仁さんが日本へ発ってしまってからというもの、彼一色だった私のハートは色褪せてきた。
不意に、機を同じくしてジョーが連絡をよこした。
ポッカリと空いた穴に、スッポリと彼が入り込むのは造作無かった。
何しろ私は西野カナだったのだから。
ジョーと私は今までよりも頻繁に、いや、毎日やり取りをするようになった。
絵文字だけのメッセージをもらってから2ヶ月ほど経った頃だろうか。
ジョーに『僕ら、いつ電話できる?』と訊かれた。
優しくて賢い
だけど、私たちにはとても大きな障害があった。
時差だ。
当時彼と私が住んでいたところは半球さえ逆で、時差は5時間。
5時間も違うと何が困るって、こちらがアフターファイブになる頃にあちらは昼休憩。
あちらがようやくフリータイムの頃には、こちらは真夜中なのだ。
満足に会話する時間を取る為には、週末を使うしかない。
週末は週末でリアルライフに忙しい。
リア充というには程遠いが、週末しか休みがないのだからある程度忙しいのは当たり前だ。
そんなこんなで苦戦したものの、なんとか初めてのドッキドキLOVEコールをマネージする事が出来た。
どちらでも良かったのだけど、どちらともなくテレビ電話をすることになった。
時刻はこちらの22時。あちらの夕方だ。
化粧もそのままに携帯を握りしめ、彼からの着信を待った。
トゥルルルルル
ドキドキを悟られないように気をつけながら電話に出た。
「ハロー?」
すぐに鳥肌が立ちそうなくらい気持ち良い声が飛び込んできた。
「Hi, ボニータ」
かっ
カッコイィィィィィィ!!!
ハンサムな人間って、声もハンサムなんだなぁ。
と、私が相田みつをになっているのも知らず、ジョーは素敵ボイスで話し続けた。
無論、お顔は期待通りの超ハンサム様だ。
ジョーのどこが魅力的かっていうと、そのハンサムフェイス&ボイスは勿論だけれど、
温厚で優しい話し方にも言及したい。
電話口の彼はチャットの時よりも饒舌だった。
それは決して耳障りではなく、落ち着きがあって心地よかった。
きちんとこちらの話を聞いてくれるし、否定的な感想はあまり言わない。
自分の似たようなケースについて話してくれ、気遣いがある人だと感じた。
当たり前のことだけれど、見るならハンサムがいい。
話すなら気持ちの良い人がいい。
どっちもクリア出来る人なら、どんなに話しても楽しいに決まってる。
それは今まで私の世界を染めていた仁さんのそれとは全く違っていて。
仁さんはもっと明るくて、正直だ。
疑問に思う事があったらとことん追及してくるし、デモ、デモ、としつこく感じる時があった。
その分彼の同意が本物かどうかは判断に易く、嬉しく感じる時もあった。
ただこうして改めて比べてみると、仁さんはとても子供っぽい。
年齢で言えば2つか3つしか変わらなかったが、人となりは数字ではわからないのだ。
『今日はすごく楽しかったわ。ありがとう』
電話を切ってすぐ、私はそうしたためた。
すぐにジョーも返事をくれた。
『僕もだよ』
『私、一時間も経ってるなんて気づかなかったわ』
『僕も(笑)』
ふふっと、思わず微笑むと入力中サインが点いた。
ジョーが何か続けて言おうとしているのだ。
ピロリン
『メイサ、すごく綺麗だったよ』
ありがとう!ありがとうサポーターの皆さん!!!
まだ見ぬサポーターに感謝しつつ、私は『本当に?あなたこそすごくカッコよかったわ』と♡たっぷりに返信した。
すぐにまたジョーは言った。
『勿論本当だよ。それに僕は頭がいい女の子が好きなんだ』
『嬉しい。私もあなたの知的なところがとても素敵だと思っていたの…』
『君はすごく魅力的だよ。ルックスで言えば、特に……
その小さい鼻が好きだな』
(΄◉◞౪◟◉`)
コラーーーーーーーー!(笑)
と、しっかり突っ込んでおいたが、まぁ事実私はアジア人らしーいお顔をしているし、何も言えまい。
そしてジョーは信じられないくらい高くて綺麗な鼻をしているのだ。
時に、ここまで読めば誰しもわかると思うが、私は元来気の多い人間だ。
一応言い訳をするけど、これでもお尻は重い方だったと思う。
ま、お尻の重さで女の良し悪しは決まらないけど。
おっと、脱線しそうだ。
とにかく、ジョーは物凄く魅力的な男だった。
ジョーも自分とはかけ離れた
ただ、私達には時差と距離という巨大な障害があり、それは時に凶悪なほどに私達の愛(えっ?)を妨害した。
その話は、また今度♡