メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

君を守りたい

2019-04-27 11:17:09 | アイアン
「メイサ、今日はありがとう!怒らせちゃって本当にごめんよ。
今日も君はものすっごく綺麗だったね!!」



分かれてすぐ、アイアンはそうメールをよこした。
この人、働いてるのか…?(笑)

正直アイアンは本当に本当に好みだったし、
その時の私は結構ヤサグレていた。
あんだけ好きだった咲人と上手くいかなかったから。
っていうか、なんであたしに寄ってくる男ってドスケベばっかなの!?
(梓はめっちゃマトモだったけど)


ポチポチポチ



「どうも。またね」



と素っ気なく返したのに、アイアンはその後も途切れなくメッセージを送ってきた。
そんな中、ふと彼はこんなことを聞いてきた。




「メイサ、君はこの間俺にセフレのことを聞いたよね。
君はどうなの。正直に教えてくれない?」



( ̄(工) ̄)




いや、それってつまりそういう事でしょ。
アンタにはいるんでしょ。
って聞いたら多分いないいない言うんだろうなー。
って、い、う、こ、と、は、だな。




ポチ

ポチポチポチポチ




「変なこと言うのね。
自分は正直に答えなかったくせに、私には正直になれなんて」




ピロン(送信)




さーて、どうくるかな。




ピロリン




「メイサ、君の言う通りだよ。
YES、俺はそういう友達が過去にいたよ。
今はなぜかいないけど……」


やっぱり



だから言ったじゃん(真顔)



アイアンは、それで君はどうなの?と続けたけれど、
私は案外、本当に正直に、そういう人はいたことがなかった。
好きになるとカナリ夢中になっちゃう方だし、ベッドは感情の延長線上にある。
お水をしていた時でさえ、そういう相手はいなかった。
もうちょっとリアリティを含むと、好き!とお互いに思っていて
一晩だけ過ごしたことならある。
でも継続的にそれだけのために会う人っていうのは、マジでいなかった。


アイアンがその事実をどう受け取るか知らんが
彼の反応や気持ちを考慮する必要はないよねー。
あたし別にセフレいらないもん。(どんなに彼がタイプだろうと)



「あなた嘘つくべきじゃなかったわね。
私、嘘つきは嫌いなの。
ちなみに私は今までそういう人はおりませんし、いりません」

「そうなんだ。(納得していなさそう)
ところで今度また会える?←すごいメンタル
来週の同じ時間なんかどう?俺、今すぐ君に会いたいんだ」

「会えるかどうかわかりません(本当は空いてる)」

「君の都合のいい日でいいよ。いつなら空いてる?
また一緒にコーヒー飲まない?」

「またトイレに行くの?」

「ははは!!NOOOO、行かないよ!
もしも君が行きたいなら行くけどね!(ウィンク)」



よう言うたな



コ、コイツまじで何つーメンタルしてんだよ……
ちなみに。
この国の男たちは日本男児より圧倒的に自信家が多い。
日本の女の子っていうのは癒し系がモテるし、ここでもそういう需要はないことはない。
でも圧倒的にここの女子は強い。
が、当然男子たるもの、強くてクールでいなければモテない。
ってなわけで、当然男も、もーーーっと強いのである。
雅留がまさにそのめっちゃ自信満々の21歳だったのだけど、
アイアンも負けず劣らずスーパー強気だ。



私は冷たーい顔をして返信を打っていた。
体目当ての男に親切にする必要はない。
彼とチャットする意味はただ一つ。
英語の練習でーす。




「トイレになんかもう2度と入りたくありません。
それから私、あなたのセフレになる気もありません。
それ目的なら、もうあなたに会うことはありません。バイ」


「違うよメイサ!そんなこと目的じゃないよ。
俺はただスーパー綺麗な君ともっとおしゃべりしたいんだ。」




さらに!!!





「俺は、君のこと守りたいって思ってるんだ」



(΄◉◞౪◟◉`)




お、




お前




バカにすんじゃねぇーーーー!!!





プッチーン!!と私はブチ切れた。
守りたい?お前は守りたい女をトイレに連れ込むのか。
お前から守ってくれる男が必要だよ。
よくもまぁそんなバレバレな嘘がつけるわね。
そんな嘘でごまかされるようなバカじゃないんですけど!?
見下さないでくれますーーーーーーー!?!?!?!?!?!?!?



連れ込まれた時もそうだったけど、私の怒りポイントは軽視されるところにある。
連れ込みとかマジどうでもいいし。花束とスイートルームはどこだ!!
怒り心頭の私は↑のようなことを書き殴り、メッセージを送り捨てた。
すぐに謝罪と言い訳のメールが届いたが、完全に無視だ。
もーサヨナラ。( ̄(工) ̄)




……しとけばかよかったんだよなぁ。




続きます。



トイレに連れ込まれた話③【完】

2019-04-20 13:29:29 | アイアン
さぁーて、どうしましょう……。
トイレに腰かけ、私はまさにこんな感じ。










もう帰ったかしら?
それともまだ席にいるのかしら。
どっちでもいいけど、とりあえず、まぁ、私が悪い気持ちになる必要はゼロだから
戻りましょう。



と、スタスタ席に戻ると、
アイアンはなんと、先ほど買ったブラウニーを頬張っていた。



ブ、ブラウニー食べてる!!
あんな事あったあった後に!!!!!!!
コ、コイツどんだけ鉄のハートしてんだよ!!!!!!!!



私はおったまげて&呆れて言葉もなかった。
アイアンは私を見るなり慌ててブラウニーを片付け、
話し始めた。



「Hey Meisa, are you okay?
I’m really so sorry for made you upset but I didn’t mean to......
メイサ、さっきは本当にごめんよ。
でも怒らないで、俺は本当にそんな……」

「いや怒らない方が無理だろ。何言ってんだアンタ」

「本当に悪かったよ。機嫌直して。
外に出るかい?」

「ま。そうね……」



私は仏頂面のまま、
そしてアイアンはペコペコ謝りながら、私たちは外に出た。
その日は恐ろしく良い天気で、ピーカン晴れ。
私は綺麗なパステルカラーのマキシワンピをたなびかせながら、
スタスタと歩いた。
隣を歩くアイアンはずっと謝り続けている。




「本当に本当にごめんよ。俺、君のこと全然安い女だなんて思ってないよ。
君はすっごくゴージャスだし、可愛いし、最高だよ。
頼むから怒らないで」

「じゃー何であんなことしたのよ」

「I......I don’t know......
それは……わかんない……」

「You should know it.
いやわかれよ」



うん、そうなんだけど…とアイアンはポリポリしていた。
近くには小さい公園があって、
マジで意味がわかんないんだけど、アイアンは私と歩き回りたがり、
私はそれに付き合ってグルグルとその公園の周りを歩き続けた。
周りにはいくつか雰囲気のある住居が建っていたのだけど、
アイアンはそれを、あぁこれは何様式の建物だね!とか、
これは何々時代のだね!とか、いちいち言及していた。
相変わらずよく喋った。



ふーん。
建築関係に就いているわけじゃなくても、わかるわけね。
この国の出身だもんね。
私よりこの国の色々とかアルアル、当たり前に知ってるんだよね。



盗み見ると、アイアンはまだ上気した顔をしていた。
コイツがイカれてるのはよく分かったけど、多分クソ程悪い男じゃない。
少なくとも、彼と会話するのは私のトレーニングになる。
彼は日本語が全く話せず、そして、ネイティブイングリッシュスピーカーだから。
そう、私は本当に、ネイティブを探していた。
私は自分のキャリアにフォーカスしていたんだ。


不意にアイアンは聞いた。




「メイサ、君は付き合ってる人はいるの?」

「は?」

「それから、彼氏は何人いたの?」

「……忘れた。アンタは?」

「俺は3人。で、今は付き合ってないよ」

「で、セフレが何人もいるって?」

「は?えっ!?いない、いないよそんなの」




いないいない、フリーだよ、と彼は首を振った。
ふぅーーーーーーん。
ほんとかよ……。



アイアンは続けた。



「どんな人がタイプなの?」

「うーん……背が高くて」

「俺、背高い?」

「(頷く) あと、鼻が高い人」

「俺鼻高い?」

「(頷く) アンタは?」

「俺?俺のタイプ?うーん」



ちょっと考えてから、アイアンは笑った。



「俺、タイプっていうのはないと思うよ。
あ、そうね、まぁパツキンは好きじゃないよ。はは」



と、前を歩くブロンドのお姉さんを指した。
アンタ、聞こえるんじゃないの……(笑)




結局アイアンは、時間ギリギリまで私と歩き回り、
なかなか冷めない興奮を何とかしようとしていた。
途中でカフェに戻ろうよと言われたが、
いやそれトイレに戻るって意味だろと思ったので無視した。



全てが終わり、電車に乗り込むと、ドッと疲れそうなものだったけど
案外平気だった。
最近、思うようにいかなかった咲人のことが心労だったし、
その後は連絡もなかなか無かったし、
誰か操を立てなければいけない相手もいなかったわけで、
おまけにアイアンはどタイプの背が高いイケメンで、
トイレの一件を除けばスマートな奴で、
かつ、ネイティブだ。
いずれにせよネイティブとコミュニケーションを取る必要があって、
それがイケメンなら、ラッキーなだけだった。
あと、アクシンデントには慣れっこだしね。。。



でもこの時はまだ、これからアイアンともうちょっと深い関係になるということは
期待していなかった。
まさか、の展開が
この先に待っていた。





続きます!!


トイレに連れ込まれた話②

2019-04-19 23:03:33 | アイアン
「何してるの!?」



私は小声でそう訊ねたが、アイアンはただ、大丈夫大丈夫!と繰り返して、鍵をかけた。
1人用のトイレは狭くて、体の大きなアイアンと一緒に入ると窮屈だった。
彼はすぐに私を抱きしめ、またキスし始めた。



「んんー!!」



一応ジタバタしてみたが、こんなデカイ男には勝てない。
イケメンとキスできてラッキーくらいに思うことにした。
が!!
アイアンは当然、それ以上を望んで私を連れ込んでいるので、キスしながら其処彼処を触りだした。



えーとどうしよう

これは良くないな

うーん



考えながら適当な対応をしていると、



「メイサ、バッグここに置いて」



と指示してきた。
私の手が気になったらしい。
私確かにこのままではどうしようもないので、バッグを置いたが、
彼は私のマキシワンピを捲ろうと必死だ。




「ちょ、ちょっと待ってよ。ダメだってば」




と止めると、彼は私を抱き締め、そのまま持ち上げた。




「キャ!何して…んん!」




また唇を塞がれ、そのままワンピを捲らんとした。
なるほど、私の身動きを取りづらくしたわけか。
悪いけど、好きじゃない男に強制されるのは好きじゃないのよ!



「ちょっと!下ろしてよ(怒)」



と注意すると、意外と大人しく下ろしてくれた。
が、当然攻防戦は終わらない。
暴力を振るうでもナイフで脅すでもなく、アイアンはただひたすら攻防戦を繰り広げた。
なるほど。
犯罪者じゃないけど、ただのスケベなわけね。






私が思ったのは……






いや………ちょっと待て。

あんたはカッコいいよ。

めっちゃタイプだし私は性欲も強いよ。

別に気にする相手もいないよ。(咲人なんか知らん!)


だけど………………





トイレでヤれる女だと思われるのは絶対ダメだろ!




それは女の沽券に関わるだろ!
っつーか、安く見積もってんじゃねぇよ!!




と一念発起し、私に口付けていた彼をゆっくり壁に押しやった。
彼は上気した顔で肩で息をしていたが、
私が真剣な面持ちでまともに拒絶したので、大人しく離れた。
私は冷静に話し始めた。




「Excuse me? Is this a standard way here?
If it’s so, I don’t like it.
聞きたいんだけど…これはこの国のスタンダードなの?
もしそうなら、私は好きじゃないわ。」



アイアンは、えっと、NO...と答えた。



「If it’s not...... it means you found me an easy girl who can have sex in a toilet, right?
もしそうじゃないなら……
つまり、あなたは、私をトイレで一発ヤれる簡単な女だって思った、そういうことね?」




アイアンは途端に目を見開いて両手で口を覆った。
ヤバイ!か?しくった!か?
どっちでもいいけど、とにかくあたしは



「I HATE IT!!!」
「それは大っ嫌いなんですけど!?」





と、めっちゃ怒った顔でお伝えした。
アイアンはすぐに弁解を始めた。




「ごめんよメイサ、怒らないで!俺決して、そんなつもりじゃ……」

「いい?あたしアンタのこと可愛いと思ったし、良いヤツかなーって思ってたわ。
でもアンタがあたしのことそんな風に思ってるんだったら
金輪際アンタのことそんな風に考えてあげられないわよ!!」

「違うんだ!俺君のこと安い女だなんて全く思ってないよ!ただ君がセクシーすぎて……」



マキシワンピだっつってんだろ!!




「怒らないでメイサ!」

「怒らせたのはアンタだろー!!」

「しーっ!!人が聞きつけるよ!」

「アンタが私をこんなんにしたんでしょ!!!」




フガー!!と怒る私に、アイアンはひたすらペコペコと謝り続けた。
今でも思うのだけど、コイツが本当の悪人でなくて本当によかったと思う。
十分失礼で危険な状況だったけど、結局無事だったんだもの。
そして、こんだけペコペコ平謝りしたんだもの。
いや謝ればいいってもんでは…(笑)
アイアンは言った。




「メイサ、俺、戻らなきゃ。カバン置きっぱなしなんだ」

「じゃ戻れば」

「一緒に行こう?」

「イヤだよ。行けよ。」

「……ねえ」

「行ーーーけっ。」




アイアンは仕方なくトイレを出て行った。






そして私は





ついに





便座に座ることができた。





はああああああ、やっとだよ!
トイレまで長げぇよ!!




続きます!

トイレに連れ込まれた話①

2019-04-18 22:59:49 | アイアン
アイアンは言った。



「君がそうやって、ちょっとほっぺを膨らませてるの見ると、
ツンツンしたくなっちゃうよ。
すっごく可愛いよね。」




はぁ?と私は苦笑した。
そもそもほっぺを膨らませた理由は、彼が何かしら私を悩ませることを言ったからだ。
コイツ、どんだけ平和な頭してんだ。
私の反応に構わず、アイアンは少し声のトーンを落として言った。




「メイサ、君をハグしたいな」



ニッコリ笑ってそう言われたので、私も冗談で返すことにした。


「ここで?残念だけど私たちの間にはテーブルがあるわね」

「できるよ!君がよければ」

「いや良くないでしょってゆーか無理でしょ!」

「大丈夫だよ。それかトイレ行く?」

「トイレ?臭うんじゃない?」

「まさか、中じゃないよ。外外」




と彼は笑った。
事実、このカフェにはユニセックスのトイレが3つあり、
それが並んでいるエリアと、座席のエリアはドアで区切られている。
彼は、座席エリアから遮断された、トイレ前のエリアを指して言ったらしい。
私はあらそう、と素っ気なく返事した。
話を変えよう。




「ところで、あなたって何か宗教はあるの?」

「あるよ。俺はこの宗教なんだ。」

「へぇ、私の友達も何人かそうだわ。
色々制約がありそうだけど、何を食べるの?」

「何でも食うよ。えーっと俺何食ってるかな?
肉も食べるし…」



一応触れておくと、日本と違って、この国では宗教をやっているのは超フツーです。
それについて話すことも、全くタブーではないしね。




「お米とかパスタとか?」

「食べる食べる。あーでもあれは食べないけど…
ま、何でも食うよ。俺のお腹見ればわかるよね?ははは!」




と彼は自分のお腹を指した。
初めて会った日にも思ったけど、アイアンはお腹が出てる。
背が高くて四肢が長いから無様にはなってないけど、ハッキリと出てると言える。
ていうか、全身が細長いから、ちょっと出てるお腹が目立つ。
彼が三十代なのも踏まえると、ありがちな状態だと思う(笑)
かつてのお客さんたちも、ハンサムで背が高い人はたくさんいたけれど、
軒並みお腹が出てんだよなーと思っていた。
まぁまぁまぁ、小ジワが気になるアラサー女子が
やんや言えたことじゃないかもしれませんけどね。へっ。




「君は?全然食べないんでしょ?そんなにスリムだもんね」

「まぁ、アジア人って大抵欧米人より細いのよ。
背も低いし。」

「確かに!でも君、そんなに背が低くないよね?」

「でもこの国の子の平均より低いでしょ?」

「まぁそうね。やや低いかな。でもいいサイズだよ!」

「(ホント適当だな笑)あなたは背が高いわよね」

「うん、俺は高いんだ。186はあるかな」



おっきいわね、と目を丸くした。
どうりでデカイと思った。
私の反応が気に入ったのか、それとも自慢の長身なのか、
アイアンは満足げだ。



「そうなのよ!あと俺耳と鼻もデカイの。
俺嫌なんだよこのデカイ鼻」

「えーっ。あーまぁここではそうよね。
アジア人からしたら高い鼻は羨ましいけど。
あなたの鼻は誰から来てるの?パパ?ママ?」

「母親だね。耳は〜多分父親?」

「ご兄弟はあなたと似てるの?お兄さん達。」

「それが兄貴と俺全然似てないのよ!この鼻俺だけ!」



ぶっと吹き出してしまった。
彼が気に入っていないデカイ鼻がを、彼だけが持ってるのが可笑しかった(笑)
日本では高いって褒めるとこだけどね。
私が面白い、と呟いたのを聞いてwhat’s that?と訊ねた。



「オモシロイ、funny、って言ったのよ」

「はは、オッケー覚えるよ!オモシロイね。」




オモシロイオモシロイ、と彼は暗記でもするように繰り返した。ニヤニヤしながら(笑)
私はやはりそんな彼が面白かったので、頬杖をついて笑っていた。
話している間、アイアンはよく私を見つめていた。
その瞳を見つめ返しているだけで、グンと恋愛モードがONになる。
瞳に吸い込まれそうってこういうのを言うのかしら。


不意にアイアンは、私の手を触っていいか聞いた。
断る理由もないので承諾すると、彼は自分の手と私のそれを重ねてみた。




「ワーオ!君の手、すっごく小さいね!」

「そう?あなたのが大きいんでしょ」

「確かに俺の手も大きいけど、君のめっちゃ小さい!!」



確かに彼と比べるとかなり小ぶりだってゆーか、実は日本人の中でも小さい。
彼の手は私の1.5倍はあった。
長い指も大きい手のひらもカッコよかった。




「君はなんて小柄なんだ。」




と首をフリフリしみじみ言われ、私はまた吹き出した。
んな大げさな……(笑)
アイアンは続けて、私のほっぺを触っていいか聞いた。
まぁそれも大したことではないので承諾した。
アイアンは私の頬に触るなり、OH!と声を上げてその手で自分の頬をさすった。
流石に面白すぎて、もっと吹き出し、笑ってしまった。




「あなたって……変な人……ハハハ」

「オモシロイ?オモシロイ?」




と笑いながら聞く彼がまた面白かった(笑)
今思えば、この時から彼はもう面白いんじゃなくて、おかしかったのだ。



1時間が経った頃、彼は、外を歩かない?と提案した。
天気も良かったし、断る理由はなかったのでOKと答えた。←いつもこのパターン
彼は出勤まであと1時間くらい余裕があるらしいし。





「ちょっとトイレ行って来ていいかしら」




と席を立ち、ドアを開けて、例のトイレエリアに入った。
3つ並んだトイレのうち奥の1つだけが空だった。
入ろうかとしたその時、メイサ、と呼ぶ声がした。
振り向くとアイアンが立っていた。




「あら、あなたもトイレ?」

「どれが空いてる?」

「これよ。」

「メイサ、ハグしていい?」



はい?



何度も繰り返すけど、ハグはこの国ではただの挨拶だ。
もしかしてアイアンもう行くの?あたし聞き間違えた?
いずれにせよ、こんだけ話してからハグを拒む理由もなかったので、
ちょっと変な顔をしたまま、OKと両手を広げた。
アイアンは私を抱きしめ、俺の背中に手回して、とリクエストした。
ハイハイと言われた通りにすると、ほっぺを触った時みたいに声を上げた。
変な奴だなと思っていると、彼はそっと腕を緩め、私を見つめた。





あ、

キスしようとしてる





拒む理由もなかったので、OKと言う代わりに目を閉じた。



彼の唇が私のに触れて、ほんの数秒後のことだった。






「メイサ、こっちに来て!」




とアイアンは私の腕を引いて、唯一空いていたトイレに私を引き込んだ。





えっ


なっ



なんでー?!





続きます!

チャラ男

2019-04-16 22:34:27 | アイアン
もう一度会うその日まで、彼は何度か
セクシーな写真も見たいなー♡とか
唇がセクシーだね!とか色々言ってきたが、
まぁそんなことは割とどうでもよかった(笑)
ちなみにセクシーな写真は、一度も送らなかった(笑)
そういうところが、割と日本人な私。
いや他の日本人の女の子がどうしてるか知らんけど。




待ち合わせは午前10時。
私の有給と彼の午前休がかぶった日に執り行われた。
あんまり早く着くのも何となく癪だったので、本当にピッタリにカフェに着いた。
大きな窓で明るい店内は、ピークを過ぎてマッタリとしている。
うなぎの寝床のようなので奥の席は見えなかったが、ぱっと見彼は見当たらなかった。
なので、入り口すぐのカウンター席にバッグを置き、外を眺めた。
と、1分もしないうちに



「やあ!」



不意に背後から声をかけられ、ビクッとした。
振り向くとサングラス無しのアイアンが立っていた。




「び、びっくりしたぁ!」

「ハハハ!元気?美人さんがいると思ったら君じゃない!」

「は、ははは(苦笑)
あなた、もう着いてたの?わからなかったわ…」

「そう、奥に席とってたのよ!驚かせちゃった?ハハハ!
ごめんね!いやー後ろ姿でもわかるよね美人は!」




相変わらずのマシンガントークに、相変わらずついていけない。
とりあえず何飲みたい?え、それだけでいいの?なんか甘いもの食べれば?
の誘導に乗り、低脂肪ラテとチョコレートブラウニーをお願いした。




「オッケーちょっと待っててねん♫」




アイアンは颯爽とレジに向かい、ブラウニー二つとコーヒーを二つ、
それから水のペットボトルも二つ買った。
スタッフと話す彼の横顔を盗み見ながら、なんだ、結構カワイイじゃん。と再認識した。
見上げる高い背も、小さい頭も、長い腕と脚も、見栄えがする。
やたら長い髭を除けば、相当良い部類なんじゃなかろーか。
そう、彼はヒゲがとっても長いのだ。




「お待たせお待たせ♡」




ルンルンとコーヒーを持ち帰ってきた彼は(笑)私をカフェの奥へ案内した。
こんな風になんでもやってくれるのは有り難い。
会うカフェを決めて、リンクを送ってくれたのも早かった。
しかも4人席だから、居心地良いしね。




「コーヒー、ありがとう…」

「いいのいいの!いやー、今日は来てくれて本当にありがとう!!元気だった??」

「あ、ええ、うん。あなたは…」

「俺?元気元気!!もーでもすっごく忙しいのよ。ここんところはほんと死んじゃいそう。
君はバカンスに出てたんでしょ?いいないいなー!」

「あ、えっとア…アイアン!」

「うん?なになに??」




やっと彼が言葉を止めたので、私は一言一言噛みしめるように言った。




「私もあなたと会えて嬉しいけど、お願いだから」

「ゆっくり喋って、ね!」




そうよ、と私は苦笑した。
ごめんごめん、気をつけるよ!ははは!と彼はまた早口でそう言った(笑)




変わらぬ早口のまま、彼は四方山話をペラペラと話し続けた。
聞けば、彼は下町で生まれ育った5人兄弟。
ご両親はもう他界している。
年齢は私より一つ上。
ヒゲがないとだいぶ若く見られるのが嫌で、そんなモサモサに生やしているらしい。
ま、男子あるあるだけど、そこまで生やさんでも…。



ふーん。年上と(って言っても一つだけど)デート?するの久しぶり。
何せここのところ10個下から平均6個下くらいまでが多かったしなー。
年上らしくというか、多分そういう世代だからなのか、
何でも先にやってくれるし、全部払ってくれるなー。
もしくは、いい仕事してるからかな。



話によれば、彼は以前は法律関係の仕事をしていたらしい。
勉強もそれが専攻だった。
でもあまりに忙しくて、数年前に転職したらしい。
内容はまぁわりと一般的に稼ぎが良いとされる職業だった。




はぁ。
背が高くて、イケメンで、良い仕事とな。
おまけに口下手ではなく(会話上手とは言えんが…)リード慣れしてると。



すげーチャラそう





早口チャラヒゲくんは、ニコニコとご機嫌だ。



「君は俺よりもっと年下なんでしょ?25とか26とか??」

「いいえ、アジア人って若く見えるのよ」

「それは確かに!えーとじゃあいくつなの?」

「多分あなたより年上よ。オーバー30です」

「えーっ見えないなー!ね、ね、じゃ俺は俺は??
何歳に見える?♡」

「んー、28?」

「いやいや。まぁでもわかるよ。俺ってヒゲないと超若く見えるの。
だから生やしてるのよー」

「じゃー、26?」

「えぇっ?!そんな下?俺もうすぐ33だよ!」

「あら。」

「見ろよ、俺の方が年上だね。
いつが誕生日なのメイちゃん♡」




と、返事も質問も矢継ぎ早。
おもわず引いてしまうくらい押せ押せだ。
いやいやいや、これでも元お水なので口説かれるのなんかには慣れっこですよ。
仕事なら。



いやーーーーー
流石にシラフでプライベートで
こんなに来られるの久しぶりだわーーー(汗)



私が多少引き気味なのも気にせず、アイアンはペラペラと最近の出来事や私への賛辞を喋り続けた。
彼の1番好きな色は緑で、だから緑のワンピースを着ていた私に目が溜まったんだと言った。
その話は本当で、その後も彼は緑のセーターを着て現れたり、
緑のコートの話をしたりする。




続きます!