メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

書きながら泣けた

2019-03-17 19:58:47 | 咲人
『 メイサ

君がここを発って、72時間が経った。
君の温度も、甘い匂いも、肌の柔らかさも、まだ記憶に強く残っている』


出だしからキモい



ごめーーーーん!!!
これってウェスタンでは普通!?



き、気を取り直して!(そして汗をぬぐって)




『あの日から俺は毎朝、毎晩君のこと考えている。
君がもう2度と俺と話してくれないんじゃないかって思ってる。
この手紙を読みたいかどうかもわからない。
でも、自分の心に正直に話させるべきだと思う。


君と過ごしたあの、ものすごく暑かった2日間は、本当に素晴らしかった。
俺は君がこの数ヶ月間、ずっと話してくれて、嬉しかった。
ついにやっと、会うことができたね。
君の全てに感謝するし、俺は本当に君のことが大好きだったんだ。
特に君の性格が本当に好きだ。
君と、あの木から溢れる陽差しの名前について話していた時、
俺は、おかしいだろ、でも、俺は
遥か昔に出会ったのに忘れてしまっていた親友に出会ったような
ずっと探し続けていた誰かに出会えたような
そんな気持ちだったんだ。』




そう始めて、咲人は、あれから何度もどうして喧嘩になってしまったのか考えていたこと。
どんなに考えても、どうして私が泣いていたのかわからなかったこと。
もっと素晴らしい時間になるはずだったのに……とずっと悔んでいること。
英語で話すのがそんなに辛いなら、日本語でもいいということ。
そして何ヶ月経ってでも、それを解読して君に返事をしてみせるということ。
そんなことが書いてあった。




『もし君がもう2度と俺と話す気がないのなら、
あの日のことはすべて、素晴らしい思い出として俺の心に留めておくよ。
知ってるかい?(知らんがな)
俺はあの日、君への誕生日プレゼントとカードを持ってきていたんだ。
あの喧嘩は俺に、完璧にそのことを忘れさせた。


メイサ、より楽しい一年を過ごして。
ps 今度俺に手紙を書くことがあれば、書体にはもう少し気をつけたほうがいいぜ。
君がくれたカード、読むの大変だったから。 咲人 』




相変わらず一言余計だ。
咲人のラブレターを読み終えて、私はため息をついた。




ビンビン伝わってくるのは
彼が私のことが本当に大好きだということ。
「美人なら大抵なんでもいいけど美人じゃなきゃ無理」と、
ハンサムでもないくせに堂々と言っていた彼が、
君の性格が大好きだと言ったのは、
彼が体目的で寝たわけじゃないと感じさせた。
でもどんなに咲人が私のこと好きだとしても、
やっぱり彼の論点は外れてるし、発言も理性的じゃないと感じた。
何ヶ月もかかって私の日本語を解読して返事をする?
そんな考古学者の研究みたいなこと、どれだけの情熱と忍耐力が必要だろう。
咲人にそんな忍耐力があるようには思えない。
私に引っ越せと言った時も、自分は動けないということを「今は」と言ったけど、
それは私を引き止めるための言い訳に聞こえた。



それに、私がどんな説明をしても
彼とは分かり合えないと感じていた。
多分もうこの時点で私の中で結論は出ていたんだと思う。




この人は、真剣に付き合う相手じゃない。



あたしこそ咲人のこと言えないけど
真剣に付き合うなら心から尊敬できる、もしくは自分を見せられる人じゃないと無理だ。




咲人が好きだった。
大好きだった。
意地悪で偏屈でドSで、超変人。




でも好きだった。
毎朝毎晩、彼からの連絡を待っていた。
癒してくれたことがある。
私を受け入れてくれたことがある。
いつも助けてくれた。
いつも求めてくれた。
大好きだったの。




そしてそれからすぐの夜のことだった。





プルルルルル……




2週間ぶりに彼と電話をした。





続きます!











初デートで見たもの

2019-03-15 06:29:15 | 咲人
咲人からのメッセージは短かった。



『Hey Meisa. I really miss you. Can we place a call in the near future?』


君が本当に恋しい。
近いうちに電話できない?




待ち望んでいた連絡だった。



んーーーと頬杖をついた。
別に余裕綽々のどーしよっかな★ではない。
私も恋しかったし話した方がいいと思うけど……。



まぁいいや。
どうしても聞きたいことが一つあるし。
でもすぐに返信なんて、絶対してあげない。



私は忙しくもないのに半日ほど返信を寝かせておいた。
別に許される範囲の意地悪だ。
加えて、誇り高き民族の彼が、女にすがるなんて俺の国の男はできないと言っていた彼が、
アプリ上で私を探し、ついにはI really miss youと連絡して来たことも
相当気分が良かった。
え、性格が悪い?
いいえ、それをさせるくらい彼が嫌な奴だっただけです(笑顔)




『明後日のこの時間なら電話できると思うわ。
それから、もしかしたらあなたが用意してくれた部屋に私のバッグを忘れたかもしれないの。
知ってる?』




そう。
咲人の国でエコバッグ的の使っていたバッグが行方不明なのだ。
確か、旅行カバンに入れたはずなのだけど、
何せあの部屋を発った日は、二人とも注意散漫で。
もしかしたらクローゼットの中にあるんじゃないか、と思ったのだ。


それはエコバッグではなくて、でも折りたためるバッグなのだけど(何それ)
亡くなった祖父が旅行のお土産に買ってきてくれた物だ。
モダンでも何でもないけど、綺麗な色と装飾の繊細さから、
畳めるバッグ(笑)にしては高価なものだったのはわかる。
祖父が孫可愛さに買ってきてくれたそれを、なくすわけにはいかなかった。




ピロリロリーン




『返信、ありがとう。
なんだか、もう2度と連絡がないんじゃないかと思ってた……。
バッグのこと、清掃のメイドに聞いてみるよ。
その時間帯で電話しよう』




ポチポチポチポチ



『バッグのことありがとう。
あれは亡くなった祖父がくれたものだから失くせないのよ。』

『大丈夫、見つけるよ。
知ってる?(知らんがな)俺、君に手紙書いたんだぜ。
もう君が読みたいかどうかもわからないけど……。』



手紙?


そういえば咲人は前にも一度手紙を書いてくれたことがある。
ものすごーく初めの頃だ。(咲人カテゴリの え、何?運命?からどうぞ)
その時も結構個性的なものつうかポエムを送ってくれたけど、
今回はどうなんだろう。
でも何より…………




私は窓の外を見つめた。
きらきら光る木漏れ日が道をキリン柄にしている。
あの日。
初めて咲人とデートした、その夏一番の猛暑日だったあの日。
咲人が案内してくれた公園で、私たちは木陰を散歩していた。




「これが俺たちの文化なんだ。君の住んでる国とは違うだろう?
俺たちは自然を愛してるけど、だからこそあまり手をかけないんだ。
多分、病気とかそういうことのケアはしているだろうけど、
人間が手を出すのは最低限にとどめて、できるだけありのままの状態でおくんだ」




そう説明した咲人と私の周りには、樹齢が高そうな樹や、ワイルドな薬草。
不格好は可哀想だけど、気の毒な見た目の樹が茂っていた。
私は正直、この国の男の子と付き合っていたにもかかわらず、
全然この国の文化や言葉に興味がなくて、知識は全然ない。
仁と仲良くなってから少し学んだこともあったけど、それでも別に興味もなかったし、
咲人が説明する彼の国のことは、初めてのことだらけだった。

私は、なるほどねーと、面白みゼロな相槌を打った。
日本人なら綺麗に切り揃えちゃうかも、とも思った。
それを見透かしたのか、咲人は言った。



「日本人はどうなの?もっと細やかなんだろ」

「うーん、まぁ、多分そうだと思うわ。基本的には私たち、すごく細かいから」

「だよな、そこが興味深いんだよ。俺にとって。
だから日本語を勉強するのは大変なんだけどさ(笑)」

「ま、そうね。日本語は外国人にはキツイと思うわ。
私たち細かいから、単語数も物凄いしね。
たとえば……」



私は空を見上げた。
眩しい真っ青な空に、白くて長い雲が、スッと通っていた。



「あの雲、あなたの国では名前がある?」

「え?……あーううん、いや?
あると思うけど、学術的な名前だよ」

「なるほどね、日本人はね、あれを飛行機雲って呼ぶのよ」

「ヒコウ……?」

「直訳すると、airplane cloud って感じ」

「ああー、なるほどね」

「でもそれだけじゃないわ。飛行機雲だけじゃなくて、
ウロコ雲、いわし雲、入道雲……雲一つとっても本当にたくさんあるのよ」

「すごいな」

「それにね……」



と言って私は、足元を指差した。



「ね、これなんていうか知ってる?」

「え?」



私はつま先で、トントンと木漏れ日の落ちているところをタップした。
いや…と言い淀む咲人に、ちょっと笑ってみせた。



「こ、も、れ、び。木から漏れる陽って意味なの。
私たちは本当にたくさん単語を持っているのよ」



すごいな、と咲人は感激したように言った。
私は木漏れ日という単語が好きだったから、
彼の反応が嬉しかった。



咲人が私宛に書いた手紙が読んでみたかった。




ポチ



ポチポチ……




『手紙?見せて』





ピロリロリーン




咲人はすぐに、3枚ん添付写真つきで返信してきた。




『どうぞ。でも読んだら何か感想が欲しいよ』




その手紙は



ラブレターだった。







続きます!











プライドが高すぎる男

2019-03-13 07:57:18 | 咲人
咲人に返信しなくても、彼と出会ったアプリは使い続けていた。
お互いにいつオンラインだったかがわかるのだけど、
私が返信しなくて24時間ほど経った頃、
咲人が一度オンラインになったのがわかった。
ここ数週間忙殺されていた彼は、すっかりなりを潜めていたというのに。


きっと私のことを探している、と思った。



私はため息をついた。
涙ならもう相当出した。
悲しいことっていうのは人生で何回もあるから、
枯れ果てたとは言えない。
でもとりあえず、声に出して泣いてみたりもした後だ。



泣くほど辛いけど、だからって咲人に返信する気にはなれないんだよね。
だって、あんなに不必要に冷たかった人だよ?
自分が温厚で菩薩みたいな女だなんて言わないけど、
そう言わない分、相手には温厚さを求めると言わせてもらう。
少なくとも、自分の怒りを優先するんじゃなくて、他人を傷つけることを躊躇う人がいい。
いーいっ?もう一回言うけど、あたしは菩薩じゃないわよ、全然っ!!
だからこそ、でしょ。



2回目のため息は葡萄色だった。
ワインが進んでしまう。
理想は「メイサごめん。君が恋しい」って彼が連絡してくることなんだけど、
今まで何度も書いてきた通り彼は偏屈でキザな、プライドの高い男なの。
くーわーえーて!
彼らの国民性でいうと、男はそんなことできないんだよね。
そう。
Too proud xxx peopleなのだ。(xxxは彼の国を挿入して読む)



理解できないのに謝るなんてできない。(これは咲人の意見)
女にすがるなんてできない。(これは国民性)



そんな咲人がメイちゃんにまた連絡してこないのは目に見えた。
ほんでもって、そんな彼のためにこっちが折れてなんかあげられない。


そもそも、本当にまだ彼が好きなら、連絡くらいこっちからするわ。
でもどーしても、他の男と致してイイって思ってるところと
私が動くことでしか関係を近くできないと思ってるところが
ほんとにほんとにどーしても
メイちゃんを本気にできなかった。
こいつじゃダメだろって、理性がノーサインを出しているのだ。



人にもよると思うけど、理性と感情がうまいこと同じ方向に動くわけじゃない。
それからあたしはずーっと返信しなかったけど、
その間じゅう胸がジクジクと痛んではいた。
そらそうだ。
あんだけ好きだったんだもん。



ちょうど1週間経った頃だった。





ピロリロリーン




咲人から




連絡が来た。







続きます。



最後の言葉

2019-03-11 02:01:04 | 咲人
咲人は食い下がってメイちゃんが付き合う気があるのか聞いた。
メイちゃんは前述の通り、咲人の気持ちがさっぱりだったのに加え、
付き合ったらこの国に引っ越すっていう意味不明な価値観と
他の男とシていいっていう理解できない貞操観念まで直面してしまったので
もう、本当に、何が何やら、マジで、鬼疲れていた。
ウン付き合いたい、なんて言えないでしょこんな状況でー!!!


てゆーかマジで、アンタが引っ越してこいよ!!!
それくらいの男気見せろっつーの!(ふがー!)


ってゆーか付き合いたいなら、好きだ付き合ってくれってちゃんと言えよ!



はい。案外古い人間なんです。。。




「咲人は?私と付き合いたいの?」

「俺はもう聞いただろ」

「押してよ」



メイちゃんと同じで咲人も相当イライラしているらしく、
首を横に振った。



「俺はもう十分押したよ」




私は今でも思うんだけど
この時咲人がこんな風に意地を張らずに、きちんと私の目を見て
「俺はメイサが好きだよ。俺の彼女になってほしい」って言ってくれてたら
私はきっと



「私も」


って、彼を抱きしめていたんじゃないのかな。





でも現実は全く違って、
咲人は空港まで私の荷物を持って行ってくれたし
ちゃんと離陸したかとか気にしてくれたけど
道中の二人はとても雰囲気が悪くて
っていうか
本当に正直に言うと
咲人の態度が悪すぎて。
殴るとかひどい暴言とかそういうクズだったわけじゃぁ、全然ないんだけど
まぁとにかく、優しくなかったんだよね、全然。




私はそんな彼相手なのに、とても大人だったと思う。




だから




彼にもう





返信しなかった。






ポチポチポチポチ、ピロリン。





『無事私の国に着いたわ』




ピロリーン




『お疲れ様。フライトはどうだった?』




既読マークをつけて、そのまま携帯をカバンの中にしまった。




あなたとなんか




話したくありません。







続きます!






後数時間で……

2019-03-09 01:27:31 | 咲人
ひ、引越しって……急に何言い出しちゃうにこの人は?!
しかもさぁ



「……咲人は私の国に来ないの?」

「俺は無理だよ。今すぐにはね」



いやいやいやいやいや
どう考えたって私にとっても無理でしょうが。
なんで自分にできないから私にしてもらうとか思っちゃってんの?
ていうか何ならアンタの方が動きやすいじゃん!
言葉の問題とかビザの問題とかさ。



「で、メイサ、俺と付き合うの?あと、なんで泣いてるの?」



私の戸惑いも感知せず、咲人はそんな風に聞いてきた。
私は貞操観念についてこの偏屈な変人に熱弁したところで、
多分一生理解しないだろうと思い、説明する気になれなかった。
そもそも、私にとっては私の考えがあるべき姿かつ一般的だけど、
結局は人それぞれじゃないですか。
それこそカップルそれぞれの在り方があるわけで。
だから「アンタ彼女が他の男とシてもいいなんて阿保だろ。
っつーかアンタも他の女とするつもり?マジないんですけどぉー!!」
と責め立てるのもおかしいと思った。
なぁ私偉くないか?ねぇねぇ(笑)



ところが咲人さんは私にそういう無駄骨を折って欲しかったらしく。
私がどうも煮え切らない態度を取ることにイライラしたらしい。
私は私でそんな徒労をしたくないし、
感情的な角度から言えば、すっかり哀しくゲンナリしていた。
ついに私は日本語で話し始めた。
当然スーパー初心者の咲人がそれを理解できるわけもなく、彼はウッと言葉に詰まった。




「メイサ、頼むから日本語で話すのはやめてくれ。会話できない。
君は俺とコミュニケーションを取るために英語で話すべきだ」

「べきだなんて言わないでよ、あくまで私の権利でしょ。
話したほうがいい、ならいいけど、べきだなんて強制される筋合いないわ」



偏屈なだけあってクソ細かい咲人は、わかったよ…と非を認めた。
加えて、メイちゃんの目からボロボロこぼれ続ける水にはため息をついた。



「メイサ……頼むから泣かないでくれ。
俺は……君が悲しんでるところなんか……見たくないんだ」



その言葉は本当だっただろうけど
その言葉に見合うくらい彼が優しかったかと言えば違った。


私がその国を発つまでの数時間。



私たちはその全てを
口論に費やした。





続きます。