メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

「君のことなんか好きじゃない」

2019-07-18 00:24:20 | アイアン
私は返事を書いた。




『心配しないで、そのメール受信してるわ。

アイアン、あなたっていっつも正直じゃないわね。親切だけど。
そういうところ、すっごくこの国の人間らしいわ。
私のこと、好きになって来てるんでしょ😜

何にせよ、あたしは別にあの国の男がイイ!とは思ってないわ。
まぁ彼らの発音は聞き取りやすいけど。
あと、私の周りの女の子は誰1人、あの国の男と付き合いたいとか言ってないけど?(笑)』



すぐに携帯の受信音が鳴った。



『Haha, Ok ok calm down. I think you are OK. ←?
I don’t like you lol
You just kiss nice that is all.
Good night smelly lol x』



アイアンはときどき冗談で私をsmellyと呼んだ。
私が靴下の写真を送ったことがあるからだ。←なんで



ポチポチポチポチ


『Hm? I’m very calm now lol
Not upset at all, no worries.

Now you’re not being normal Iron :)
If you’re normal you couldn’t say that.

Night night, fatty.
I miss you x 』



ピロリン、と送り終えてから、ふぅーん?とメールを読み返した。



君のことなんか好きじゃないよ(笑)
君はただキスするのにイイだけ。



こんな事、冗談じゃなきゃアイアンは言わない、いや、言えない。
アイアンはとにかくYES MANで、争いも嫌い。
失礼なことを(無意識にやってることは多々あるけど)出来ないし言えない。
そもそも今彼は、私の心を開かせようとしてるトコで、
そんな時にこんなこと、言えない。
これを言った理由は2つだけ。



1つ、
図星だから嘘ついた



2つ、
でも真剣じゃないから一応牽制する必要があった




めーーーーっちゃ合ってると思う。
アイアンは最初から一度も私に好きだと言っていない。
好きだよ〜んと嘘ぶいてコトに運んでしまえば良いのに、一度も言わない。
それは私が疑っている通り、誰か他に真剣な相手がいるから
「好きって言ったじゃない!!」と私に責められたら困るからに違いない。
法律関係で働いてたからなのか、そういうとこだけは頑なだった。
だから私の思う⬆︎2番目の理由は正しい。



でも、そんな時でも言い方は色々ある。
ネンネすることを「キスする」とボヤかしたのもそのうちだ。
もし本当に全く好きじゃなかったらきっと



『Hahaha! Yes I like you a lot lol
Are you finally gonna be my gf?LOOOL』



って冗談で済ませたり



『No worries I’ll never bother your serious relationship ;)』


って柔らかく牽制したり



やりようは色々ある。
ってかアイアンならする。



こんな風に不必要に強めに書いたのは、
負けず嫌いのアイアンが図星を指されてムッとしたからぽい。
なんか小学生みたい(笑)
いずれにせよ彼が本気でないのは、顕著なんだけどね。




ピロリロリーン




『Haha I promise I am being normal.
ハハ、誓って俺はフツーよ。
今度会えるの楽しみにしてる。

俺のこと恋しいの?よくなったね(笑)

Good night monkey 』




smellyがモンキーになった(笑)
彼は私をcheeky monkey、イタズラ子猿と呼ぶのも好きだった。
私は基本的に、好きな男には激甘で優しいのだけど、
この時はアイアンが全然私に本気じゃないのをわかっていたので、
ぜーーーんぜん優しくなかったし、可愛くなかった。
次の日もそうだった。




続きます!






忍ぴょん参上

2019-07-17 22:55:12 | アイアン
話はほんの少し遡る。
前にも書いた通り、例の安ホテル後もアイアンはマメに連絡をよこした。
むしろ今までよりマメというか、内容も濃かった。


内容が濃いと言っても、別に政治の話をしましたってわけじゃないんだけど、
日本文化について聞いて来たり、私との“まともな会話”を増やして来た。
そしてそれはどう考えても、メイちゃんを“満足”させるめの試みなのは明らかだった。



それとは別に、こんな会話もしていた。




『メイサ、今日は何したの?』

『今日はお友達と会ったの。隣の国の男の子が遊びに来たの』




その日は私の大事な友達、忍が某国からやって来る日だった。
忍というのは、私がまだ仁と決着がついていないと時に
手当たり次第に連絡した中で知り合った男の子だった。
忍は正直友達と呼ぶには若すぎる。
特別イケメンでもない。(全然ブサイクじゃない。むしろ小綺麗)
それでも彼と連絡を取ったのは、
彼が仁と同じ国出身かつ、仁と同じ名前だったからだ。
はい、ここでは違う漢字で書いてますが、実際のお名前は同じなんです。



そんなバックグラウンドはさておき、話してみると忍は超いい子だった。
親切だし話題も豊富だし、品があって頭が良かった。
何度かテレビ電話をしたり、私たちは頻繁に会話を楽しんでいた。
それでもお互いに興味がないのか(笑)恋愛に発展する事はなかった。
それでもお互いに友人として好きだった。



ってなわけで、そんな大事なお友達が我が国(じゃないけど)に来るので
いざご対面しよ〜って話になったのだ。
アイアンはすぐさま返信してきた。



『いいねいいね、君が楽しかったみたいで嬉しいよ。
で、そいつハンサムなの?
妬けるんだけど(笑)』



いや何だそりゃ。
忍ぴょん(誰)はそんなんじゃないし。
っていうかさ……



『うーん、すごくハンサムではないけどとっても背が高いわね。
ご存知の通り、私は背が高い男の子が大好きなの。
彼はかなり若いけどね。
そぉーしぃーて、脂肪ゼロよ』



長身自慢だけどお腹が木になるアイアンはこう返信した。
(お腹が木になったら面白いね!気だよ)




『Wow no fat.
Okay I am super jealous now.』

『Why? ヤキモチ焼く必要全くないでしょ』

『ま、妬いてるよ。
そいつより良くありたいね。
男だから(笑)』

『あと、あなたより背が高いわよ』

『OK now I’m super super jealous lol
Who kisses better?』




うーん



『正確に言えば、知らない。
彼とキスしたことないもん』

『そいつは君の元彼なの?か、寝たことある男?』



いや、だからさ。
基本的には(ここ重要)そんな寝ないんだってば!
アンタが初めてのオトモダチなのよ。



『ない。
彼のことは大好きだけど、実際会ったのは今日が初めてなのよ』




私のこの返信をどう捉えたのか、アイアンはこんな事を言った。




『あー、オッケー。
えーと、もし君が彼のことが本当に好きなら教えてよ。
そしたら俺はちゃんとわかるからさ :)
俺は身を引くよ(笑)』




これってつまり、俺は君の便利なオトモダチだから、
君の真剣な恋愛に口出す権利もないし、
興味もないってことだよね。


想定内だから別にいいけど、ちょっとつまんないなと鼻息をついた。
つまんないのでちょっと放っておいたら、すぐにまたメールが来た。



『あ、俺このメール送ったと思ったけど送れてなかったらみたいね。←ごめん無視しただけ
もし君が彼のこと本当に好きなら身を引くって送ったんだよ :)
何で日本人の女の子ってあの国の男が好きなのかわかんないな。
なんでか教えてよ(笑)』


ふーん。
何その変なコメント。




続きます。


耳が弱いのはお互い様

2019-07-15 01:33:44 | アイアン
私が通っている美容院は腕がいい。
そこそこするけど、トリートメントからカラーまで一通り、
3時間弱かけてやってもらうと、ほぼ死亡していた髪が生き返った(笑)
アイアンに写真を送ろうかな、と思ったけど……



ポチポチポチポチ


ピロリロリーン



『アイアン、忙しい?
美容院終わったわよ。』



なかなか返事がなかったので、諦めて歩いて帰る事にした。
返事が来たら会いに行こうかと思っていた。
もうだいぶ経ってから何気なく携帯をチェックすると、
彼から返事が来ていた。



『終わったの?俺の写真はどこ?(笑)
会いに来るの?』


オット。
私は、暇なら行くわよ、と答えた。
そこからすぐにさっきの駅へ向かったけど、
途中に届いたメールを見ると、アイアンはもうすでにそこにいるらしかった。



『えっなんでもういるの!?』

『メイサ、早く来て〜!急いで急いで〜!!』



歩いてたら日が暮れちゃう!私は電車に乗り込んだ。
さっきまでいた駅に着き、改札を出たらそこにアイアンがいた。



アイアンは笑顔を見せたが、すぐに例のベンチへ向かってしまったので
私は小走りで追いかけた。
階段を上りながら私は彼を呼んだ。



「アイアン!待たせてごめんなさい。
私、あなたがそんなにすぐにオフィスを出ると思わなくて…」

「大丈夫大丈夫!気にしないでよ。でも俺すぐ行かなくちゃ。」



ま、座って座って!と、さっきとは違うベンチまで誘導された。
そこに座るまで、アイアンはしげしげと私を眺め、髪イイネ!と笑った。



「ごめんね、どれくらい待ってたの?」

「んー、15分くらいかな」

「ウッソ!ごめん!ほんとうに…」



謝る私を彼は首を振って制した。



「バカなこと言わないでよ。君は何にも悪くないよ。
俺、君がすぐ近くにいるんだと思ったから、ソッコー出ちゃったのよ。」




正直アイアンのこういうところは有り難い。
全然怒らないしすごく気を遣ってくれる。
ウソくさいと言えばそれまでなんだけど。
私と全然違う人種なんだろうな。
アイアンはいつもの調子で言った。




「にしてもありがとうね!まさか1日に二回も会えるなんてね!ははは!」

「そ、そうね…(笑)」



な、なんか居心地悪いな。
まるで私が会いたかったみたいじゃん……
アイアンは目を細めた。



「髪キレイだね!」

「(あっそうそう。それを見せに来たんだった)
YES!キレイでしょ?いい色になったわ」

「すごくキレイだよ!俺好きだよ」

「へへ、ありがと」

「美人が増したんじゃない?さ、ハグさせて」




と言って彼は私を抱き締めた。
う〜ん♡といつも通り唸るのを聞いて、私は笑った。
彼はちょっと私を離し、私の胸に頭を乗せた。




「心臓ドキドキしてるね」

「待ってると思ったから急いで来たんだもん」

「そっかそっか」



と言い終わるか否かのうちに、アイアンは私の唇をさらった。



「んっ」



私が彼の首に腕を絡ませると、彼も私の腰を抱き寄せた。
アイアンとのキスは気持ち良い。
キスにも相性があると思うんだけど、彼はまるでこのアラサーアジア女が愛しいかのようにしてくれるので、
それがとても良かった。
長いキスの後、彼はごめんよと謝った。



「メイサ。俺本当にすぐに行かなきゃいけないんだ。
俺そんなに長くデスク離れられないんだよ。」

「わかってるよ。大丈夫よ。」




と耳元で答え、私はアイアンの耳の淵を優しく舐めた。
途端に彼はワッちょっと!と声を上げ、私は笑ってしまった。



「ちょっとメイサ何してるの?!」

「何も?(笑)」

「ダメだって、うわ!」




今度はガジガジと耳を噛まれ、アイアンはまた声を上げた。
私は逃げようとする彼の頭を捕まえて、左耳を噛み続けた。
ついに私を引き剥がし、アイアンは私を睨みつけた。




「メイサ、ダメだってそういうことしちゃ!」

「(説得力ないなぁ…)何がー?私はなーんにもしておりませーん。」



と肩をすくめて両手を空に向けて見せた。
超外人ぽいポーズだ。
アイアンは頭を抱え、あークソ!ちくしょう…と何やら騒いでいたが、
隣で私は例のポーズのまま、全然わかんなぁーい、とアホっぽい声を出していた。
アイアンは八つ当たりのつもりか(いや私本人なんだからただの仕返しか)
グイと私の顎を引き寄せキスした。




「んんっ」

「俺のこと、その気にさせたな」

「んん?止めればよかったんじゃない?」

「あぁ止めるよ」



とか言いながらも彼はしばらくキスしていた。
息が上がったまま、彼はまた、俺行かなきゃと言った。




「うん。」

「さもなきゃ、同僚達にスゲー怒られるよ」

「わかってるよ。もう行こう。」




何とか立ち上がったアイアンは、もう一度私を抱きしめた。




「うーんメイサ!!君を行かせたくないけど…」

「いや、あなたが行かなキャ!?」



彼は抱きしめたついでに私を持ち上げたのだ。
彼はヒールを履いた私より20cmは背が高いので、
私は脚をブラブラさせながら彼にしがみついた。




「捕まってて捕まってて(笑)」

「ちょっと〜!」




こうか?と木登りみたいに脚を絡ませようとしたら、脚はダメだよ!と笑われた。
私を着地させると、アイアンはいつものように早口でこう言った。




「じゃ、明日はまた朝に連絡するよ。
俺のスケジュール的に大丈夫そうなら一緒にランチかコーヒーでもしよ。
分かり次第すぐ連絡するから。
それから土曜も車出せそうなら出すからさ。
君を迎えに行くよ。オッケー?」




私がオッケーと答えたのを聞いて、よし行こ!とアイアンは先ほどの階段は向かった。
うん!と隣を歩き出した私は、ふと自分が
アイアンと手を繋いでいることに気がついた。



ʕʘ‿ʘʔ



ちょっと待って何で私アイアンと手を繋いでるの?
えっおかしくない?
びっくりするくらいナチュラルに手繋いじゃったんですけど!



と戸惑っているうちに先に階段を降りていたアイアンが、振り向いた。
彼と背が同じになった私を抱き寄せ、唇を奪った。




「メイサ、土曜日楽しみ?」



アイアンはキスの合間にそう訊いた。
私はyesと答えた。



「ワンピース着てきて」


え、なんで?
今日デニムだったからか?と思ったが、おそらく便利だからだと考え直した(笑)
取り敢えずオッケーとだけ答えておいた。
アイアンは抱き締める腕に力を込めた。
うちに着いたら写真送って、と囁いた。



「何の写真?」

「何でも。できれば服を…」

「オッケーわかった。じゃぁ靴下の写真送るね」

「違う違う違うそうじゃなくて…」

「イヤだよーん。私、あなたのお仕事邪魔できないわん。」

「邪魔してよ。」

「やーだよ。」




じゃ!と去っていったものの、アイアンはまだ上気した顔をしていて、
振り向いて、手を振った。
可愛かった。


続きます!

あなたを好きになるまで

2019-07-13 15:02:16 | アイアン
口を塞いだついでに、アイアンは私を引き寄せてキスした。



「車は?車でキスしたことはある?」

「ここで?ないわよ」

「オッケー。じゃ、初めての“車でキス”もしようぜ。
土曜日さ、車手配できたら迎えに行くからドライブしよう」

「(あ、覚えてたんですね)オッケー」



そう。
メールでのやり取りで、土曜日の夜に車で会いに行くと言われていたのだ。
もちろん元ネタは、先日の安ホテルでの口約束だ。




「混んでないといいんだけどねー。夜だね夜。
どこに行きたい?」

「えっ!?えっと…わ、私よりあなたの方が詳しいんだから決めてよ」

「んー、いいけど。ま、そこらへんドライブしようよ。へへ」

「いいけど、何時くらい?」

「んー、8時とか、9時とかどう?」



私は少し考えた。
彼はそれを見て、君にとって都合が悪かったら今度にしよう、とすぐに言った。
アイアンは争うのが嫌いだ。



「君は翌日仕事なんでしょ?」

「あ、うん、えーと、まだわかんない」

「オッケーオッケー大丈夫。とにかく俺また連絡するし、君も都合悪かったら教えて」



わかったわ、と答えながら、
あの日ベッドの上でテキトーに言っただけだと思った事を
アイアンが現実にせんとしていることに驚いていた。
まぁまぁ、物凄く確率の高い理由としては、彼は多分私を満足させたいだけだ。
そのためにちょっとデートっぽい事もし始めただけなんじゃないかなーと思うと
めちゃくちゃ納得がいった。
それに、どうせ車で何かするんだろうし。




「あと明日もね」



とアイアンは続けた。
この人は本当に本当によく喋る。



「明日忙しすぎなければ午後コーヒーでも一緒に飲もう。
朝会社行ってー、スケジュール見てー、大丈夫かどうか連絡するよ。いい?」

「オッケー」




なんだかよくわからないけど、今日会ったけど明日も土曜日も会うのね。
でも、会えるかどうかは未定っていう、このなんとも言えない感じね…。
とりあえず理由は何にせよ私に会いたいわけね。
今日も明日も、ヤラシイ事はできないけど。
私は携帯を見た。
ヤバい。



「私行かなきゃ」

「えーっダメダメ、行かないで〜」



俺も連れてって〜♡とアイアンは私の腰に抱きついた。
私はポンポンと彼の背を叩いた。



「もーダメよ。そんなに遅れられないわ」

「えぇ〜予約は何時なの?」

「15分後。」

「もうすでに遅いよ!(笑)」

「そぉーよ。でもあなたに会いに来たの。で、あなたと話してたのよ」



私は彼を抱きしめた。



「アイアン、ごめんね。仕事忙しいのに邪魔して…」

「問題ないよ、君が邪魔になることなんか一生ないよ」



と言ってアイアンは私をギューっと抱きしめた。
アイアンは優しい。
アイアンの言葉は薄っぺらい。
でも、薄っぺらいと理解してて会話するなら、誠実だけど優しくない人より良いのかもしれない。
ま、人によるんだろうけど。


私はスックと立ち上がり、携帯をカバンに突っ込んだ。
時間オーバーだ。
アイアンも一緒に立ち上がり、




「オッケーメイサ、もう一回ちゃんとハグさせて」



と言って強く私を抱きしめた。
いつものようにウ〜ン!と唸るのが、いつ聞いても面白い。



「終わったら俺に写真送ってね?」

「ハイハイ」



じゃぁね!と私は駆け足で改札を抜けた。
結局美容院には10分の遅刻で到着した。
席に落ち着いてから携帯を見ると、彼からメッセージが届いていた。



『Thank you thank you thank you thank you....
You made my day :)
Can not wait to see you again.
Enjoy your hair salon.』


あと、頼むからハゲて戻って来ないでね(笑)と付け加えてあった。
私は、ふふと笑みがこぼれた。
彼が喜んでくれたのが嬉しかった。
仕事、退屈してたのかな。
先週会えなかったからかな。



ポチポチポチ



『どういたしまして。あとでハゲの写真送るね〜』



ピロリン



送信後、本当にドライブするのかしらとか
明日会えたらいいけど今日会ったからモチベーション下がるんじゃない?とか
色んなことを考えた。


アイアンが私のこと、本気で好きじゃない事はわかってるけど
私もまだ本気じゃないから、それでも楽しいんだな


でももしアイアンが
本当に船に呼んでくれたら


ランチしたりディナーしたり


普通のデートをしてくれたら



好きになれそうだなぁと



思っていた。




続きます。

「船に乗らない?」

2019-07-12 01:59:37 | アイアン


アイアンが指定したベンチからは埠頭が見えて、そこにはまぁまぁ大きいフェリーが停泊していた。
おっ船が見えるじゃん、と彼は声を上げた。




「メイサ、船乗ったことある?」

「ここで?ないわ」

「乗ったほうがいいよ!楽しいよ。俺もそんなに何度もないんだけどさ。
数年前に一回か二回くらいよ。
パーティーがあったの」

「ふーん」

「なかなか良いよ。今度一緒に乗ってみようよ、どう?」




へ?



私は内心キョトン顔だ。
あんた私と船に乗ってどうすんの?
車ならともかく船で何やら愛を営むのは無理なんじゃないか?
言ってるだけか?


私が黙っていると、彼は話し続けた。
アイアンはとにかくよく喋るのだ。



「天気がいい日なんか最高。
今日なんかいいよね。寒いかと思ったけどそうでもないし」

「そうね」

「君のコートいいね。めっちゃ暖かそう!」

「あなたコートは?そのニットだけ?」

「うん、コート無しよ。全然まだまだコートなくていいのよ。
俺グリーンのコート持ってんだけど、それがまためちゃくちゃ暖かいのよ。
それは真冬用。俺は12月までコート着ないよーん」




Wait, seriously?と私が怪訝な顔をしても、Sure!とヘラヘラしていた。
12月までコート着ないって、あんた大丈夫なの?
……はっはーん。
私は彼のお腹に手を回した。



「暖房がついてるからじゃないの?」

「ちょっやめて!触らないでホント」

「これコート?あなたの内臓を守ってるの?」

「そーだよ!俺守られまくってんの!ったく…」




とアイアンがちょっとブスッとしたので、私は満足げにニヤついた。




「船は、どうして乗ったの?」

「パーティーがあったんだよ」

「それは聞き取れたよ。何のパーティーだったのって聞いてるの」

「あぁ!いやー忘れちゃったな、俺呼ばれただけだから。
多分友達の友達の誕生日とかそんなんじゃない?(笑)」

「(笑)あなた船酔わないの?」

「俺大丈夫!乗り物酔いはないね」

「そっかぁ。実は私はあんまり得意じゃなくて。
飛行機とかはダメなんだよね」

「あーわかるわかる。
俺今は大丈夫だけどさ、子供の時とかバス乗るたびに気持ち悪くなってたよ。
だから全然わかるよ!」


アイアンはいつも、基本的にこんな感じだ。
否定的なことはほぼ言わない。
営業マンぽいっていうのかなー。
どうも薄っぺらく感じるのはネックだけど(笑)
私は埠頭の船を指した。



「でも、大きい船なら大丈夫だと思うの、そんなにその…」

「揺れないよね」

「そうそれ。それに、飛行機と違って新鮮な空気も吸えるし」

「だね。じゃぁ今度乗ってみようよ」




私は彼の方を向いた。
彼は首を傾げて、どう?と訊いた。
ニヤニヤしてなかった。
デートに誘ってるみたいだった。



「うん。乗ってみたい」

「オッケー、決まり。いいねいいね。」

「初めてだから嬉しいわ。あなた、私に初めてのことを沢山経験させるわね(笑)」

「そう?俺が?」

「うん。船でしょー、トイレでキスするでしょー、それからシャワ…」

「シーッシーッ!!大きな声で言わないで!!」




とアイアンは私の口を塞いだ。
私はケラケラと笑った。


アイアン、今でもこの時を思い出すと
私は笑顔になるよ。




続きます。