やはり曲としての纏まりや冗長さには疑問があるものの、ここではソリストが曲を曲以上に聴かせた感がある。2001年のペーター・グライナー製のバイオリンがよく鳴り、そのまるで話しかけられているような弾きぶりに思わず耳を傾けずにはいられないのだ。細やかに、じっくりと弾き進むその音楽は、心の襞にまとわりつき、聞く者の心を別世界に運んでくれた。細やかさを尽くしたアンコールのBach無伴奏パルティータでは、そんなヴァイトハースの世界が全開した。最後はヴィブラートを抑えてすきりとスタイリッシュに響くベートーヴェンの交響曲第2番。とはいえストレートの快速調ではなく、ちょっとスピードを落として続くメロディをフワッと浮き上がらせるような所もあり、時代に挑戦するような過激なスタイルで登場した「古楽スタイル」の一つの落ち着き先を聞かせてもらったような爽やかな演奏だった。とは言えそこに先鋭的なこの作曲家の音楽を十分に聞き取ることは出来た。
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