ヴェルディをひたすら愛する山島達夫氏により創設されたヴェルディ上演専門のアリドラーテ歌劇団によるヴェルディ作曲「シチリアの晩鐘」の”バレエ〈四季〉完全版を伴う東日本初演”である。全5幕の「グランドオペラ」で、当日の演奏時間は4時間半を超えた。配られたプログラムにはカラーイラスト付きの懇切丁寧な筋書きが添えられていて山島氏の「ヴィルディ愛」をひしひしと感じた。主要配役はエレナに石上朋美、モンフォルテに須藤慎吾、アッリーゴに村上敏明、プローチダにデニス・ビシュニャと、藤原歌劇団のベテラン勢で固められ、それに大規模な合唱とバレエが加わった。とにかく重鎮の須藤と村上が全体を牽引、とりわけ第三幕のモンフォルテが孤独を歌うアリア「腕には富を」とそれに続く二重唱は聞き物だった。石上も最初はビブラートの多様が気になったが後半には改善されていった。バレエを考慮してか新国中劇場の舞台を一杯に使ったが装置がほぼ無いので、ビジュアル的には散漫でとても寂しい印象を与えたが、最後のドンデン返しの大反乱の結末のためにも大スペースが必要だったのかもしれない。創設者の山島達夫指揮のオケ伴にはもう少し精緻な音楽を望みたかったが、ここまで「愛」を貫いた大作上演には心からの敬意を表したい。しかし2003年びわ湖ホールでの若杉弘による日本初演の時も感じたことだが、結末があまりにも唐突すぎる。今回も突然の大反乱と殺戮に呆気に取られているうちに幕が降りた。ヴェルディさんどうにかならなかったのだろうか。
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