メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

仁との終わり。

2018-12-15 22:47:35 | 
咲人との電話と並行して、仁との連絡も続いていた。
彼は一向にこちらへくる日の話をしなかった。
その割りに例のアプリ上ではオンラインになっている事が多く、
誰かと通話していることもあった。



最低すぎてどうしようもなかったのだけど、
とりあえず物事が白黒つくまではしつこい性格なので、
一度ビデオコールをする話にまで持って行った。
それが、咲人に好きと言った翌日だった。




「仁ちゃん、電話して大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。どうして?」

「忙しそうだから…」

「あぁ全然元気だよ。忙しくなかったらつまらないから」




何だよ、余裕そうじゃん。
ホントに何でこの人フライトとかホテル調べないんだろ。
来る気がないのかな。
でも…………何だろう。




ふと私は、昨日とは全然違う気持ちなのに気づいた。




昨日は咲人を見るだけで嬉しくなった。
あぁこの人が大好きだ
この人に抱かれたい、と思った。
仁と話していても、その顔を見ていても、何も感じなかった。




しゃくれのせいじゃないなー。
別にただ興味がないんだ。
久しぶりに見た彼の顔、
嬉しいって思いそうなものだけど。
好きなら。
こういうことの積み重ねで、自分の気持ちが離れてることを確信していくんだな。




たくさん笑ってる所を見たけれど、
笑顔を見ても、キュンともしない。
あぁでも、こういう風に話してたんだなって思い出した。
そうだ、いつもたくさん笑って、色んなことについて話し合ってたね。
その時はきっと好きだったんだろうなぁ。
だから、その時間、すごく幸せだったんだろうな。
もう本当にすっかり、忘れちゃってたけど。
最後にビデオコールしたのって、いつだろう。
多分、2ヶ月くらい前だ。
たったそれだけで、こんなに気持ちが離れちゃうものなんだな。
それくらい嫌な思いしたりガッカリしたんだろうな。。。
彼のこと、理解できないと思ったんだな。



そして、多分
新しい恋をしているんだ、私は。



「仁ちゃん、ずっと笑ってるね」

「メイサちゃんと話してるからね」



キュンともしないはずだけど、笑顔でそう言う仁を可愛いと思った。
まだ私のこと好きなのかな?とよくわからない言葉が浮かんだ。
そもそも好きなはずじゃないの?

多分そんな話するのが久しぶり過ぎて、なんかもう彼の中でも過去だろうって勝手に思ってるのね。
行く行く詐欺も、1週間連絡が来ないことも、その間他の人とは電話していることも、
きっと、信頼関係や恋愛感情がキープされていれば不安要素にならなかったんじゃないかな。
一度もう信頼を失っているから(彼が笑)
何もかも信じられないんだと思うし
好きだと思えなくて許せないんだと思う。





だって




咲人が話したよくわかんない事も


エラそうな話し方や面白くない冗談も


突然送ってきた謎のVTRも(彼は本当に何のためなのかわからない動画を送ってくる笑)


全部含めて、可愛いなと思ってるもん。


愛情って、そういうものなんじゃないの。





ふと、私は仁はどう思ってるんだろうと
本当に不思議な気持ちになった。





「久しぶりに話して、どうですか?」

「楽しいよ」




仁は間髪入れずにニコニコと答えた。




「メイちゃんは?」




私にも言わせたがるのが、そういえば彼らしかった。



そろそろ寝なきゃねと私は言った。
仁はそうだね、と時計を見て、あと3分、と笑った。


仁ちゃん、まだ話したいんだね。
そう思うのは、好きだからだろうな。




「じゃ、何話そっか?」

「メイちゃん話したいこと話して。」

「んー、そうだな。」




ガッツいてると思われるかもしれないけど
ここでこれを言わなかったらわざわざビデオコールした意味がない。




きっと、これをすることで、私は少しずつ答えに向かって行っている。




どんな結末が待っていても、自分の中で、
ハッキリとでも少しずつでも、この恋を終わらせられると思った。
終わらせるために、ハッキリさせたいんだ。



「仁ちゃん、





この街に、来る?」





「んー、そうだね」




と言っておそらく仁はパソコンを触りはじめた。
スケジュールの確認でもしているのかわからないが、
大抵言われたその場で何かを調べ始める。



「チケット取らなきゃ。(予想通り取ってない)来月…」

「来月?」

「来月はもう試験が始まるから…。来週か再来週。
メイちゃんどっちがいい?」


いやその話もうしたやん



と心の中でツッコミながらも、ここは、大事なことは伝えるべきだとハキハキと答えた。




「どっちでもいいけど、早く知りたい」

「わかった。明日の夜までに教える。仕事の後」



わかった、と私は微笑んだ。
仁も微笑んで、こんなことを言った。



「メイちゃんは、いつこっち来る?」




行かねぇよ






とは言えないので、ちょっと笑って見せた。




「そうねー」

「(笑)」

「じゃあそれについては、ここで話そう」




私の提案に、わかった、と仁は笑顔で答えた。




「じゃあメイちゃん、そろそろ」

「うん」

「ありがとう。電話してくれて」




仁は笑顔で続けた。




「たくさん笑った。」

「うん、私も楽しかった。」

「じゃぁ、おやすみ。明日仕事後連絡するね。」

「うん」




バイバイしたあと、私はすぐに眠りについた。
彼が来たならどうすればいいんだろう。
そんなことを考えるだけ無駄なんだろうな。
それでも考えるのは、思い出がそうさせているのかも。



翌日、彼は連絡をよこさなかった。
私から連絡し、連絡するって言ってたよね、と詰めた。
そしてさらに翌日、ようやく返信が来た。






『連絡が遅くなってごめん』



『色々な方法を考えたけど、スケジュール的に、今回もそちらへ行くのを諦めなきゃいけない』






私は





ポチポチポチポチ




『ちなみに色々な方法って何?』




と訊ねた。




ピロリン




『大学を欠席したり、仕事の会議を休んだり……』






その日が、彼と連絡した最後の日でした。
私は何も返信しませんでした。

思うことはあっても、言いたいことはありませんでした。
何故なら、話したいと思うほどの気持ちがなかったのです。
多分、責める術や材料が沢山あったし、私にはその権利があったと思います。




でも、返信しなかったのには理由が二つありまして。




一つは、もう本当に愛想をつかしていたこと。
エネルギー問題ですね。



もう一つは、不安を残したまま音信不通になったら彼が苦しむだろうと思ったからです。



彼は私のことをなめていたと思うけど
ヘタレで自己中だけど
私のことが好きだったし私と共有していた思い出がありましたので
私の方から無視してやったら痛いだろうと思いました。




それはおそらく効いたでしょう。



けれどヘタレな彼が2度と連絡することは出来ないだろうと予想した通り
今日まで一度も連絡はありません。



それでいいのです。




私はようやく平和な心を取り戻りました。




そして




ついに




咲人に会うのです。





続きます。


情なのかな

2018-11-07 20:38:24 | 
仁と出会って、会ったこともない彼に恋をした。
毎日気になって、幸せな気持ちにしてもらった。
楽しかった。
彼のことを深くなんか知らなかった。
日本語が話せて、背が高くて、会話してて楽しくて。
でもところどころ子供っぽくて。
冷静に判断すれば、それだけ本当に好きだったと言えないかもしれないけれど、
逆にそんな情報だけで冷静な判断なんか出来ない。
2人とも、不思議だけど、恋に落ちていた。

私は訊いた。




「仁ちゃんは決められる立場じゃないって言ってたけど、じゃぁ私が決めていいの?」

「うん」

「私が決めた通りになるの?その権利がある?」

「うん」

「じゃあこうしたいっていうのがあるけど、それ言っていいのかな」



と私が回りくどい事を言っていると、業を煮やしたのか勝手なのか、仁が話し始めた。



「一番良いのは」

「なに?」

「出来るだけ早く一度会って、そしたらいろいろな事が簡単になると思う」



いやだからそれもっと早くやっとけよ。
と思ったが言わなかった(笑)
私はハッキリとした口調で言った。



「仁ちゃん、会おうよ」



仁はうんと答えた。




「いつ?」

「俺が来月試験が始まるから、できるだけすぐがいい。でも俺が行けるのが週末だから」

「じゃぁ週末に休みとるよ」

「わかった」



仁は続けた。



「だから、明日起きたらすぐホテルと飛行機予約する」





(´⊙ω⊙`)





「…実はね。仁ちゃんが来るって言ってた頃、美容院に行ったんだよ。
綺麗にして会いたいなと思ったから」

「ほんとうに?」

「うん」

「うわ、今それを聞いてもっと悪いと思ってる」

「もういいよ許してあげるよ」

「ごめん…」

「怒ってないよ。怒ってないけど………」




本当に来るのかな。




「今度はちゃんと来て」



仁はうんと答えた。
でも前回の件でかなり罪悪感を感じていたのか(いやじゃぁもっとちゃんと埋め合わせろよの一言)
「でも今度は全部予約してから約束する」と言った。
来るんちゃうんかい。


私は言った。




「来て、メイちゃんに触って」

「うん触るよ。俺が悪かったから、今回は何でもしてあげる」

「何でもして」

「うん」

「仁ちゃん、悪い子だったからね。たくさん優しくしてね」

「わかった、ちゃんと埋め合わせするよ」




私が花とか好きだよと言うと、彼は笑った。




「じゃあ俺の鼻の写真送ってあげる」

「そのハナじゃないよ」

「知ってる(笑)わかったよ」

「じゃあ、明日起きたら調べて」

「うん」




ふと見ると、時刻は丑三つ時。





「仁ちゃん、今日はもう寝よう」

「俺が眠いのわかった?」




いや私が眠い(笑)




「メイちゃんももう寝る?」

「うん寝るよ」



そっか、と答える仁はどこか嬉しそうだった。




「おやすみメイちゃん」

「おやすみなさい、明日また連絡して」

「わかった」






じゃぁね、と言って電話を切った。
暗い部屋に、窓から入る街灯の光が筋を作っている。
月明かりなら優しくおぼろかもしれないけど、人工的なそれはそこだけ煌々として見えた。



なんでこんな事になったんだろう。


あたし、仁のこともう好きじゃないのにな。




今ならそう思えるけれど、その時の私は
何度も書いた通り
きちんと終わっていなかった彼とのことがまだ心に溜まっていて


どんなに咲人のことが好きだと実感しても
思い出の綺麗さに縛られていたのだと思う。



仁に、きちんとして欲しかったんだと思う。
どんな方向でもいいから。



私は多分、結構センチメンタルで情深い人間だ。



と同時に



結構疑い深い。






仁が本当に来たら私、どうするんだろう。
本当に来たら。
本当に…?




来る気がしなかった。





そして




約束をした翌日





仁は連絡してこなかった。





続きます。









音信不通になった理由

2018-10-31 20:55:13 | 
その夜、不意に誰かからメッセージが届いた。
私は床に寝転がりストレッチしていたので、ゴロリと横を向いて携帯を引き寄せた。
画面には、仁の名前が表示されていた。



『こんばんはメイちゃん』



他愛もない会話から、彼が飲み会帰りだとわかった。
メイちゃんが恋しいよと言った。
そんなこと言う割にあれから一度も電話もビデオコールも提案して来ない。
不誠実の塊みたいなこの人は一体何を求めているんだろう。
私は何かを確かにしたくて、こう返信した。



『私も久しぶりに仁ちゃんの声聞きたいよ』

『じゃぁ電話する?』



久しぶりに仁の変な声を聞くことになった。
飲み会はどうだったとか、どうでもいい話をしているうちに、
仁はまたメイちゃんの写真送ってほしい、と言った。




「何度も送ってるじゃない」

「足りないよ。プロフィールの写真も毎日見てるよ。更新されてるかなぁって。
だから送って」

「ふーん、しつこいね(笑)」

「メイちゃんは俺を喜ばせるのが好きな性格でしょう?
だから絶対俺が喜ぶ写真送ってくれると思う」




は?




「私のことそう思ってるの?」

「思ってるよ」

「その性格はいいの?悪いの?」

「いいに決まってるでしょう、俺にとって。」




この時気付いた。
彼は私にことをなめていると。
いや、多分こういう男が平気な女の子は結構いる。
特に日本人の女の子にはこんなタイプが多いんじゃないかと思う。
だから俺様系男子をテーマにしたいろいろが人気があるのだろう。
駄菓子菓子、私はそういう輩は真っ平御免である。
なるほどね。私があんなメッセージしたから、私もそういう女だと思ってるわけね。
私はもう少し話を掘り下げてみることにした。
本当にもう少しだけ。




「仁ちゃんは私の事好きなの?」



仁は即答した。




「好きだよ。優しい。すごく優しい……」

「仁ちゃんも優しくして」

「優しくするよ」

「本当に?」

「うん」




優しいっけ?と食い下がると、仁のトーンが下がった。




「優しくないね。最低だね……」



え?



仁は続けた。




「俺の態度が悪かったと思う」

「私に対して?」

「そう…。俺はあまり自分がしたことを反省しないけど、態度が悪かったと思う」



何について話しているんだろう。



「そう思うんだ…」

「うん。でも、もともと態度が悪いから、どう直したらいいかわからなくて、何もできなかった。」

「……それは、最近のこと話してるの?」

「メイちゃんへの連絡」



ああ。。。




まさかその話を
ちゃんとし出すなんて
思っても見なかった



だってずっと
放ったらかしだったから



気にもとめてないくらいクズなんだと思っていた





「そうだね。。。連絡しなかったね」

「うん」

「それはどうして連絡しなかったの?」

「初めは、返事と、どうしたらいいか考えてた。
考えたけどわからなくて、明日、明日、って時間が過ぎていった。
でもその間も、毎日メイちゃんのプロフィール見てて……
そしたらレビューがたくさん増えてたから、あぁ俺はもう失ったんだと思った。
だからもう俺が連絡しても意味がないと思った。」

「え?でも私一回連絡したよね」

「だからまだ俺に興味あると思った」

「いやそれじゃなくてその前にしたでしょ

「ああ」

「なんでそれに返事しなかったの」

「やきもちやいてた」




は?




「え、あ、そうなの?やきもちやいてたから返事しなかったんだ…」




いやいやいやいやいやいや

お前が連絡しないから他の連中と連絡とってたんだろーよ!!
つぅか、ちゃんとしろよ!色々な諸々を!!

何ちゅう………自分勝手っていうより、
自分のことでいっぱいいっぱいっていうか
子供!?


コミュニケーションどこ行った!?



私はポカーンと呆れ切っていたが、仁はさらに続けた。





「その時もっと優しくすればよかったと思った」


当たり前だろ




「私はなんで返事こないのかなと思ってたよ。
そしたら私には返事しないのに仁のレビューが増えてたよ」

「それは仕返し」

「(どのツラ下げて言ってんだこのタコ)ちがうよ、2日くらいしてから。
私のレビューが増える前だよ」

「ああ」

「だから、なんでかなと思ってたよ」

「それは俺が悪い。言い訳したくないから、俺が悪かったと思う。」




言い訳したくないから謝るってすごく男らしいと思うけど、
説明不足な謝罪はただの説明責任の怠慢だよね。
結局この人のキャラクターから察するに、ヘタレで思いやりが足りないから連絡出来ず、
かつその間に気を紛らわすべく他の人とくっちゃべっていて、
それが私に悲しい思いをさせたからこんな事になったっつぅのに
それに対してのリベンジだとかほんにゃら言ってるわけね?
あぁ。。。。。。。。。。。。。。





本当に心底呆れる。最近そういうこと考えてたの?と聞くと、
最近じゃないよ。あれからずっと考えてた、と答えた。
じゃ早く謝れよ




そしてさらに!
仁は聞いてもいないのにこんな事を話し始めた。




「俺にとって一番難しいことは、メイちゃんの事が好きだけどすごく遠くに住んでるから会えないこと。
でも、好きな気持ちがなくならないし、会えないし、困ってる。」





(΄◉◞౪◟◉`)



い、


いまさら………


それもうちょい早く言ってくれません?




仁は続けた。




「じゃぁ、俺とどうするの?」

「(いや、じゃぁって何)どうしたいか のリクエストはないの?」

「俺はリクエストできる立場じゃない」

「(そらそうだろ)質問していい?仁って彼女とはどれくらい頻繁に会いたいの?」

「できるだけ会いたいね」

「でも忙しいやん」

「忙しいけど毎日会いたい」

「えっほんとに?それはすごいね」

「えっそう?」

「いや私はそういう風に思われるの嬉しい人だけど、仁がそういう人だと思わなかった。連絡も毎日しないし」

「あぁそうか」

「あの日から今日まで、会いたいとか電話したいとか思ったの?」

「思ったよ」

「でもしなかったね」

「思ったけど、罪悪感があったから、普通にできなかった」





少しずつ、怒りや憎しみが鎮まって

仁がどんな風にダメな人なのか正確に判断できるようになってきた気がする。




私が思う普通よりレベルが低い分、最低すぎる人間に見えていたけど

多分ただのヘタレで、悪人じゃないんだろうな。





私は結構、責任感が強い方だし

勇気がある。

ま、自分で言うのもどうかと思うけど誰もここで言ってくれないしね(笑)



だから彼の行動が解せない。



だけど多分


私が思うより悪いやつじゃなかったんだ。



だからって、そういう人をまた好きになるかは別の問題だけれど。





「私は会いたいと思ってたよ」

「ほんとう?」

「うん。すごく楽しみにしてたから、会えなくなったとき残念だったけど、次いつ会えるのかなと思ってた。
次の計画立てたいと思ってた。」



仁は本当に悪そうに、連絡すればよかった、とつぶやいた。
私は言いたかったことを言いたいと思った。
そうだよ、私、この人のこと好きだったんだから。




「毎日、会いたいって思ってたよ」

「ほんとう?」

「うん」

「俺も」




私は自分の手のひらを見つめていた。
これは何かを考える時のクセでもあるけれど、この時は、ただただ
少し前に胸に立ち込めていた思いを思い出していた。
この手のひらに、あなたの手を、感じたかったんだ。




「……会って、仁ちゃんに触りたかった。
変な意味じゃなくて、本当に触ったり見たり……
あぁ、仁ちゃんが本当にここにいるんだなって感じたかったんだ」



仁は、うんわかる、俺も、と答えた。



「今も………自分の手を広げて見ているの。
仁ちゃんの手を触ったら、どんな感じだろうって考えてる」




会いたかった。



抱きしめて欲しかった。



すごく楽しみにしていたんだよ、私。






続きます。

だんだんクズ感が出てきた

2018-09-25 23:03:42 | 
『約束したのに会いに行けなかったから、普通に反省してて連絡取れなかった』

『それに、メイサはいろんな人と連絡してたから、もう俺に興味がなくなったと思った』




仁はそう続けた。


は、はぁ?
一文目はまぁまだ理解できるけどヘタレだなと思うが
二文目に関してはアンタが先に他の人と話す出したんだろと思うんですが…
まさか来るまいと思った返信と、何を言うてるんだというその内容で胸がザワザワした。



『でも本当は』



えっ何!?
本当は、って怖い!!涙





ピロリン





『メイサと付き合いたかったけど、住んでいるところが遠すぎてそれが実現できなかった』




(´⊙ω⊙`)




え、


今それ言う?




え、どういうこと?どういう思考回路でその話になったの?





とりあえず頭の中がハテナでいっぱいなので、私は携帯をバッグの中にしまった。
今日は本当に良いお天気だ。
青空と同じように清々しかった気持ちが一気にグシャグシャになってしまった。



ちょちょちょちょーーーい。
マジで仁さんに連絡しなきゃよかった…。
せっかく咲人への愛♡で気持ち良い1日が始まろうとしていたのにぃー涙
てか何言ってんだよコイツ(真顔)
結局どうしたいのかよくわからないし、もう私のこと付き合えないからやめたわって言ってんのか
それともまだ気持ちはあるのか。
ほんでもって、会いに来る気はあるのか…




うーーーーーーーーーーーーーーん




ポチ………ポチポチ



『返信ありがとう。
私は仁にすごく会いたかったよ。
会ったらいろんなこと分かると思ってたよ。』




ポチポチ……ポチポチ…




『最近は理由も分からず彼氏にフラれたって凹んでたし(笑)』




ポチポチポチ




『仁がもう私と連絡取りたくないなら仕方ないけど、そうじゃなかったら私はまた普通に話せたら嬉しいよ。
たまにはビデオ電話で美人見れば😜笑
いろんな人と話していたけど、仁が返事くれないから仕方ないから話してたよ。
またね』




ピロリン




送信ボタンを押し、ふぅぅぅぅーーーーとため息をついた。
なんつータフワークやねん。


仁はすぐに『確かに会うことが必要』『絶対に一度会いたい!』と返事をしたが、
結局なんだかよく分かんねーなという気持ちは変わらなかったし、
何より一言謝るべきなんじゃないかと思った。
それに、『は?アンタ何意味わかんないこと言ってんの。まずは謝んなさいよ』と言えなかったことで
仁さんへの気持ちがどんどん冷めていった。
いつでも誰かを傷つけたいわけじゃないけど、悪いことをしたら謝るくらいの常識は責めたいし、
少なくともそんな基本のキについても話し合えない男は私にとってはクズだった。


可愛さ余って憎さ百倍?
いやーそうね、それもあったかな。
この日から毎日、頭と心が天秤にかけられてたな。

好きだった記憶から来る、許したい気持ち
もし本当に来てくれたら許したい、元通りになりたい

でも

バカは死んでも治らないから、とっとと三行半突きつけてやれば?
ていうかむしろ、こっちに来させてその気にさせて振ってやれば?



白と茶色が混ぜ混ぜのラテの表面みたいな気持ちになった。
ただ一つ、どちらの思いにも共通している事があった。





彼に来て欲しい




良い結果も悪い結果も、それなくしては得られない。





その日から度々仁から連絡がくるようになった。
しかし相変わらず何か解決しようとする姿勢はなく、クズ感が増していった。
次の約束をするわけでもなく、ただ他愛もない会話をし
電話することも提案せず、ただ可愛いメイサさんの写真送ってと言い
こうして羅列して行くとますますク(流石に言いすぎなので自重)……



それにいちいち対応していた私の腹の中は先ほども書いた通りで。
ぐるぐるのチョコバニラソフトだった(ラテどうした)。






だから私は






何かをハッキリさせたくて、そのためにハッキリした態度を取るのをやめた。






彼の出方と機会を待った。





どうしてそんなことが出来たのか。





グルグルなのに。




その間に




私の心を支える人がいたからだ。





続きます。






あなたが私にくれたもの

2018-09-16 14:11:59 | 
『仁、元気?
突然連絡してごめんね。
最近気遣ってあげられてなかったね。
仁は優しいし面倒臭がりだから、思ったこと言えてなかったよね。』




そんな書き出しで私の謝罪と感謝のメールは始まった。
仁は子供っぽくなかなか折れないところもあったけど、口論は避けたがるところがあった。
若さなのかもしれないが、微妙な雰囲気を自分から解決する姿勢もなかった。
そして基本的には私に優しかった。





『ねぇ、私の英語についてどう思う?正直に』




まだマメに連絡を取っていた頃。
グスグスと泣きながら、そう彼に連絡した事がある。
その日はちょうど、この国に来て半年が経った日だった。
半年間、仕事では日本語しか使わないので英語をブラッシュアップする必要は皆無だった。
それでもこれを機に自分のポテンシャルを伸ばしたかった。
『そら住めば話せるようになるだろ』と住んだことのない人間が言うのは大間違いだ。
当然よく聞くワードは覚える。バッグいりますか?とか。
だけど良い大人なんだから金さえあれば言語なんか必要ない。
少なくとも、喋れるようになったと言えるほどには成長できない。
本人が何か努力しない限り。


半年間、語学学校に行くでもなくただただ現地とオンラインの友達と話し続けた。
まだ話せないうちは1日100通はメールのやり取りをした。
それだけでヒイヒイ言った。大卒が聞いて呆れる。
何人も現地で友達に会ってみて、ようやく電話する勇気が出た。



それでも、半年いてこのレベルかと悔しかった。



悪いとは言わないけど、この国に居られるリミットがあることを思うと
ただただ焦らされて、もっと頑張ればよかったなと悔やんだ。
悔やむことみだだと先人たちは言うけど、悔やんでいたい思いしなきゃMAX頑張れない残念な人間もいる。
ま、あたしみたいな、ね。


私の連絡に仁さんはすぐに返信をくれた。




『ほとんど間違えない。
時々間違えるけど、意味は全部わかる。
僕が速目に喋ってもちゃんと聞き取れてる。
上手だと思う。』



嬉しかったけど



その時の彼の日本語能力は私の英語能力より上で………





『何かあったの?大丈夫?』

『仁さんには言えないよ。ごめん』

『わかった。言わなくても良いから。言いたくなったら聞くよ』




ボロボロ涙がこぼれた。




『だって、仁さんは日本語が上手で、私は英語がまだまだ大変で。
それなのに仁さんに弱音なんか吐けないよ。
これでも頑張ったって思ってるけど
自分が思うより全然だから、もっと頑張らなきゃって悔しくて。
どうしようもなくて、あんなこと質問しちゃったの。』




すぐに既読マークがついたけど、少ししてから彼から返信が来た。
ずっと入力中になっていたから、多分、考えていたんだと思う。




『多分、外に出て散歩したら良いと思う』




(´⊙ω⊙`)




『それから、よく眠ったら良いと思う』




私はポカンとして読んでいたが、彼は続けた。




『そうしたら、目が覚めた時に問題は自分が思っているより大きくないって分かると思うから』


『今はきっと、心配しすぎちゃってるから』





………仁さん。





『ありがとう。
その場しのぎな慰めじゃなくて、現実的な解決方法を教えてくれたね』

『その方がメイサさんが本当に元気になると思ったから』

『考えてくれたんだね。ありがとう』

『うん。どうしたらメイサさんが早く元気になるか考えたよ』





仁さんは



不誠実だったし



子供っぽかったと思う。




だけど




私が辛い時に、親身になってくれた。




『誰にでも言う話じゃないから。
僕のこと信用して話してくれたんだと思ってうれしかったよ』





私達は




会ったこともなかったし、すれ違ってしまったけど




その時は大好きだった。




大切な話をしたり、思いやったりもしていたんだ。






『仁、ごめんね。
でも沢山ありがとう。すごく楽しかった。
日本語の勉強頑張ってね。 メイサ』




そうやって終わった私のメールは、ちゃんと彼に届いただろうか。
怖くて、開封済みかどうかもチェックできない。
きっと返信は来ない。それでいい。
でも私は言いたいことを言ったんだから前を向ける。




私はポイと携帯をテーブルの上に置き、ラテを飲んだ。
今日はクライアントに会って、そのあと別のオフィスまで遠征して…
それから夜は咲人と電話して……
何だかんだでバタバタするなー。





ピロリン





不意に携帯が鳴った。
見ると




『送信主:仁』





!!



思わず手が震えた。
おまけに心臓がものすごい勢いで脈打ち出した。




じっ、じじじ仁さんから返信来ちゃったじゃんっっっ

どどどどどどどうしよう

読まなきゃ!?えっやだ読みたくない!
悲しくなること書いてあるんじゃないの?
もうこれ以上傷つきたくないよーーーーーーーーーー!!!!



多分その場で私を観察している人がいたら『大丈夫かあの中国人』と思ったに違いない。←日本人です



仁の書き出しはこうだった。




『メールありがとう。






俺が悪かったから、メイサは謝る必要があまりないと思う』






彼のメッセージは、意外な方向に続いていった。






続きます。