暗い部屋につき、咲人は電気もつけずリュックを置いた。
私も一日中ってゆーか朝10時から夜中の2時まで歩き回って、
もう本当に脚が棒だったので、ヒールを脱いだ瞬間ホッとした。
咲人は言った。
「15分後には出るよ」
次の日、咲人は仲間たちと約束があった。
本来なら私のためにキャンセルしたいところだけど、
咲人がいないと予定していたことが何もできなくなるらしく、どうしても行かなければならなかった。
次の日っていうかもうその日の丑三つ時だったけど、
とにかく彼は一度家に帰る必要があった。
加えて、さぁじゃぁ一発やりましょうという雰囲気は皆無だった。
咲人はキザな奴だけど、キザを気取るだけあって、
ちゃんと紳士だったの。
咲人はリュックをゴソゴソすると、電動歯ブラシを取り出した。
「俺、歯磨くよ」
「へ?は、はいどうぞ。。。」
こ、この人電動歯磨き持ち歩いてんの?
ていうか多分今日のこと計画しててそうなったんだろうけど……
遅くなるつもりだったんだね。
長くいてくれるつもりだったんだ。
ウィーンという歯磨き音をBGMに咲人が、ん?という顔を覗かせた。
私が色々考えてるのがわかったのかもしれない。
私は洗面所から離れて背中で答えた。
「ううん、なんでもないよ」
「モゴモゴ(あ、そ?)」
「ねぇ、それって寝る準備してるの?」
「モゴモゴモゴ(まぁそうだな)」
「それともキスの準備?」
ブーッ!と吐き出すのが聞こえた。
そして、立ち向かうかのようにBoth! と咲人が答えたのが聞こえた。
私はおもわず笑った。
ハハハ(笑)
咲人、かわいい。
電話で話してた時と変わらない。
私はベランダに出ようかと思ったけど、そこにはサンダルがなくて。
靴を持ってくるのも面倒だったので、ただ開け放した窓のそばに立ち佇んだ。
日中は死ぬほど暑かったけど、夜中のそこは気持ちの良い風が入ってステキな気持ちだった。
咲人が今日1日してくれたこと、2人にとって初めてだった長いデート、
そして私にとって生まれて初めてだった、すんごく長い外国人とのデート。
色んなことを思い出していた。
咲人がやってきた。
「それは、日本人だから?」
「え?」
「ベランダに出たかったんじゃないの?靴がないから出ないんだろ」
私は笑った。
「そうね。」
「安心しろよ。ここは掃除がしょっちゅう入ってるから綺麗だ。
裸足で立っても平気だぜ。」
そういう問題じゃないんだよね、と私は心の中で笑った。
やっぱり彼はアジア人じゃないわね。
彼は携帯を見て言った。
「あと10分くらいしたら行くよ。」
私は
どうしたらいいかわからなかった。
もっと一緒にいたかった。
だって咲人は、本当に完璧にエスコートしてくれたんだもん。
だってずっと、会いたかったんだもん。
初めて会ったけど、初めてじゃない。
でも、彼は行かなきゃいけないし
私は、さぁヤリましょうとも言う積極性はないし
そもそも自分が彼と寝たいかもよくわからないし
ただもっと一緒に居たかったし
もう何が何やら…………涙目
私はおちゃらけて見せた。
「あーん、寂しくなるわん」
「何だよ(笑)もっといて欲しいの?」
「べっべつにそういうわけじゃ…
咲人行かなきゃいけないし、咲人次第っていうか」
「君の誕生日なんだから君が決めろよ」
と咲人は笑った。
咲人
私は
東京で水商売をしていたし
あなた以外にも会ってる男の人はいるし
生娘でも何でもないけど
でも
今素直に
あなたにもっと一緒に居て欲しいって言う勇気もないし
それがセックスをしたいって意味になったらどうしようって思う臆病者なの。
私は自分のバッグから小さな手紙を取り出した。
柄の派手な千代紙と、渋い色和紙を組み合わせて作ったそれは、私が咲人のために作ったメッセージカードだ。
「咲人、これあげる。」
「え?」
「あなたに手紙書いてきたの。
ごめんね、急すぎてお土産は何も買えなかった。」
咲人はそれを開き、しばらく目を通した。
私の拙い英語文を目でなぞり、そして
「なんだよもう、ハグさせろよ」
と笑って抱きしめてくれた。
カードの中には、私から彼への感謝の気持ちや、会うのをすごく楽しみにしていること。
そして、最後に可愛いバンパイアのイラストを描いておいた。
咲人は言った。
「カードわざわざ作ってくれてありがとう」
「どういたしまして。
あなたがしてくれたことに比べたら大したことないけど」
「そんな事ないよ。
…さて、俺そろそろ行くよ。」
「そうね」
と言って咲人は玄関に向かった。
彼は彼と同じくらいちょっと七面倒な紐靴を履いていて、それを履くのに時間がかかった。
私も寝る準備をしようと奥に引っ込み、着ていたTシャツを脱いだ。
ブラを外して薄っぺらいタンクトップを着てから思った。
いや、ノーブラでこれはイカンやろ。
誘ってるみたいにor変態にしか見えなーーーい!
私はいそいそとブラを装着した。笑
そして玄関へ向かうと、彼はちょうど靴紐を結び終えたところだった。
咲人は言った。
「じゃ、おやすみ。」
私も言った。
「おやすみなさい」
そしておやすみのハグをした。
私はギュッと彼をきつく抱きしめた。
咲人、行かないで……
あなたが恋しい。
そんな思いを込めてもう一度ギュッと抱きしめると
咲人は
「……メイサ
1つ訊いていい?
君の首を噛んでいい?」
続きます。
私も一日中ってゆーか朝10時から夜中の2時まで歩き回って、
もう本当に脚が棒だったので、ヒールを脱いだ瞬間ホッとした。
咲人は言った。
「15分後には出るよ」
次の日、咲人は仲間たちと約束があった。
本来なら私のためにキャンセルしたいところだけど、
咲人がいないと予定していたことが何もできなくなるらしく、どうしても行かなければならなかった。
次の日っていうかもうその日の丑三つ時だったけど、
とにかく彼は一度家に帰る必要があった。
加えて、さぁじゃぁ一発やりましょうという雰囲気は皆無だった。
咲人はキザな奴だけど、キザを気取るだけあって、
ちゃんと紳士だったの。
咲人はリュックをゴソゴソすると、電動歯ブラシを取り出した。
「俺、歯磨くよ」
「へ?は、はいどうぞ。。。」
こ、この人電動歯磨き持ち歩いてんの?
ていうか多分今日のこと計画しててそうなったんだろうけど……
遅くなるつもりだったんだね。
長くいてくれるつもりだったんだ。
ウィーンという歯磨き音をBGMに咲人が、ん?という顔を覗かせた。
私が色々考えてるのがわかったのかもしれない。
私は洗面所から離れて背中で答えた。
「ううん、なんでもないよ」
「モゴモゴ(あ、そ?)」
「ねぇ、それって寝る準備してるの?」
「モゴモゴモゴ(まぁそうだな)」
「それともキスの準備?」
ブーッ!と吐き出すのが聞こえた。
そして、立ち向かうかのようにBoth! と咲人が答えたのが聞こえた。
私はおもわず笑った。
ハハハ(笑)
咲人、かわいい。
電話で話してた時と変わらない。
私はベランダに出ようかと思ったけど、そこにはサンダルがなくて。
靴を持ってくるのも面倒だったので、ただ開け放した窓のそばに立ち佇んだ。
日中は死ぬほど暑かったけど、夜中のそこは気持ちの良い風が入ってステキな気持ちだった。
咲人が今日1日してくれたこと、2人にとって初めてだった長いデート、
そして私にとって生まれて初めてだった、すんごく長い外国人とのデート。
色んなことを思い出していた。
咲人がやってきた。
「それは、日本人だから?」
「え?」
「ベランダに出たかったんじゃないの?靴がないから出ないんだろ」
私は笑った。
「そうね。」
「安心しろよ。ここは掃除がしょっちゅう入ってるから綺麗だ。
裸足で立っても平気だぜ。」
そういう問題じゃないんだよね、と私は心の中で笑った。
やっぱり彼はアジア人じゃないわね。
彼は携帯を見て言った。
「あと10分くらいしたら行くよ。」
私は
どうしたらいいかわからなかった。
もっと一緒にいたかった。
だって咲人は、本当に完璧にエスコートしてくれたんだもん。
だってずっと、会いたかったんだもん。
初めて会ったけど、初めてじゃない。
でも、彼は行かなきゃいけないし
私は、さぁヤリましょうとも言う積極性はないし
そもそも自分が彼と寝たいかもよくわからないし
ただもっと一緒に居たかったし
もう何が何やら…………涙目
私はおちゃらけて見せた。
「あーん、寂しくなるわん」
「何だよ(笑)もっといて欲しいの?」
「べっべつにそういうわけじゃ…
咲人行かなきゃいけないし、咲人次第っていうか」
「君の誕生日なんだから君が決めろよ」
と咲人は笑った。
咲人
私は
東京で水商売をしていたし
あなた以外にも会ってる男の人はいるし
生娘でも何でもないけど
でも
今素直に
あなたにもっと一緒に居て欲しいって言う勇気もないし
それがセックスをしたいって意味になったらどうしようって思う臆病者なの。
私は自分のバッグから小さな手紙を取り出した。
柄の派手な千代紙と、渋い色和紙を組み合わせて作ったそれは、私が咲人のために作ったメッセージカードだ。
「咲人、これあげる。」
「え?」
「あなたに手紙書いてきたの。
ごめんね、急すぎてお土産は何も買えなかった。」
咲人はそれを開き、しばらく目を通した。
私の拙い英語文を目でなぞり、そして
「なんだよもう、ハグさせろよ」
と笑って抱きしめてくれた。
カードの中には、私から彼への感謝の気持ちや、会うのをすごく楽しみにしていること。
そして、最後に可愛いバンパイアのイラストを描いておいた。
咲人は言った。
「カードわざわざ作ってくれてありがとう」
「どういたしまして。
あなたがしてくれたことに比べたら大したことないけど」
「そんな事ないよ。
…さて、俺そろそろ行くよ。」
「そうね」
と言って咲人は玄関に向かった。
彼は彼と同じくらいちょっと七面倒な紐靴を履いていて、それを履くのに時間がかかった。
私も寝る準備をしようと奥に引っ込み、着ていたTシャツを脱いだ。
ブラを外して薄っぺらいタンクトップを着てから思った。
いや、ノーブラでこれはイカンやろ。
誘ってるみたいにor変態にしか見えなーーーい!
私はいそいそとブラを装着した。笑
そして玄関へ向かうと、彼はちょうど靴紐を結び終えたところだった。
咲人は言った。
「じゃ、おやすみ。」
私も言った。
「おやすみなさい」
そしておやすみのハグをした。
私はギュッと彼をきつく抱きしめた。
咲人、行かないで……
あなたが恋しい。
そんな思いを込めてもう一度ギュッと抱きしめると
咲人は
「……メイサ
1つ訊いていい?
君の首を噛んでいい?」
続きます。