御年81歳になる当団桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎を今シーズン初めて定期に迎えた演奏会だ。曲目はシューマンの交響曲第1番変ロ長調「春」作品38と同じく2番ハ長調作品61の二曲。来年の6月定期で3番「ライン」と4番を演ってシリーズを完結することになる。シューマンと言えばドイツ音楽の中心的な存在だが、飯守のシューマンは珍しいと言えるのではないだろうか。まさに満を持してのシューマン・シリーズである。更にはその交響曲を二つ合わせて一晩にするプログラムも珍しいが、ある意味それは自信の表れとも言えるかもしれない。些か覚束ない足取りで登場したマエストロだが、遅滞が一切ない音楽の足取りは実に若々しいことに驚かされる。1番では、前進するエネルギーに満ちた軽快なテンポ感と明快なアーティキュレーションに、この時期の作曲者の幸福感が溢れ出る。内声部まで最適のバランスで鳴るので、よく言われるシューマンのオーケストレーションの弱さが露呈しないところが実に見事だ。休憩後の2番は幾分か内省的な音楽だが、決して湿っぽくならずに、最後は鮮やかな光明を見せつつ結ばれた。全体を通して、マエストロのシューマンに寄せる熱き思いを忠実に汲み取り、それを真摯に音楽表現に結実させたシティー・フィルはどんなに賞賛されても、賞賛され過ぎということはないだろう。それほど当夜のシティ・フィルは凄かった。瑞々しく冴え冴えとした弦も、安定の金管も、ティンパニの打ち込みも素晴らしかったが、とりわけ木管アンサンブルの見事さは、今回のシューマン演奏の要だったと言って良いだろう。演奏後の奏者達の美しい笑顔はまさに音楽の喜びそのもので、こちらも幸福を分けてもらった思いだった。果てることなく続く大きな拍手に、マエストロのソロ・アンコールがあった。
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