メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

噛みたい

2019-01-29 02:44:31 | 咲人
暗い部屋につき、咲人は電気もつけずリュックを置いた。
私も一日中ってゆーか朝10時から夜中の2時まで歩き回って、
もう本当に脚が棒だったので、ヒールを脱いだ瞬間ホッとした。
咲人は言った。


「15分後には出るよ」


次の日、咲人は仲間たちと約束があった。
本来なら私のためにキャンセルしたいところだけど、
咲人がいないと予定していたことが何もできなくなるらしく、どうしても行かなければならなかった。
次の日っていうかもうその日の丑三つ時だったけど、
とにかく彼は一度家に帰る必要があった。


加えて、さぁじゃぁ一発やりましょうという雰囲気は皆無だった。
咲人はキザな奴だけど、キザを気取るだけあって、
ちゃんと紳士だったの。


咲人はリュックをゴソゴソすると、電動歯ブラシを取り出した。


「俺、歯磨くよ」

「へ?は、はいどうぞ。。。」


こ、この人電動歯磨き持ち歩いてんの?
ていうか多分今日のこと計画しててそうなったんだろうけど……
遅くなるつもりだったんだね。
長くいてくれるつもりだったんだ。


ウィーンという歯磨き音をBGMに咲人が、ん?という顔を覗かせた。
私が色々考えてるのがわかったのかもしれない。
私は洗面所から離れて背中で答えた。



「ううん、なんでもないよ」

「モゴモゴ(あ、そ?)」

「ねぇ、それって寝る準備してるの?」

「モゴモゴモゴ(まぁそうだな)」

「それともキスの準備?」



ブーッ!と吐き出すのが聞こえた。
そして、立ち向かうかのようにBoth! と咲人が答えたのが聞こえた。
私はおもわず笑った。



ハハハ(笑)
咲人、かわいい。
電話で話してた時と変わらない。



私はベランダに出ようかと思ったけど、そこにはサンダルがなくて。
靴を持ってくるのも面倒だったので、ただ開け放した窓のそばに立ち佇んだ。
日中は死ぬほど暑かったけど、夜中のそこは気持ちの良い風が入ってステキな気持ちだった。
咲人が今日1日してくれたこと、2人にとって初めてだった長いデート、
そして私にとって生まれて初めてだった、すんごく長い外国人とのデート。
色んなことを思い出していた。
咲人がやってきた。




「それは、日本人だから?」

「え?」

「ベランダに出たかったんじゃないの?靴がないから出ないんだろ」



私は笑った。



「そうね。」

「安心しろよ。ここは掃除がしょっちゅう入ってるから綺麗だ。
裸足で立っても平気だぜ。」



そういう問題じゃないんだよね、と私は心の中で笑った。
やっぱり彼はアジア人じゃないわね。
彼は携帯を見て言った。



「あと10分くらいしたら行くよ。」



私は


どうしたらいいかわからなかった。



もっと一緒にいたかった。



だって咲人は、本当に完璧にエスコートしてくれたんだもん。


だってずっと、会いたかったんだもん。


初めて会ったけど、初めてじゃない。


でも、彼は行かなきゃいけないし


私は、さぁヤリましょうとも言う積極性はないし


そもそも自分が彼と寝たいかもよくわからないし


ただもっと一緒に居たかったし


もう何が何やら…………涙目




私はおちゃらけて見せた。



「あーん、寂しくなるわん」

「何だよ(笑)もっといて欲しいの?」

「べっべつにそういうわけじゃ…
咲人行かなきゃいけないし、咲人次第っていうか」

「君の誕生日なんだから君が決めろよ」




と咲人は笑った。



咲人


私は


東京で水商売をしていたし


あなた以外にも会ってる男の人はいるし


生娘でも何でもないけど


でも


今素直に


あなたにもっと一緒に居て欲しいって言う勇気もないし


それがセックスをしたいって意味になったらどうしようって思う臆病者なの。



私は自分のバッグから小さな手紙を取り出した。
柄の派手な千代紙と、渋い色和紙を組み合わせて作ったそれは、私が咲人のために作ったメッセージカードだ。



「咲人、これあげる。」

「え?」

「あなたに手紙書いてきたの。
ごめんね、急すぎてお土産は何も買えなかった。」



咲人はそれを開き、しばらく目を通した。
私の拙い英語文を目でなぞり、そして



「なんだよもう、ハグさせろよ」


と笑って抱きしめてくれた。
カードの中には、私から彼への感謝の気持ちや、会うのをすごく楽しみにしていること。
そして、最後に可愛いバンパイアのイラストを描いておいた。
咲人は言った。



「カードわざわざ作ってくれてありがとう」

「どういたしまして。
あなたがしてくれたことに比べたら大したことないけど」

「そんな事ないよ。
…さて、俺そろそろ行くよ。」

「そうね」



と言って咲人は玄関に向かった。
彼は彼と同じくらいちょっと七面倒な紐靴を履いていて、それを履くのに時間がかかった。
私も寝る準備をしようと奥に引っ込み、着ていたTシャツを脱いだ。
ブラを外して薄っぺらいタンクトップを着てから思った。


いや、ノーブラでこれはイカンやろ。
誘ってるみたいにor変態にしか見えなーーーい!



私はいそいそとブラを装着した。笑
そして玄関へ向かうと、彼はちょうど靴紐を結び終えたところだった。
咲人は言った。



「じゃ、おやすみ。」



私も言った。



「おやすみなさい」


そしておやすみのハグをした。
私はギュッと彼をきつく抱きしめた。
咲人、行かないで……
あなたが恋しい。



そんな思いを込めてもう一度ギュッと抱きしめると



咲人は




「……メイサ



1つ訊いていい?






君の首を噛んでいい?」




続きます。

「誰の足でも触るの?」

2019-01-28 02:18:12 | 咲人
咲人は私の足を指していた。
ヒールから覗く私の足には、ちょっとした傷があった。
私は言葉に詰まった。



「あ、えっと…これは……」



見れば、咲人はデカイ目を更に見開いてそこを凝視している。
い、いや、そんな大変なもんじゃないんだけど……汗



「えっと、これは何でもないの。ただの傷っていうか……」

「痛くないのか?」

「うん、全然。ただの靴擦れだったんだけど、なんか治りが悪くてもうトシだからアトになっちゃったっていうか…」

「どれくらい前にできたんだ?」

「え?!えぇーと多分…数ヶ月前かな……」

「数ヶ月!?そんなに長い間治らないのか!?」

「(ひぇ〜汗)で、でも、痛くないから気にならないし……」

「でも治らないなんておかしいだろ!」



だけでは済まず、咲人は
薬は塗ったのか?
病院へは行ったのか?
いつもどんな靴履いてるんだ?
この靴のせいなのか?
と、それはもう矢継ぎ早に真剣に質問してきた。
私はたかが靴擦れがアラサーだから治りにくいだけなものについて質問攻めに遭い、
すっかりタジタジしてしまった。
咲人は訊いた。



「メイサ、触ってみていい?」

「えぇっ!?」



と驚いたものの咲人が真剣に心配しているのがわかったので、私はおずおずとOKした。
咲人は跪いて、私の足を両手ですくい上げた。
そして、え〜何でなんだ…とか呟きながら、その靴擦れ派生(笑)をしげしげ見つめたり、
優しく指でさすったり、まるで本当に何かの研究員か何かみたいだった。

私はなんとも言えない表情でそれを見つめていた。
この謎の執着はすごく咲人らしい。咲人はすごく細かくてしつこい男だ。
でもこれがどうでもいい子の足にあったら、こんな風にする気はしない。
何はともあれ、会ったばかりの男に足をしげしげとチェックされているのはどうも可笑しかった。
私は苦笑した。



「ねぇ、あなたって普段そんなに女友達の足を触るの?」

「え?うーん……」



咲人はちょっと笑った。



「君が触っていいって言ったからだろ」

「いや、そうじゃないじゃん(笑)」




と日本語で言ったので、彼は何?ときいたけど、
私は何でもないよ、もういいよ(笑)と答えた。
はぐらかしたようだけど、その距離感も嫌じゃなかった。


白いけれど煌々とした月の下で私達は色んな話をした。
日本ではどんな仕事をしていたかとか
咲人の家族の話とか。
終始彼は彼らしく、細やかでちょっとキザで、笑えた(笑)
どんなに話しても彼の見た目が変わる事はなかったんだけど(そらそうだ)
でも



すごく不思議だった。



いくらずっと話してきたからって



初めて会ったこの人ともう18時間は一緒にいる。



ずーーーーーーーーっと英語で話している。



なのに



全然大変じゃないんだよなぁ。




嫌じゃないんだよね。




むしろ



完璧にやってくれてるんだよなぁ…………





「咲人」




私は足を止めた。
アスファルトの上に、真っ黒な私の影が長く伸びていた。
現実もこれくらい脚長ければいいのに。
笑顔で振り向いた咲人の影も、長く長く伸びていた。
月明かりの下で、私達は2人きり、私の部屋に向かっていた。
私が帰り方を知らないから(爆笑)。
私は言った。




「咲人、あの……ありがとう」



私は、黒くて長い脚に目を落としたまま続けた。



「あなた、本当に今日私のためにすごくいろんなことしてくれたわ。
沢山考えてくれたのね。こんなに急だったのに……
あなた、完璧だったわ。ずっと……」



私は顔を上げた。
咲人と目が合った。



「本当に……感謝してるの」



咲人は




微笑んだ。



そして言った。




「You are very much welcome」




何度も何度も電話で聞いた




キザでセクシーな声で言うそのセリフ。





続きます。



完璧なデート

2019-01-26 02:02:44 | 咲人
「さて。まず君に質問なんだけど、はじめに部屋に行って荷物を置いて休みたい?
それともすぐに観光を始めたい?」



都心部に向かうバスの中で、咲人はそう訊いた。
私が着いたのは郊外にある空港で、遠すぎはしないけど、
そこから咲人の住む都心部まではしばらくバスに揺られる必要があった。
私は一度荷物を置いたほうが便利だと思ったけど、
せっかくここまで来て部屋で一人ぼっちで休むのも勿体無い気がしたので、
咲人と一緒にいられそうな観光を選んだ。
あなたが荷物を持ってくれてるんだから荷物を一度置いた方がいいかな、と言ったら
そんなこと気にするなよと笑われた。
事実私のメインバッグは重かったはずだ。
でも、多分彼のキャラクター的に、咲人はカッコつけてくれたんだと思う。



観光する場所、順番、それからそのための交通。
あと、入園料とかランチ代とか諸々。
咲人は全部スマートにやってくれた。
全部プラン済みで、全部沢山説明してくれて、でもちゃんと私に意見を聞いてくれた。




その靴歩ける?とか
こっち歩きなよ(砂利じゃないから)とか
君が気に入るかわからないから二種類買おうとか
そしてそのどちらも最初に私に試させてくれたりとか



君がしたい方にしろよとか
もっともっと沢山君に見せたいものがあるとか
沢山私の話を聞こうとしてくれたりとか



その国の言葉でしか説明がない時は、
ぜーんぶ通訳みたいに英語に直してくれた。
彼は本当に英語が上手だけど、
だからってプロの同時通訳でもないから、
大変だったんじゃないかと思った。



咲人が沢山私のために準備してくれたこと
(前日に言ったのにね……ごめんよ笑)



咲人が沢山私のことを気遣ってくれたこと



彼は



完璧だった。





「ジャーン」




とちょっとおどけて開けたドアの向こうには
凄く素敵な部屋が待っていた。
咲人が空き家と呼んだそこは、凄く綺麗で手入れが行き届いていて、
ちょっとしたホテル、いや、安いホテルよりは相当いい部屋だった。




「わ……あ」




私は息を飲んでキョロキョロした。
センスのいいソファとランプ。
大きくて寝心地の良さそうなベッド。
真っ白なカーテンは心地よい風ではためいて、 南向きのいい部屋なのもわかった。
こんな素敵な部屋にタダで泊まらせてくれるの??
っていうか咲人、アンタ何者?(笑)




「咲人!私この部屋好き!!」

「はは、気に入った?」

「うん、すっごくすっごく気に入ったわ。凄くいい!
あ、ううん。
I don’t like this room.
I LOVE this room!!」



と勢い良く叫んだ私に、咲人はハハハ、良かったよ、と嬉しそうに笑った。



朝10時に着いたその国で
私達に初デートはあっという間に時間を使い果たした。
夜が更けていくに連れ、綺麗な満月が高いところにかかり始めた。



「登れそう?」



と言って、咲人は私に手を差し伸べた。
もう閉館時間だけど、周りの建物が綺麗だからと連れてこられた美術館は
なぜか工事をしていた。
他に通り道がなく、ちょっとした瓦礫の山を越えて行かなければならなかった。
大したことない山なので、ヒールを履いた私なら越えられたのだけど、
私は素直に彼の手を借りた。




その時、もう10時間以上一緒にいた。
でも、初めて彼の手に触った。



そしてそこから彼は



ずっと私の手を握って歩く



なんて事はしなかった。





咲人、どう思ってるんだろう




ずーーーーーーーーーっととにかく親切だけど




いっっっっこうに何もして来ないし




このサイッコーに便利なきっかけさえ利用せず




手すら繋がない…………



ティーンでもないのに(笑)




あと、あんなに甘い会話をしたのに……





一休みしようとベンチに座った時
咲人は声を上げた。




「ちょっと待ってメイサ。それどうしたの?」




え?




続きます。

ついに初デート…でも!?

2019-01-25 07:07:09 | 咲人
「ふぅ……」



咲人にまだ部屋が空いているか聞いた20時間後、私は某国の空港にいた。
イミグレを通過した後に入ったトイレは狭く、化粧直し用スペースはなかった。
鏡の中の自分はやや髪のカールが取れていた。
無理もないなー、早起きして巻いたものの機内でもタクシーの中でも船漕いでたもん。
でもまぁ、今までのビデオコールから判断する限り、
咲人はそんなにハンサムじゃなさそうだし?(いや好みではあるんだけど)



私だって一応相手とのバランスを考える。
もし相手がひっじょーにイケてなかったらこっちが綺麗にする必要を感じないし、
めちゃんこキレイな男の子なら自分の見た目も気になる。
何はともあれ綺麗でいたいとは思うけど、
一緒にいる人との相対評価っていうか相手にどう思われるかが気になるのは割とフツーかなって思う。



で、話を戻すよん!



私はリップを塗り直し、手櫛で髪を整えた。
いよいよ感動のご対面だ。
彼と話し始めて3ヶ月。
私達の会話はただの友達以上なのは確かだ。
だけどこの初デートでお互いどう思うかが一番大切なのは当然。
そしてそれに対してちょっと緊張気味なのも当然。。。
えぇーい、ままよ!


私ははやる気持ちを抑え、トイレを飛び出した。
事前にどんな服装で来ているか聞いていたけど、到着ゲートには彼の姿はなかった。


『どこぉー??』

『今ゲートの近くにいるよ』



んんーーーー
あ。


ポチポチポチポチ



『本屋の中にいるよん』




便が重なったのか、到着ゲートはお迎えの人間でごった返していた。
けれど、そのすぐ近くにある本屋は閑古鳥が鳴いていて、
なおかつ店の外からも中の様子が良く見える作りになっていた。
私はランダムに選んだ雑誌を見つめ、緊張を紛らわそうとしていた。
えーとえーと、咲人は身長がこれくらいって言ってたな。
それから、帽子をかぶってて、チェックのシャツを着てて、それから……



すると不意に



「Meisa.」



名前を呼ばれた。
聞き覚えのある耳触りが凄くいい、セクシーな声。
でも、イヤフォン越しじゃないからか、小さめ。
私は振り向いた。
そこには




思ってたのと違う感じの人が立っていた




えぇーーーーーーー!?!?!?(ガーーーーーーーーン!!)




目の前にいたのは想定したよりずっと小柄で細身の咲人だった。
(下手したら私の方が体重重いんじゃないかって思った)
痩せてるとかそういう問題じゃなくて、とにかく小柄、華奢だった。
多分骨格の問題(いや問題とか言うなよ)。




ごめぇーーーーーーーん
私は体が大きい人が好きなのよーーーーー!!!!



はい、人物紹介にも書いております通り、わたくしは背が高い人が好きなんです。。。
いやマッチョとかスマートとかそういう話ではなくてですね。
デカイ肩幅とか、大きい手とか、長い四肢とか大きい肋骨とか、
本当に骨格がデカイ人が好きなんです。。。


勿論、お会いする前にわかったことだと思うんですね。
実際咲人と私はお互いの身長とか知っていたし。
でもどうやら咲人はちょっとサバ読んで教えてくれたようで、
私が想定していたより6cmは小さかったのです。
かつ、華奢ね。。。
気にならない人なら全く気にならないんだろうけど、
いかんせん私にとっては重要なことなので(笑)



えぇぇぇーーーー全然好みじゃないよーーーー
襲われたらどうしようって思ったけど、これじゃーこっちがその気にならないから100%大丈夫だな。。。



なーんて自意識過剰な心配が無駄だったと思っておりました。
それでも私は冷たくなんかしませんし、とにかくフツーの対応をしました。
そりゃそうです。
咲人とは長く仲良く過ごしてきたし、この国の2泊は彼のオススメ物件にご厄介になるんだもの。
マトモにしなかったらマトモじゃない。
私は笑顔でHi!と答えた。
咲人は挨拶のためにハグしようかどうしようか迷って苦笑したけど、
(彼は日本人がハグしないのを知っている)
私は笑顔で彼をハグした。
マジでちっちゃいこの人ーーー(涙)




「君のスーツケースは?これだけ?」

「え?えぇ」

「貸しなよ。軽いな!」



と、彼は私にとってはまぁまぁ重いそれをヒョイと持って笑った。
それからフライトはどうだったとか色々私に質問したけど、
とにかく彼は終始凄く楽しそうで、本当にニコニコしていた。
私は、あぁきっと咲人にとっては私はガッカリさんじゃなかったんだ、と
ちょっとホッとした。





さぁ、果たしてどうなるこのデート!?


続きます!!