メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

鼻の大きさとお尻の話

2018-06-29 09:58:48 | ジョー

仁さんが日本へ発ってしまってからというもの、彼一色だった私のハートは色褪せてきた。
不意に、機を同じくしてジョーが連絡をよこした。
ポッカリと空いた穴に、スッポリと彼が入り込むのは造作無かった。
何しろ私は西野カナだったのだから。
ジョーと私は今までよりも頻繁に、いや、毎日やり取りをするようになった。
絵文字だけのメッセージをもらってから2ヶ月ほど経った頃だろうか。
ジョーに『僕ら、いつ電話できる?』と訊かれた。
優しくて賢いそして何よりハンサムな彼との電話なんて、今すぐしたいに決まっている。
だけど、私たちにはとても大きな障害があった。
時差だ。




当時彼と私が住んでいたところは半球さえ逆で、時差は5時間。
5時間も違うと何が困るって、こちらがアフターファイブになる頃にあちらは昼休憩。
あちらがようやくフリータイムの頃には、こちらは真夜中なのだ。
満足に会話する時間を取る為には、週末を使うしかない。
週末は週末でリアルライフに忙しい。
リア充というには程遠いが、週末しか休みがないのだからある程度忙しいのは当たり前だ。
そんなこんなで苦戦したものの、なんとか初めてのドッキドキLOVEコールをマネージする事が出来た。
どちらでも良かったのだけど、どちらともなくテレビ電話をすることになった。
時刻はこちらの22時。あちらの夕方だ。
化粧もそのままに携帯を握りしめ、彼からの着信を待った。







トゥルルルルル







ドキドキを悟られないように気をつけながら電話に出た。








「ハロー?」







すぐに鳥肌が立ちそうなくらい気持ち良い声が飛び込んできた。






「Hi, ボニータ」






かっ





カッコイィィィィィィ!!!






ハンサムな人間って、声もハンサムなんだなぁ。
と、私が相田みつをになっているのも知らず、ジョーは素敵ボイスで話し続けた。
無論、お顔は期待通りの超ハンサム様だ。
ジョーのどこが魅力的かっていうと、そのハンサムフェイス&ボイスは勿論だけれど、
温厚で優しい話し方にも言及したい。
電話口の彼はチャットの時よりも饒舌だった。
それは決して耳障りではなく、落ち着きがあって心地よかった。
きちんとこちらの話を聞いてくれるし、否定的な感想はあまり言わない。
自分の似たようなケースについて話してくれ、気遣いがある人だと感じた。
当たり前のことだけれど、見るならハンサムがいい。
話すなら気持ちの良い人がいい。
どっちもクリア出来る人なら、どんなに話しても楽しいに決まってる。




それは今まで私の世界を染めていた仁さんのそれとは全く違っていて。
仁さんはもっと明るくて、正直だ。
疑問に思う事があったらとことん追及してくるし、デモ、デモ、としつこく感じる時があった。
その分彼の同意が本物かどうかは判断に易く、嬉しく感じる時もあった。
ただこうして改めて比べてみると、仁さんはとても子供っぽい。
年齢で言えば2つか3つしか変わらなかったが、人となりは数字ではわからないのだ。






『今日はすごく楽しかったわ。ありがとう』





電話を切ってすぐ、私はそうしたためた。
すぐにジョーも返事をくれた。






『僕もだよ』

『私、一時間も経ってるなんて気づかなかったわ』

『僕も(笑)』






ふふっと、思わず微笑むと入力中サインが点いた。
ジョーが何か続けて言おうとしているのだ。






ピロリン







『メイサ、すごく綺麗だったよ』

















ありがとう!ありがとうサポーターの皆さん!!!





まだ見ぬサポーターに感謝しつつ、私は『本当に?あなたこそすごくカッコよかったわ』と♡たっぷりに返信した。
すぐにまたジョーは言った。





『勿論本当だよ。それに僕は頭がいい女の子が好きなんだ』

『嬉しい。私もあなたの知的なところがとても素敵だと思っていたの…』

『君はすごく魅力的だよ。ルックスで言えば、特に……









その小さい鼻が好きだな』








(΄◉◞౪◟◉`)






コラーーーーーーーー!(笑)







と、しっかり突っ込んでおいたが、まぁ事実私はアジア人らしーいお顔をしているし、何も言えまい。
そしてジョーは信じられないくらい高くて綺麗な鼻をしているのだ。






時に、ここまで読めば誰しもわかると思うが、私は元来気の多い人間だ。
一応言い訳をするけど、これでもお尻は重い方だったと思う。
ま、お尻の重さで女の良し悪しは決まらないけど。
おっと、脱線しそうだ。
とにかく、ジョーは物凄く魅力的な男だった。
ジョーも自分とはかけ離れた平安平坦な顔立ちの、しかし欧米人レベルにフランクで感情的な私に好意的だった。
ただ、私達には時差と距離という巨大な障害があり、それは時に凶悪なほどに私達の愛(えっ?)を妨害した。







その話は、また今度♡








ハンサム様登場

2018-06-22 22:36:09 | ジョー
仁さんが初めて連絡をくれたのとほぼ同じ頃、私は他の男の子からもメッセージを受け取っていた。





ピロリン





『ジョーさんがあなたをフォローしました』






あら、新しい人にフォローされたわ。
どんな子かしらん?





ポチポチと携帯を触り彼のプロフィールを見てみると、
日本語を勉強しているわけではないことがわかった。
私と同じ、英語を勉強している子だ。





んー、英語を勉強している子かぁ。
日本語勉強していないのになんで私に連絡して来たんだろう?
ま、いいか。
めっちゃハンサムだし。





そう。
この時フォローして来た男の子こそ、超ハンサムガイ、ジョーだったのだ。
審美眼というのは人によってだいぶ異なるし、
勿論私の好みもある程度偏っているに違いない。
けれど、前職でそーーーとーーー数の男性にお会いして来た私の、主観抜きの目で見ても彼はハンサムだ。
主観だけで言えば、どタイプや〜ん!とウキウキしてしまうルックスの男の子だった。
すぐさまフォローバックすると、早速彼からメッセージが届いた。






『👋🏻』





絵文字かい




『♪( ´θ`)ノ』

『ハハ、それ何?』

『ハローって意味だよん』

『それは絵文字みたいなもの?』





そう、日本人としかメールしない方はご存知ないかもしれないが、
実は、顔文字というのは超日本の文化なのだ。
日本のネットなどなどに詳しい日本ヲタクなら別だけど、
そうでもなければ私たちの慣れ親しんだ顔文字は、彼らにとってはスーパーニューカルチャーだ。
どれくらいニューかと言うと、顔文字を見てもどこが目で口なのかわからないレベルなのだ。





『そうだよん』

『なるほどね。メイサは今何してるの?』

『今はお勉強していまーす。あなたは?』

『僕は今仕事してたよ』

『お疲れ様。あなたのお仕事って何なの?』




フゥーと一応気をつけてから、淹れたてのコーヒーに口をつけた。
コーヒーのお供は勿論チョコレート。
酒好きで炭水化物は控えている私だが、勉強中のチョコレートとコーヒーは止められない。
尤も、サイフォンを使って本格的に淹れるなんて芸当はできない。
赴任先の小さなアパートでは、スーパーで一番美味しそうに見えたインスタントを嗜むのがせいぜいだ。
インスタントとは言えなかなか旨い。
コーヒーのアロマに浸っていると、すぐにまた携帯が光った。





『僕は微生物学者だよ』




やばい




来た理系。





先日もお伝えしました通り、わたくし、理系男子に弱いんです!!!(鼻息)







『メイサ、オツカレサマって何?』

『んー、ま、英語だとこんな感じかな』

『ハハ、なるほどね。それって日本語?』

『当然!(笑)』

『なるほどね。ま、ところでメイサは何を勉強しているの?』

『(え、何言ってんの) 勿論英語よ』





いいね!とジョーは元気よく返して来た。
加えて、じゃぁ僕たちこれからもっと頻繁に英語の練習ができるね、とも。
私は人差し指を顎に当てて、いつもの考えるポーズをとった。





『ええ、よろしく(笑)でも、あなたの母国語は英語じゃないんでしょ?』





そう。
英語を勉強するなら英語が母国語の人と話すほうがいいに決まっている。
そもそも、日本語勉強中でもないのに連絡してくるなんてナンパ目的にしか感じられない。
事実で言えば、彼は私の住んでいた国から遥か離れたところに住んでいたので、
ナンパと言うても、会いようがないのだけど。
ジョーはすぐに返事をくれた。






『うん、違うよ。問題ないかな?:(』





は?
日本語話せないしって言うか勉強してもないし、
英語もネイティヴじゃない人と話すのが問題ないかどうかって?







『ノープロブレムだよん』






ただしイケメンに限る




ハハハハハ(笑って誤魔化す)





すぐにジョーから、I'm so happy!!と可愛い返信が届いた。
いざ話してみると、ジョーはとても親切だったし、私を口説くような事は一切言わなかった。
加えて、お互いの国をよく知らない分話題も豊富だったので、
彼と話す事は本当にいい練習になった。






『ジョーは、周りに英語を話す人はいるの?』





何日か経ってから、私はポチポチとそんな質問をしてみた。
彼の住んでいるところは私の想像が全く及ばない地域で(いや正直どこでも想像できないんだけど)
でも何となく、英語を話す人がうじゃうじゃいそうな気がしたのだ。
ジョーはNOと即答した。






『いないよ。英語を話す友達は、君と、あと数えるくらい』






そっかぁー。
それじゃあ練習相手、オンラインだけだとしても欲しいよね。


会話の中でわかったのだが、ジョーは微生物学者として働いているものの、
将来的にはアメリカで博士課程を取りたいと考えている人だった。
その為に今は英語のクラスを受講していて、練習用にこのアプリを使い始めたのだ。
英語を話す人がそれこそうじゃうじゃいる所に住んでいる私でも、練習相手を求めてアプリを使っているのだから、
それよりもっとチャンスに恵まれないジョーが英語で話せる相手を求めるのは当たり前に感じた。





ただ、何が悪いということもなく連絡が途絶えてしまうのは良くある事で。。。
例えば仁さんなら、ちょいちょい彼が好意を示す言葉を送って来たり、
それに見合うだけの情熱で頻繁に連絡をくれたのだけど、
ただの友人としての会話が毎日続くには、よほどの相性や話題などの条件が必要だ。
ジョーは親切かつ知識豊富ないい男だったけれど、決してお喋りな方ではない、もしくは
メールで長文を書くようなタイプではなかったので、
他にも(仁さんやその他の)話し相手がいた私は、返信を怠ることが出てきた。
正確に言えば、返答しようのないメッセージを放置していた、だけなのだけど。





そんな2人の会話を頻繁にする出来事が突然起こった。





仁さんの日本旅行だ。






続きます。

会いたくて会いたくて

2018-06-13 12:30:56 | 
仁さんが日本へ渡って2週間。
彼からの連絡はとんと途絶えてしまった。
今まで毎日連絡していたのに、突然2週間音沙汰がないなんて、
私は毎日ため息をついていた。





日本でも連絡マメにするって言ってたのに…
仁さん、もう私と話したくないのかな?
日本では私の恋しくならないのかな。
私たち、もう終わっちゃったの?←いや始まってないし
会いたくて会いたくて……




と、西野カナにでもなったつもりで、震えながら窓の外を見つめていた。
実際はぼんやりと見つめていただけなのだが、
ため息が絶えなかったのは本当だ。





けれど、突然にそのため息はかき消された。





ピロリン





着信画面に、仁の名前が表示された。
仁さん……‼︎





『返信遅くなってごめん。ずっと山奥にいた。』




修行?




何をしていたのか、さっぱりわからない(笑)





『どの山にいたの?こっちは寒かったよ』




と、積雪写真を添付して返信すると、彼も雪がドッサリ積もった写真を返して来た。




『札幌もかなり寒かったよ』




ピロリン




『これから日本の真ん中に行く!』
『舞鶴というところ』




へぇ、また写真送ってね、と私が返したところでまた2週間ほど連絡が途絶えた。
こんな感じで、Wi-Fiがないことと旅行に集中しているのを理由に、1〜2週間おきに彼から連絡が来る日々が続いた。
そのうち連絡が来るということがわかったので、私ももう西野カナになることはなかった。
ただ、すこし寂しかったり拗ねた気持ちにはなったけど。







『今僕の国に着いたよ!』




ようやくそんなメッセージが届いたのは、予定通り1ヶ月経った頃だった。
私はモグモグと海老を咀嚼しながら、軽快にタップした。
今日の夕飯はアヒージョだ。





『おかえり仁さん!』





やっと帰って来たか。
マメに連絡するって言ってたくせにぃ〜!とか、寂しかったよー!とか責めたいけど、
しないほうが賢明だな。
ま、写真も何枚も送ってくれたし、彼なりには連絡したんだろうな。
だったらもう毎日の連絡に慣れたからとか言わないで欲しかったけど




と、私がモンモン考えていると、不意に携帯が光った。





ピロリン





『メイサさん、会いたいよ』





許す。





いいのかそれで?!




良くないわと自分にツッコミながらも、堪えられず浮き足立った(笑)





『私も会いたいよ。今すぐ私の国に来て』





と返したが、勿論現実的なアイディアではなく思ったコトを言っただけだった。
が、仁さんは 服も体も汚いし、大学に行かなきゃいけないよ、と返信して来た。
加えて






『来週いつ空いてる?』





!!





つ、ついに来るの?!
そんな急に?!エステ行かなきゃ!!




と、美容院の予約について考えながら、この日なら空いてるよと返信をした。
仁はすぐに、わかった!その日なら大丈夫そう!と可愛い返信をよこした。





こンな感じで私達が実際に会う話はようやく始動した。
ふと考えてみれば、私達は連絡こそ密だったものの知り合ってから3週間しかそれは続かず、1ヶ月のインターバルを置いてようやっと具体的なものが始まったのだった。
1ヶ月のインターバルの間、彼は日本旅行に夢中だった。
頭の中からその一番の興味が取り除かれたので、次点だったメイサさんに会いに行こうと思ったのだろう。





さて






その1ヶ月の間







私は何をしていたでしょうか。






続きます。

思ってたんと違う!

2018-06-10 16:15:46 | 
トーク画面を開くと、仁さんからのメッセージが届いていた。





『こんにちは!今大丈夫?』





約束していたのだから大丈夫に決まっている。
それでもこういう事を尋ねるところが、どこか日本人ぽいなと思わせる。
私は心動で揺れそうな指で返事を送った。






『こんにちは♪大丈夫だよん』




どこが





あーーーん助けてーーーと不安と緊張の入り混じったセリフが頭に浮かんだけど、
もうここまで来たらやるしかない。
少なくともベストは尽くしたわけだから、これでダメなら私にできることなんか皆無なわけで、
そんな自分の運命を呪って酒に逃げたりすればイイんじゃなーい?
と、自分を励まして(?)携帯を握りしめていた。






トゥルルルルルルルル





Σ(T ⬛️ T lll)






えぇーい!!!!!





ポチ。






「ハ、ハハハロー…」






パッと白人の男の子が液晶に映し出された。
右下に小さく、相手に見えている私の映像も映った。
聞き慣れた変な声(笑)がイヤフォンを通して私の耳に飛び込んで来た。






「ハロー、メイサさん」





じ、じじじじ仁さんだ。
ちょっとピントのボケた写真で見てたのとは違う、リアル仁さんだ。(まだ動画だけど)
も、もしかして仁さんてちょっと………







しゃくれてない?







ゴメンゴメン!本当にゴメン!(笑)
いや正直に言うと、仁さんのそれについてはちょっとピンボケの写真でも怪しいなと思っていた。
何となーくどことなーくアゴの存在感が強いように感じていた。
けれど、いざLIVEで見るのと写真で見るのとではその確証も違うわけで(笑)
加えて、ややピントのボケた写真ではアッサリ塩顔に見えた彼のフェイスも、
こうしてハッキリとLIVEで見ると、ガッツリした目鼻立ちに赤みの強い唇が印象的な欧米人らしい顔だった。






思ってたんと全然違う






表にこそ出さなかったものの、戸惑いは心の中でズンドコ祭りを起こしていた。
今考えてみれば、日本人離れした濃いめのお顔立ちの方が私の好みなのだが、
ピンボケ写真で、"グヘヘ、珍しくアッサリ系ハンサムとラブラブだぜ" なんて考えていたエロアラサーには、そんな事を考える余裕はなかった。
そもそもソースだろうが塩だろうが、しゃくれてることには変わりない。(本当言いたい放題)

そんな初期とは理由が違う動揺を抱えていたものの、私は1時間ほど彼とテレビ電話をした。
話の内容は他愛もないものだったけれど、話題の品を見せ合ったり彼の部屋を見ることが出来たりと理解を深めることができた。
何より、彼の笑顔をたくさん見ることが出来た。






「(笑)」

「メイサさん、どうしたの?」

「ううん。仁さんニヤニヤしてるなと思って」

「メイサさんと話してると楽しいからね、しょうがない」

「仁さんニヤニヤの意味わかってる?」

「ニコニコみたいなのじゃないの?」

「違うよ。ニヤニヤは例えば男の人が可愛いものを見て笑ってる状態だよ」







ハハハ、と仁さんは笑った。






「そうだね。僕は何か可愛いものを見てるのかもね(笑)」

「何を見ているの?(笑)」

「うーん、カフェかなぁ。カフェのシェードが可愛いよねー」

「えぇ〜そうかなぁー!?」

「ハハハ(笑)」






少し下から撮っている仁さんの顔は、顎の余白を余計に写していた気がしたけど(教えてやれよ)
仁さんはとても楽しそうで、ニヤニヤと(笑)愛おしそうな顔をしていた。
終始、ずっと。。。







「じゃぁ仁さん、またね」

「うん、また」






笑顔で手を振り、私は電話を切った。
次のアポのためカフェを後にしたが、歩きながらすぐにトーク画面を開いた。







『さっきはありがとう、楽しかった!』







間髪入れず、仁さんから返信が届いた。






『僕も。』

『初めてテレビ電話してみて、どうだった?』

『メイサさんの顔が見られて、嬉しかった』







本当に良かった(号泣)






ナイス化粧下地!






『メイサさんはどうだった?』

『うーん、私はちょっと恥ずかしかったかな』

『どうして?』

『えぇ〜っと、いつもと違うからかなぁ』






何と答えたらいいものか、私はポリポリと頬をかいた。
何はともあれ、この時テレビ電話をして良かったと思っていた。
思っていたのとは違ったけれど色々な事(笑)を知ることが出来たし、
不安に思っていたことも第一段階を突破出来た気がしていた。
会ったら違うっていうのはあるかもしれないけど、少なくともテレビ電話レベルでは私にガッカリしないでくれたのだ。
これは大きな第一歩だ。





こうして初めてのテレビ電話を楽しんだ私達は、それからというもの、
毎日か隔日でしていた電話に代わって、テレビ電話をするようになった。
話すたびに、初めに感じた見た目ていうかアゴへの違和感は消え、ただただ楽しかった。
だがすぐに、仁さんが日本へ発つ日が来た。






「寂しくなるなぁ」






私はションボリとつぶやいた。
彼の旅行は1ヶ月以上に及ぶ。
その間Wi-Fiがないところではインターネットは開けないし、せっかくの日本旅行なのであまり携帯には触れないつもりだと仁さんは言った。
ほぼ毎日のようにとっていた連絡が途絶えるのは、やはり寂しい。
それでなくても私は構ってちゃんなのに。
そんな気持ちを知ってか知らずか、仁さんは言った。






「まぁでも、スタバとかWi-Fiあるところに行くことはあると思うし。」

「でも…」

「もう毎日の連絡に慣れたから、できるだけ連絡すると思うよ」






"メイサさんが大好きだから"とオマケがつきそうな甘い声で、そんな事を言われた。
私はホッとして、ウンわかった、と微笑んだ。
仁さんが日本旅行を楽しめたらいい。
本当はそんな事しないで話してくれたらいい。
そんなジレンマを抱えていたけど、今までみたいに頻繁に連絡が取れるなら、
日中は沢山思い出作りに勤しんでもらいたいな、と思った。



その数時間後、『いま日本に着いたよ』というメッセージを受信したので、
『よかった!お天気どう?』と返事をしたが、
それに対して彼から返事が来る事はなかった。





続きます。



心臓が爆発しそうだった…

2018-06-08 11:52:06 | 
『ん〜異国で10個下の男の子にナンパされるなんて、一度体験してみたぁーい』





と、みずきはテンション高めに返信してきた。
グループチャットの背景はパステルカラーの小花柄だ。
ちょっと乙女すぎるかとも思ったが、年々カワイイを制限されてくるアラサーなのだから、誰に迷惑かけるでもないところでは思い切った方が自己満足度が高いんじゃないかとこれを選んだ。
カワイイチャット画面では私がバーでナンパされた話が話題になっていた。
もう1人の参加者、ヒロちゃんのコメントがアップロードされた。






『日本とは色々違うのでしょうな。価値観など』






彼女は恋愛ごとに全く興味がなく、結婚も「まぁ母に孫の顔を見せてやった方がいいとは思うけど」と他人事のようにつぶやくくらいだ。
年齢で言えば一浪しているヒロちゃんが年上なのだが、婚活なり妊活なり活がつくものにはことごとく興味がない女性だ。
(ちなみに就活さえ頑張っていなかった笑)
私は人差し指をあごに当て、いかにも考え事してそうな表情をした。
私の仕草は基本、わざとっぽいのだ。(わざとじゃないんだけど)






『確かにちょっと可愛い子だったから嬉しかったけど、10歳下ってヤベーなって驚いた方が強かったよ(笑)
年上だろうと思って声かけてきたらしいから、日本と違って若さは重視されないのかもね?』






パシャっとスクリーンショットを撮ると、ソッコーでグループチャットに上げた。






『ちなみに、この子がヤンガーくん。老けてるよね(笑)』





すぐに既読マークがつき、ヒロちゃんのコメントが続いた。





『ヤンガーくん、20代後半ぐらいに見えます。
顔立ちの問題かもしれないけど、仁さんの方が可愛い感じがします。
仁さんはおいくつですか?』





当然ここでは私の脳内彼氏の話も知られている。
プロフィールの写真をさっき同様スクショして、皆で共有済みだ。
ちなみにヤンガーくんの写真は、全く別のトークアプリ上にアップされているプロフィールからいただいた。
ヤンガーくん目線で言うと、あの日のナンパの釣果は私の電話番号ゲットに止まった。






『私も仁さんの方がいいと思う♪ 仁さんは24歳です』

『3つ違いには見えませんな…』

『私も仁さんの方が好みー♡ いや、ヤンガーくんはワイルド系で色気を感じるけど(笑)』






好き勝手に値踏みする文章で、チャットは大いに盛り上がった。
下世話と言われればそれまでだが、どの女子会でも男子会(ってあるの?)でもよくあることだろう。
本来は、私だって直接会って日本酒(カシオレとは言えない)片手に大騒ぎしたい。
けれど今は遠い異国の地に住んでいるので、こうして時折時空と時差の壁を超えてチャットしているのだ。
楽しいお喋りの腰を折るようではあったが、折角の機会なので私は2人に甘えだした。






『でも聞いて。聞いて聞いて。
仁さんとはめちゃめちゃ盛り上がってるし、できるだけすぐ会いに行く!って言ってくれてる。
ワーイって思うけど、一方で24歳が31歳ってゆーか今年32歳に直接会ったら千年の恋も冷めると思うの。』





深い溜息が漏れる。





『ほうれい線とかさ…目の小じわとかさ……』





うぅ、書いてて自分で辛くなってくる。
年齢を言い訳にはしたくないけど、実際5年前っていうか3年前でも違うんだもの。






『そんな折に、私の友達の話ってテイで男友達にこの話したら、
"それもう若いだけよ!その年の男は考えることなんかできないんだから!
奴の国にもそらもう若くて綺麗な子がいくらでもいるんだから、すぐ心変わりするって!
ていうかした方がいいよ。手が繋げてキスできる女の子と付き合えよ!
バカだなそいつ!!" ………って言われたのよ。』






あぁ助けて涙






『いや、もうさ………その通り過ぎて………耳が痛かった(笑)
ガッツリ目を覚まされました………』






私の話が長いので独壇場になっているが、順調に既読マークがついて行く。
みんながどんな顔をして読んでいるのか、気になる(笑)






『そんなある日よ。仁さんとテレビ電話する約束をしていたのよ。
私達、お互いの写真しか知らないし、仁さんの写真ちょっとボケてるし。
………ねぇ、待って。』







ポチポチポチ






『テレビ電話って、ほうれい線映りません?』






そう。
仁さんとの年の差に圧倒的な不安を感じていた私は、テレビ電話を前にハチャメチャに緊張していた。
だだだだだだって今まで見せたことないし!
笑った時にシワできたらどうすりゃいいの!?
エクボじゃないわよ、目尻のシワの話よ!!!!(号泣)
私の気持ちを労わるかのように静かに既読マークがついた。←思い込み






『電話の予定は夜だったけど、メイクも髪もそのまま!
何ならネイルも綺麗にしておこうってアラサーなりのベストを尽くすつもりでいたのよ。
でもそしたらさっきね……








"テスト勉強で徹夜したから死ぬほど眠い。メイサさんの都合が大丈夫なら明日でもいい?"
って受信したのよ』






ズデーッと転んでいるスタンプを続けて送った。






『あーーーこれだーーー。って現実を突きつけられた気がしたの。
この一回のリスケで彼を判断するのはおかしいかも知れないけど、
私が言いたかったのは、期待しすぎちゃいけないのがわかったって事なの。
風呂入ってさっぱりメイクも巻き髪も落としたわ(笑)』





今度は酒を煽っているスタンプを送った。






『そもそも本当にわたしの国に来たところで何も起こらないんだけどさ。←そうか?
多少ワクワクしてた自分が嘲笑えました。
きっとここには来ない。
きっと、会ったらガッカリする。
だからもぉー何も気負わずに会話を楽しもうって思いました』





完。 と書いてあるスタンプで締めた。
2人から「お疲れ様」と書いてあるスタンプが届いた。
うぅ。泣






『男友達の話がグサっときたよ…。
仁さんが会いたいとかテレビ電話とか言ったら、そりゃソワソワワクワクするよぉ』

『そうだ、そうだ。そこは年齢関係ないんじゃないですか』

『そうだよぉ。メイクや髪セットした時間返して欲しいと思っちゃった(笑)』





2人の心優しい友人に汲んでもらい、私の気持ちが楽になってきた。





『ありがとう2人とも。まさしくその通りで、グサっとソワソワクワクしてたの。。。
一応、私が空いてなかったら今晩するつもりだったみたい』

『なるほどね!』

『それはワクワクしますな』

『そうなのよん!!』





はぁー、と今度は明るめの溜息がこぼれた。
持つべきものは友達だ。
例えどんなに離れていても心が通っている友達はすごく頼もしい。
それが海を越えていても、だ。
私がくだらない私の話を聞いてもらったお礼の言葉を送ると、ヒロちゃんは
『いえいえ。私もメイちゃんと離れていても話せて嬉しいよ。スマホに変えておいて良かった』と返してきた。
(ヒロちゃんはスマホすら興味がなかったのだ)
みずきも『私も楽しいし嬉しいー♡スマホに感謝だね!(笑)』とノリ良く返してくれた。




私がチラリと時計を見ると、時刻は午前10時を指していた。
私達の友情チャットは、睡眠などのインターバルを挟んで一晩跨いでいた。
仁さんとリスケしたテレビ電話はあと1時間後に迫っていた。
当然朝からフェイスマッサージに化粧に尽力した(笑)
服装とかどうしよう、と悩んだが、結局カフェテラスで話すことにしたので、
お気に入りのマフラーを巻いて可愛らしくまとめることにした。
私は綺麗に整えられたネイルが目立つ指でメッセージを打った。






『あと1時間後にテレビ電話に挑戦します!!』





すぐさま、応援メッセージ付きのスタンプがポンポンとアップされた。





『ドキドキですな』

『うん!
……でも、1つ考えているのが』






何?と2人同時に送ってきた。






『もしかしたら、仁さんもピント合わせて見たら変かもしれないよね(笑)』





すぐに返信したのはヒロちゃんだ。





『待って。そもそもメイちゃん変じゃない』





確かに。




シワシワなだけだ。





『ヒロちゃん鋭いね(笑)ってヤダ!みんなと話し込んでて準備が整ってません!(笑)』





慌てて携帯をバッグにしまうと、私は出かける支度を始めた。
ドキドキする。
家で話してもいいけど、Wi-Fiの調子が悪い上にライト二ングもいまいちな所よりは、
オシャレでフリーWi-Fiが使えるカフェテラスの方がいいだろう。
家から徒歩3分程度のところにあるカフェは席数が多いし居心地も良い。
ただでさえ緊張しているのだから、せめて行き慣れたところで話そうと思った。





カフェに着き、オーダーしたカフェラテを片手にテラス席についた。
10:56。あとちょうど4分したら、彼は連絡してくるはずだ。
彼からの着信履歴は全部00分だ。
バッグから携帯を取り出し、セルフィーモードで自分をチェックする。
ちょっと上から撮るのが鉄板だが、カフェでっていうかテレビ電話でそれやってたら変じゃない?
でもそしたらどの角度で撮るのが一番綺麗に写るんだろう。
どうやったら、可愛いって思ってもらえるんだろう。
そんな事しているうちに時間はもう10:59。
あぁ、もう、ほんとに…………
心臓が…………







ピロリン






テラスに着信音が響いた。







続きます。