小林壱成とグレブ・ニキティン、二人のコンマスを揃えたこの日の体制に、自ずと東響のこの舞台にかける唯ならぬ意気込みが感じられる演奏会であった。指揮は音楽監督のジョナサン・ノット、そしてピアノ独奏には、体調不良で来日できなくなったニコラ・アンゲリッシュに代わり、折りから滞在中のゲルハルト・オピッツを代役で迎えた。一曲目に据えられたブラームスのピアノ協奏曲第2番変ロ長調では、泰然自若と弾き進むオピッツの独奏と、表現力豊かに歌い抜くノットの指揮が奇妙な対照のうちに不思議と溶け合い、実に感動深い音楽となった。美しい音色のホルンソロも見事、更に木管の表現力の豊かさは日本のオケの標準を遥かに超えていた。三楽章で清廉かつ流麗なチェロ・ソロを聴かせた伊藤文嗣をオピッツも大きな拍手で称えていた。休憩後はルストワフスキーの「管弦楽のための協奏曲」。東響は2014年の10月にもウルバンスキーの指揮でこの20世紀の古典たる名曲をプログラムに載せている。その時は瑞々しく綺麗に整った演奏だったと記憶するが、今回は前半のブラームスを上回る鮮烈な演奏だった。ノットは獅子奮迅とさえ言えるほどの動きで東響の秀でた機能性を十二分に駆使しつつ、作曲者の複雑なオーケストレーションを読み解き、それぞれ性格の異なった三つの楽章を見事に描き分けた。ここでも昨今の東響の各パートの技量の確かさは発揮され、”協奏曲”という名称を実感できる「自律的」なオーケストラの響を堪能できた。
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