メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

日本製のいいやつ

2019-02-10 14:36:48 | 咲人
夕方に出たままの部屋は、開け放たれた窓から入った風で心地よく冷えていた。
携帯を充電しようとする私の背中で、咲人の声がした。



「俺シャワー浴びてくるよ」



(´⊙ω⊙`)



「お、オッケー」

「浴びてこようとしたんだけど、皆使うから混んでて諦めたんだ」

「そ、そうですか」

「じゃ」




と言って咲人は洗面所へ消えていった。
私は床の上にペタンと座っていた。




えーと

シャワー浴びるってことは

そういうこと?

え、でも待って。彼だけ浴びてまっせ?

私はええのか?




ポリポリと考えながら立ち上がった。
軽く匂いを嗅いでみたが、とりあえず上半身はお気に入りの香水の匂いだけした。
時刻は日付が変わらんとしていて、私は眠かった。
ジーンズだけ脱ぎ、ベッドに入った。



ま、今日はアウトドアして来たらしいから、サッパリしたいだけなんだろうな。←んなわけないだろ
寝よ。



と、横になっていると、洗面所のドアが開き光が差した。
風呂上がり感ゼロの、先ほどと全く同じ格好の咲人が出てきた。



「ただいま」

「おかえりー」



一つ違うのは、帽子を取っていること。
考えてみたら、帽子なしの彼を見たのはこれが初めてだ。
帽子を取ったらハゲ、でもなく、メガネを外したらイケメン、でもない咲人はベッドの縁に座った。
(メガネはかけてない)
広いベッドの半分だけ使っていた私の足元に。



「俺、質問があるんだけど」



私が、ん?と見ると、彼もこちらを見つめていた。



「さっきパブにいた時、なんで俺の手握ったの」



ゲッ。



「握りましたっけ?」

「握っただろ。クマさんと話してる時」




えーと
まさかそれがお水のやり方だからとは言えないしなぁ
特に深い意味はないんだよなぁぁぁ



私は身体を起こし、彼の手に手を伸ばした。
彼が応えてくれたので、握った彼の手の甲を優しくさすった。



「で、あなたはこうしたわね」

「うん」

「どうして私の手、さすったの?」

「さすりたかったから。」

「なんで?」



私の小さな手は、すっぽりと咲人の両手に包まれていた。
初対面でも書いた通り、咲人は小柄だ。
でもなんだかんだ言って、結局私より色々大きい。
咲人は窓の外に目をやり、少し笑って話し始めた。




「君が俺の手を握った時、『彼女、俺のこと好きなんだ』と思った。」

「………。」

「で………」



私の方を向いて、クシャっとした笑い皺を見せた。



「『俺も』って思った…。」



私は笑顔で腕を広げた。
すぐに抱きしめに来てくれたので、私は咲人の体温を感じた。
私が尻尾を振りながら頬にキスをしていると、咲人は真面目な声で私の名を呼んだ。



「メイサ、確認しておきたいことがある。
君は俺と付き合う気がある?
俺たちは違う国に住んでるから、全然簡単なことじゃないと思う。本当に。
それでも俺と…?
それとも、ただ楽しみたいだけなの?」



いつも通り面倒臭い喋り方を聞きながら、彼の横顔を見つめていた。
真剣な表情だった。




「君と何かする前に、それについて返事を聞きたい。
聞かなきゃ何もできない。」



へぇ、楽しみたいだけって、そういう発想あるんだ。
大人なんだなぁ。。。


と思いながら彼の頬にキスを続けた。
何もできないと言った彼もそれを止めるそぶりはなく、応えるように私の頬に数回キスをした。



「答えてくれ」



正直に言うと


この時の私の頭に疑問が浮かんでいた。


多分、えっ何でそう思ったの?!とツッコまれそうなことなんだけど…



え?咲人はどっちがいいんだろう?と思っていたのだ。




アホだろ。




だ、だだだだって〜!
好きだから付き合って、とか付き合おう、とか言ってくれないとわかんないんだもん〜!!
いやいやいやこの流れどう考えても彼は付き合いたいんじゃん!って責められそうだけど…
その時はそう思ったんだもの〜滝汗
しかも難しいと思うとか言われたからさ〜滝汗



「……。」

「答えてくれ、メイサ。」



えー、なんか咲人がどう思ってるかわからないのに ←わかれよ 答えるのやだなぁ。
でもここで答えないでバイビーって帰られるのもやだしなぁ。



「答えるの…必要なの?」



私は彼の唇から僅かに離れたところにキスをした。
Yes, of course. と彼が答え終わるか否か、今度は優しく唇に触れた。
一瞬咲人が躊躇ったのがわかった。目を見開いた。
けれど、もう2回ほど優しく触れると、彼も私の唇にキスを降らせ始めた。



「じゃぁ、あとで答えるわ。」



その返事で満足したのか、そんな事はだんだん霞んできてしまったのか。
それとも、『彼女、俺にキスした。俺のこと本当に好きなんだ』と実感したのか。
多分それが一番の理由だったんだと思う。
手を握っただけで、『俺のこと好きなんだ』と思える人なんだから。



大好きな人にキスされたら、すごく嬉しいと思う。
相手も自分のことを好きなんだと思うだろう。
そうしたら、自分も!って思って、もう目の前にある愛しい身体を抱きしめたくなってしまう。



それが差し込む光だけが頼りの部屋で2人きり
心地良いベッドの上だったなら
全部手に入れたいという欲求に抗うことなんか出来ない。



咲人は私の首に触れた。



「こんなに濃く跡がつくと思わなかった」

「朝目が覚めた時も痛かったよ。寝る前もなんかジンジンするなーって思った」

「知らなかったんだよ。君の皮膚がそんなに敏感だなんて」



と、つぶやきながら甘く耳を噛んだ。
私が声を上げると、嬉しそうに何度も繰り返した。
息が上がってジタバタすると、もっと満足げに何かささやいたが、ジタバタしていたのであまり覚えていない。



しかし




「メイサ……」

「うん?」

「俺、日本製の凄くいいものを持ってるんだ。」





はい?





「すごく質が良くて、君のことすごく良くしてくれる。
でもそれを使ってる間、君は声を我慢しなきゃいけないよ。
2分間だけだよ。」



(´⊙ω⊙`)




「どう?使ってみたい?
ていうか………






使って良い?」





ちょっ



えぇっ!?




続きます。

手を繋いで

2019-02-09 00:31:10 | 咲人
皆に凝視されて、私は仁王立ちのまま固まった。
ちょ……超気まずい!!
でももう後には引けない!!
こんな時でもマスターはビジネスなので、Helloと答えた。


「Can I help you?」

「Yes...ah... can I have a glass of mojito?」

「ごめんなさい、モヒートはないんです」

「あーそうですか……えっと、じゃあ…ビールを…」

「もちろん」

「あとえっと…どこに座ればいいかしら」

「どこでもどうぞ」



見回すと、くつろげそうなソファ席と、オッサンたちで埋まったカウンターがあった。
咲人が来たらソファ席の方居心地良さそうだけど、それまでぽつねんと1人で座ってるのって何か意味なくない?
勿体なくない?
えぇーーーーーーっっとーーーーー


私は一つだけ空いていたカウンター席に手をかけた。



「ここ、いいですか?」



隣のおっさんは笑顔で勿論勿論!!と答えた。
そして一気に周りのおっさん全員が私を質問責めにした。
どこからきたの?
何しに来たの?
この辺に泊まってるの?etc etc......
マスターさえも参加して来た(笑)
私はちょっと恐縮しながら答えた。



「えっと、日本人です。でもいまは日本に住んでないの。
で、初めてこの国に来たんだけど、実は今日、誕生日で……」

「何だって!?!?」



皆が、せーのっと言って



「ハッピーバースデートゥーユー♡」



歌い出した(笑)
酔っ払い最高😂
オッサンは、じゃぁ祝わなきゃな!シャンパンご馳走させてくれよと言った。
私が喜ぶと、マスターもニコニコしてシャンパンを持って来た。



「かんぱーーーい♪」



と皆で杯を上げると、楽しい宴が始まった。
皆とても優しくてフレンドリーで、私はさらにもう一本シャンパンをご馳走になった(爆笑)
よ、よかったぁーーーー
一人で咲人待つの心細かったもんなぁ。(本音)

私が2本目のシャンパンを飲んでいると、バーのドアが開いた。
振り向くと、咲人がいた。
そしてオッサンと楽しそうに歓談している私をポカンと見ていた。




「咲人〜!」

「やぁメイサ…」

「ん?メイちゃん、こちらは……」

「さっき話してた友達!咲人、彼はクマさん。超いい人よ♡」



とご紹介に預かると、クマさんと咲人は母国語で挨拶しだした(笑)
私はシャンパン2本分の恩があるので、そのままクマさん話し続けた。
咲人はビールを注文し、隣に立ってなんとなく参加していたけど、
流石に仲間と遠出した後の立ちっぱはイヤらしく、
どこかから空き椅子を持って来た。


私はシャンパンの恩があるから(っていうかいい人だし)クマさんを無下にできないけれど、
同じ様に親切にしてくれている咲人(夜遅いのに突然来訪した女のためにまたここに来た)にも疎外感などなどを感じさせたくなかった。



ので



スッ



クマさんと話し続けるまま、隣にいる咲人の手に自分の手を重ねた。
そして握ろうとすると、咲人も手のひらを返して握り返した。
クマさんとキャッキャ喋りながら私は、咲人が私の手を優しくさすっているのを感じていた。




「さて、と……そろそろ老いぼれは帰りましょうかね」



と笑い、クマさんは千鳥足で帰って行った。
どうやらすぐ近くに住んでいるらしく、どうせまた明日来るけどねなんて言っていた。
クマさんが帰ったのをきっかけに、私は言った。



「ごめんね咲人。せっかく来てくれたのにあなたとあんまり話せなくて」

「何言ってるの、全然いいよ。楽しそうだったね」

「うん。嬉しい!まさかこんなに親切にしてもらえるなんて思ってなかった」

「君の能力だな」



と咲人は笑った。
咲人はよく、私には男の人と仲良くなる能力があると言っていた。
彼が私の前職を知っているのもあったと思う。


何にせよ、咲人が私をいろんな面で高く評価してくれているのは嬉しかった。
ご機嫌で店を出ると、咲人は聞いた。



「帰る前にどこか寄りたい?それともまっすぐ部屋に帰る?」



えっとぉー
それ以前に質問は、あなたも来るのかどうかなんですけど……
そ、そりゃ来ますよね?



「えー、えーと、もう遅いし寄らなくていいかな。
あなたどこか行きたいの?」

「いや、俺は君のこと気にしただけだよ」

「あ、そうっすか……」



と、二人はトコトコとお部屋へ向かった。
今日はどんな天気だったかとか、メイサは何をしたんだとか
他愛もないことを話しているうちに
マジで
あっという間に
お部屋についてしまった。
咲人は笑った。



「な、ドアの開け方覚えてるか?」

「勿論」



私がうまいこと開けて見せると、おぉー流石と感嘆した。
私もちょっと笑って部屋に入り、
ドアが
古いドアがバタンと音を立てて閉った。




続きます。



大注目されるバースデー

2019-02-04 00:13:30 | 咲人
翌朝目が覚めたときも、まだ首が痛かった。
鏡を見ると、いくらかキスマークとも何かの病気とも取れそうな跡が残っていた。
あーあー。
どうすんねんこれ。。。



とりあえず風呂に入り、見事に筋肉痛になった脚をストレッチした。
ストレッチは痛かったけど、した後の足はずいぶんマシだった。
開脚しながら携帯をいじっていると、咲人からメッセージが届いた。



『いくつか君が観光できそうな場所をピックアップしたよ。
あと、レストランも。
もし何か困ったらいつでも電話して。』



優しいなー。
彼はすごく細やかだ。
追い討ちをかけるようにもう1通メッセージが来た。



『あと、キッチンの棚の鍵の締め方だけど……』





ほんとに細やか




それはいいよー!!と笑っていると、もう1通メッセージが届いた。




『ところで君は今も、今夜俺に来て欲しい? :)』




(@▽@)





えーと……
ポチポチポチ




『勿論会いたいわ』

『OK :)』




ううぅーーーんと天井を仰ぎ、ハテナマークを飛ばした。
えっとーちょと待って整理しよ。
昨日咲人は私に首噛んでいいか聞いて、んで噛んで、また来るよって言って、
んで今夜また来ますと。
なんか買って宅飲みするのかなぁ。
それとも、ハグして寝るの?
えーともしかしてそのー。。。何かするのか。。。しら。



私は彼のことを思い出していた。



てゆーかさ、あそこで聞くのってキスしていい?じゃないの普通は。
なんであの人噛んでいい?って言ったのかしら…
ほんでもしかして私たちって噛むだけの友達?
巷ではキスフレなるものがあるそうなんですけど、それですか?
カムフレ?
なんかカムフラージュみたい。
カムフレージュ、なんつって←アホ



とまぁバカなことはさておき、私は髪を乾かしながら考え続けた。
咲人がどんな気持ちなのかわからないし、
私と深夜に何をする気なのかもわからなかった。
まぁ普通なら、昨日あんだけ噛んだんだからそりゃ今夜は続きでしょうよって思いそうなんだけど、
私は昼間の彼があまりに紳士的だったのと
彼が一言もそれを連想させることを言わなかったのとで、
あっ、あと!私が結構鈍いのとで(トホホ)
今夜彼と致す気がしなかった。


だってさー咲人ただ噛んでただけじゃん。
それに好きとか言ってないしー。
ただ抱きしめて噛んでただけで別に体触ったりもしな……



あ、めっちゃお尻揉んでたわ



(・▽・)




私は思い出した。
ぽやややや〜ん(効果音)





「んっ、咲人……」



咲人が強く吸い付いたり優しく噛んだりするせいで
私は息が絶え絶えだった。
痛みとくすぐったさが交互に襲って来る。
耐えきれずギュっと抱きつくと、咲人も応えるように腕に力を込めた。
そしてそのまま私の背中をさすっていた。
何のきっかけもなく、そのまま彼の手は下に降りて行った。
そしてデニム越しに私のお尻に到達した。



ぽややや〜ん(効果音再び)



そーだわ。普通にお尻触ってたわ。
めっちゃ性的じゃん。
え、なに?じゃぁどうなんの?
てゆーか私たちの関係って何?????
超ーーーーーー今更だけど、あの人彼女いるのかしら!?
で、でもそれ聞いたらなんか私が気にしてるみたいじゃん←気にしてる
彼女になりたいかどうかって聞かれたらぶっちゃけよくわからないけど。



ブツブツと唱えながらなんとか着替え終え、私は街へ出た。
街は相変わらず物凄く暑くて、冷たいものなしには生きられない感じだった。
ようやく熱が引いたのはもう6時頃に、一旦雨が降ったからだった。
咲人オススメの店で1人夕飯を取り、私は部屋へ向かった。
ぶっちゃけ足が疲れた。
今日も完全に歩きすぎた。
でもやっぱり1人であの国いるよりも、嫌いな上司に会わなきゃいけなかったよりも、ずっといい。
初めての国で初めての人に会って、新しいことをたくさん知れた。
こんなに良い誕生日はないんじゃないかと思った。



部屋まであと少しの所で、咲人から連絡が来た。



『ごめんメイサ、予定していたよりも遅くなりそう。
多分22時くらいになりそうだ。
本当にごめん』



まぁ何つってもね、
私が勝手に突然来たので、責められませんわ。



『大丈夫よ!多分どこかで一杯ひっかけてるわ』



と言ってヨシと辺りを見回した。
えーーーと…………
何もねえな。



咲人が用意してくれた部屋はとても綺麗で素晴らしいし、
最寄駅は主要駅の一つだ。
でも一応住宅街。
なので、この辺でどこか一杯引っ掛けるって言ってもー……




「あ、あった!」



私の視線の先には、煌々と輝くネオンがあった。
この国言葉なのか、全然読めない(笑)
でも多分この店の名前で、それはまぁまぁな大きさのバーみたいだった。
見ると、店内にもテラスにもちょこちょこ人がいるし、
でも満席じゃなさそうだし、
何つっても近いからいいなって思った。

咲人に店の名前とそこにいることをメッセージして、私はドアに手をかけた。
開くとすぐにバーカウンターがあって、オッサンが数人陣取っていた。




ほんで



「!!」



全員が振り返った上に、メイちゃんを見てびっくりした。
う、うんそうだよね。
アジア人この辺にいないもんね……



おまけに!



私はマスターに向かって言った。



「He...hello.」

「!?!?!?」



多くないにしても、この国にもアジア人は住んでいる。
だけど、皆普通はこの国の言葉を喋る。
なのに、アジア人な上にカタコト英語の女がぷらっと入ってきた。
繁華街でもないのに。
皆私を凝視していた。



ど、どうする俺!?


ど、どうなるメイちゃーーーーん!!!





続きます!












ソファで

2019-02-02 02:45:28 | 咲人
「え……?」



噛んでいい?に、私は言葉に詰まった。
私がきつく抱きしめた腕の中で、咲人は続けた。



「少しだけ」

「え、えっと…あの…その…」

「いいの?」

「............。」



私は右肩の髪をどけた。



「はい…」

「OK」



と言うや否や、咲人は私のうなじに噛み付いた。
私は声を上げた。
咲人は構わず何度か歯を立てては吸い付いて、味わっていた。
私が息を荒くしていると、やっと満足したのか彼はそこから唇を離した。



「Hmm...... so delicious. I didn’t expect that delicious. 」

「はぁ……咲人……あ、あの、私、汗臭くない?」

「は?全然臭くないよ(笑)だったら噛んでいい?って聞いてないぞ」

「よかった…...ひゃ!」



と再び噛まれて私は悲鳴をあげた。
咲人は私の身体をきつく抱いたまま、ひたすら私の首を噛んだら舐めたりしていた。
正直、あんまり首を噛まれたいと思ったことはなくて、
私が噛んで欲しいのは耳なんだけど←聞いてない
でも、すごく大変だった。



「咲人……」

「……メイサ、俺、行かなきゃ」

「やだ。行かないで」

「ダメだよ。明日どうしても欠席できない」



と言いながら咲人は私の腰に手を回した。
言ってることとやってる事が違うんですけど!?
私は食い下がった。



「じゃぁ最後にもう少しだけ」

「OK。じゃあ、左首も食べさせて」



と言うと私の髪を退けた。
齧られるたびに力が抜けたので、一足一足思わず後ずさった。
咲人も追うように靴を履いたまま部屋の中へ進んだ。
そして私の踵がソファにぶつかった瞬間、バタンとそこへ倒れ込んだ。
私が右に顔を向けると、彼の手が私の手を捕まえて、優しく握ったのが見えた。
恋人つなぎみたい。



「咲人…」

「…また明日来るよ。夜になるけど」

「うん……寂しくなる」

「大丈夫…早く帰って早く行ったら、ここにまた早く来れる。
だから…行くよ」



私を見下ろす咲人の表情はあまりよく見えなかった。
真っ暗な部屋で、玄関の灯りだけが逆光で明るかった。
私は肩で息をしながら、わかったと答えた。



玄関でなぜか靴紐を結び直す彼に、私は訊いた。



「あの、大丈夫?」

「何が?もちろん!」



いや、それ多分大丈夫じゃないじゃん……笑



ドアが閉まってから、私は力なくベッドに向かった。
バタン倒れこむと、ふぅーとため息をついた。
首が痛い。
ヒリヒリというか、ジンジンというか、じわる痛さだ。
咲人、ずいぶん噛んだのかな。
もうちゃんと思い出せないけど……。


そのまま私は化粧も落とさず眠りについた。
翌日は昼頃まで何もない。
明日の仕事を心配する必要もない。
ただのホリディ。
目がさめるまで起きなくていいのね……





私が日本を発ってから、初めて何も気にせず眠った日だった。




続きます。