メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

ついにこの日が来た

2018-12-17 23:12:55 | 咲人
それは某月某日。
私はパソコンとにらめっこしていた。


うぅーーーーーん
高いなぁ……



見ていたのは航空会社のウェブサイトだ。
煌々と値段一覧が表示されているが、そのどれもがメチャクチャ高かった。
2日後のフライトは厳しそうだ。


そもそも2日後のフライトなんて高いに決まってる。
どうしてもっと早く決めておかなかったんだ。
と、誰も彼もに言われそうだけど、私の仕事は予定が読みにくい。
さらに言い訳させてもらうけど、元々はもっと近くの国でウロウロする予定だったのだ。
でも急に、そこには行けない理由が出来ちゃったもんだから……



はぁ、とため息が漏れる。
フライト先は、咲人のいる国だ。
どこかこの国以外の外国へ行ってみたかった。
でも誰も知り合いがいなかったら寂しい。
どうせなら会いたいと思える人がいる国に行きたかった。
おもむろに携帯を開くと、咲人からメッセージが来ていた。




『メイサ、本当に来るの?チケットは見つかった?』



彼はわかりやすくウキウキワクワクしている。
日中はあまりマメじゃないのに、ものすごく早く既読がつき返信が来る。
アンタ仕事大丈夫なのか…?


ポチポチポチポチ



『んんー、あるっちゃるけど、とにかくバカ高いわ。
まぁ当たり前ね、今ハイシーズンだし。
日本円で言うところのこれくらいしちゃうわ』



とフライト代のスクショを送ってやると、OH NOと返信が来た。



『確かにそれは高いな…。そうだな、俺の街に空き部屋があるよ。
綺麗だし誰も住んでない。
もし君がくるならそこを使っていいし、君は何一つお礼や支払う必要はない。
俺からのバースデープレゼントだよ』





そう



此度の旅行は、私めの誕生日旅行なのです。



無料で使っていい部屋?どんだけオンボロなんだろう。
っていうか咲人ずいぶん来て欲しそうだなぁ。


初めに予定していた国は、咲人の一度行ってみたいと言っていた国で、
私の国からやたら近い。電車で1時間だ。
私は初め、咲人にそこへ行く予定を告げ、あなたも来ればと言ってみたのだ。
咲人は私が休暇を取ると言った瞬間、俺の国にくるの!?と大喜びし、
いや、ここに行く予定なんだと言ったらガッカリし、
あなたも来ればと言われ、君がくるなら案内できるくらいの時間は取れるけど俺がそこへ行けるほどのそんな時間はないと答えた。
確かに電車で1時間の私とは違うかもしれないけど、あちらはあちらで飛行機で1時間半だ。
私は正直、こいつ自分は来て欲しいくせに来ないのかよと腹が立った。
そしてとても、悲しかった。
何なら正直言うと、ちょっと泣けた(恥)




何よ、結局好き好き言っと私のことなんか真面目に考えてないんじゃん。
なんで自分から行く気はないのよ。
一度でも会ってみたいとか会う努力しようとか思わないわけ?
…………その程度ってことだよね。



メソメソとその場に崩れ落ちて泣いたのは、
今でも悲しい思い出であります。はい。




んで!(話を戻す)




その晩、咲人は私と電話で話したいと提案して来た。
真っ暗な部屋で話し始めると、彼は言った。



「で、どう?もう決めたの。そもそもなんで初めの予定変えたの?」

「だってさーあたしが行く予定とガッチリ合わせたかのように、大嫌いな上司がそこ行くっつったんだもん」

「あー……オッケーそれは無いな」

「そぉよ。あんな狭い国、絶対遭遇するじゃん。
しかも何が悲しくて自分の誕生日に会わなきゃならんねん」

「わかったわ」



ふむ、と咲人は唸った。
私は続けた。



「今も迷ってるけど……あなたの国に行くかどうか」

「今もって、わかってるのか、明後日だぜ」

「わかってるわよ。でも1人でそんなとこ行ったことないんだもん。
フライトも高いし、アンタの母国語なんか一個も喋れないわよ」

「安心しろよ。大都市だぜ。ほぼ100で英語喋れるから」

(いや私の英語そんな良くないだろ)

「ふーむ、まぁフライト代はな……」



半分払うよとか言ってくれないかなー。
いや、別にお金の問題じゃなくて、それくらい来て欲しがってほしかったんだよね。



電話を切り、ベッドの中でも私はまだ迷っていた。
するとふと、携帯が光った。
咲人からメッセージだ。




『メイサ、もし君が俺の国に来るなら、俺は君とできるだけ過ごせるようにするし、案内するよ。
空港も、都市部の空港についても郊外の空港についても、
俺は君を迎えに行くよ。』





(°_°)



咲人が


押してる。




来て欲しいんだろうなぁ。





翌朝目を覚まして、ぼんやりする視界の中で考えた。
明日どこへ行くか。
何が何でも誕生日にこの街で1人でいるのは嫌だ。
大嫌いな上司に会ったら、自由を感じないから嫌だ。
って事はもう…………







ポチっ




購入ボタンが光った。





ポチポチポチポチ




『Hello, Sakito. あなたの言ってた部屋まだ空いてる?』




チケット購入画面のスクショを添付した。





『私、





明日そっちへ行くわ』






続きます。









仁との終わり。

2018-12-15 22:47:35 | 
咲人との電話と並行して、仁との連絡も続いていた。
彼は一向にこちらへくる日の話をしなかった。
その割りに例のアプリ上ではオンラインになっている事が多く、
誰かと通話していることもあった。



最低すぎてどうしようもなかったのだけど、
とりあえず物事が白黒つくまではしつこい性格なので、
一度ビデオコールをする話にまで持って行った。
それが、咲人に好きと言った翌日だった。




「仁ちゃん、電話して大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。どうして?」

「忙しそうだから…」

「あぁ全然元気だよ。忙しくなかったらつまらないから」




何だよ、余裕そうじゃん。
ホントに何でこの人フライトとかホテル調べないんだろ。
来る気がないのかな。
でも…………何だろう。




ふと私は、昨日とは全然違う気持ちなのに気づいた。




昨日は咲人を見るだけで嬉しくなった。
あぁこの人が大好きだ
この人に抱かれたい、と思った。
仁と話していても、その顔を見ていても、何も感じなかった。




しゃくれのせいじゃないなー。
別にただ興味がないんだ。
久しぶりに見た彼の顔、
嬉しいって思いそうなものだけど。
好きなら。
こういうことの積み重ねで、自分の気持ちが離れてることを確信していくんだな。




たくさん笑ってる所を見たけれど、
笑顔を見ても、キュンともしない。
あぁでも、こういう風に話してたんだなって思い出した。
そうだ、いつもたくさん笑って、色んなことについて話し合ってたね。
その時はきっと好きだったんだろうなぁ。
だから、その時間、すごく幸せだったんだろうな。
もう本当にすっかり、忘れちゃってたけど。
最後にビデオコールしたのって、いつだろう。
多分、2ヶ月くらい前だ。
たったそれだけで、こんなに気持ちが離れちゃうものなんだな。
それくらい嫌な思いしたりガッカリしたんだろうな。。。
彼のこと、理解できないと思ったんだな。



そして、多分
新しい恋をしているんだ、私は。



「仁ちゃん、ずっと笑ってるね」

「メイサちゃんと話してるからね」



キュンともしないはずだけど、笑顔でそう言う仁を可愛いと思った。
まだ私のこと好きなのかな?とよくわからない言葉が浮かんだ。
そもそも好きなはずじゃないの?

多分そんな話するのが久しぶり過ぎて、なんかもう彼の中でも過去だろうって勝手に思ってるのね。
行く行く詐欺も、1週間連絡が来ないことも、その間他の人とは電話していることも、
きっと、信頼関係や恋愛感情がキープされていれば不安要素にならなかったんじゃないかな。
一度もう信頼を失っているから(彼が笑)
何もかも信じられないんだと思うし
好きだと思えなくて許せないんだと思う。





だって




咲人が話したよくわかんない事も


エラそうな話し方や面白くない冗談も


突然送ってきた謎のVTRも(彼は本当に何のためなのかわからない動画を送ってくる笑)


全部含めて、可愛いなと思ってるもん。


愛情って、そういうものなんじゃないの。





ふと、私は仁はどう思ってるんだろうと
本当に不思議な気持ちになった。





「久しぶりに話して、どうですか?」

「楽しいよ」




仁は間髪入れずにニコニコと答えた。




「メイちゃんは?」




私にも言わせたがるのが、そういえば彼らしかった。



そろそろ寝なきゃねと私は言った。
仁はそうだね、と時計を見て、あと3分、と笑った。


仁ちゃん、まだ話したいんだね。
そう思うのは、好きだからだろうな。




「じゃ、何話そっか?」

「メイちゃん話したいこと話して。」

「んー、そうだな。」




ガッツいてると思われるかもしれないけど
ここでこれを言わなかったらわざわざビデオコールした意味がない。




きっと、これをすることで、私は少しずつ答えに向かって行っている。




どんな結末が待っていても、自分の中で、
ハッキリとでも少しずつでも、この恋を終わらせられると思った。
終わらせるために、ハッキリさせたいんだ。



「仁ちゃん、





この街に、来る?」





「んー、そうだね」




と言っておそらく仁はパソコンを触りはじめた。
スケジュールの確認でもしているのかわからないが、
大抵言われたその場で何かを調べ始める。



「チケット取らなきゃ。(予想通り取ってない)来月…」

「来月?」

「来月はもう試験が始まるから…。来週か再来週。
メイちゃんどっちがいい?」


いやその話もうしたやん



と心の中でツッコミながらも、ここは、大事なことは伝えるべきだとハキハキと答えた。




「どっちでもいいけど、早く知りたい」

「わかった。明日の夜までに教える。仕事の後」



わかった、と私は微笑んだ。
仁も微笑んで、こんなことを言った。



「メイちゃんは、いつこっち来る?」




行かねぇよ






とは言えないので、ちょっと笑って見せた。




「そうねー」

「(笑)」

「じゃあそれについては、ここで話そう」




私の提案に、わかった、と仁は笑顔で答えた。




「じゃあメイちゃん、そろそろ」

「うん」

「ありがとう。電話してくれて」




仁は笑顔で続けた。




「たくさん笑った。」

「うん、私も楽しかった。」

「じゃぁ、おやすみ。明日仕事後連絡するね。」

「うん」




バイバイしたあと、私はすぐに眠りについた。
彼が来たならどうすればいいんだろう。
そんなことを考えるだけ無駄なんだろうな。
それでも考えるのは、思い出がそうさせているのかも。



翌日、彼は連絡をよこさなかった。
私から連絡し、連絡するって言ってたよね、と詰めた。
そしてさらに翌日、ようやく返信が来た。






『連絡が遅くなってごめん』



『色々な方法を考えたけど、スケジュール的に、今回もそちらへ行くのを諦めなきゃいけない』






私は





ポチポチポチポチ




『ちなみに色々な方法って何?』




と訊ねた。




ピロリン




『大学を欠席したり、仕事の会議を休んだり……』






その日が、彼と連絡した最後の日でした。
私は何も返信しませんでした。

思うことはあっても、言いたいことはありませんでした。
何故なら、話したいと思うほどの気持ちがなかったのです。
多分、責める術や材料が沢山あったし、私にはその権利があったと思います。




でも、返信しなかったのには理由が二つありまして。




一つは、もう本当に愛想をつかしていたこと。
エネルギー問題ですね。



もう一つは、不安を残したまま音信不通になったら彼が苦しむだろうと思ったからです。



彼は私のことをなめていたと思うけど
ヘタレで自己中だけど
私のことが好きだったし私と共有していた思い出がありましたので
私の方から無視してやったら痛いだろうと思いました。




それはおそらく効いたでしょう。



けれどヘタレな彼が2度と連絡することは出来ないだろうと予想した通り
今日まで一度も連絡はありません。



それでいいのです。




私はようやく平和な心を取り戻りました。




そして




ついに




咲人に会うのです。





続きます。


あなたが好き!

2018-12-12 10:43:52 | 咲人
こうして咲人との電話は所謂ラブラブな感じになっていった。
でもあくまで日本語の練習をしているというテイだったし、
私は相変わらずエラそうで素直じゃなかったし、
何より、咲人から真剣にそういう話をしてくる気配はなかった。
例えばさ、付き合うとかさ、会ってみようとかさ…モゴモゴ。


私はもう自分が咲人にご執心なのはよく理解していた。
でも会ったこともな人に恋して痛い目に遭ったばかりっていうかまだ遭ってる最中じゃねーかと思っていた。


でも咲人と仁は人柄も何もかも全然違っていたから、
同じ結果が待ってるとは思いたくなかったし、思えなかった。


だけど、咲人が会おうと行動に起こさないのは
彼もオンラインでの疑似恋愛を楽しんでいるだけで、それで十分なのかなって。


でも、じゃぁそれだけで人はこんなにマメに連絡取れちゃうもの?
自分の睡眠を削ってまで?
好き好き言うものなのかなぁ。


考えれば考えるほどわからなくなった。



ある日、私たちは3度目のビデオコールをしていた。




「そういえば初めてのビデオコールはどうだった?あなたにとって」



そうきかれた咲人は相変わらずのさしてハンサムじゃない顔で、首を傾げた。
あたし、本当にこの人のこと好きなんだろうか。笑



「どうって?」

「んー、たとえば、写真と違ってガッカリしたとか色々あるじゃん」




咲人は、うーんとちょっと考えてから答えた。




「結論から言うとよかったよ。話してから、君と話したいっていう気持ちが増した」

「本当?」

「おう。3倍になった」



と、手で表現した。(笑)



「それは良かったわ」

「うん。………時々、それと逆なこと起こるからな(笑)」

「は?あぁ、ガッカリするってこと?」

「そう(笑)俺の友達がこんな話ししてくれたんだけど……」




咲人の話によれば、彼はオンラインでひどく美しい女性に出会ったらしい。
2ヶ月ほど愛を育む会話を楽しみ、何度か写真を交換し合い、
彼はすっかり恋に落ちていた。
だがしかし




「ある日、奴はビデオコールを提案した。そりゃそうだ、彼女を見たかったんだ。
でも彼女は断固として拒否し続けた。
でも奴も譲らなかった。
ついに彼女は承諾していざ電話が始まったんだが……」


咲人は堪え切れないように震えながら言った。


「画面に出てきたのは、超ーーー長い髭を生やした中年の男だったんだとさ」



(・▽・)



「…えっ、えぇぇーーーー!?」

「マジかよって思うよな(笑)ははは」

「そ、それは可哀想〜。彼、きっと恋してたのに。。。」

「ま、そうだな」

「で、でもそのヒゲは何目的でそんな事してたんだろう?」

「知らねーよ(笑)でもまぁ、男が好きなんだろうな。
友達も何度か自分の写真送ったって言ってたからな」




あ、あぁそうかぁ。。。
可哀想だけど、中年ヒゲ男の生贄になっていたのね。。。
どんな写真送ってたのか気になるけど言わずもがなかな(笑)


暫くして、私がアクビをするとそれを見て咲人は吹き出した。



「もう寝ろよ(笑)」


私はソファの上で体勢を直して、ニヤリと不敵な笑いを見せた。


「そ、の、前に。あなた今日、十分日本語の練習した?」



咲人は笑った。



「いや?」

「じゃ、眠いけど、寝る前に少しだけ練習に付き合ってあげる」

「マジで?ずいぶん親切な先生だな」

「ええ勿論」



すると咲人はからかうように、どうしてそんなに親切なの?と聞いた。
私は物ともせず、学生を愛しているからよん、と答えてやった。
咲人はただでさえデカイ目を見開いた。




「はー?マジで?ずいぶんいい先生だな」

「とーぜん。Why not?」

「はは、確かに君はいい先生だよ。じゃぁ、練習させてもらおうかな」




画面の中の咲人が、私を見つめ直して、ゆっくり喋り始めた。




「咲人は、メイサが、好き。 合ってる?」





もう何度も繰り返された言葉だけど、やっぱり、声だけじゃなくて
こうして見つめて言ってもらえると
すごく、嬉しくて
すごくすごく愛おしく感じた。


私は少し照れ笑いしたけれど、咲人は真っ直ぐこちらを見つめたままでいてくれた。
彼のキャラクターからすると、苦笑したり誤魔化したりしそうなものだけど、
それはもう散々今までの会話でしたから(笑)
少し素直になれていたのかもしれない。




「いいよ、合ってる」

「よかった」

「ねぇサ……」




ブツっと





突然、電話が切れた。
しまった。話に夢中になって(あと眠くて)電池が空っぽなのに気づかなかった。
こうなってしまうと今更充電器につないだところですぐにはリカバリーしてくれない。
再起動するのに5分はかかるだろう。



仕方がなく携帯と充電コードを持って寝室へ移動した。
枕元で充電しながら、私は寝る支度を始めた。
確かにもういい時間で、咲人にとってはもっといい時間だ。
さっさと寝ないとお互いの明日に差し支える。(ていうかすでに差し支えてる)


私はため息をついた。
良いところだったのにぃー。



咲人の日本語を聞くのは大好きだ。
電話を切る前に毎回やるこの儀式は、私達の気持ちを強くしてくれていると思う。
言霊という言葉があるように、誰かを思う気持ちを口に出すことは、
不確かだったそれを形あるものにして生み出すような行為だと思う。
メイサが好きだと言われるたびに、私の心に咲人の気持ちが積もっていくようだった。
咲人は毎回たくさん褒めてくれたし、好きだと言ってくれた。
褒めてくれるたびに、たまらなく会いたくなった。


突如、パッと携帯が光った。
ようやくリカバリーしたようだ。
すぐにトーク画面を開き、ゴメンネと書き出した。



『大丈夫。もう寝よう。メイサの目、もうすごく眠そうだったし、俺の目も同じだったから(笑)』



すぐに咲人らしい優しい返事が届いた。
咲人らしいって書いたけど、結構辛辣なこと言う人だったよな。
きっと、好きな子には優しいだけ、だな。



私はせっかくのラブリータイムが終わってしまったことがとても残念で、
だけどここからまた話すのはちょっと現実的ではなかったので、
仕方がなくベッドに横になったが、胸の中いっぱいの気持ちが消化できなくて、
吐き出した方がいいと思った。
形あるものにしてしまったほうが、いいと思った。



今まで一度も私は



言ったことがなかったけど





『咲人、私はもっとあなたと話したかった。すごく』




すぐに既読マークがつき、彼が何かを入力している事も分かった。
けれど、それを待たずに私は続けた。







『それから』








『私は咲人が大好き!』






ピロリン






『俺も』






と、



嬉しそうな絵文字付きで送られてきた2文字は



私の心を明るく優しく、温めてくれた。




咲人



咲人



いつになったら会えるの




会いたいって思わないの?




私だけバカなのかな。





そんな日々は




ある日突然終わりました。





続きます。


あなたのルールで

2018-12-11 10:55:05 | 咲人
お久しぶりです。
なかなか忙しく落ち着いて綴れない日が続いておりましたが
今週からちょっと頑張りたいと思います。h
咲人の話は勿論、ここに書いていることは私がこの小さい脳みそと身体で体験して来た
リアルアドベンチャーです。

ここに書き綴ることで、私の記憶を整理しているつもりです。
大切だった人や、失ってしまったもの、
そして何より知れて良かったことが沢山あります。


時間がかかると思いますが、何とか全て書き終えたいと思います。
が、がんばるぞぉー(苦笑)


ではでは、遅くなりましたが……続きへどうぞ。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「メイサ、俺は提案がある」



突然咲人はそう切り出した。
私はつまんだチョコレートを空に上げたまま、ハイ?と応答した。



「俺たちは、この不健康な睡眠不足状態を抜け出すために、ルールが必要だと思う」

「へぇ。そうですか」

「まず、このルールはどちらかが翌日働かなければならない場合に適用される。
かつ、その働く予定の人間が翌朝9時より前に起きなければならない場合だ。
眠気を感じた時点から15分以内に切る。
どうだ?」



いや、どうだって……エエんちゃう?と答えた(笑)



「ちなみに眠気を感じた時点、というのはお互いの眠気を察した場合も含む。
例えば、君がアクビをした場合とか。」

「ほーほーなるほどね。いいわよ」




よし、と咲人は満足げだった。
私はこんな咲人のユニークなところが好きだった。
真面目っていうか超理屈っぽいっていうか。
何にでも一生懸命な感じがして、可愛かったのかも知れない。

その日の会話も他愛もないことだったから、何を話したかなんて覚えてない。
でも、とても楽しかったこと。
そして数時間後にひどく眠くなったことを覚えている。



「咲人の声、眠そうだね」

「いや俺は眠くないけど、君は?」

「実は眠い」

「あ、切ろう」

「えぇーーイヤだぁーーー」

「何時に起きるの?」

「…7時です」



メイサ、ルールだぜ、と咲人が首を振るのが浮かんだ。
私は後15分だけ、と食い下がった。
咲人は承諾し、何について話したい?と聞いてきた。
私はウンッと伸びをしながら、何にしようかなぁーと声も伸ばした。
ふと自然に少し声がかすれた。
途端に、咲人がちょっと笑って話し出した。



「前回くらいから思ってるんだけど、君は違う声のトーンを使うことができる。
声の能力を持ってるよな」

「どんな?」

「…自分でもわかってるんだろ」

「わかんない」

「男を口説ける能力だよ。変な言い方だと思うかもしれないけど、誘惑してる」

「そう?」

「そうだよ」

「Sure?」

「Sure。Because 俺がまさに今その渦中にいるから」



と言って誤魔化すように笑った。

ふぅーん。
咲人、私に口説かれてるの?
クラクラしてくれてるのかしら。


「ふーん、そう?」

「あー!あと、あれだよ。君のあの顔!前回のビデオコールで見せたやつ」



と咲人が声を上げたのは、プクーっと頬を膨らませた顔の話だ。
所謂ぶりっ子な表情だと思うのだけど、これもまた私のクセの一つで、
前回咲人が私を拗ねさせる事を言ったときに、見せたのだ。
確かにその時も咲人は、それはズルい!と言っていた。



「あーあれ」

「そう。あの顔をする時いつも、いつもと違う声を出す。
あの顔はどこから来てるの?いつもするの?」

「知らんけど…あなたあの顔大好きね」

「そうだね」

「どうして?」

「すごく可愛いから。でもあの顔されると困るけど」

「え、どうして?」

「ずるい」




ふーん?
苦笑する咲人の顔が浮かんで、私はうんとより一層彼のことが愛しくなった。
てな感じに私のロマンチックが止まらないのも知らず、咲人は無情に言った。




「メイサ、もう時間だよ」

「ヤダ」

「Yada?なに?」

「ノーって意味だよ」



咲人は軽いため息混じりに私の名前を呼んだ。



「メイサ。さっき俺たちは相談して、君も賛成しただろ」

「してない」

「(笑)」

「わすれた」

「メイサ」

「ヤダ。ヤダ。」



と駄々をこねたが咲人がそのまま冷静に私を説得しそうだったので、
私はうんと可愛い声で日本語で言ってみた。



「お願い。」



咲人が黙った。



「…ダメだよメイサ。それはズルイ」

「プリーズって言ってる」

「わかるよ。←なんでわかったん?でもダメ、そんな声出さないで」

「お願い。お願い。お願い、咲人」

「もー。。。。」

「あと五分だけ。ね。お、ね、が、い」



はぁぁーーーと長めにため息をつくのを聞き、私は彼が手で顔を覆っているところを想像した。
優しくて可愛い咲人はこんなに甘えられたら断れっこない。
そしてこんな風に甘えられるのが、彼自身大好きに違いないんだ。
勿論
私もこれが大好だ。



「…わかった。じゃ、何について話す?」




甘えるのが大好きなんて書いた割に素直になれない私は、
ガラリと声のトーンを戻し、腕を組んでエラそーに言った。



「日本語の練習したら?」

「(笑)いいよ。」



と言って、咲人はゆっくりと
覚えたての、なかなか限られたフレーズを言い始めた。




メイサはすごく可愛い

咲人はメイサが実に好き





いいね、いいね、と茶化すと、咲人も楽しそうだった。




俺はメイサの声が好き


俺はメイサの笑顔が好き


おれは。。。




咲人はたくさんのことを言ってくれた。
超初心者の彼が紡ぐ日本語はとてもゆっくりでシンプルで
それを言う彼の声も、いつものとても聞き心地が良い声で
私はとても幸せだった。




「グッジョブ。よくできました」

「いい先生だからね」

「そうよ。咲人に対してはね」

「いつもだろ。君は基本的にどの学習者にも親切なんだろ」




そうだけど。。。




「オッケー。確かに私はいつもいい先生だし教えるのが好きよ。
でも咲人は特別。特に今はラブリーな文を教えてるからすごく楽しいわ」

「なるほどね……
さて。メイサ、時間だよ」

「ヤダ」

「ダメだ。←覚えた
聞いて、君は忘れたかも知れないけど、俺たちはさっきルールについて話し合って、君は同意した。
君はルールを守らなければならない。」




私がうぅーと唸ると、咲人は、ね?とやさしく言った。



「やだ」←しつこい

「メイサ…」

「寝れないもん」

「なんで?」

「理由が二つある」




教えてよと促され、私はポツリポツリと話し始めた。




「一つは、まだあなたと話したい」

「なるほど」

「もう一つは、たくさんラブリーなこと聞いたから…寝れない」



咲人はちょっと笑った。
きっと、あの笑い皺いっぱいの可愛い顔をしている。
電話じゃなくて、ビデオコールにすればよかったな。
さっきからずっと咲人の顔想像してばかりだ。




「わかった。じゃあ今は電話を切って、明日、つまり今日、
電話の初めと中盤でまたそういうこと言ってあげる。
それでどう?そっちの方が寝られていいでしょ」

「やだ。初めと、中盤と、最後がいい」

「(笑)また寝れないぞ」

「いいの。聞きたいの。で、もうあと五分」



咲人はふーん!と強くため息をつき、ヤレヤレ声を出した。



「じゃ、質問。君は自分のことしつこいって思う?(笑)」



は!?



「…なんでよ」

「さっき俺の事しつこいって言っただろ。でも君自身はどうなんだよ」

「……そうね、今しつこいかもね」

「その通り(笑)」




私はツンっとエラそうに応戦した。




「でも、あなた喜んでるでしょ」



咲人は苛立ちもせず、いつもの余裕綽々のキザな声で That’s true と答えた。
私はちょっと彼をからかってやろうと思った。




「咲人って、それいう時正直じゃないよね」

「は?なんで?」

「平気なフリ知ってるっていうか。。(英語でなんて言うんだ?)」

「あー。。。 えっと、ちょっと冷たく聞こえるかも知れないけど…
これは俺たちの文化っていうか」



と咲人はバツが悪そうにした。
彼の国の文化では、男はカッコつけなければならない。
クールに振る舞うのだ。
まぁおそらくそれはその国特有と言うよりはユニバーサルなのだけど、
非常に日本人と似ている。
っていうのも手伝って、私はどうってことなく答えた。



「大丈夫よ。
だって、咲人がどうしたって、私は咲人がどう思ってるかわかるもん」

「(笑)わかるの?」

「わかるよ。咲人の反応でわかる。私のこと大好きなんだって。」




咲人は


そうだね、と笑った




咲人


本当?




「オッケーメイサ」

「はい」




もうさすがに切らなきゃ。




「寂しいよ、咲人。。。」




うなだれる私に、咲人は優しく言った。




「寂しがらないで。すぐ話せるよ」



私は微笑んだ。



「うん」




おやすみ。




続きます。